• 「エクセルで勤務時間を計算したいのに、なぜか合計が合わない…」
  • 「残業や深夜時間の区別って、どう設定すればいいの?」

そんな疑問やストレスを感じたことはありませんか?

勤怠管理は事業運営の基盤。特に中小企業や店舗運営においては、専用の勤怠システムを導入する余裕がなく、エクセルでの時間計算が主力ツールとなっているケースが多数存在します。

しかし、「24時間を超えると表示がバグる」「マイナス時間になる」「分単位に直せない」など、時間計算のミスは人件費や労務リスクに直結する重大トラブルに発展しかねません。

本記事では、そうした悩みを解決すべく、「エクセルの時間計算」特に休憩時間の差し引きや分単位・小数形式への変換方法など、勤怠管理に使えるテクニックを体系的に解説します。

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エクセルの時間計算とは

勤怠管理におけるExcel(エクセル)の時間計算とは、単なる数値の計算ではなく、従業員の労働時間を正確に把握し、適切な労務管理と給与計算を行うための必須スキルです。

このスキルを活用することで、手作業による計算ミスや管理の手間を大幅に削減し、コンプライアンスを遵守した効率的な業務体制を構築することが可能になります。

働き方改革関連法の施行により、企業にはより正確な労働時間の把握が求められています。Excelで正確な時間計算を行うスキルは、こうした法改正に対応し、企業の法的リスクを回避するためにも不可欠なのです。

Excelの時間計算が初心者にとって少し難しく感じるのは、Excelが時間を「シリアル値」という独自の数値で管理しているためです。Excelは1日(24時間)を「1」という数値として扱い、「12:00(正午)」は「0.5」といった小数で内部的にデータを保持しています。

私たちが普段見ている時刻表示は、このシリアル値に「表示形式」を適用して見やすくしているに過ぎません。この仕組みを理解していないと、「合計時間が25時間なのに、セルには1:00と表示される」といった問題に直面します。

時間計算の足し算と引き算

Excelにおける時間の足し算(合計勤務時間の算出)と引き算(実労働時間の算出)は、それぞれ「SUM関数」と単純な「引き算の数式」を用いることで、簡単かつ正確に計算できます。 正しい計算結果を得るためには、各セルに時刻データが適切な形式で入力されていることが大前提となります。

Excelでこれらの計算が可能なのは、Excelが時間を「シリアル値」という数値として内部で処理しているためです。SUM関数はセル範囲内の数値を合計する標準関数であり、時刻データにもそのまま適用できます。

同様に、終了時刻のセル - 開始時刻のセル というシンプルな数式で経過時間を求められるのも、シリアル値のおかげです。実際の操作方法を、具体的な活用例と共に解説します。

【実例1:複数日の勤務時間を合計する(足し算)】

従業員の週の総労働時間を計算する場合、以下のようにSUM関数を利用します。

合計を表示させたいセル(例:B5)に =SUM(B2:B4) と入力するだけで、指定した範囲の合計時間が自動的に計算されます。

【実例2:休憩時間を除いた実労働時間を算出する(引き算)】

1日の実労働時間は、終業時刻から始業時刻と休憩時間を引くことで算出します。

実労働時間を表示させたいセル(例:D2)に =B2-A2-C2 と入力すれば、「終業時刻」から「始業時刻」と「休憩時間」が引かれ、その日の実労働時間が計算されます。この数式を下の行にコピーすれば、全従業員分の計算も一瞬で完了します。

ご覧の通り、時間の足し算にはSUM関数、引き算には単純な減算の数式を用いるのが、Excel時間計算の基本操作です。この2つの方法をマスターするだけで、日々のデータ入力と勤務時間の管理業務は格段に効率化されます。

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エクセルの合計時間の計算

Excelで勤務時間の合計を正しく計算することは、月間の総労働時間や残業時間を正確に把握し、適正な給与計算を行うための基本です。しかし、多くの方が経験するように、単純に合計時間が24時間を超えると意図しない表示になるため、Excel特有の「表示形式」の設定変更が不可欠となります。

