一定規模の事業場においては、その安全・衛生に関する業務を統括管理する者として「総括安全衛生管理者」を選任しなければなりません。この総括安全衛生管理者は、具体的にどんな業務を行うのでしょうか?また、安全管理者や衛生管理者とは、どう違うのでしょうか?
この記事では、総括安全衛生管理者の選任要件や業務内容などについて、わかりやすく解説します。
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総括安全衛生管理者とは
総括安全衛生管理者とは、労働安全衛生法(以下「安衛法」)において、事業場の労働者数に応じて選任が義務付けられている、安全または衛生に関する管理者の一つです。
主な役割としては、安全管理者および衛生管理者の指揮、労働者の危険・健康障害防止のための措置を統括管理すること、などがあります。
総括安全衛生管理者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告しなければなりません。
総括安全衛生管理者の選任要件
総括安全衛生管理者の選任要件は、業種と事業場規模により、以下のとおり定められています。
業種 | 事業場規模(常時使用する労働者数) |
---|---|
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 | 100人以上 |
製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 | 300人以上 |
その他の業種 | 1,000人以上 |
なお、常時使用する労働者数に管理監督者は含めますが、役員や派遣労働者は含めない点に注意しましょう。また、出向者は出向先にてカウントします。
総括安全衛生管理者の業務内容
総括安全衛生管理者は、安全管理者・衛生管理者などを指揮するとともに、次の業務を統括管理します。
- 労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
- 労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること
- 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
- 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
- その他労働災害を防止するため必要な業務(安全衛生に関する方針の表明、危険性又は有害性等に調査及びその結果に基づき講ずる措置、安全衛生計画の作成、実施、評価及び改善)に関すること
選任基準としては、当該事業場において、その事業の実施を実質的統括管理する権限及び責任を有する者(工場長など)を選任することとされており、特に資格などは必要とされていません。
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総括安全衛生管理者と安全管理者や衛生管理者の違いとは?
安全管理者、衛生管理者は、それぞれ事業場における安全、衛生についての個別具体的な業務を担い、総括安全衛生管理者はこれらを指揮するマネージャー的役割を担う、という関係にあります。
安全管理者とは
安全管理者とは、事業場で働くすべての労働者が安心して働けるよう、職場環境の安全管理を担当する管理者のことです。技術的要件を管理、整備し、自社設備や危険防止設備の点検などをおこないます。
安全管理者の選任要件
安全管理者は、すべての業種で選任が義務付けられているわけではなく、統括安全衛生管理者の選任が必要な事業場のうち、「その他の業種」以外の業種であって、従業員規模50人以上の事業場に選任義務があります。
業種 | 事業場規模(常時使用する労働者数) |
---|---|
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 | 50人以上 |
建設業など特定の業種であって従業員規模が一定以上の事業場では、安全管理者のうち1人は必ず専任としなければなりません。安全管理者として選任できる資格要件は以下のいずれかです。
- 厚生労働大臣の定める研修を修了した者で、一定の学歴及び産業安全に関する実務経験を有する者
- 労働安全コンサルタント
安全管理者の業務内容
- 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
- 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備
- 作業の安全についての教育及び訓練
- 発生した災害原因の調査及び対策の検討
- 消防及び避難の訓練
- 作業主任者その他安全に関する補助者の監督
- 安全に関する資料の作成、収集及び重要事項の記録
- その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行なわれる場合における安全に関し、必要な措置
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衛生管理者とは
衛生管理者とは、事業場で働く人の健康障害や労働災害防止のために、衛生に関する技術的事項を管理する者のことです。
衛生管理者の選任要件
安全管理者と異なり、業種にかかわらず、常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任が必要です。また、事業場規模によって、選任すべき衛生管理者の数が以下のとおり定められています。
事業場規模(常時使用する労働者数) | 衛生管理者の数 |
---|---|
50人~200人 | 1人 |
201人~500人 | 2人 |
501人~1,000人 | 3人 |
1,001人~2,000人 | 4人 |
2,001人~3,000人 | 5人 |
3,001人以上 | 6人 |
事業場規模が1,000人を超える事業場、または一定の要件に該当する事業場では、衛生管理者のうち1人は必ず専任としなければなりません。また、衛生管理者として選任できる資格要件は、業種によって以下のとおり定められています。
業種 | 免許等保有者 |
---|---|
農林水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 | 第一種衛生管理者免許もしくは衛生工学衛生管理者免許を有する者または医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど |
その他の業種 | 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許もしくは衛生工学衛生管理者免許を有する者または医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど |
衛生管理者の業務内容
衛生管理者は、以下の業務に加え、少なくとも毎週1回作業場を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときに、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
- 健康に異常のある者の発見及び処置
- 作業環境の衛生上の調査
- 作業条件や施設など衛生環境の改善
- 労働衛生保護具や救急用具等の点検及び整備
- 衛生教育や健康相談などその他労働者の健康保持に必要な事項
- 労働者の負傷及び疾病によって死亡や欠勤、移動した労働者の統計を作成
- 自社の従業員が他の事業の労働者と共同で作業する際に衛生教育や措置を実施
- 衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等
統括安全衛生責任者とは
統括安全衛生責任者とは、建設業と造船業において、下請などの関係請負人が一定数以上いる場合、元請け(「特定元方事業者」と呼びます)が選任しなければならない、安全衛生に関する責任者のことです。
工事の種類によって、統括安全衛生責任者を選任しなければならない労働者数が決まっています。上記の業種以外はあまり関係がありませんが、名称が非常にややこしいので、混同しないよう注意しましょう。
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総括安全衛生管理者についてよくある質問
総括安全衛生管理者について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
- Q総括安全衛生管理者と安全管理者、衛生管理者は兼務できる?
- Q総括安全衛生管理者の選任をしないとどうなる?
安全衛生管理体制を整えて、快適な職場づくりを
安全衛生に関する管理者の選任は、業種や従業員規模によって明確に定められています。労働者の安全確保や事業場内の労働環境を保つためにも、必ず選出しなければなりません。管理職に丸投げせず、事業主主導で管理者専任を進める姿勢が求められます。
また、長時間労働是正やワークライフバランスを推進し、快適な労働環境を整備するためには、勤怠管理システムの導入が欠かせません。常に最新の勤怠状況が反映され、過重労働に陥りがちな従業員も、いち早く検知して適切な対処が可能です。
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