- 「数ある製品の中から、どうやって自社に最適な一つを選び出せばいいのだろう?」
- 「各ベンダーの提案内容や見積もりを、どうすれば公平に比較できるのか…」
- 「もし高額な投資をしたあげく、導入に失敗してしまったらどうしよう…」
多くの事業者がRFPの不備によって「想定外のシステムを導入してしまった」「ベンダーとのトラブルが発生した」といった問題に直面しています。
こうしたリスクを回避するには、単にフォーマットに沿うだけでなく、現状の課題分析・目的の明確化・評価基準の設計といった上流工程での戦略的なRFP作成が鍵を握ります。
この記事では、RFPに関する基本的な定義から作成フロー、勤怠管理システムを例にした具体的な記載例までわかりやすく解説します。
勤怠管理システムの選定・比較ヨウケン

RFP(提案依頼書)とは?
RFP(Request for Proposal)とは、企業が特定の業務課題やシステム導入などのプロジェクトを進めるにあたり、外部のベンダー(開発会社やサービス提供企業)に対して、具体的な解決策の提案と、その実現に必要な費用の見積もりを依頼するための文書です。
これは、自社のソリューションに最適なパートナーを選定する上で、最も重要な初期工程と言えます。このRFPを作成する最大の目的は、客観的かつ公平な基準で複数のベンダーからの提案を比較・評価することにあります。
特に、勤怠管理のような法改正が頻繁に行われ、かつ全従業員の業務に影響するシステム開発や導入においては、RFPの重要性が一層高まります。RFPを作成する過程で、自社の就業規則や勤怠に関する現状の課題を整理し、社内で目的やゴールの認識を統一できるという副次的な効果も期待できます。
RFPの定義と目的
RFPとは「自社が抱える課題を提示し、その解決策となる具体的な提案(Proposal)を依頼(Request)する文書」です。その最大の目的は、複数のベンダーから同条件の下で提案書を提示してもらい、それらを客観的な基準で比較・評価することで、最も優れたパートナーを選定することにあります。
例えば、勤怠管理システムの導入を検討する際、各社がそれぞれの強みをアピールするだけでは、どの提案が自社にとって最適かを判断できません。RFPによって共通の前提条件を提示することで、初めて全社の提案を横並びで評価できる状態が整うのです。
具体的に、RFPの目的は以下の通り多岐にわたります。
- 自社の課題・要件の明確化: 文書に落とし込む過程で、プロジェクトの目的や必要な機能が整理される。
- ベンダーへの正確な情報伝達: 口頭での説明による「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、要求事項を正確に伝える。
- 提案の公平な比較・評価: 全ベンダーが同じ土俵で競争するため、選定プロセスの透明性と公平性が担保される。
- プロジェクト開始後のトラブル防止: 要件や業務の範囲が明確になるため、後からの仕様追加や認識のズレによる問題の発生を抑制する。
- 契約内容の基礎資料: RFPとそれに対する提案書は、契約を締結する際の基礎資料として活用できる。
RFPはベンダー選定という目的を達成するための手段であると同時に、プロジェクト全体の品質と成功可能性を高めるための重要なプロセスです。丁寧なRFPの作成が、結果的に時間と予算の浪費を防ぐことに繋がります。
RFPとRFIとの違い
RFP(提案依頼書)とRFI(情報提供依頼書)の最も大きな違いは、その目的と実施するタイミングです。RFIが「ベンダーの情報を広く集め、候補を絞り込む」ために使われるのに対し、RFPは「絞り込んだ候補から具体的な提案と見積もりを得る」ために使われます。
この二段階のアプローチが採用される理由は、効率性にあります。市場には無数のベンダーが存在するため、いきなり多くの企業に詳細な提案作成を依頼するのは、双方にとって膨大な手間とコストがかかります。
そこで、まずRFIで各社の基礎情報を集めて候補を絞り込み、そのベンダーに対してのみ詳細なRFPを送付する、という段階的な選考プロセスが採用されるのです。
RFPとRFI、さらによく似た文書であるRFQ(見積依頼書)の違いを以下の表にまとめます。
項目 | RFP(提案依頼書) | RFI(情報提供依頼書) | RFQ(見積依頼書) |
---|---|---|---|
正式名称 | Request for Proposal | Request for Information | Request for Quotation |