労働基準法第32条では労働時間の上限(原則1日8時間、1週40時間)が、同法第37条では時間外労働に対する割増賃金の支払いが定められています。月間の総労働時間を正確に合計・管理することは、これらの法令を遵守し、未払い残業代などのリスクを回避する上で極めて重要です。

合計時間が24時間を超えると表示がずれるのは、Excelが時間を管理する「シリアル値」とセルの「表示形式」の組み合わせが原因です。

例えば、合計が「30時間」の場合、Excelは内部データとして「1.25」(1日と6時間)と認識します。このセルに標準の時刻書式h:mmが設定されていると、Excelは日付部分である「1日」を無視して、時間部分の「6:00」だけを表示してしまうのです。

Excelでの合計時間計算は、単なる足し算ではなく、法令を遵守した労務管理の土台となる重要な作業です。特に「24時間の壁」は多くの人がつまずくポイントですが、これから解説する方法でセルの「表示形式」を正しく設定すれば、誰でも簡単かつ正確に月間の総労働時間などを管理できるようになります。

24時間以上の足し算

Excelで24時間以上の合計時間を正しく表示させるには、対象セルの「表示形式」を、標準のh:mmから[h]:mmに変更します。 この簡単な設定だけで、Excelは日をまたいだ時間を累積して表示するようになります。

この解決策の根拠は、Excelの書式設定の仕様にあります。標準の書式コードhは、時刻の「時」の部分(0〜23)を表示するため、24を超えた分はリセットされます。一方、[h]という特殊な書式コードは、24時間以上の経過時間を表示するための専用のものです。

角括弧[]で「時(h)」を囲むことで、「24時間を1日として繰り上げる」という標準ルールを無効化し、経過した総時間数として表示するようExcelに指示できます。

具体的な設定手順は以下の通りです。

  1. 合計時間を表示したいセル(またはセル範囲)を選択し、右クリックします。
  2. メニューから「セルの書式設定」を選択します。
  3. 表示されたダイアログボックスで「表示形式」タブが選択されていることを確認します。
  4. 「分類(C):」の中から一番下の「ユーザー定義」をクリックします。
  5. 右側の「種類(T):」の入力ボックスに、[h]:mm」と手で入力します。
  6. 「OK」ボタンをクリックして設定を完了します。

この設定による表示の違いは以下の通りです。

Excelでの合計時間計算における「24時間の壁」は、セルの表示形式を[h]:mmに変更するだけで簡単に乗り越えられます。この設定は一度覚えてしまえば様々な場面で活用できる便利なテクニックです。月間の総労働時間や残業時間の正確な管理のために、必ずマスターしておきましょう。

合計時間の表示形式

Excelの「表示形式」をカスタマイズすることで、合計時間を「〇時間〇分」のような日本語で表示したり、合計分や合計秒で表示したりと、用途に応じて柔軟に見せ方を変更することが可能です。

これはExcelの「ユーザー定義書式」が持つ機能に基づきます。[h](合計時間)、mm(分)、ss(秒)といった書式コードを組み合わせたり、"文字列"を追加したりすることで、表示を自在にコントロールできます。

勤怠管理や業務報告で便利な表示形式のパターンをいくつか紹介します。設定方法は前述の通り、「セルの書式設定」→「ユーザー定義」の「種類」ボックスに入力します。

用途入力する書式コード表示例(42時間30分15秒の場合)
時間と分(基本)[h]:mm42:30
時間・分・秒まで表示[h]:mm:ss42:30:15
日本語表記にしたい[h]"時間"mm"分"42時間30分
合計を分単位で知りたい[m]2550
合計分を日本語表記で[m]"分"2550分

【ポイント】

  • mm: 「分」を表示しますが、60分で0に戻ります。
  • [m]: 60分を超えてもリセットされず、総経過分数を表示します。
  • " ": ダブルクォーテーションで囲んだ文字は、そのまま表示されます。

