休職とは、主に「従業員の自己都合により、長期に渡って労働を免除される、つまり会社を休む」ことを指します。似た言葉の「休業」と違って、法律上の定めがないため、そのルールや運用は会社が独自に定めることができます。
この記事では、休職の定義や事例、受け取れる手当などについて、わかりやすく解説します。
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休職とは
休職とは、私傷病(業務外での病気やケガ)や留学、公職に就くなどの自己都合により、会社に在籍したまま、長期の休暇を取得することを指します。
本来は、「引き続き業務を行わせることが不適当である」と判断した従業員に対して、会社が業務停止を命じるという意味がありますが、実際には従業員からの申し出に対して会社が承諾するという形が一般的です。
休職の定義
休職は、長期に渡って業務に就くことが困難な状況にある従業員に対して、会社に在籍しながら一定期間の休暇を与える制度です。
休職には「解雇猶予」という側面もあり、会社にとっては復職の道を残しておくことで優秀な人材を手放さなくて済むというメリットがあります。一方で従業員にとっても、会社に籍をおいたままで長期の休暇が取得できるメリットがあります。
休職については、労働基準法などに定めがないため、会社ごとに取得要件や期間、運用などを定める必要があります。休職中の給与に関しては、無給であるのが一般的ですが、会社の利益に資するような理由による休職に対しては、手当を支給する場合もあります。
また、健康保険の被保険者である従業員が私傷病により休職する場合は、一定要件のもと傷病手当金が支給されます。
休職と休業との違いは?
休業とは、会社都合や労働災害、出産・育児などの自己都合により業務に就けない従業員が、会社を休むことを指します。
休業の場合の「自己都合」とは、産前産後休業、育児休業、介護休業など労働基準法や育児・介護休業法などの法律によって規定されているものを指します。よって、これらの休業の申し出が従業員からあった場合は、事業主は必ず取得させる必要があります。
また、これらの休業の場合は、健康保険や雇用保険から休業の種類に応じた手当金や給付金が支給されることになっています。
業務災害による休業の場合は、会社は休業を余儀なくされた従業員に対して、平均賃金の60%に相当する「休業補償」を支払わなくてはなりません。
(療養補償)
労働基準法第75条・第76条|法令検索 e-Gov
第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。(2項略)
(休業補償)
第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。(2項以下略)
また、業績悪化や設備不良など会社都合による休業の場合は、会社は休業を命じた従業員に対して、平均賃金の60%に相当する「休業手当」を支払わなくてはなりません。
(休業手当)
労働基準法第26条|法令検索 e-Gov
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
以下で、簡単に両者の違いをまとめました。
休職 | 休業 | |
---|---|---|
法律の規定 | なし | 労働基準法、育児・介護休業法など |
理由 | 業務外の傷病、留学、公職就任など | 会社都合、自己都合(出産、育児、介護)、業務災害 |
給与の有無 | 原則無給 | 原則無給だが、休業手当、休業補償の可能性あり |
公的保障 | 私傷病の場合は傷病手当金 | 出産手当金、育児休業給付金、労災補償など |
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休職の種類
休職制度は、会社ごとに種類が異なりますが、以下で典型的な休職の種類をいくつかご紹介します。
私傷病休職
持病を発症したり、旅行中にケガをしたりなど、業務と因果関係のない理由による傷病は「私傷病」と呼ばれます。私傷病により就業が困難となり、療養のために長期の休暇が必要となった場合に利用されるのが「私傷病休職(私傷病休暇)」です。
私傷病休暇の場合は、会社からの給与は無給であるのが原則である代わりに、健康保険から傷病手当金が支給される場合があります。
また、要件や運用については、以下のような点に留意しながら、就業規則等に規定しておく必要があります。
- 原因となった症状を証明できる、医師の診断書等を提出させる
- 休職期間としてどのくらいまで認めるか
- 復職の判断基準やリハビリ勤務などの規定
- 期間満了時に復職できない場合の自然退職の規定
留学休職
語学や専門スキルの習得といったキャリア形成のために、海外に留学する際に利用されるのが「留学休職」です。
留学先で身につけた国際感覚や語学力、スキルなどが会社の利益に資する場合のもあるため、積極的に認めている会社も少なくありません。
なお、会社が業務の一環として留学や海外研修を命じた場合は、当然自己都合による休職には当たらないため、留学費用を全額負担したうえで相応の賃金を支払う必要があります。
公職就任休職
従業員が地方議員や国会議員などに立候補して当選した場合には、公職遂行のため会社での就業が困難となることが考えられます。その場合に利用されるのが「公職就任休職」です。
労働基準法では、労働者に「公民権の行使」を保障しています。そして、この公民権には公職選挙法の選挙権つまり投票行動のみならず、被選挙権つまり立候補して公職に就任する権利も含まれるとされています。
(公民権行使の保障)
労働基準法第7条|法令検索 e-Gov
第七条 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
また、裁判員制度により裁判員に選任された場合も、公職就任休職の対象となりますが、守秘義務との関係もあるため、他の従業員への周知・説明は慎重に行うようにしましょう。
起訴休職
従業員が刑事事件の被告人として起訴された場合に、判決確定までの一定期間休職を命じるのが「起訴休職」です。
ただし、起訴されたことのみを以て「起訴休職」扱いとすることは認められておらず。以下のいずれかの要件が必要とされています。
- 従業員の出勤により、企業の対外的信用が失墜するおそれがある
- 従業員の出勤により、企業の対内的な職場秩序が乱れるおそれがある
- 出頭や勾留による不安定な労務提供に対処して、業務に支障が生じる
組合専従休職
従業員が労働組合の役員に就任し、業務に専念するために利用されるのが「組合専従休職」です。労働組合の組合業務は、勤務時間外に行われるのが一般的ですが、大規模な労働組合の場合は、専従の組合員を配置することがあります。
なお、組合専従者に対して会社が給与を支払うことは、労働組合の切り崩しを意図した不当労働行為に当たるとされ、認められていないため注意が必要です。
事故欠勤休職
従業員が刑事事件への関与により逮捕・拘留され、長期欠勤する場合に適用されるのが「事故欠勤休職」です。この場合の「事故」とは、病気やケガ以外のアクシデントを指します。
自己都合休職
上記のいずれにも該当しない、自己都合による休職は「自己都合休職」と呼ばれます。主に、災害復興支援や社会福祉施設での奉仕活動など、ボランティア活動によるものが一般的です。
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傷病手当金とは
「私傷病休職」をする従業員が、健康保険の被保険者である場合には、一定の要件により傷病手当金が支給されます。
具体的には、私傷病による就業不能が連続3日以上続いた場合に、休職4日目から支給され、要件となる最初の3日間を「待機期間」と呼びます。支給額は以下のとおりです。
標準報酬日額 × 2/3 × 休業した日数(待機期間除く)
なお、「標準報酬日額」とは、「直近12カ月の標準報酬月額(社会保険料の算定基礎となる金額)を平均した額を30で割った額」のことです。
支給期間は、同一の傷病について「支給を開始した日から通算して1年6ヵ月まで」となっています。因みに、従来は「支給を開始した日から最長で1年6ヵ月間」でしたが、令和4年1月1日より、「通算して」と改正されました。
休職制度運用は勤怠管理システムで
休職制度は、法に規定がないため会社によってさまざまな制度やルール設定が考えられます。休職理由により期間や給与の有無なども変える必要があり、柔軟な運用が求められます。
勤怠管理システムを導入することで、制度設計に応じて柔軟に勤怠管理ができ、休職中の従業員も負担の少ないコミュニティツールとして活用できます。
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