• 「源泉徴収票と給与明細って、何が違うんですか?」
  • 「年間の給与明細をすべて合計しても、源泉徴収票の支払金額と合わないのですが、なぜでしょうか?」

年末調整から確定申告の時期にかけて、従業員からこのような質問に対応の時間を取られている労務管理担当者の方も多いのではないでしょうか。あるいは、退職者から「源泉徴収票をなくしてしまったのですが、給与明細でも大丈夫ですか?」と問い合わせを受け、その対応に悩んだ経験をお持ちかもしれません。

源泉徴収票と給与明細。どちらも会社が発行する給与に関する重要書類ですが、その役割、法的根拠、そして記載されている情報の意味合いは全く異なります。

この違いを曖昧なままにしてしまうと、従業員の会社に対する不信感につながるだけでなく、最悪の場合、年末調整や各種手続きのミスを引き起こす原因にもなりかねません。

特に、働き方が多様化する現代において、副業を持つ従業員や中途採用者への対応はますます複雑になっています。それぞれの状況に応じた的確な説明と、法令に則った適切な書類管理は、企業のコンプライアンス体制の根幹をなす、極めて重要な業務と言えるでしょう。

この記事では、源泉徴収票と給与明細について、両者の違いを一覧表にまとめながら、その役割や見方、実務上の注意点などについて、わかりやすく解説していきます。

勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。

源泉徴収票と給与明細の違い一覧

「源泉徴収票」と「給与明細」は、どちらも企業が従業員に交付する金銭に関わる重要書類ですが、その目的や役割、法的根拠は全く異なります。源泉徴収票は「年間の所得と納税額を証明する公的な書類」、給与明細は「月々の給与計算の内訳を示す明細書」です。

両者の違いは、それぞれの発行根拠となる法律からも明確に読み取れます。具体的には、以下のような違いがあります。

項目源泉徴収票給与明細書(給与支払明細書)
目的1年間の給与・賞与の支払総額と、源泉徴収した所得税額、各種控除額を証明する。毎月の給与計算における総支給額、控除額、差引支給額の内訳を通知する。
発行タイミング原則、年1回(翌年1月31日まで)
※中途退職の場合は退職後1ヶ月以内
原則、毎月1回(給与支払時)
法的根拠所得税法 第226条所得税法 第231条
※社会保険料の控除については健康保険法等にも関連規定あり
証明力高い。年収証明として公的な手続き(確定申告、住宅ローン審査、扶養申請等)に利用される。低い。原則として単体では公的な年収証明書として認められない。
主な記載内容①支払金額(年収)
②給与所得控除後の金額
③所得控除の額の合計額
④源泉徴収税額
⑤社会保険料等の金額
⑥各種控除(配偶者、扶養、住宅ローン等)の内訳
①総支給額(基本給、各種手当)
②控除額(所得税、住民税、社会保険料等)
③差引支給額(手取り額)
④勤怠情報(出勤日数、労働時間等)

また、実務上の大きな違いとして「公的な証明力」が挙げられます。従業員から「年収を証明する書類が欲しい」と依頼された場合、提出すべきは源泉徴収票です。

毎月の給与明細を12ヶ月分集めても、賞与額や年末調整による最終的な税額が反映されていないため、公的な証明書としては認められないケースがほとんどです。

このように、源泉徴収票は「年間の確定情報」、給与明細は「月々の速報値」と捉えることができます。役割が異なるこれらの書類を適切に作成・交付し、従業員からの質問に明確に回答できる体制を整えておくことが、企業の信頼性を高める上で重要となります。

勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい

勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。

源泉徴収票とは

源泉徴収票とは、企業が従業員に対し、1年間に支払った給与・賞与の総額と、それに対して納めた所得税額などを証明するために発行する書類です。

従業員の経済活動における「所得の身分証明書」とも言える非常に重要な書類であり、その発行は所得税法第226条で定められた企業の義務です。従業員にとって源泉徴収票は以下のような様々な場面で必要となります。

  • 確定申告:医療費控除や副業収入の申告などを行う際の、給与所得を証明する添付書類として使用します。
  • 転職:転職先の会社で年末調整を行うために、前職の源泉徴収票の提出を求められます。
  • 各種ローン・融資の審査:住宅ローンや自動車ローンなど、金融機関が返済能力を審査する際の正式な年収証明書類となります。
  • 公的サービスの申請:保育園の入園申請や公営住宅の入居申込など、所得に応じて利用条件が変わるサービスの所得証明として用いられます。
  • 扶養家族の認定:配偶者や親族を健康保険の扶養に入れる際、被扶養者の収入を証明する書類として必要になる場合があります。