目的 | 具体的な提案と見積もりの入手、ベンダーの決定 | 企業情報の収集、技術や実績の調査、候補の絞り込み | 製品やサービスの価格見積もりの入手 |
依頼先 | 絞り込まれた複数の候補ベンダー(3〜5社程度) | 可能性のある幅広い企業(10社以上も) | 要件を満たす製品・サービスを提供できる企業 |
依頼内容 | 課題解決のための具体的な提案、開発体制、スケジュール | 企業概要、財務状況、実績、技術情報、ソリューションの概要 | 製品の型番、数量、希望納期など、価格算出に必要な条件 |
提出物 | 提案書、見積書 | 企業情報資料、実績一覧 | 見積書 |
実施フェーズ | ベンダー選定の中盤〜終盤 | ベンダー選定の初期段階 | 購入するモノが明確に決定している段階 |
このように、RFIとRFPは目的が明確に異なる、ベンダー選定プロセスの連続したステップです。RFIで広く情報を集めてからRFPで深く提案を求めるという流れを理解し、適切に使い分けることが、効率的でミスのないパートナー選びの鍵となります。
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RFPの書き方|基本構成と押さえるべき手順
効果的なRFP(提案依頼書)の書き方とは、単にテンプレートを埋める作業ではなく、RFPという文書を作成するずっと以前から始まる、体系的な手順そのものを指します。成功するRFPは、自社の現状分析、課題の定義、そして具体的な要件の整理といった、徹底した社内準備プロセスの結果生まれます。
この手順が文書の形式以上に重要である理由は、RFPの本来の目的が「ビジネス課題の解決」にあるためです。もし、その課題が曖昧なままRFPが作成されれば、どんなに優秀なベンダーも的を射た提案をすることはできません。
プロジェクト初期の要件定義の不備は、後の工程で修正する際に最も大きなコストと時間を要するトラブルの原因となります。RFP作成に至るまでの基本的な手順は、以下のとおりです。
- 現状と課題の洗い出し: 現在の業務フローを可視化し、問題点を具体的に特定します。
- 現場・部署へのヒアリング: 実際にシステムを利用する従業員や関連部署から、ニーズや要望を吸い上げます。
- 要件の整理と優先順位付け: 集めた要望を「必須」「できれば欲しい」などに分類し、プロジェクトの範囲を明確にします。
- ベンダーの選定準備: 市場調査を行い、依頼する候補となるベンダーをリストアップします。
- RFPの作成: 上記のプロセスで得られた全ての情報を、論理的で分かりやすい文書にまとめ上げます。
現状と課題の洗い出し
RFP作成の第一歩は、自社の現在の業務プロセス(現状)を客観的に分析・可視化し、今回のプロジェクトで何を解決したいのか(課題)を具体的かつ明確に定義することです。
「正しく問題を理解しなければ、正しい解決策は見つからない」ため、このプロセスは不可欠です。「業務を効率化したい」といった漠然とした目的だけでは、ベンダーは何を提案すべきか分かりません。
例えば、勤怠管理システムの導入を検討する際の「現状と課題」は、以下のように具体的に記述します。
項目 | 具体例 |
---|---|
現状の業務フロー | ・毎月、各部署からタイムカードを回収し、人事担当者がExcelに手作業で転記している。 ・残業や休暇の申請は、紙の申請書を上長に手渡しで提出・承認している。 |
具体的な課題 | ・コストの課題: Excelへの転記作業に、毎月20時間以上の工数が発生している。 ・コンプライアンスの課題: 月末まで残業時間が確定せず、リアルタイムでの実態把握が困難。 ・業務効率の課題:申請・承認プロセスに時間がかかり、テレワークなどの柔軟な働き方に対応できない。 |
このように、詳細かつ客観的な現状分析と課題の定義は、RFPの根幹をなす土台です。ここで明確にした課題が、後に続く要件定義やベンダー評価の全ての基準となります。
現場・部署へのヒアリング
現状と課題の骨子が見えたら、次に行うべきは、新しいシステムや業務プロセスの影響を受ける全ての関連部署や、実際にそれを利用する現場の従業員に対して、徹底したヒアリング(意見聴取)を実施することです。
プロジェクト担当者や経営層の視点だけでは、現場の細かなニーズや実務上の問題点を見落としてしまう危険性が高いため、ヒアリングは不可欠です。
