• 「出産手当金の計算方法、毎回これで合っているだろうか…?」
  • 「従業員から、出産手当金とは何か、いつ頃、いくらくらい支給されるのかと質問されたけれど、的確に答えられただろうか…?」
  • 「申請書の会社記入欄、どこまでが会社の責任で、どんな点に注意して証明すればいいのだろう…?」
  • 「産休中の社会保険料の免除手続き、忘れずに対応できているかな…?」

こんなお悩みや不安を感じたことはありませんか?

出産手当金は、産休を取得する従業員の生活を支える大切な制度です。しかし、その支給要件や支給期間の考え方、支給額の計算(特に標準報酬 月額の扱い)、そして煩雑な申請 手続きなど、正確に理解し、適切に運用するには専門的な知識が求められます。

万が一、誤った情報提供や手続きの遅延があれば、従業員の不利益に繋がりかねず、企業への信頼を損なう可能性も否定できません。

本記事では、「出産手当金とは何か?」という基本的な定義から、混同しやすい「出産育児一時金」との違い、支給要件や支給期間の考え方、具体的な支給額の計算方法から申請の流れまで、ステップごとに分かりやすく解説します。

また、出産手当金について、労務管理の現場でよく聞かれる質問にもQ&A形式でお答えしています。是非参考にしてみてください。

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出産手当金とは

出産手当金とは、健康保険の被保険者である従業員が、出産のために会社を休み、その期間中に給与(賃金)の全部または一部が支払われない場合に、生活を保障するために支給される手当です。

これは、従業員が安心して産休を取得し、母体の回復に専念できるようにするための重要な制度であり、事業主や労務管理者にとっては、この制度を正しく理解し、適切な対応をすることが、従業員のエンゲージメント向上や円滑な労務管理に繋がります。

(出産手当金)
第百二条 被保険者が出産したときは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前四十二日(多胎妊娠の場合においては、九十八日)から出産の日後五十六日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する。
2 第九十九条第二項及び第三項の規定は、出産手当金の支給について準用する。

健康保険法第102条|e-Gov法令検索

出産手当金の支給対象となるのは、勤務先の健康保険に加入している被保険者本人です。パートやアルバイトであっても、健康保険の加入 条件を満たしていれば対象となります。

出産手当金の目的

出産手当金の主な目的は、出産を控えた、または出産した女性従業員が、産前産後休業を取得する期間中の所得を保障し、経済的な心配を軽減することで、母体の保護と回復に専念できるようにすることにあります。

産前産後は、女性の心身にとって非常にデリケートな時期であり、十分な休養が求められます。しかし、休業によって給与(賃金)が途絶えたり減少したりすると、経済的な不安から無理をしてしまう可能性も否定できません。

出産手当金制度は、被保険者が安心して産休を取得し、職場復帰への基盤を整えるための経済的支援策として機能しているのです。近年では、少子化対策の一環としても、このような子育て支援制度の重要性が増しています。

なお、出産手当金とは別に、会社独自の福利厚生制度として「産休手当」を支給している会社もあります。

出産育児一時金とは

出産育児一時金とは、健康保険の被保険者またはその被扶養者が出産した際に、出産にかかる経済的な負担を軽減する目的で、健康保険から一定の金額が支給される制度です。

「出産手当金」が産休期間中の生活費(所得)を保障するものであるのに対し、「出産育児一時金」は出産そのものにかかる費用(分娩費・入院費など)を補助するものであり、その目的と支給対象が異なります。

出産費用は高額になることが多く、その経済的負担は家計にとって大きなものです。厚生労働省の調査(例:「出産費用の実態把握に関する調査研究」)などでも、正常分娩であっても平均して数十万円の費用がかかることが示されています。