合計時間の表示形式は、[h]:mmが基本ですが、ユーザー定義の書式コードを組み合わせることで、報告書や給与明細など、提出先のフォーマットに合わせた柔軟な表示が可能です。目的に応じて最適な表示形式を選択し、より分かりやすく、管理しやすいデータ作成を目指しましょう。

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エクセルの経過時間の計算

Excelにおける経過時間の計算は、「終了時刻 – 開始時刻」という簡単な引き算で行うのが基本です。これにより、従業員一人ひとりの実労働時間やプロジェクトの所要時間を正確にデータとして把握できます。

この計算結果を給与計算や生産性分析に正しく活用するためには、次のステップである「時・分・秒の単位変換」や、夜勤計算などで発生する「マイナス時間の正しい扱い方」を理解しておく必要があります。

経過時間計算の基本的な数式は「終了時刻のセル - 開始時刻のセル」ですが、この計算結果は「シリアル値」というExcel特有の時刻形式である点に注意が必要です。

例えば、経過時間が「8:00」のセルに、時給「1,500円」を単純に乗算しても、正しい給与は計算できません。また、夜勤(例: 22:00〜翌7:00)のように日付をまたぐ勤務では、結果がマイナスとなって#####のようなエラーが表示される問題も発生します。

Excelでの経過時間計算は、勤怠管理と生産性分析の基礎となる重要な操作です。単純な引き算で算出できますが、その計算結果を実務で有効活用するためには、シリアル値を計算に使える数値(10進数)に変換したり、マイナス時間のエラーを解決したりするテクニックが求められます。

時分秒の変換

Excelの時刻データ(シリアル値)を、時給計算などに利用できる数値(10進数)へ変換するには、時刻のセルに「24」を乗算(掛ける)するのが最も簡単で確実な方法です。また、HOURMINUTESECONDといった専用の関数を使えば、時間、分、秒の各要素を個別に数値として取り出すことも可能です。

この変換方法の根拠は、Excelが1日(24時間)を「1」として時間を管理する「シリアル値」の仕組みにあります。時刻のシリアル値に「24」を掛けることで、単位が「日」から「時間」に変換され、時給計算などに使える10進数の数値(例: 「8:30」→ 8.5)を得ることができます。

一方、HOURMINUTESECOND関数は、それぞれ時刻データから「時」「分」「秒」の要素を整数で返すように設計されたExcelの標準関数です。

時給計算を例に、具体的な変換方法を2つ解説します。

【方法1】 シリアル値に「24」を掛ける(推奨) この方法が最もシンプルで、給与計算などに直結します。

=A2*B2」と直接計算すると正しい結果になりません。必ず「*24」を挟んで単位を時間に変換する必要があります。

【方法2】 HOUR、MINUTE、SECOND関数を使う 時刻の要素を個別に利用したい場合に便利です。A2セルに「8:30:45」と入力されている場合、

  • =HOUR(A2) → 「8」を返す
  • =MINUTE(A2) → 「30」を返す
  • =SECOND(A2) → 「45」を返す

時刻形式のデータを数値に変換する際は、シンプルに「24を掛ける」方法が最も実用的で間違いがありません。 HOURMINUTEといった関数は、分単位での丸め処理など、より細かい制御が必要な場合に活用できます。目的に応じてこれらの方法を使い分け、正確な給与計算やデータ分析を行いましょう。

マイナス時間エラーについて

Excelで時刻の引き算がマイナスになると、セルに#####とエラーが表示されるのは、標準設定では負の時刻を扱えない仕様のためです。この問題は、Excelのオプションで「1904年から計算する」に設定を変更する、またはIF関数を使って数式で対応する、という2つの方法で解決できます。

このエラーの理由は、Excelが日付・時刻を管理する2つのシステムにあります。Windows版Excelの標準設定である「1900年基準」システムは、負の値を時刻として表示できません。一方、オプションで切り替え可能な「1904年基準」システムは、負の時刻値を扱えるように設計されています。