多様な立場の関係者から意見を吸い上げることで、企業全体の利益に繋がるソリューションを検討でき、プロジェクトに対する関係者の当事者意識を高める効果も期待できます。勤怠管理システムの導入を例に、ヒアリングすべき対象者と質問項目の例を以下に示します。
ヒアリング対象 | ヒアリング項目の例 |
---|---|
一般従業員 | ・現在の打刻方法の不満点(打刻忘れ、修正の手間など) ・休暇申請や残業申請の手順で面倒なこと |
現場管理者(部長・課長) | ・部下の勤務状況の確認方法と課題 ・シフト作成や管理のプロセス、承認ワークフローの要望 |
経理・人事部門 | ・給与計算ソフトとの連携要件 ・労働基準監督署への報告に必要なデータ項目 |
経営層 | ・人件費のリアルタイムな可視化 ・プロジェクト別や部門別の工数管理のニーズ |
体系的なヒアリングは、洗い出した課題を「具体的で漏れのない要件リスト」へと昇華させるための有効な方法です。このステップを丁寧に行うことで、選定するシステムが企業全体にとってより価値あるものになることが期待できます。
ベンダーの選定
ここで言う「ベンダーの選定」とは、最終的な1社を決定することではなく、RFPを送付するのにふさわしい、自社のプロジェクトを任せる候補となる数社(通常3〜5社)へと段階的に絞り込んでいくプロセスを指します。
この段階的な絞り込みを行う理由は、効率性と公平性にあります。市場に存在する無数のベンダー全てに詳細な提案を依頼するのは非現実的なため、段階的に候補を絞り込む「選考のファネル(漏斗)」構造を用いるのが有効な手段となります。
RFP送付前のベンダー選定(候補の絞り込み)プロセスは、一般的に以下の流れで進められます。
- ロングリストの作成: インターネット検索や業界の展示会などを通じて、10〜15社程度の潜在的な候補をリストアップします。
- 情報収集とRFIの実施(任意): 各社のWebサイトで実績や製品の概要を確認します。必要であればRFIを送付し、企業の安定性や技術力などの基本情報を収集します。
- ショートリストの作成: 収集した情報に基づき、自社の企業規模や課題の方向性に合致すると判断される3〜5社の候補を決定します。このショートリストがRFPの送付対象となります。
RFPの作成
準備プロセスの最終ステップが、実際にRFPの文書を作成する作業です。洗い出した課題、プロジェクトの目的、そして現場から吸い上げた詳細な要件といった、集めた全ての情報を、一つの論理的で包括的な文書に集約します。
RFPという文書は、プロジェクトに関するあらゆる情報の「唯一の公式な情報源」として、全ての候補ベンダーに共有されるものです。その記述が明確であればあるほど、ベンダーは自社の課題を正確に理解し、より的確なソリューションを提案できます。
一般的に、RFPには以下の「基本構成」要素を記載します。これらの項目を網羅することで、ベンダーが提案を行う上で必要な情報を提供できます。
- プロジェクト概要: プロジェクトの名称、背景、目指す姿を簡潔に説明します。
- 自社の現状と課題: 分析した現状の業務フローと、それによって生じている具体的な問題点を記載します。
- プロジェクトの目的とゴール: 課題を解決した結果、どのような状態になりたいのか、定性的・定量的なゴールを提示します。
- 要求事項(要件):
- 機能要件: 「何をしてもらいたいか」(例:ICカードで打刻できること)。
- 非機能要件: 品質や性能に関する要件(例:セキュリティ、レスポンス時間)。
- 提案依頼の範囲と内容: ベンダーに提案してほしい作業範囲(開発、導入支援など)を明確にします。
- 予算とスケジュール: 想定している予算規模と、希望する納期やプロジェクト全体のスケジュールを提示します。
- 選定プロセスと評価基準: 今後の選定の流れと、どのような基準で提案を評価するかを明示します。
- 契約条件・保守運用: 契約に関する基本条件や、導入後の保守・サポート体制への要望を記載します。
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RFPに盛り込むべき具体的な内容と記載例:勤怠管理システムの場合
この章では、勤怠管理システム導入を例にとって、具体的なRFPの記載項目と記載例を解説していきます。
システム導入を成功させるRFP(提案依頼書)には、単に欲しい機能を羅列するだけでなく、「プロジェクトの背景」「詳細な要件」「予算とスケジュール」「評価基準」といった、ベンダーが正確な提案を行うために不可欠な項目を、構造的に記載する必要があります。
