社会保険や雇用保険の加入要件の一つとして、「所定労働時間週20時間」という要件が大きな基準となります。基本的には、雇用契約上の労働時間で判断することになりますが、実務上は以下のように判断に迷うケースがしばしば見られます。

  • 1回だけ労働時間が週20時間以上となった
  • 一時的に週の労働時間が20時間未満となった
  • 週20時間を超えることが常態化している

本記事では、社会保険や雇用保険の加入要件について、労働時間が週20時間を超えたり超えなかったりした場合(正確には20時間以上か未満か)にどう判断すべきかについて、わかりやすく解説します。

勤怠管理システムでお困りのあなたへ
・今よりも良い勤怠管理システムがあるか知りたい
・どのシステムが自社に合っているか確認したい
・システムの比較検討を効率的に進めたい

勤怠管理システムを見直したい方は、ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。

社会保険の加入要件

社会保険には、広義の社会保険と狭義の社会保険があり、広義の社会保険は狭義の社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)と労働保険(雇用保険、労働者災害補償保険)を合わせたものを指します。

本項では、狭義の社会保険、特に健康保険と厚生年金保険の加入要件について解説します。社会保険の加入要件については、2024年10月から、従業員数が51人以上の事業所において週20時間以上働く短時間労働者に対しても社会保険への加入が義務づけられることとなりました。

フルタイム及び週の所定労働時間がフルタイムの3/4以上であること

フルタイム労働者及び週の所定労働時間がフルタイムの3/4以上である労働者については、事業場の従業員規模に関わらず、基本的に社会保険への加入義務があります

なお、このあと解説する「週の所定労働時間がフルタイムの3/4未満の労働者」の加入義務が適用される「従業員数51人以上」の判定には、このフルタイム労働者と所定労働時間がフルタイムの3/4以上の労働者を合計した人数を用いることになっています。

週の所定労働時間がフルタイムの3/4未満で以下の要件をすべて満たすこと

週の所定労働時間がフルタイムの3/4未満であっても、従業員規模が51人以上(2024年9月までは101人以上)の事業場において、以下の要件をすべて満たしている労働者は、社会保険への加入義務があります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 所定内賃金が8.8万円以上であること
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
  • 学生ではないこと

この要件に該当する労働者は、主にアルバイトやパートタイム労働者であり、企業側は該当者に対する加入手続きを迅速に進める必要があります。

週の所定労働時間が20時間以上であること

週の所定労働時間が20時間以上というのは、雇用契約上の時間を指しているため、月ごとに生じる残業時間は含まれません

ただし、雇用契約上の所定労働時間が20時間に満たない場合でも、実労働時間が2ヶ月連続で20時間以上となり、以降も20時間以上となる見込みがあるときは、3ヶ月目から加入対象となります。

所定内賃金が8.8万円以上であること

所定内賃金とは、月ごとに支払われる基本給と手当を合算した賃金を指します。よって、以下の金銭は所定内賃金から除外されます。

  • 1ヶ月を超えるごとに支給される賃金(賞与等)
  • 時間外割増賃金、休日割増賃金及び深夜割増賃金
  • 最低賃金に算入しないことが定められている手当(精皆勤手当、家族手当、通勤手当等)

2ヶ月を超える雇用の見込みがあること

以前は雇用期間要件として、「1年を超える雇用期間が見込まれること」という要件が付されていましたが、2022年10月以降は1年超という期間が短縮され「2ヶ月を超える雇用期間が見込まれていること」に変更されています。

学生ではないこと

学生が加入要件から除外されているのは、一般的に学生は経済的に自立しておらず、社会保険に加入する必要がないと考えられているためです。ただし、休学中、通信制、定時制の学生は、例外として社会保険の加入対象となるため、注意が必要です。

勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい

勤怠管理システムを見直したい方は、ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。

雇用保険の加入要件

雇用保険の加入要件は以下のとおりで、基本的に雇用形態を問わず、適用除外に該当しない限りは加入させる義務があります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用の見込みがあること
  • 学生ではないこと

週の所定労働時間が20時間以上であること

週の所定労働時間が20時間以上の労働者は、雇用保険の加入対象となります。有契約労働者やパートタイム労働者であっても、雇用契約上の所定労働時間が週20時間以上であれば、加入対象となります。

なお、週20時間のカウントには、基本的に残業時間や休日労働の時間は含まれません。ただし、週20時間以上の労働が常態化しており、実態として週20時間以上の所定労働時間とみなされる場合は、加入要件を満たしていると判断されます。