2つの解決策にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、状況に応じて使い分けることが重要です。

【解決策1】 オプションで「1904年から計算する」に設定する 「ファイル」→「オプション」→「詳細設定」と進み、「次のブックを計算するとき」の項目にある**「1904年から計算する」にチェックを入れます。**

  • メリット: ブック全体に設定が適用され、マイナスの時間を意識せずに計算式を組めます。
  • デメリット: ブック内の既存の日付データがすべて4年と1日ずれてしまいます。他ファイルとの間で日付のコピー&ペーストを行うと問題が起きるため、新規作成するファイルでの利用に限定するのが安全です。

【解決策2】 IF関数を使った数式で対応する(推奨) 夜勤計算など、特定の計算でのみマイナスが発生する場合に最適です。

C2セルに入力する数式「=IF(B2<A2, B2+1-A2, B2-A2) 」は、「もし終了時刻が開始時刻より小さければ(=日付をまたいでいれば)、終了時刻に1(=24時間)を足してから引き算する」という処理を行います。ファイル全体の設定に影響を与えず、計算ロジックが数式内で完結するため管理も容易です。

マイナス時間のエラーは、Excelの仕様を理解すれば確実に対処できます。既存データとの整合性や他ファイルとの連携を考慮すると、IF関数を用いて「日付をまたいだ場合は24時間を足す」という数式で対応する方法が、最も安全で実用的な解決策と言えます。

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エクセルで勤務時間を計算する

Excelでの勤務時間計算は、単に総労働時間を算出するだけでなく、IFFLOORといった関数を組み合わせることで、労務管理における複雑な処理を自動化できます。具体的には、「休憩時間の自動控除」「残業・深夜時間の自動切り分け」「給与計算のための時間丸め」といった実務に即した計算が可能です。

労働時間に応じた休憩時間の付与(労働基準法第34条)や、時間外労働・深夜労働に対する割増賃金の支払い(同法第37条)は、法律で厳格に定められています。そのため、それぞれの時間を正確に管理・計算する仕組みが不可欠です。

このような時間管理を手作業で行うと、計算ミスや確認の手間が膨大になりますが、Excelの関数を使えば自動化が可能です。これから解説する内容は、基本計算の応用編であり、これらをマスターすることで、勤怠管理の精度と効率を飛躍的に向上させることができます。

休憩時間を自動で差し引く

ExcelのIF関数を使えば、「労働時間が8時間を超えたら1時間、6時間を超えたら45分」といった労働基準法に準拠した休憩時間を自動的に判定し、総拘束時間から差し引くことが可能です。

労働基準法第34条で定められた「6時間超で45分」「8時間超で1時間」という休憩時間の付与要件を、そのままIF関数の条件分岐ロジックに落とし込むことで、手作業での判断ミスを防ぎ、常に法令を遵守した休憩時間管理が実現できます。

IF関数を入れ子(ネスト)にすることで、複数の条件を順番に判定する数式を作成できます。例えば、A2セルにその日の総拘束時間(終業時刻-始業時刻)が計算されている場合、休憩時間を自動計算する数式は以下のようになります。

数式: =IF(A2>TIME(8,0,0), TIME(1,0,0), IF(A2>TIME(6,0,0), TIME(0,45,0), 0))

この数式は、「もし総拘束時間が8時間を超えていれば1時間、そうでなくとも6時間を超えていれば45分、どちらでもなければ0」という処理を自動で行います。この計算式を勤怠管理表に組み込んでおけば、休憩時間を手入力したり、労働時間から手で引いたりする必要がなくなります。

IF関数を活用した休憩時間の自動計算は、労務管理における単純ながらも間違いやすい作業をなくす強力なテクニックです。一度数式を組んでしまえば、あとはExcelが自動で判断してくれるため、管理者はより重要な業務に集中できるようになります。

残業時間、深夜時間を切り分ける

IFMINMAXといった関数を組み合わせることで、1日の総労働時間から「法定内労働時間」「法定時間外労働(残業)時間」「深夜労働時間」を正確に抜き出し、個別のセルに自動で計算することが可能です。これにより、割増率の異なる賃金を正確に算出できます。