これらの情報を網羅的に記載する理由は、ベンダーに「推測」させる余地をなくし、提案の精度を最大限に高めるためです。ベンダーが自社の状況を正確に理解し、同じ情報に基づいて検討できる環境を整えることが、公正な選定プロセスの根拠となります。
- 我々の現状と目指す姿(プロジェクト概要・目的・背景): なぜこのプロジェクトが必要なのか。
- 実現したいことの詳細(機能要件・非機能要件): 新しいシステムで具体的に何をしたいのか。
- 我々の基本情報と体制(自社情報・現状運用): どのような環境で、誰がプロジェクトを進めるのか。
- 守るべき制約(予算・スケジュール・契約条件): どのような条件の下でプロジェクトを進めたいのか。
- パートナー選定のルール(評価基準・選定方法): どのような基準で提案を評価し、どうやって決定するのか。
これらの具体的な項目一つひとつに時間をかけて情報を整理し、丁寧に記載することが極めて重要です。詳細で透明性の高いRFPは、真剣なベンダーからの質の高い提案を引き出し、プロジェクトを成功へと導く第一歩となります。
プロジェクト概要・目的・背景
RFPの冒頭では、「何のプロジェクトか(概要)」「なぜそれが必要なのか(背景)」「それによって何を実現したいのか(目的)」という、プロジェクトの全体像を簡潔かつ明確に記載します。
プロジェクトの背景や目的を共有することで、ベンダーは単なる製品のスペック紹介に留まらない、より戦略的で自社の課題解決に踏み込んだ提案をすることが可能になります。以下に、勤怠管理システム導入RFPにおける記載例を示します。
- プロジェクト名称: 働き方改革推進に向けた次世代勤怠管理システム導入プロジェクト
- 背景:
- 2019年4月施行の働き方改革関連法により、労働時間の客観的把握が全企業に義務化された。
- 近年のテレワーク導入拡大に伴い、従来の紙ベースの勤怠管理では、多様な勤務形態の正確な管理が困難になっている。
- 目的:
- 全従業員の労働時間を客観的かつ正確に把握し、コンプライアンス体制を徹底する。
- 勤怠データの集計および給与計算ソフトとの連携を自動化し、人事部門の関連業務を月20時間削減する。
- テレワーク、フレックスタイム、時短勤務など、多様な働き方に柔軟に対応可能な勤怠管理基盤を構築する。
このように、この冒頭のセクションでプロジェクトに込められたストーリーを伝えることで、単なる発注先と受注先という関係を超えた、真のパートナーシップの土台を築くことができます。
機能要件・非機能要件
RFPの核心部分であるこのセクションでは、「システムが何をすべきか」を定義する機能要件と、「システムがどのような品質・性能であるべきか」を定義する非機能要件を、明確に区別して詳細に記載することが求められます。
この2つを区別することは、システム開発における国際的な標準手法です。機能要件がビジネス上の要求を満たすことを保証する一方、非機能要件はシステムの安定性、安全性、使いやすさを担保します。
非機能要件の定義を怠ることは、プロジェクト失敗の典型的な原因の一つであり、これを防ぐために両面の要件を定義する必要があります。
要件を伝える際は、単に文章で羅列するのではなく、以下のような一覧表形式で整理し、ベンダーに「〇(標準機能で対応可)」「△(カスタマイズで対応可)」「×(対応不可)」といった形で回答を求めると、後の比較・評価が格段に容易になります。
要件種別 | 項目例 | 具体的な要件内容 |
---|---|---|
機能要件 | 打刻機能 | PC、スマートフォン(GPS情報取得)、ICカードなど、複数の打刻方法に対応すること。 |
申請・承認機能 | 残業、休暇、休日出勤など、各種申請の承認ワークフローを柔軟に設定できること。 | |
データ連携 | 現在利用中の給与計算ソフト「●●」と、CSVファイルでデータ連携ができること。 | |
非機能要件 | 可用性 | システムの年間稼働率は99.9%以上を保証すること。 |
性能 | 打刻処理、申請処理などの主要操作は、3秒以内に画面表示が完了すること。 | |
セキュリティ | 個人情報を保護するため、IPアドレスによるアクセス制限や二要素認証に対応すること。 |
このように、機能要件と非機能要件の両面から、詳細かつ構造化された要件リストを作成することが、最終的に導入される製品が自社のあらゆるニーズを満たすことを保証するための、最も重要な作業となります。
予算・スケジュール・契約条件
このセクションでは、プロジェクトを遂行する上での重要な制約条件である、「予算規模」「希望するスケジュールと主要なマイルストーン」「契約に関する主要な条件」を、透明性を持って明確に記載します。
