ボランティア休暇は、労働者が自発的に参加するボランティア活動のために付与する休暇制度です。我が国ではあまり馴染みのない制度ですが、大企業を中心に導入されており、先の東京オリンピックの際にも注目を集めました。

この記事では、ボランティア休暇の制度導入を検討されている事業主の方向けに、制度のメリット・デメリット、導入手順、導入事例などを、わかりやすく解説します。

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ボランティア休暇とは

ボランティア休暇とは、労働者がボランティア活動への参加を希望している場合、その活動時間を確保するために付与する休暇制度です。「社会貢献活動休暇」とも呼ばれ、特別休暇(法定外休暇)の一つに位置づけられます。

東日本大震災以降、社会貢献意識が高まった影響で、ボランティア休暇への注目が高まっています。しかし、厚生労働省の調査によると、2022年度時点でボランティア休暇を導入している企業はわずか6.5%でした。

導入予定と検討中の企業の割合を合計しても16.6%となっており、中小企業への浸透にはまだ多くの時間が必要な状況です。

特別休暇とは

特別休暇とは、慶弔休暇やリフレッシュ休暇など、法律の規定に関係なく会社が独自に定める休暇制度のことです。対して、年次有給休暇や生理休暇など、法律で付与が義務付けられている休暇制度を「法定休暇」と呼びます。

特別休暇は、付与日数や要件、有給とするか無給とするか、など会社が任意に定めることができます。

ボランティア休暇は有給?無給?

ボランティア休暇は特別休暇であるため、休暇取得日を有給とするか無給とするかは、会社が自由に定めることができます。なお、どちらかに統一するのではなく、基本的に有給としながら、一定の日数を超えた場合は無給とするという制度設計も考えられます。

積立年休を利用する場合も

ボランティア休暇の代わりに、あるいはボランティア休暇と併用する形で、積立年休を利用して連続した日数の休暇を取得するケースもあります。積立年休とは、期限内に消化しきれなかった有給休暇を積み立てておき、長期休暇が必要になった場合などに備えておく制度です。

年次有給休暇は、労働者が自由に取得すべきものであるため、会社が利用目的を限定することは認められません。対して、積立年休は本来時効により消滅するはずの年次有給休暇を積み立てる制度であるため、会社側が利用目的を定めることが可能です。

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ボランティア休暇のメリット

ボランティア休暇の導入によるメリットとして以下が挙げられます。

  • 企業イメージが向上する
  • 人材を育成できる
  • エンゲージメントが向上する

企業イメージが向上する

ボランティア休暇の導入や取得事例などを広報することにより、社会貢献活動を積極的に支援する企業として、対外的なイメージがアップが期待できます。単に利益を追求するだけでなく、社会的責任を果たすことができ、他社との差別化も図れるでしょう。

人材を育成できる

ボランティア休暇を利用した従業員は、ボランティア活動を通じて、コミュニケーション力、現場対応力、リーダーシップなどを身につけることができます。海外活動の場合は、さらに語学力やグローバル感覚が磨かれます。

こうして身につけた知識やスキルを、会社の業務に活かしてもらうことで、長期的な視点で見ると生産性向上につながることが期待できます。

エンゲージメントが向上する

従業員は、会社に所属しながらボランティア活動に従事することで、会社組織への帰属意識が高まることが期待できます。希望するボランティアへの参加を積極的に支援してもらえたという意識から、従業員満足度や復帰後の仕事のモチベーションも向上します。

ボランティア休暇のデメリット

一方で、ボランティア休暇には、以下のようなデメリットも考えられます。

  • 休暇中は生産性が低下する
  • 制度が形骸化する可能性がある
  • 怪我や死亡のリスクが伴う

休暇中は生産性が低下する

ボランティア休暇が長期間になるほど、日々の業務に穴が空くことになるため、当然ながら期間中の生産性低下は避けられません。

人的リソースに余裕のある大企業であれば、メリットの部分で述べた長期的な生産性向上を見越して、ボランティア休暇を十分に活用できますが、人員に余裕のない中小企業では、導入が難しい面もあります。

制度が形骸化する可能性がある

ボランティア休暇を制度として導入しても、実際に取得を希望する従業員が居るとは限りません。特に、年次有給休暇の年間5日の取得義務達成もままならないような会社では、まず利用されずに制度として存在するだけになりかねません。

怪我や死亡のリスクが伴う

災害救助活動などは、二次災害などの危険性もあり、怪我や最悪の場合は死亡リスクも考えておかなくてはなりません。

ボランティア活動への参加そのものは、業務命令ではないため、会社が直接補償責任を負うことはありませんが、活動内容によっては従業員にボランティア保険に加入してもらうことも必要でしょう。

