• 「単身赴任手当ってどのくらい支給すればいいのだろう?」
  • 「支給条件は、何を基準に決めればいいのだろう?」
  • 「そもそも、支給しなければいけない制度なのか?」

企業の人事労務担当者や経営者の方々は、単身赴任に関する手続きや制度設計について、さまざまな疑問や課題を感じていませんか?

単身赴任は、企業の事業拡大や人材配置の一環として避けて通れないものですが、そこには従業員の生活負担、企業側の人件費、さらには公平性の確保といった複雑な問題が絡み合います。

そして、その負担を軽減し、働きやすい環境を整える手段として「単身赴任手当」が存在します。しかし、手当の設計や運用について曖昧なままでいると、コストの増大や従業員満足度の低下、不公平感による社内トラブルを引き起こすリスクがあります。

本記事では、単身赴任手当の基本的な定義や支給条件、公務員と民間企業の相場比較、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。さらに、デメリットに対する対策や実務上の疑問点についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

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単身赴任手当とは

単身赴任手当は、従業員が家族と別居し、職務上やむを得ず単身で勤務地へ赴任する際に支給される手当です。この手当は、家族を扶養する従業員が勤務地での生活費負担を軽減するために設けられており、公務員と民間企業の両方で導入されています。

単身赴任手当は、住居費や帰省費、生活費の負担を軽減するだけでなく、従業員の働きやすさを向上させる制度としても重要です。適切な設計により、従業員の満足度や企業の信頼性を向上させる効果があります。

単身赴任手当の定義と目的

単身赴任手当とは、従業員が業務上の都合で家族と別居して単身赴任をする際に、企業が支給する手当のことです。法律で定められた制度ではないため、支給の有無や支給額、支給条件は企業によって異なります。

その目的は、主に従業員の経済的負担を軽減し、単身赴任に伴う精神的なストレスを和らげることにあります。単身赴任は、従業員にとって経済的な負担が大きくなるだけでなく、家族との別居による精神的なストレスも伴います。

企業は、単身赴任手当を支給することで、従業員の生活の安定と仕事への集中を支援し、人材の確保と定着を促進することができます。

単身赴任手当の類似制度

単身赴任手当と類似する住居関連の手当には、以下のようなものがあります。

  • 住宅手当(家賃補助)
  • 帰省手当
  • 引越し手当

住宅手当(家賃補助)

住宅手当は、単身赴任先での住居費を補助するための制度です。企業が住居費の一部または全額を負担し、従業員の経済的負担を軽減します。

具体的には、実費精算や一律支給といった方法が取られる場合が多く、支給額は居住エリアの家賃相場に応じて設定されることが一般的です。また、住宅手当に代えて、社宅や借り上げ住宅を提供する企業もあります。

帰省手当

帰省手当は、単身赴任者が自宅に帰省する際の交通費を補助する制度です。従業員が家族と過ごす時間を確保し、単身赴任に伴う精神的なストレスを軽減することを目的としています。

支給方法には実費精算や一律支給があり、条件付きで帰省の回数や交通費の上限が設定される場合もあります。

引越し手当(転勤支度金)

引越し手当は、勤務地への引っ越しにかかる費用を補助する制度で、家財道具の輸送費、新居の敷金・礼金、必要備品の購入費用、初回の交通費などをカバーします。単身赴任の場合でも、引越し費用は大きな負担となるため、引越し手当は重要な支援となります。

支給方法は一律支給や実費精算など企業により異なりますが、一律支給の場合、実際の引越し費用との差が発生することがあるため、支給方式の適切な設計が重要となります。

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単身赴任手当の相場

単身赴任手当の相場は、公務員と民間企業で基準や支給額が異なります。公務員の場合は人事院規則によって支給額が明確に定められていますが、民間企業ではそれぞれの就業規則等で独自に要件や支給額を定めています。

公務員の単身赴任手当相場

公務員の単身赴任手当は、人事院規則や各自治体の条例に基づき運用されています。国家公務員の単身赴任手当は、基本額が月額30,000円で、本宅から赴任地までの距離に応じて以下のように加算されます。

距離(以上~未満)加算額
100~300km8,000円
300~500km18,000円
500~700km24,000円
700~900km32,000円
900~1,100km40,000円
1,100~1,300km46,000円
1,300~1,500km52,000円
1,500~2,000km58,000円
2,000~2,500km64,000円
2,500km~70,000円

公務員の単身赴任手当は、家族を扶養していることが前提条件となります。また、距離基準が厳格に定められており、勤務地と本宅の直線距離が60㎞以上でなければ支給対象とならない場合もあります。この基準は、民間企業が手当設計をする歳の参考にもなります。

参考:人事院規則九―八九(単身赴任手当)|法令検索e-Gov

民間企業の単身赴任手当相場

民間企業の単身赴任手当は、法律で定められた制度ではないため、各企業が独自に支給額や支給条件を決定しています。厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査の概況」によると、企業規模別の単身赴任手当(別居手当など含む)の相場は、以下のようになっています。