このように、源泉徴収票は単に社内で発行される書類というだけでなく、社会の様々なシーンで個人の所得を公的に証明する役割を担っています。そのため、記載内容の正確性は極めて重要であり、労務管理における最も責任の重い業務の一つと言えるでしょう。

源泉徴収票の役割・目的

源泉徴収票が持つ役割・目的は、大きく分けて「従業員本人への通知」「税務署への支払報告」「市区町村への住民税情報提供」の3つに集約されます。これらは相互に関連し、国の税務行政を支える上で不可欠な要素です。

  1. 従業員本人への通知(所得の証明):所得税法第226条に基づき、企業は従業員本人に源泉徴収票を交付する義務があります。これにより、従業員は自身の正確な年間収入と、会社を通じて納付した所得税額を把握することができ、確定申告を行う際の基礎情報となります。
  2. 税務署への支払報告:企業は、従業員に交付したものと同じ源泉徴収票を、所轄の税務署へ提出する義務があります。これにより、税務署は「企業が従業員へいくら給与を支払い、いくら所得税を徴収・納付したか」を正確に把握し、申告内容と照合することができます。これが「法定調書」と呼ばれる所以です。
  3. 市区町村への住民税情報提供:地方税法第317条の6に基づき、企業は源泉徴収票とほぼ同じ内容の「給与支払報告書」を作成し、従業員が住む市区町村へ提出する義務があります。市区町村は、この報告書に記載された前年の所得情報をもとに、翌年度の住民税額を計算・決定します。

つまり、労務担当者が作成する一枚の書類が、国税である「所得税」と、地方税である「住民税」の計算の出発点となっているのです。

源泉徴収票の見方

一見複雑に見える源泉徴収票も、記載されている情報を「支払金額(収入)」「給与所得控除後の金額(所得)」「所得控除の額の合計額(控除)」「源泉徴収税額(税額)」の4つのブロックに分けて見ることで、所得税が計算されるまでの流れをスムーズに理解することができます。

  1. 支払金額(収入):一般的に「年収」と呼ばれる金額です。その年の1月1日から12月31日までに支払いが確定した、税金や社会保険料が引かれる前の給与・賞与の合計額が記載されます。
  2. 給与所得控除後の金額(所得):上記の「支払金額」から、給与所得者のための必要経費と見なされる「給与所得控除」を差し引いた金額です。これが税金を計算する上での土台となる金額にあたります。
  3. 所得控除の額の合計額(控除):「給与所得控除後の金額」から、さらに差し引くことができる控除の合計額です。ここには、基礎控除、社会保険料控除のほか、各従業員の状況に応じて適用される配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などが含まれます。
  4. 源泉徴収税額(税額):最終的に確定した、その年の所得税の年額です。「(②給与所得控除後の金額 - ③所得控除の額の合計額)× 所得税率」で計算され、この税額と1年間に給与から天引きされてきた所得税の合計額との差額を年末調整で精算します。

なお、従業員から「私の手取り年収はどこに書いてありますか?」と聞かれることがありますが、源泉徴収票に手取り額の記載はありません。

手取り額は「①支払金額」から「社会保険料」や「④源泉徴収税額」、そして源泉徴収票には記載のない「住民税」を差し引いた額となり、毎月の給与明細で確認する必要があることを説明すると良いでしょう。

勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい

勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。

給与明細とは

給与明細(給与支払明細書)とは、企業が従業員に対し、毎月の給与支払日に、給与の計算根拠となる勤怠情報、総支給額、控除額、そして最終的な手取り額(差引支給額)を通知するために発行する明細書です。

これは、企業の給与計算が適正に行われていることを従業員に示し、信頼関係を築く上で欠かせない重要な書類です。

この交付は、所得税法や社会保険関連法規など、複数の法律によって企業の義務として定められています。例えば、所得税法第231条では所得税の源泉徴収額の通知が、健康保険法第167条などでは社会保険料の控除額の通知が、それぞれ義務付けられています。