なお、2023年4月からは、物価上昇などを踏まえ、1児につき原則42万円から50万円(産科医療補償制度の掛金を含む)に支給額が引き上げられています。

出産育児一時金は、健康保険の被保険者本人だけでなく、その被扶養者である家族が出産した場合にも支給されます。つまり、出産する女性が夫の健康保険の被扶養者である場合、夫の健康保険から支給されることになります。

支給額は原則として1児につき50万円です。ただし、産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合や、妊娠週数が22週未満で出産(流産・死産含む)した場合は、支給額が異なります。また、多胎妊娠(双子など)の場合は、胎児数に応じて支給されます(例:双子であれば50万円×2=100万円)。

項目出産手当金出産育児一時金
目的産休 期間中の所得保障出産にかかる費用の補助
支給対象健康保険の被保険者本人(女性従業員)健康保険の被保険者またはその被扶養者
支給条件産休を取得し、給与の支払いがない(または減額)健康保険に加入し、出産したこと
支給額標準報酬 月額等を基に計算される日額×日数原則1児につき50万円(定額)
申請先主に協会けんぽや各健康保険組合主に協会けんぽや各健康保険組合

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出産手当金の支給要件

出産手当金を従業員が受給するためには、健康保険法で定められた以下の支給要件をすべて満たすことが必要です。

  • 勤務先の健康保険の被保険者(本人加入)であること
  • 妊娠4か月(85日)以降の出産であること
  • 出産のために休業していること

会社の健康保険の被保険者(本人加入)であること

出産手当金を受給するための最も基本的な条件の一つは、従業員本人が勤務先の会社が加入する健康保険の「被保険者」であることです。つまり、従業員自身が健康保険料を負担し、被保険者として登録されていなければなりません

出産手当金は、あくまでも被保険者本人が出産のために休業し、給与(賃金)を受けられない場合の所得保障を目的とした制度であるため、国民健康保険の加入者や、健康保険の被保険者の「被扶養者」として登録されている家族(夫の扶養に入っている妻)は、原則としてこの出産手当金の支給対象とはなりません。

なお、この「被保険者であること」という条件は、正社員に限られるものではありません。パートタイムやアルバイトの従業員であっても、健康保険の加入 条件(短時間労働者に対する適用拡大の条件も含む)を満たしていれば、被保険者として扱われ、出産手当金の支給対象となり得ます。

妊娠4ヵ月(85日)以降の出産であること

出産手当金の支給対象となる「出産」には、一定の基準が設けられています。具体的には、妊娠満4か月(暦の上で3か月が経過し、妊娠第85日目を迎えた日)以降の分娩がこれに該当します。

この基準を満たしていれば、生産(いわゆる正期産や早産)だけでなく、残念ながら死産(流産)や人工妊娠中絶に至った場合も、出産手当金の支給対象となる「出産」として扱われます。多胎妊娠の場合も、この「妊娠4か月(85日)以降の出産」という条件は同様に適用されます。

この「妊娠4か月(85日)以降」という基準は、健康保険法および関連する行政通達によって定められています。母体保護の観点から、初期の自然流産などとは区別し、より母体への影響が大きいと考えられる時期以降の出産(死産等を含む)について、経済的なサポートを行う狙いがあります。

出産のために休業していること

出産手当金が支給されるためには、健康保険の被保険者である従業員が、「出産のため」に会社を休み、実際に労務に服していないこと、つまり「休業していること」が絶対的な条件となります。

出産手当金は、あくまでも出産を理由とする休業によって給与(賃金)が得られなくなることへの所得補償という性格を持つため、実際に仕事を休んでいる事実が必要とされるのです。

具体的に「出産のための休業」として認められる期間は、原則として出産日(実際の出産が出産予定日後である場合は出産予定日)以前42日間(多胎妊娠の場合は98日間)と、出産日の翌日から56日間です。

このうち、産後の休業(通常56日間)については、労働基準法第65条により企業は従業員を就業させてはならないと定められており(ただし、産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障ないと認めた業務については就業可能)、原則として休業が必要となります。