この切り分け計算は、労働基準法第37条で定められた割増賃金の支払義務を果たすために必須です。法定時間外労働には25%以上、深夜労働(22時~翌5時)にはさらに25%以上の割増賃金が必要となるため、それぞれの労働時間を1分単位で正確に把握し、分けて計算する仕組みが求められます。

ここでは、実労働時間から「残業時間」と「深夜労働時間」を算出する基本的な計算式を紹介します。(A2:始業時刻, B2:終業時刻, D2:実労働時間 と仮定)

法定時間外労働(残業)時間の計算: 実労働時間が8時間を超えた部分を算出します。

数式: =IF(D2>TIME(8,0,0), D2-TIME(8,0,0), 0)

深夜労働時間の計算: 勤務時間帯と深夜時間帯(22:00~翌5:00)が重なる時間を算出します。

数式: =MAX(0, MIN(B2, TIME(29,0,0)) - MAX(A2, TIME(22,0,0)))
※日付またぎを考慮し、翌朝5時を「29時」として計算するのがポイントです。

残業時間や深夜時間の切り分け計算は、一見すると複雑ですが、紹介した関数をテンプレートとして活用することで、誰でも自動化できます。この計算をマスターすれば、Excelでの給与計算の精度と効率が飛躍的に向上し、コンプライアンス遵守にも繋がります。

勤務時間を丸める

Excelで勤務時間を15分や30分といった特定の単位で処理する場合、切り捨てるならFLOOR.MATH関数、切り上げるならCEILING.MATH関数を利用します。これにより、社内ルールに沿った勤怠時間の丸め処理を自動化できますが、法律上の注意点も理解しておく必要があります。

まず前提として、労働時間は原則として1分単位で管理・計算されるべきです。労働基準法の観点から、使用者側が一方的に労働時間を切り捨てることは、労働者の不利益となるため原則として認められず、賃金不払いのリスクを伴います。

ただし、事務簡便化を目的とし、常に労働者に不利にならないよう配慮した上で、就業規則等に定めて運用することは例外的に許容される場合があります。

FLOOR.MATH関数とCEILING.MATH関数の具体的な使い方を解説します。

【ケース1】 出勤時刻を15分単位で切り上げる(遅刻処理) A2セルに出勤時刻「9:07」が入力されている場合。

  • 数式: =CEILING.MATH(A2, TIME(0,15,0))
  • 結果: 「9:15」が表示されます。

【ケース2】 1日の総労働時間を30分単位で切り捨てる B2セルに実労働時間「8:25」が入力されている場合。

  • 数式: =FLOOR.MATH(B2, TIME(0,30,0))
  • 結果: 「8:00」が表示されます。

FLOOR.MATHCEILING.MATH関数は、勤務時間の丸め処理を自動化する便利な関数です。しかし、これらの関数を利用する際は、労働時間を従業員に不利益な形で丸めることは法的に問題となるリスクがあることを常に念頭に置かなければなりません。

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エクセルでの時間計算でよくある質問

エクセルでの時間計算で、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
24時(0時)をまたぐ深夜勤務の時間の計算方法は?
A

24時をまたぐ深夜勤務の時間を計算する場合、単純な引き算ではマイナスエラー(#####表示)となるため、IF関数を使い、「もし日付をまたいでいたら、終了時刻に24時間を足してから引き算する」という条件分岐の数式を組むのが最も安全で確実な解決策です。

例えば「翌朝7:00 – 前日22:00」という計算を行うと、Excelは単純に小さい値から大きい値を引こうとするため、結果が負の値となりエラーを表示します。そのため、「日付をまたいだ」という状況を論理的に処理する条件分岐(IF関数)が必要になるのです。

具体的な数式は以下の通りです。この数式一つで、日勤・夜勤どちらのパターンにも対応できます。

ケース: A2セルに開始時刻「22:00」、B2セルに終了時刻「7:00」が入力されている。

数式: =IF(B2<A2, B2+1-A2, B2-A2)