また、近年では給与明細の電子化(ペーパーレス化)が急速に進んでいます。2023年4月1日以降は、事前に全従業員へ通知し、希望者から紙での交付申請があった場合にのみ紙で渡せばよい、という運用が可能になりました。

労務管理の効率化に繋がる一方、電子交付に慣れていない従業員への丁寧な説明や、いつでも閲覧・印刷できる環境の整備といった配慮が求められます。

給与明細の役割・目的

給与明細が持つ役割と目的は、主に「給与計算の透明性の担保」「企業の法令遵守の証明」「従業員の生活設計の基礎情報提供」の3点にあり、健全な労使関係を維持するための根幹となる要素です。

  1. 給与計算の透明性の担保:給与明細には、基本給だけでなく、残業代や各種手当が正しく計算されているか、また所得税や社会保険料がいくら控除されているかが詳細に記載されます。従業員自身がこれらの項目を確認できることで、企業は給与計算の透明性を示し、従業員からの信頼を得ることができます。
  2. 企業の法令遵守の証明:所得税法や社会保険関連法規で定められた「控除額の通知義務」を、給与明細を交付することによって果たしている証明になります。これは、労働基準監督署の調査など、第三者に対して適切な労務管理を行っていることを示す客観的な証拠の一つとなり得ます。
  3. 従業員の生活設計の基礎情報提供:従業員は、給与明細に記載された手取り額(差引支給額)を元に、毎月の家計を管理します。また、自身の勤怠状況や有給休暇の残日数などを確認し、将来のライフプランを立てるための基礎資料としても活用します。

加えて、給与明細の大きな特徴として、源泉徴収票にはない「勤怠情報」が記載されている点が挙げられます。出勤日数や残業時間といった情報は、給与額の計算根拠であると同時に、従業員が自身の労働状況を客観的に把握するための重要なデータです。

給与明細の見方

給与明細は、大きく分けて「勤怠」「支給」「控除」の3つのブロックで構成されています。この3ブロックの構造と関係性を理解することが、一見複雑に見える給与明細を正確に読み解く鍵となります。

それぞれのブロックに含まれる主な項目は以下の通りです。

  1. 勤怠ブロック:給与計算のすべての基礎となる、従業員の勤務状況が記載されます。
    • 項目例:出勤日数、欠勤日数、有給休暇取得日数・残日数、総労働時間、時間外労働時間(残業時間) など
  2. 支給ブロック:会社から従業員へ支払われる金銭のすべてが記載されます。一般的に「額面給与」や「総支給額」と呼ばれる部分です。
    • 項目例:基本給、役職手当、資格手当、住宅手当、家族手当、時間外手当、通勤手当 など
  3. 控除ブロック:「支給」の合計額から差し引かれる(天引きされる)項目が記載されます。
    • 法定控除:法律で控除が義務付けられている項目。(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税)
    • 協定控除:労働組合費や財形貯蓄など、労使協定に基づいて給与から天引きされる項目。

最終的に従業員の銀行口座に振り込まれる「差引支給額(手取り額)」は、「総支給額の合計 - 控除額の合計」という計算式で算出されます。

なお、新入社員から「住民税が引かれていないのはなぜですか?」という質問を受けることがありますが、これは住民税が「前年の所得」に対して課税されるためです。社会人1年目は前年の所得がないため、原則として住民税の控除はなく、2年目の6月頃から控除が始まるのが一般的です。

勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい

勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。

h2: 源泉徴収票と給与明細の実務上のポイント

源泉徴収票と給与明細の作成・交付業務は、単なる定型業務ではなく、従業員からの信頼を左右し、企業の法的リスクを管理する上で極めて重要な実務です。

特に、従業員から問い合わせの多い「両者の金額が合わない」といったトラブルへの対処法と、重要書類の適切な「管理・保管方法」を深く理解しておくことが、労務管理者には求められます。

これらの実務が重要な理由は、第一に、従業員からの問い合わせに迅速かつ的確に回答することで、給与計算に対する不信感を払拭し、組織へのエンゲージメントを高めることができるからです。

第二に、源泉徴- 票や給与明細は機微な個人情報を含むため、個人情報保護法や税法などの観点から、その適切な管理は企業のコンプライアンス上、必須の要件となります。

また、昨今では働き方の多様化や手続きの電子化が進む中で、従来通りの画一的な対応や管理方法では対処しきれないケースが増えています。

そのため、労務担当者は、日常業務の精度を高めることに加え、イレギュラーな事態への対処能力と、法改正や社会の変化に対応した管理体制を構築する視点を持つことが不可欠です。