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出産手当金の支給期間と支給額

出産手当金の支給期間と支給額は、健康保険法によって明確に定められており、従業員が産休を取得し休業する間の生活を経済的に支えるための非常に重要な要素です。

事業主および労務管理者は、これらの算定根拠やルールを正しく理解し、対象となる従業員に対して正確な情報を提供することが求められます。これにより、従業員は安心して休業に入り、出産前後の経済的な見通しを立てることが可能になります。

支給期間は、母体の保護と育児の準備、そして産後の回復に必要な期間を考慮して設定されており、支給額は、休業前の所得水準に応じた適切な生活保障を行うことを目的としています。

このように、出産手当金の支給期間と支給額に関する正確な知識は、制度を適切に運用し、従業員の福利厚生を実質的にサポートするための鍵となります。企業として、これらの情報を誠実に提供する姿勢は、従業員からの信頼を得る上でも非常に重要です。

出産手当金の支給期間

出産手当金の支給期間は、原則として「出産の日(実際の出産日がその出産予定日後であるときは、その出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合においては、98日)から出産の日後56日までの範囲内」で、被保険者である従業員が出産のために会社を休み、労務に服さなかった(休業した)日数分となります。

この期間設定の根拠は、健康保険法第102条に明確に規定されています。これは、産前の母体保護や出産準備のための期間、そして産後の母体回復と初期の育児に専念するための期間を総合的に考慮して定められています。

労務管理上、特に注意が必要なのは、出産日が当初の出産予定日とずれた場合の取り扱いです。

出産予定日より遅れて出産した場合

例えば、出産予定日から5日遅れて出産したとします。この場合、産前の休業 期間は「出産予定日以前42日」に加えて「遅れた5日間」も支給対象となります。

そして、産後の休業 期間は「実際の出産日の翌日から56日間」が支給対象です。結果として、遅れた分だけ総支給 日数が増えることになります。

出産予定日より早く出産した場合

例えば、出産予定日より5日早く出産したとします。この場合、産前の休業 期間は「実際の出産日以前の休業 日数」となり、当初の予定より短くなります。

ただし、産後の休業 期間は「実際の出産日の翌日から56日間」で変わりありません。結果として、早く生まれた分だけ総支給 日数は短くなる可能性があります。

出産手当金の支給額と計算方法

出産手当金の1日あたりの支給額は、原則として「支給を開始する日(実際に産休に入った日)の以前の継続した12か月間の各月の標準報酬 月額を平均した額を30日で割った額(以下「1日あたりの平均額」)に、3分の2を乗じた金額」となります。

そして、この1日あたりの支給額に、実際に出産のために休業した日数を乗じたものが、総支給額となります。

標準報酬月額とは

標準報酬月額は、健康保険料や厚生年金保険料、そして将来受け取る年金額の計算の基礎となるものです。従業員の月々の給与などの報酬を一定の範囲(等級)で区分したもので、原則として毎年1回、7月1日現在の報酬に基づき決定(定時決定)され、その年の9月から翌年8月まで適用されます。

また、昇給などで報酬額が大幅に変動した場合には、随時改定が行われます。従業員は自身の給与明細や、ねんきん定期便などで確認することができます。

支給額の計算ステップ

STEP1: 支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を確認する 支給開始日(通常は産休 開始日)が含まれる月より前の、継続した12か月間の各月の標準報酬月額をリストアップします。

STEP2: 12か月の標準報酬月額の平均額を算出する STEP1でリストアップした12か月分の標準報酬月額を合計し、12で割って平均額を求めます。

STEP3: 1日あたりの平均額を算出する STEP2で算出した平均額を、30日(1か月の平均日数として固定)で割ります。この際、10円未満の端数は四捨五入、または保険者によっては5円未満切り捨て・5円以上切り上げの処理がなされる場合があります。