これらの制約条件をRFPの段階で開示することは、自社とベンダー双方の時間を節約し、無駄な作業をなくすことに直結します。予算を明かせば、ベンダーはその範囲内で実現可能な最善のソリューションを提案してくれますし、スケジュールを明示することで納期に対する認識を合わせることができます。
- 予算の記載例: 「本プロジェクトの予算は、初期導入費用と初年度の運用・保守費用を含め、XXX円(税抜)を上限としています。」
- スケジュールの記載例:
- RFP提出期限:2025年8月29日
- ベンダーによるプレゼンテーション:2025年9月中旬
- 最終ベンダー決定・通知:2025年9月下旬
- 契約締結:2025年10月上旬
- システム導入・稼働開始:2026年1月1日
- 契約条件の記載例:
- 業務委託契約の形態を想定していること
- 知的財産権の帰属に関する基本的な考え方
- 再委託の可否(原則として禁止する、など)
- 検収の方法と条件
予算、スケジュール、契約条件といったプロジェクトの制約を正直に開示することは、ベンダーの労力に敬意を払うプロフェッショナルな行為であり、より現実的で質の高い提案が集まる円滑なプロジェクト遂行に繋がります。
自社情報・現状運用や体制
このセクションでは、ベンダーが提案を具体的に検討するために必要な、自社に関する情報(会社概要、現状の運用状況、プロジェクト推進体制)を提供します。
ベンダーは、提案するソリューションがどのような環境に導入されるのかを理解しなければ、プロジェクトの複雑性やリスクを正確に見積もることができません。
自社のプロジェクト体制(誰が責任者で、誰が実務の窓口か)が明確であれば、ベンダーは円滑なコミュニケーションを想定でき、より精度の高い体制や工数を提案に盛り込めます。
記載すべき情報の主な項目は以下の通りです。
- 自社情報:
- 会社名、所在地、事業内容
- 従業員数(正社員、契約社員、パート・アルバイトの内訳)
- 勤怠管理の対象となる拠点数とそれぞれの所在地
- 現状の運用状況:
- 現行の勤怠管理方法: タイムカード、Excel、他社システムなど
- 関連システム: 利用中の給与計算ソフトの名称、人事管理システムの有無
- ITインフラ環境: サーバーの運用形態(オンプレミス or クラウド)、社内ネットワークの概要
- プロジェクト推進体制:
- プロジェクト全体の責任者(役職・氏名)
- ベンダーとの主担当窓口(所属部署・氏名・連絡先)
- 主要な関係部署(人事部、情報システム部、経理部など)
評価基準・選定方法
公正性と透明性を担保するため、RFPには「どのような基準で提案を評価するのか(評価基準)」と、「どのようなプロセスで最終的に1社を決定するのか(選定方法)」を、あらかじめ明確に記載します。
評価基準を事前に開示することで、ベンダーは自社が何を重視しているのかを理解し、評価項目に沿った提案を作成できます。また、選定プロセスが客観的な基準に基づいて行われたことを内外に示すことにもなり、ベンダーとの信頼関係を構築する上で極めて重要です。
- 評価基準の記載例: 配点を明記することで、自社の優先順位をより明確に伝えられます。
- 機能要件 | 40点 | 要求機能の充足度、操作性の高さ、将来の拡張性
- 費用 | 30点 | 初期導入費用、月額運用費、カスタマイズ費用の妥当性
- 実績・信頼性 | 15点 | 同業種・同規模企業での導入実績、企業の安定性
- 保守・サポート | 15点 | サポート体制の充実度、障害発生時の対応速度 |
- 選定方法の記載例:
- 一次評価(書類選考): 提出された提案書・見積書を基に、評価基準に沿って採点し、上位3社を選出します。
- 二次評価(プレゼンテーション): 一次評価を通過したベンダーに、提案内容のプレゼンテーションおよびシステムのデモンストレーションを実施していただきます。
- 最終選考: 二次評価の結果を基に、最も優れた提案を行った1社を最終候補とし、契約に向けた詳細な条件交渉を行います。
- ベンダー決定・契約締結
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RFPの書き方についてよくある質問
RFPの書き方について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
- QRFP提出後に要件の変更・追加をしてもよい?