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ボランティア休暇導入の手順

ボランティア休暇の導入に際しては、特に法的に必要な書類などはありませんが、基本的には他の特別休暇に倣って、以下のような手順で制度導入を進めます。

  1. 社内ニーズを把握して、目的を明確にする
  2. 取得条件などの運用方法を決める
  3. 就業規則に規定する

社内ニーズを把握して、目的を明確にする

自社の従業員の間で、ボランティア活動への関心や参加意欲がどれだけあるのかを、社内アンケートなどで調査しましょう。関心や参加意欲が低い場合、導入しても利用されない可能性が高いため、導入は見送るのが無難です。

ある程度ニーズがあるようならば、実際に活用してもらえるような休暇制度として内容の検討に入ります。

取得条件などの運用方法を決める

社内ニーズを集約して、具体的な休暇の運用方法を決定します。主に、以下のような事項について取り決めます。

  • 取得条件:入社年数や出勤率、所定労働日数などによって、取得条件を設けるか。男女で差を設けたり、合理的な理由なく非正規を対象外とすることは認められない
  • 活動の範囲:対象となるボランティア活動の範囲。災害救助・復興支援、青少年育成、スポーツ支援、環境保護など
  • 取得日数:数日~2週間前後が一般的。2週間を超える場合は、休職扱いとする場合も
  • 申請方法:書面か口頭か。何日前までに申請させるか
  • 給与:有給か無給か。一定の日数までは有給で取得可能とする場合も
  • その他:活動報告の義務化、ボランティア保険加入の費用補助など

就業規則に規定する

ボランティア休暇の制度内容や運用ルールが決まったら、就業規則へ明記します。変更後の就業規則は、労働基準監督署に変更届を提出し、従業員に周知することが必要です。

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ボランティア休暇の事例紹介

ボランティア休暇を導入している企業事例を以下の3社ご紹介します。自社導入の際の参考にしてみてください。

  • 株式会社アシックス
  • 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
  • 株式会社ボーダレス・ジャパン

株式会社アシックス

株式会社アシックスはスポーツウェアやシューズなどを販売する企業です。同社は企業理念として掲げる「スポーツによる青少年の育成を通じた社会発展への貢献」に寄与するため、1994年からボランティア休暇を導入しました。

ボランティア休暇は年3日を上限に設定されており、有給扱いで取得できます。ボランティア活動へ参加する文化が社内に形成されており、協力体制が築かれている点が特徴です。
同社は知的障害を持つ方々へのトレーニングと競技会の開催支援に取り組んでおり、休暇を取得した30名前後の従業員がスタッフとして参加しています。

また、オリンピック・パラリンピックの運営に関わる場合は、年8日まで取得可能です。無給扱いとなりますが、最長2年4か月まで取得可能なボランティア休職制度も設立されています。

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は、複合機やプリンターなどを販売する企業です。同社はボランティア休暇を初めて導入した企業と言われています。1993年から導入されたボランティア休暇の特徴は、積立有給休暇制度を利用している点です。

月5日まで休暇を取得でき、被災地支援や地域活動への参加など、さまざまな用途に利用できます。また、同社は社会福祉施設や青年海外協力隊への活動に参加する場合、3ヶ月~2年にわたって休職できます。

株式会社ボーダレス・ジャパン

株式会社ボーダレス・ジャパンは雇用創出や企業支援など、社会問題解決に向けたさまざまな支援事業に取り組む企業です。同社のボランティア休暇の特徴は、出勤日に緊急度の高いボランティア活動へ、年1~2回参加できる点です。

出勤日にボランティアへ参加するため、有給扱いとなるだけでなく、交通費やボランティア保険の費用も負担しています。また、企業側がボランティア活動への参加を推奨しており、不在時は部署全体でフォローする体制が構築されています。

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ボランティア休暇についてよくある質問

ボランティア休暇について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
ボランティア休暇の日数は?
Q
ボランティア休暇は有給取得義務にカウントできる?

ボランティア休暇導入は、費用対効果を見極めてから

ボランティア休暇制度は、社会的な意義が大きく、会社や従業員も一定のメリットがあるのは確かです。ただし、現実に運用可能であるかは慎重に見極める必要があり、形だけ導入しても意味がありません。

また、ボランティア休暇などの特別休暇の制度設計や運用管理には、勤怠管理システムが便利でおすすめです。勤怠管理システムの活用により、年次有給休暇だけでなく、特別休暇の取得状況もあわせて管理できるため、勤怠状況や休暇の取得日数を一目で把握できます。

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