STEP4: 1日あたりの支給額を算出する STEP3で算出した1日あたりの平均額に、3分の2を乗じます。この際、1円未満の端数は切り捨てます。これが、出産手当金の1日あたりの支給額となります。

STEP5: 総支給額を算出する STEP4で算出した1日あたりの支給額に、実際に出産のために休業した日数(支給期間)を乗じます。

被保険者期間が12か月に満たない場合

支給開始日以前の被保険者 期間が12か月に満たない場合は、次のいずれか低い方の額を使用して計算します。

A: 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
B: 前年度9月30日における、その従業員が加入する健康保険の全被保険者の同月の標準報酬月額の平均額(協会けんぽの場合は都道府県ごとの平均額)

具体的な計算例

仮に、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均が300,000円だった場合の支給額の計算例を以下に示します。

1日あたりの平均額: 300,000円 ÷ 30日 = 10,000円
1日あたりの支給額: 10,000円 × (2/3) = 6,666円 (1円未満切り捨て) この従業員が90日間休業した場合の総支給額は、6,666円 × 90日 = 599,940円 となります。

会社から給与が一部支払われた場合の調整

産休 期間中に会社から給与が支払われた場合でも、その給与の日額が出産手当金の日額(上記STEP4の額)よりも少なければ、その差額が支給されます。

かりに、給与の日額が出産手当金の日額以上であれば、その日は出産手当金は支給されません。企業は、この点も正確に把握し、申請書に賃金支払い状況を正しく記入する必要があります。

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出産手当金の申請の流れ

出産手当金の申請は、従業員本人、会社(事業主・労務管理者)、そして医療機関(産院の医師・助産師)がそれぞれ役割を担い、連携して進める一連の手続きです。

各ステップを正確に理解し、適切なタイミングで進めていくことが、円滑な支給を受けるための鍵となります。この流れを事前に把握しておくことで、従業員は安心して産休の準備ができ、企業側もスムーズな事務処理が可能になります。

一連の流れ全体を把握し、従業員がどの段階にいて、次に何をすべきかを適切に説明することが非常に重要です。特に、申請には期限(原則として、産休を開始した日の翌日から2年以内)があるため、遅滞なく手続きが進むよう促すことも大切な役割です。

1. 従業員:健康保険出産手当金支給申請書を入手・記入する

出産手当金の申請における最初のステップは、従業員本人が「健康保険出産手当金支給申請書」という正式な書類を入手し、自身の情報を正確に記入することから始まります。この申請書が、手当を受給するための意思表示となり、支給に必要な基本情報を保険者に伝えるための基礎となります。

申請書の入手方法としては、主に以下の方法があります。

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)のウェブサイトから最新の様式をダウンロードする。
  • 勤務先の会社の人事・労務担当部署から受け取る(会社が用意している場合)。
  • 会社が加入している健康保険組合の窓口やウェブサイトから入手する。

従業員が申請書に記入する主な項目には、被保険者情報(氏名、生年月日、住所、健康保険証の記号・番号など)、出産手当金の振込を希望する金融機関の口座情報、申請する期間(産休を取得した期間)、出産予定日などが含まれます。

記入にあたっては、漏れや誤りがないよう、丁寧かつ正確に行うことが重要です。特に振込先口座情報に誤りがあると、支給が大幅に遅れる原因となるため、細心の注意が必要です。事業所によっては、マイナンバーの記入を求められる場合もあります。

一般的に、出産手当金は産休が終了した後にまとめて申請することが多いですが、保険者によっては産前・産後に分けて複数回申請することも可能な場合がありますので、その点も情報提供できると良いでしょう。

2. 従業員:産院の医師・助産師に必要事項を記入してもらう

「健康保険出産手当金支給申請書」の従業員本人が記入する欄が全て埋まったら、次のステップとして、出産した(または出産予定の)産科医療機関の医師または助産師に、出産に関する証明を記入してもらうことが必要になります。

