「休職」と「休業」は、どちらも長期間に渡って労働者の労務提供義務を免除することを指します。労働者の立場であれば、あまり意識する場面は少ないかもしれませんが、事業主や労務担当者の方は、両者の違いについて押さえておく必要があります。

この記事では、休職と休業の基本的な違いから、休職の種類、社会保険や年次有給休暇との関係などについて、わかりやすく解説します。

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「休職」と「休業」の違いとは

休職は従業員の自己都合によって取得する長期休暇です。休職の導入義務は課せられていないものの、多くの企業はさまざまな種類の休職制度を導入しています。

一方、休業は出産・育児・介護など、特定の理由によって就業ができないため、取得する休暇制度です。休業の場合は従業員の自己都合だけでなく、会社都合も含まれます。休職と休業の違いを以下の表にまとめました。

休職休業
定義従業員の自己都合による長期休暇・特定の理由によって就業ができないため、取得する長期休暇
・従業員の自己都合と会社都合、双方で利用
具体的な例・私傷病休職
・自己都合休職
・事故欠勤休職
・組合専従休職
・企業経営悪化
・工場の操業停止
・育児休業
・産前産後休業
期間・会社側で自由に設定可能・会社都合の場合は事業主が決定
・法定休暇は法律の内容を基に決定
給与の有無・会社側で自由に設定可能・会社都合の場合は、平均賃金の60%以上を保障
・法定休暇の場合は、無給でも可

休職とは

休職とは、従業員の自己都合により、雇用関係を継続したまま長期の休暇を取得することを指します。特に法律上のな規定はなく、要件や期間は会社が任意に就業規則等で定めることができます。

就業規則等に制度として定めていない限り、従業員から休職の申し出があっても、会社には応じる義務はありません。また、休職させる場合でも、一般的には期間中は無給となります。

休業とは

休業とは、従業員本人に就労意思はあるものの、何らかの事情により労働が困難な状態にありるため、会社都合あるいは法律の定めにより、一定期間の労働を免除することを指します。

休業理由は会社都合と自己都合の両方が考えられ、会社都合による休業の場合は、休業期間中に平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。

自己都合の休業の場合は、会社に賃金支払い義務はありません。ただし、産前産後休業や育児・介護休業などは、位置づけとしては法定休暇であるため、請求があれば必ず取得させなければなりません。

欠勤とはどう違う?

欠勤とは、本来勤務日であるにもかかわらず、従業員都合によって業務を休むことです。「従業員の自己都合により労務の提供がない日」という意味では休職と同じですが、欠勤の場合は事前手続き無く突発的な休みを指すのが一般的です。

また、休職や休業が比較的長期に渡るのに対して、欠勤は1日~数日であるのが一般的です。無断欠勤が頻発したり長期に及んだりする場合は、会社の就業規則に基づいて懲戒処分の対象となることもあります。

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休職の種類

休職に関する規定はないため、その種類も法的に定義されているものではありませんが、一般的には以下のような種類があります。

  • 私傷病休職
  • 事故欠勤休職
  • 起訴休職
  • 自己都合休職
  • 組合専従休職
  • 出向休職
  • 公職就任休職

私傷病休職

私傷病休職とは、業務や通勤に起因しない、いわゆる私傷病による休職で、会社によっては「私傷病休暇」として定める場合もあります。休職期間は、私傷病による療養が必要な期間に応じて決まるのが一般的です。

なお、業務災害あるいは通勤災害による傷病の場合は、労働者災害補償保険(労災)が適用されるため、私傷病休職の対象にはなりません。

事故欠勤休職

事故欠勤休職とは、私的な事故、具体的には本人が起こした事件により逮捕・拘留された場合に、会社が命じる休職を指します。「事故」という名称ですが、交通事故などによる負傷を指すわけではありません。

起訴休職

起訴休職とは、刑事事件に関し起訴された労働者に対して、会社が命じる休職を指します。会社の名誉毀損や信用低下の恐れがある場合に適用するのが一般的ですが、「起訴されたことのみをもって直ちに休職とすることはできない」とした判例もあります。

自己都合休職

自己都合休職とは、海外留学や長期ボランティアへの参加のために申請される休職を指します。会社によっては、ボランティア休暇やサバティカル休暇などを制度化している場合もあります。

組合専従休職

組合専従休職とは、労働組合の役員に専従する「組合専従者」を対象とした休職制度です。組合専従者は、会社との間で雇用契約は締結しているものの、事業運営に関する業務は担当しません。

組合専従者への給与は組合費から支給されます。組合専従休職中に会社から給与を支払うことは、「支配介入による不当労働行為」に該当し認められないため、注意しましょう。

出向休職

出向休職とは、従業員が子会社やグループ会社へ出向する場合に、出向元の会社において休職扱いとすることを指します。一般的な休職は自己都合によるものですが、出向休職は例外的に会社都合による休職となります。

なお出向には、出向元との雇用関係を維持したまま出向する「在籍出向」と、出向元との雇用関係が終了する「転籍(移籍)出向」がありますが、出向休職が適用されるのは、在籍出向の場合のみです。

公職就任休職

公職就任休職とは、従業員が国会・地方議員や自治体の首長に就任したことにより就業が困難となった場合に利用する休職制度です。なお、従業員が裁判員に選任された場合は、法定休暇として「裁判員休暇」は、必ず与えるべきこととされています。

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休職・休業の実務上の注意点

社会保険料の支払いや傷病手当金についてなど、休職・休業に関する注意点を以下にまとめました。

社会保険料は、原則免除されない

休職期間中に給与が発生しない場合でも、社会保険料は免除にならず、労使ともに納付しなければなりません。認識の違いからトラブルにならないよう、事前に従業員にもしっかり説明しておきましょう。

ただし、産前産後休業及び育児休業期間中については、申請することにより社会保険料の免除が受けられます。なお、介護休業については、社会保険料の免除制度がないため、注意しましょう。

また、雇用保険料については、休職期間中無給であれば発生しません。これは、社会保険料が「標準報酬月額」という一定期間決まった金額を基礎とするのに対して、雇用保険料は実際に支払われた給与を基礎として計算するためです。

傷病手当金とは

傷病手当金とは、私傷病休職(休暇)期間中に、健保組合または協会けんぽより支給される手当です。1日あたりの支給額は、以下の計算式で算出し、支給開始日から最長1年6ヶ月支給されます

支給開始日前12ヵ月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3

傷病手当金を受給するには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

  • 健康保険の被保険者であること
  • 業務外の病気やケガで療養中であること
  • 療養のための労務不能であること
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること
  • 給与の支払いがないこと

休職・休業と有給休暇について

休職及び休業期間中は、労働義務が免除された日です。そのため、労働義務のある日の労働を免除しつつ賃金を保障する年次有給休暇を、この期間中に取得することはできません

なお、有給付与の要件となる出勤率の算定においては、休職期間は全労働日に含めた上で、出勤のなかった日として扱います。

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労務管理においては、休業と休職の区別は重要

休職と休業の区別に関して、労働者はあまり意識する必要はありません。ただし、事業主や労務担当者は両者の違いを正確に認識しておくことが重要です。たとえば、会社都合による休業が発生した場合、平均賃金の60%以上を支払わなければなりません。

また、産前産後休業や育児休業中の従業員の社会保険料を免除するには、企業側が書類を提出する必要があります。従業員とのトラブルを避けるためにも、休職と休業の違いを把握しておきましょう。

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