不一致になるケースと対処法

毎月の給与明細の「総支給額」を12ヶ月分単純に合計しても、源泉徴収票の「支払金額」と一致しないのは、ほとんどの場合、計算ミスではなく「集計対象の範囲の違い」や「年末調整の反映」といった制度上の理由によるものです。

給与明細の年間合計額と源泉徴収票の支払金額が一致しない主な原因として、以下のようなケースが挙げられます。

  1. 賞与(ボーナス)の集計漏れ:従業員が給与明細のみを合計している場合、賞与が含まれていないため金額が合わなくなります。源泉徴収票の「支払金額」には、その年に支払われた給与と賞与のすべてが含まれます。
  2. 非課税通勤手当の扱い:所得税法上、一定限度額までの通勤手当は非課税です。この非課税分は、源泉徴収票の課税対象である「支払金額」には含まれません。
  3. 年末調整による各種控除・精算の反映:年の途中で扶養家族の人数に変動があった場合の再計算や、従業員が申告した生命保険料控除などは、年末調整で初めて反映されます。そのため、年末調整の結果が記載される源泉徴収票の金額は、毎月の給与明細の単純な合計とは異なります。

実際に従業員から金額の不一致について質問された際は、以下の手順で冷静に対応しましょう。

  1. ヒアリング:まずは従業員が「どの数字」と「どの数字」を比較しているのかを具体的に確認します。
  2. 原因の切り分け:上記の理由(賞与・通勤手当・年末調整)に当てはまらないかを確認します。ほとんどのケースはこれで説明がつきます。
  3. 丁寧な説明:「源泉徴収票の支払金額は、所得税の課税対象となる年収額です。そのため、賞与を含み、非課税の通勤手当は除かれた金額となっており、毎月の給与明細の単純な合計とは一致しないのが通常の形となります。」など、仕組みを丁寧に説明します。
  4. 万が一のミスへの対応:もし本当に計算ミスが疑われる場合は、真摯に受け止め、過去の給与データを確認し、誤りがあれば速やかに源泉徴収票の修正・再発行を行うことを伝えます。

このように、源泉徴収票と給与明細の金額不一致は、その多くが制度上の仕様によるものです。その原因をパターンとして理解し、従業員に対して冷静かつ論理的に説明できる準備をしておくことが、不要なトラブルを避ける鍵となります。

源泉徴収票・給与明細の管理・保管方法

源泉徴収票と給与明細の管理・保管においては、「企業の法的保管義務」と「従業員個人の保管の重要性」を区別し、それぞれについて適切な方法を確立することが重要です。特に電子データ化が進む現代では、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策が最重要課題となります。

企業には、関連書類について法律で定められた期間、保管する義務があります。

  • 源泉徴収票(会社の控):税務署に提出したものの控えは、「帳簿書類」として法人税法上、原則7年間の保存が義務付けられています。
  • 給与明細の元となる書類:その計算根拠となる賃金台帳は、労働基準法第109条により5年間(当面の間は経過措置で3年間)の保存が義務付けられています。

一方で、法律上、従業員個人に保管義務はありませんが、過去の所得証明として必要になるケースが多々あるため、企業としては保管の重要性を周知することが望ましいでしょう。

【企業向け】具体的な管理・保管方法

  • 紙での保管:施錠可能なキャビネットや書庫で、権限のない者がアクセスできないように物理的に管理します。
  • 電子での保管
    • アクセス権管理:労務担当者など、許可された者以外は閲覧・編集できないよう、厳格なアクセス権限を設定します。
    • バックアップ:ランサムウェアやハードディスクの故障に備え、定期的なバックアップを確実に行います。
    • セキュリティ対策:ウイルス対策ソフトの導入や不正アクセス監視など、サイバーセキュリティ対策を徹底します。これは個人情報保護法を遵守する上でも極めて重要です。

【従業員へのアナウンス例】

社内イントラネットなどで、次のようなアナウンスを行うと親切です。 「ご自身の源泉徴収票や給与明細は、将来、住宅ローン審査や年金受給額の確認などで必要になる場合があります。最低でも5年間は大切に保管しておくことをお勧めします。」