医師または助産師に記入・証明してもらう主な項目は、出産日、出産予定日、分娩の状況(単胎か多胎妊娠か、正常分娩か異常分娩かなど)、妊娠週数、そして医師・助産師の医学的な所見(例えば、労務に服することができないと認めた期間など)です。

この証明を医療機関に依頼するタイミングとしては、一般的に産後の退院時や、産後1か月健診などの受診時が多いようです。ただし、医療機関によって事務処理のフローや所要時間が異なる場合があるため、事前にいつ頃、どのように依頼すればよいかを確認しておくことが望ましいでしょう。

また、この種の証明書作成には、医療機関から文書作成料(費用)が請求されるのが一般的であり、その費用は原則として従業員本人の負担となります。

3. 会社:必要事項を記入して協会けんぽなどに提出する

従業員による記入と、医師・助産師による医学的証明が完了した「健康保険出産手当金支給申請書」を従業員から受け取ったら、会社は速やかに必要事項を記入し、従業員が加入している健康保険組合(全国健康保険協会(協会けんぽ)の都道府県支部や、企業独自の健康保険組合など)に書類を提出します。

会社が申請書に記入・証明する責任があるのは、従業員の勤務状況(産休による休業期間、その間の出勤の有無など)や、休業 期間中の賃金支払い状況などを、保険者が正確に把握する必要があるためです。

会社が記入・証明する主な項目は以下の通りです。

  • 従業員の氏名、被保険者番号
  • 休業した期間(産休の開始日と終了日)
  • 休業 期間中の賃金(給与)の支払い状況(支払ったか否か、支払った場合の金額や日数など)
  • 出勤簿の写しや賃金台帳の写しなどの添付書類の要否(保険者の指示に従う)
  • 事業所名、事業所所在地、電話番号
  • 事業主印(または会社印)

これらの情報を記入する際には、事実に基づき、誤りなく正確に行うことが極めて重要です。特に、休業 期間中の賃金支払い状況は、出産手当金の支給額調整に直接関わるため、細心の注意を払って記入します。

また、保険者から指示があった場合には、出勤簿の写しや賃金台帳の写しなど、証明内容を裏付ける書類を添付する必要があります。

申請書の提出先は、会社の所在地を管轄する協会けんぽの支部、または会社が加入している各健康保険組合です。提出方法としては郵送が一般的ですが、近年では電子申請に対応している保険者も増えてきていますので、事前に確認するとよいでしょう。

申請の法的な時効は、産休を開始した日の翌日から2年間ですが、従業員への速やかな支給を実現するためには、産休が終了し、従業員から全ての書類が整った申請書を受け取ったら、できるだけ早く保険者へ提出することが望ましいです。

4. 協会けんぽなど:出産手当金の入金

会社から「健康保険出産手当金支給申請書」と必要な添付書類が提出されると、全国健康保険協会(協会けんぽ)の支部や各健康保険組合といった保険者が、その内容について審査を行います。

審査の結果、支給が決定されれば、従業員が申請書で指定した銀行口座に出産手当金が振り込まれ、これをもって一連の申請 手続きが完了に近づきます。

保険者が行う審査では、提出された書類が法令や保険者の規定に適合しているか、出産手当金の支給要件(被保険者資格、出産の事実、休業の事実、賃金支払い状況など)を全て満たしているかなどが慎重に確認されます。

審査にかかる期間の目安としては、申請書を提出してから通常2週間から2か月程度で支給されることが多いようです。ただし、これはあくまで目安であり、申請内容に確認事項が多かったり、添付書類に不備があったりした場合、あるいは保険者の繁忙期などには、さらに時間がかかることもあります。

出産手当金の支給が決定すると、多くの保険者では、被保険者である従業員宛に「支給決定通知書」などの名称で通知書が送付されます。

万が一、支給要件を満たしていないと判断された場合には、不支給の決定となり、その理由が通知されます。また、申請書の記入漏れや添付書類の不足など、内容に不備がある場合や、確認が必要な事項がある場合には、審査が一時保留となり、保険者から会社または従業員本人に問い合わせが入ることがあります。

企業の労務管理者としては、従業員に対して、審査には一定の期間がかかることを事前に伝えておくとともに、支給決定通知書が届いたら必ず内容を確認するよう促すことが大切です。また、もし保険者から会社宛に申請内容に関する問い合わせがあった場合には、従業員と連携を取りながら誠実かつ迅速に回答する対応が求められます。

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出産手当金の支給日早見表は?