この数式は、「もし終了時刻(B2)が開始時刻(A2)より小さい場合は、終了時刻に1(=24時間)を足してから引き算する。そうでなければ、通常の引き算を行う」という処理をします。日勤(例: 9:00~18:00)の場合でも、この数式は正しく機能します。

Q
休憩時間が日によって違う、または複数回ある場合は?
A

従業員によって休憩の取得時間や回数が異なるなど、パターンが不規則な場合は、数式による自動計算にこだわらず、休憩時間の合計を「手入力」で管理するのが最も確実でシンプルな方法です。無理に自動化しようとすると、かえって数式が複雑化し、ミスの原因となり得ます。

休憩の取得パターンが日によって変動する場合、その全てのパターンを網羅するような万能な数式を組むことは現実的ではありません。労務管理においては、複雑な自動化による潜在的なリスクよりも、誰が見ても分かりやすく、間違いのない運用が優先されます。

推奨する管理方法は以下の通りです。

  1. 勤怠管理表に「休憩時間」という列を設けます。
  2. 従業員はその日の休憩時間の合計(例: 1時間15分なら「1:15」)を、この列に手入力します。
  3. 実労働時間を計算する際は、この手入力された休憩時間を差し引きます。(数式例: =終業時刻 - 始業時刻 - 休憩時間セル

また、入力ミスを防ぎ、手間を省くために、Excelの「入力規則」にある「リスト」機能を活用するのも有効です。「データ」タブから設定画面を開き、「元の値」の欄によくある休憩パターン(例: 0:45,1:00,1:15)を入力することで、休憩時間をドロップダウンリストから選択できるようになります。

Q
時間を「分単位」や「小数」に変換して計算するには?
A

Excelの時刻データを、給与計算などに使いやすい「小数表示の時間」(例: 8.5時間)に変換するには、元の時刻データに「24」を掛けます。また、「分単位の数値」(例: 510分)に変換したい場合は、「1440」を掛けます。

Excelが1日を「1」という数値で扱う「シリアル値」の仕組みより、「1日 = 24時間 = 1440分(=24時間×60分)」という関係が成り立つため、時刻のシリアル値に「24」を掛ければ「時間単位」に、「1440」を掛ければ「分単位」の数値に変換できるのです。

A2セルに勤務時間「8:30」が入力されている場合の具体的な計算例は以下の通りです。

目的計算式結果
時間単位の小数に変換=A2*248.5
分単位の数値に変換=A2*1440510

これらの変換を行った後であれば、時給や分給の計算が簡単に行えます。 なお、 変換後のセルは、セルの表示形式が「時刻」のままだと意図しない表示になることがあります。

その場合は、対象セルの「セルの書式設定」を開き、「表示形式」を「標準」または「数値」に変更してください。

まとめ

本記事では、事業主や労務管理者の皆様が直面する「Excelでの時間計算」について、基本的な考え方から実務的な応用テクニックまで、網羅的に解説してきました。

多くの中小企業で勤怠管理の主要ツールとして活用されているExcelですが、その機能を最大限に引き出すためには、いくつかの重要なポイントを理解しておく必要があります。

このように、Excelは関数を組み合わせることで、非常に高度で柔軟な勤怠管理ツールとなり得ます。しかし、従業員数が増えてきたり、複数の拠点で管理が必要になったり、あるいは頻繁な法改正へ迅速に対応する必要が出てきたりすると、Excelでの手作業管理には限界が見え始めます。

手入力によるミス、ファイルのバージョン管理の煩雑さ、リアルタイムでの打刻や残業状況の把握の難しさ、セキュリティ面での不安など、事業の成長と共に生まれる新たな課題がには、より高度な仕組みづくりが必要となります。

より正確で効率的な労務管理を実現するためには、専門の勤怠管理システムの導入をおすすめします。「勤怠管理システムの選定比較サイト」を利用すれば、多様なシステムを要件別に一括で比較できるため、御社にマッチした最適なシステムを楽に見つけ出せます。

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