- A
RFP提出後における要件の変更や追加は、プロジェクトの公平性と進行を著しく妨げるため、原則として「行うべきではない」と考えておきましょう。
万が一、やむを得ず変更が必要な場合は、全ての候補ベンダーに対して、公平かつ迅速に情報を共有し、提案の修正期間を設けるなど、厳格な手続きを踏む必要があります。
RFPは、全てのベンダーが同じルールと条件の下で競争するための「公式なルールブック」であり、そのルールを後から変更することは、選定プロセス全体の信頼性を損ないます。
また、要件の変更は、ベンダーの作業に手戻りを発生させ、スケジュールの遅延や追加費用の発生、ひいてはベンダーとの信頼関係の損失という深刻なトラブルに直結します。どうしても要件を変更せざるを得ない状況に陥った場合は、以下の手順を守りましょう。
- 影響範囲の確認: まず社内で、その要件変更がスケジュール、予算、他の要件にどのような影響を与えるかを慎重に評価します。
- 全候補ベンダーへの同時通知: 変更の内容、理由、そして影響について、記録に残る文書の形で全候補ベンダーに同時に通知します。
- 質疑応答と修正期間の設定: 変更点に関する質問を受け付ける期間と、提案書を公平に修正するための十分な期間を新たに設けます。
- 場合によってはプロセスの仕切り直し: プロジェクトの根幹を揺るがすような重大な変更の場合は、現在のRFPプロセス自体を一度中止し、要件を再整理した上で、改めてRFPを提出し直すという判断も視野に入れるべきです。
- QRFPの目的やゴールを記載する際の注意点は?
- A
RFPにプロジェクトの目的やゴールを記載する際の重要な注意点は、国際的な目標設定のフレームワークである「SMART」の原則を意識し、「何を」「なぜ」「いつまでに」「どのレベルまで」達成したいのかを、誰が読んでも具体的かつ客観的に理解できるように記述することです。
目的やゴールが曖昧なRFPは、ベンダーからの提案も同様に曖昧なものにします。目的が具体的であればあるほど、ベンダーはその達成に向けた最適なソリューションを提案しやすくなります。
また、明確なゴールは、プロジェクト完了後にその成果を評価するための客観的な「ものさし」となり、投資対効果を測定する上での重要な根拠ともなります。
まとめ:最適な勤怠管理システムの導入を成功させるために
本記事では、勤怠管理システムの導入を成功に導くための「RFP(提案依頼書)」について、その役割から具体的な作成手順、記載すべき内容に至るまでを網羅的に解説してきました。
重要なポイントは、RFPが単なる「見積もり依頼書」ではなく、自社の課題を明確化し、複数のベンダーから質の高い提案を公平に比較・評価するための戦略的な文書であるという点です。
RFPに記載すべき具体的な内容としては、「プロジェクトの目的・背景」でベンダーの共感と理解を促し、「機能要件・非機能要件」でシステムの仕様を過不足なく伝えることが核心となります。
特に、要件は「SMART」の原則を意識し、誰が読んでも解釈にズレが生じないよう、具体的かつ測定可能な形で記述することが肝要です。さらに、「予算・スケジュール」や「評価基準」といった制約条件や選定ルールを事前に開示することで、プロセスの透明性と公平性を担保し、ベンダーとの信頼関係を築くことができます。
ここまでRFPの作成方法について詳しく解説してきましたが、「そもそも、どのような勤怠管理システムやベンダーが存在するのか知りたい」「自社の要件に合いそうな製品を効率的に比較検討したい」とお考えの担当者様も多いのではないでしょうか。
RFP作成と並行して市場の製品をリサーチすることは、より現実的で質の高い要件定義に繋がります。各社の特徴や料金プランを手軽に比較し、自社に最適なシステム選定の第一歩を踏み出すためには、「勤怠管理システムの選定・比較ヨウケン」の利用がおすすめです。
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