31日以上の雇用の見込みがあること

従業員の雇用期間が31日以上となる見込みがある場合、雇用保険の加入が義務付けられます。「31日以上の雇用の見込み」というのは、31日以上雇用を継続しないことが明示されていない限りは該当するとされています。

たとえば、以下のようなケースの場合は、いずれも「31日以上の雇用の見込みがある」と判断されます。

  • 雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり、31日未満での雇止めの明示がないとき
  • 雇用契約に更新規定はないものの、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績があるとき

学生ではないこと

学生でない労働者は、週の所定労働時間や雇用期間の条件を満たす場合、雇用保険の加入対象となります。なお、以下に該当する場合は、学生であっても雇用保険の加入対象となります。

  • 通信制や夜間部の学生
  • 定時制高校の学生
  • 休学中
  • 卒業見込証明書を有する者で、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の者

適用除外

以下の要件に該当する場合は、労働時間や雇用期間等の要件を満たしていても、雇用保険の適用除外となります。

  • 所定労働時間が同一事業所で雇用される通常の労働者に比べて短く、30時間未満である季節労働者
  • 雇用期間が4ヶ月以内の季節労働者
  • 日雇労働者(日雇労働被保険者に該当しない者)
  • 法人の代表者及び執行役員
  • 同居の親族
  • 家事使用人

「季節労働者」とは、季節的業務に期間を定めて雇用される労働者、または季節的な要因に応じて入職・離職する労働者を指し、上記の適用除外に該当しない場合には「短期雇用特例被保険者」として、雇用保険の適用を受けます。

勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい

勤怠管理システムを見直したい方は、ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。

週20時間を超えたり超えなかったりした場合のケーススタディ

週20時間の労働時間を基準に、社会保険や雇用保険の加入が義務付けられるかどうかは重要なポイントです。実務においては、労働時間が一定しない場合や一時的に週20時間を超える状況が発生することがあります。

ここでは、労働時間が週20時間を超えたり超えなかったりする場合の具体的なケーススタディについて、それぞれの状況における対応方法を解説します。

1回だけ週20時間を超えてしまった場合は?

週20時間という要件は継続的な労働を前提としているため、1回だけ週20時間を超えただけでは、原則として社会保険や雇用保険の加入義務は発生しません

たとえば、繁忙期などで一時的に労働時間が増加し、週20時間を超えた場合でも、通常の所定労働時間が20時間未満であれば、社会保険や雇用保険の加入要件を満たさないということになります。

一時的に週20時間未満となった場合は?

一時的に週20時間未満となった場合でも、長期的に見て所定労働時間が20時間以上である場合は、社会保険および雇用保険の加入義務が継続します。継続的な雇用関係が維持されていれば、一時的な労働時間の減少は、雇用保険の被保険者資格喪失事由とはなりません

ただし、シフトの変更や配置転換などで、実態として労働時間が週20時間未満となる状況が長期継続するような場合は、契約上の所定労働時間も20時間未満であるとみなして、被保険者資格を喪失する可能性があります。

週20時間を超えることが常態化している場合は?

週20時間を超える労働が常態化している場合は、社会保険および雇用保険の加入義務が発生する場合があります。具体的には、実労働時間が2ヶ月連続で20時間以上となり、以降も20時間以上となる見込みがあるときは、3ヶ月目から加入対象となります。

たとえば、4~5月の実労働時間が20時間を超え、6月も超える見込みがあるときは、6月から加入対象となります。上記は、社会保険の要件について出されている政府見解ですが、雇用保険の場合にも同様の基準が適用されると考えておきましょう。

まとめ

週20時間の労働時間を基準にした社会保険や雇用保険の適用基準は、企業にとって非常に重要な管理事項です。特に、週20時間を一度だけ超える場合、一時的に20時間を下回る場合、あるいは20時間を超える労働が常態化している場合など、様々なケースによって保険適用の対応が異なります。

これらの複雑なケースを正確に管理して保険加入義務を果たすためには、適切な勤怠管理が不可欠です。労働時間が変動する従業員を多く抱える企業では、勤怠管理のシステムを使うことで、正確な労働時間の記録や保険適用の判断がよりスムーズに行えます。

どの勤怠管理システムが自社に最適なのかを判断するためには、機能やコストを比較検討することが重要です。「勤怠管理システムの選定・比較ナビ」をご利用いただくと、自社の社内規程運用に必要な要件を満たしている勤怠管理システムの中から、自社に最もマッチングするシステムを探し出せます。

勤怠管理システムでお困りのあなたへ
・今よりも良い勤怠管理システムがあるか知りたい
・どのシステムが自社に合っているか確認したい
・システムの比較検討を効率的に進めたい

勤怠管理システムを見直したい方は、ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。