出産手当金の支給日は、会社が加入している健康保険組合や協会けんぽによって異なりますが、一般的には産後休業終了後、1~2ヶ月後とされています。

そのため、産後休業終了後すみやかに申請手続きを行うことが重要となります。具体的な支給日(振込日)というのはケース・バイ・ケースであるため、早見表のように示すことはできませんが、以下の産前産後休業早見表で産後休業終了日から1ヶ月後あたりが目安だと捉えるとよいでしょう。

出産手当金についてよくある質問

出産手当金について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
予定日より早く出産した場合、手当の計算はどうなる?
A

出産予定日よりも実際の出産日が早まった場合、出産手当金の支給期間の計算方法、特に産前の休業期間に影響が出ます。具体的には、産前の休業期間は「実際の出産日以前で休業した日数」となり、当初の出産予定日を基準に休業を開始していた場合と比較して短くなります。

ただし、産後の休業期間(実際の出産日の翌日から56日間)は変わりません。結果として、総支給日数が、出産予定日通り、あるいは遅れて出産した場合よりも短くなる可能性があります

Q
産休中の社会保険料はどうなる?
A

産前産後休業(以下、産休)を取得している期間中は、健康保険および厚生年金保険の保険料について、従業員本人の負担分だけでなく、事業主(会社)の負担分も共に免除されます

この保険料免除は、次世代育成支援の観点から、従業員が安心して出産・育児に臨めるよう、産休期間中の経済的負担を軽減することを目的としています。

産休を開始した日の属する月から、産休が終了する日の翌日が属する月の前月(ただし、産休終了日が月の末日の場合は、産休終了月)までの期間の保険料が免除されます。

具体的には、産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった(休業した)期間が対象です。

この免除を受けるためには、事業主が「産前産後休業取得者申出書」を、従業員の産休期間中に、日本年金機構(所轄の事務センターまたは年金事務所)および会社が加入している健康保険組合に提出する必要があります。

保険料が免除されている期間も、被保険者としての資格は継続します。そして、将来の年金額の計算においては、保険料を通常通り納付したものとして扱われるため、従業員にとって不利益はありません。

まとめ

「出産手当金」は、出産というライフイベントを迎える従業員にとって非常に重要な所得保障であり、事業主や労務管理者がその内容を深く理解し、正確な手続きをサポートすることは、従業員の安心と信頼に繋がります。本記事では、この出産手当金に関する多岐にわたる情報を解説してきました。

出産手当金に関する一連の労務管理は、正確な知識の習得、個別ケースへの適切な判断、そして煩雑な事務手続きを伴います。

特に、産休・育児休業を取得する従業員の勤怠状況の正確な把握、それに伴う給与 計算、社会保険料の変更管理などは、企業のコンプライアンス遵守はもちろん、従業員の生活に直結する重要な業務です。これらの業務を手作業や旧来の方法で行うことには限界があり、ヒューマンエラーのリスクも伴います。

こうした複雑な労務管理、とりわけ勤怠管理やそれに付随する各種手続きを効率化し、法改正にもスムーズに対応していくためには、自社のニーズに合致した「勤怠管理システム」の導入が非常に有効な手段となります。

適切なシステムは、入力作業の自動化、計算ミスの削減、ペーパーレス化を促進し、人事・労務担当者の負担を大幅に軽減するとともに、より戦略的な業務へ注力する時間も創出します。

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