このように、書類の適切な管理・保管は、企業の法的義務を果たすと同時に、従業員の大切な個人情報を守るという社会的責任を果たすことでもあります。物理的管理と電子的管理の両面からセキュリティ体制を構築し、従業員にもその重要性を啓発していくことが、現代の労務管理には不可欠です。

勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい


勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。

源泉徴収票と給与明細についてよくある質問

源泉徴収票と給与明細について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
確定申告の際に源泉徴収票の代わりに給与明細を使える?
A

原則として、確定申告の手続きにおいて、源泉徴収票の代わりに給与明細を使用することはできません。確定申告には、1年間の所得と納税額を公的に証明する書類である源泉徴収票が必須となります。

税務署が申告内容の正当性を確認するために必要なのは、年末調整を経た「確定額」ですが、給与明細に記載されているのは月々の「概算額」に過ぎません。

賞与の全額や、年末調整で初めて反映される各種控除の最終結果が含まれていないため、1年間の正確な所得・税額の証明にはならないのです。国税庁の指針でも、申告書を作成するためには源泉徴収票が必要であるとされています。

しかし、従業員がこの質問をする背景には、「会社を退職したが源泉徴収票をもらえない」「紛失してしまった」といった切実な事情があることも少なくありません。そのような場合の対処法は以下の通りです。

  1. 会社への再発行依頼を促す:まずは、源泉徴収票の発行元である会社に再発行を依頼するのが第一選択肢です。企業には発行義務(所得税法第226条)があり、正当な理由なくこれを拒否することはできません。
  2. 税務署への相談を案内す: 万が一、会社が倒産していたり、発行を拒否されたりする場合には、最終手段として所轄の税務署に相談するよう案内します。給与明細などを持参し、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する手続きがあり、例外的に給与明細を基にした申告が認められることがあります。
Q
源泉徴収票と給与支払報告書の違いは?
A

「源泉徴収票」と「給与支払報告書」は、記載される内容はほぼ同一ですが、提出先と法律上の目的が全く異なる、別の書類です。労務担当者はこの2つを明確に区別し、それぞれ定められた行政機関へ正しく提出する必要があります。

両者の違いは、根拠となる法律と、それに基づく提出先・目的にあり、まとめると以下のようになります。

項目源泉徴収票給与支払報告書
提出先税務署(国)従業員が居住する市区町村(地方自治体)
目的所得税の年税額を報告するため翌年度の住民税額を算定するため
法的根拠所得税法 第226条地方税法 第317条の6
構成従業員交付用・税務署提出用個人別明細書・総括表

実務上、年末調整の計算が終わった後、源泉徴収票と給与支払報告書は一連の業務として同時に作成するのが一般的です。

給与支払報告書は、「個人別明細書」を従業員ごとに作成し、それをとりまとめる「総括表」を添付して、各市区町村に提出します。提出期限はいずれも、原則として支払年の翌年1月31日です。

源泉徴収票と給与明細の適切な運用で、信頼される労務管理を実現

源泉徴収票と給与明細は、どちらも従業員の給与に関わる重要な書類ですが、その役割と法的根拠は全く異なります。

労務管理担当者はこの違いを明確に理解し、適切に作成・交付するとともに、従業員からの質問に的確に答えられる体制を整えておくことが、企業の信頼性とコンプライアンスを維持する上で不可欠です。

源泉徴収票や給与明細を正確に作成・運用する大前提となるのが、日々の給与計算の正確性です。そして、その給与計算の根幹を支えているのが、従業員一人ひとりの労働時間を正しく記録・集計する「勤怠管理」に他なりません。

残業時間や休日出勤、有給休暇の取得状況などを正確に把握し、給与計算へミスなく反映させるためには、手作業での管理には限界があります。複雑化する働き方や法改正に迅速に対応し、労務管理全体の精度を向上させるには、自社に合った勤怠管理システムの導入が極めて有効な一手となります。

勤怠管理システムの選定・比較サイト「勤怠管理システムの選定・比較ヨウケン」では、多種多様なシステムの中から、貴社の規模や業種、抱える課題に最適な製品を簡単に見つけることができます。

勤怠管理システムでお困りのあなたへ
・今よりも良い勤怠管理システムがあるか知りたい
・どのシステムが自社に合っているか確認したい
・システムの比較検討を効率的に進めたい

勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。