働き方改革によって、それまで青天井だった残業時間に上限が設定され、また違反した場合の罰則も規定されました。月80時間を超える残業は、部分的には違法と言えない場合もありますが、複数月に及ぶようであれば上限規制に抵触し、また過労死ラインにも該当することになります。
この記事では、月80時間を超える残業に対して、どのようなケースが違法となるのかを始め、罰則や立入検査など企業が抱えるリスクについて、わかりやすく解説します。
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残業時間の上限規制とは?労働基準法の規定を解説
1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える「法定外残業」を命じるためには、「時間外労働及び休日労働に関する労使協定」いわゆる「36協定」を締結し、労働基準監督署に届け出た上で、就業規則への規定が必要となります。
36協定の締結・届出がない状態で法定外残業を命じることは、労働基準法違反となり認められません。また、36協定の締結・届出の有無にかかわらず、発生した法定外残業に対しては、基礎賃金の25%以上の時間外割増賃金を支払わなくてはなりません。
36協定を締結する場合、月ごとの時間外労働の時間や休日労働の回数を定めることになりますが、この設定できる時間数には上限が設けられています。
原則的な上限は月45時間
36協定を締結した場合の原則的な法定外残業の時間は、月45時間及び年間360時間までが上限となります。
この上限は月単位・年単位ともに満たす必要があります。よって、上限ギリギリの45時間を毎月運用すると年間で360時間を超えてしまいます。また、年間で360時間に収まっていても特定の月に45時間を超えることは認められません。
なお、この上限時間のカウントには、法定休日における労働時間つまり「休日労働」の時間は含まれません。
特別条項を設けても上限がある
やむを得ず月45時間を超えて残業が必要となるような「臨時的な特別な事情」がある場合は、36協定に「特別条項」を設けることで原則の上限を超えた残業が認められます。
ただし、この「臨時的な特別な事情」とは、「予算、決算業務」「納期のひっ迫」「大規模クレームへの対応」「システム障害対応』など、通常予見できない急激な業務量の増加の場合に限られます。
「事業主が必要と認めた場合」「慢性的な人手不足」などは、恣意的な運用に繋がり制度趣旨を著しく損なうことから、臨時的な特別な事情とは認められません。
また、特別条項を設けた場合でも、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間未満及び年720時間未満であること
- 月45時間を超えることのできる回数は年6回まで
- 時間外労働と休日労働の合計時間が「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」のいずれも80時間以内であること
原則の上限規制が時間外労働のみのカウントであるのに対して、特別条項を設けた場合の上限規制は休日労働も含めてカウントする点に注意が必要です。
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月80時間超えの残業がもたらすリスクとは
月80時間を超えるような長時間残業は、企業にとっても従業員にとっても、さまざまなリスクをもたらすことになります。
80時間の残業は「過労死ライン」
月80時間の時間外労働は、一般的に「過労死ライン」と呼ばれます。
労働者災害補償保険(いわゆる労災)の「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」において、「2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強い」とされています。特に脳血管疾患や虚血性心疾患など、脳や心臓疾患のリスクが通常時と比べ、2~3倍高まるとの研究結果も発表されています。
また、同じく「心理的負荷による精神障害の認定基準」においては、「1ヶ月に80時間以上の時間外労働」が心理的負荷「中」であると定義されています。こうした基準から、月80時間を超える時間外労働は、過労死に至るリスクが高いと言えるでしょう。
さらに、仕事のストレスや睡眠不足によって精神的にも大きな負担が掛かり、メンタルヘルス不調に悩まされている方も少なくありません。十分な休息時間を確保できないと記憶力・集中力・判断力が低下し、思わぬ業務災害を招く畏れもあるため、注意が必要です。
また、近年では過労死ラインに達していなくても、基準に近い時間外労働が生じており、深夜残業や不規則なシフト勤務など、労働時間以外の負荷が重く掛かっていた場合には、労災認定されるよう、基準の見直しが行われました。
医師による面接指導とは
単月でも、時間外労働と休日労働の合計が80時間を超過した従業員から申し出があった場合は、医師による面接指導を受けさせなくてはなりません。労働安全衛生法に基づき、長時間労働に伴う脳疾患や心臓疾患などを予防するため、企業は従業員の健康保護に努める義務があります。
また、時間外労働と休日労働の合計が80時間を超えた従業員本人に対して、労働時間に関する情報を通知し、当該従業員に関する労働時間や深夜労働の回数などの情報を、産業医に提供する必要があります。
さらに、面接指導を実施した医師から意見聴取を行い、「深夜労働の制限」や「休暇の付与」など、指導に基づく必要な措置を行わなくてはなりません。
月80時間を超えると立入検査対象に
たとえ36協定に特別条項を設けていたとしても、月80時間を超える残業が行われている事業場は、管轄都道府県労働局の過重労働特別対策班の立入検査対象となる可能性があります。
立入検査において、「資料の提供を拒む」「データを改ざんする」などの非協力的な行為があったり、長期にわたる悪質な違法残業などが発覚した場合は、企業名公表や書類送検が行われることもあります。
過重労働特別対策班とは
通常「かとく」と呼ばれる過重労働特別対策班は、2016年に違法長時間労働・過重労働の撲滅を目的に東京と大阪に設立され、その後全国に「かとく監理官」が配置されました。
摘発逃れを目的とした勤怠データ改ざんなどに対応するため、ITに精通した労働基準監督官で構成されており、これまでも大手広告代理店や大型ディスカウントショップなどが摘発対象となっています。
立ち入り時には、主に「36協定は締結・届出されているか」「36協定の定めに沿った運用がされているか」「適切な残業代が支払われているか」「月80時間を超える残業がないか」などがチェックされることになります。
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月の残業80時間超についてよくある質問
月80時間を超える残業に関して、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
- Q月何時間残業すると違法になる?
- Q残業が月80時間超えたらどうなる?
- Q残業80時間は1日あたり何時間の残業?
月80時間の残業抑制のために勤怠管理システムを活用
「かとく」による立入検査や医師の面接指導の対象となるという観点以前に、80時間を超える残業は、従業員の健康確保の観点から避けるべきでしょう。
そのために有用なのが勤怠管理システムです。勤怠管理システム導入により、リアルタイムに個々の勤怠状況が把握できるため、超過労働になりそうな従業員に対して個別にケアができます。
また、工数管理機能を備えたシステムや、プロジェクト管理ツールとの連携が可能なシステムであれば、切り分けたタスクごとに生産性が計測できるため、業務全体の見直しも可能となります。
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