従業員規模平均支給額
1,000人以上47,600円
300~999人47,700円
100~299人46,100円
30~99人49,600円

他の諸手当に比べて企業規模による差が小さく、むしろ100人未満の小規模企業において、従業員確保のために支給額を高く設定する傾向が見られるのが特徴です。また、都市部での競争力を確保するために、勤務地が大都市圏の場合には手当額を増額する企業もあります。

参考:令和2年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

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単身赴任手当のメリット

単身赴任手当を導入するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 従業員満足度の向上
  • 人材定着率の向上
  • 企業イメージアップ

従業員満足度の向上

単身赴任手当は、家賃や生活費、交通費といった負担を軽減することで、従業員の生活の安定をサポートします。手当の適切な支給により、従業員の不安が軽減され、仕事への集中力が高まります。

単身赴任は、従業員にとって経済的な負担が大きくなるだけでなく、家族との別居による精神的なストレスも伴います。企業が単身赴任手当を支給することで、従業員は生活の安定と精神的な安心感を得ることができ、仕事に集中しやすくなります

人材定着率の向上

単身赴任手当の充実は、離職率の低下に直結します。単身赴任による経済的負担や家族との別居は、従業員にとって大きなストレス要因ですが、単身赴任手当がこれを補うことで、従業員が安心して働き続けられる環境が整います

特に、優秀な人材ほど、他社からの引き抜きや転職の可能性が高くなります。単身赴任手当などの充実した福利厚生制度は、優秀な人材を確保し、定着させるための重要な要素となります。

企業イメージアップ

福利厚生の整備は、企業の社会的責任(CSR)の一環として評価され、企業イメージを高めます。特に、単身赴任者が多い業界では、手当制度の充実が採用競争力を向上させる重要な要素となります。

従業員を大切にする企業というイメージは、求職者にとって魅力的です。単身赴任手当などの福利厚生制度が充実していることは、企業の社会的責任を果たしている証であり、優秀な人材を獲得する上で有利に働きます。

企業のイメージアップは、顧客や取引先からの信頼にも影響します。従業員満足度が高い企業は、顧客満足度も高い傾向があり、結果として企業の業績向上にも繋がります。

単身赴任手当のデメリット・注意点

単身赴任手当は、従業員だけでなく企業にとっても大きなメリットをもたらしますが、一方で以下のようなデメリット・注意点も考えられます。

  • 人件費の負担増加
  • 制度運用・管理の手間
  • 従業員間に不公平感が生まれる

人件費の負担増加

単身赴任手当の導入や拡充により、企業の人件費負担が増加します。単身赴任手当は、従業員に支給する給与とは別に支給されるため、支給額や支給対象者が多いほど、人件費の負担は大きくなります。

特に、中小企業やベンチャー企業にとっては、人件費の増加は大きな負担となる可能性があります。単身赴任手当を導入する際には、企業の財務状況を考慮し、支給額や支給条件を慎重に検討する必要があります。

制度運用・管理の手間

単身赴任手当を支給するには、従業員の赴任状況や家族構成などを確認する必要があります。また、支給額の計算や支給手続き、税務処理など、事務作業も発生するため、人事・労務管理部門に多大な負担を強いることがあります。

従業員数が多く、単身赴任者が多い企業では、人事システムを導入するなど、事務処理の効率化を図る必要があります。

従業員間に不公平感が生まれる

単身赴任手当は、支給対象が限定されることで従業員間に不公平感を生む可能性があります。例えば、手当の支給基準が「扶養家族の有無」や「勤務地の距離」などに基づく場合、手当を受けられない従業員から不満が出ることがあります。

特に、単身赴任を経験していない従業員が「特定の層だけが優遇されている」と感じるケースが問題になることがあります。不公平感を解消するためには、支給条件を明確化し、従業員に分かりやすく説明することが重要です。

また、単身赴任手当の代わりに全従業員が対象となる別の支援策(福利厚生ポイント制度など)を導入するなど、従業員全体に納得感を与えることも重要です。

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単身赴任手当の支給条件

単身赴任手当は、従業員が単身で勤務地に赴任する際の経済的負担を軽減するために支給されます。ただし、すべての従業員が対象となるわけではなく、支給条件には以下のような要素に対して明確な基準が設けられています。

  • 支給対象となる従業員
  • 支給対象となる赴任先
  • 支給期間
  • 申請手続き

これらの条件を事前に明確にし、就業規則に明記しておくことで、従業員間の混乱や不公平感を防ぐことが可能です。以下では、単身赴任手当の具体的な支給条件について詳しく解説します。

支給対象となる従業員

単身赴任手当の支給対象となる従業員は、一般的に、扶養家族を有し、会社から命じられた転勤に伴い、単身で赴任する従業員です。それぞれ、以下のような定義に従って判断されます。

  • 扶養家族の定義: 一般的には、配偶者や子供など、生計を共にしている家族を指します。
  • 転勤の定義: 会社の指示による、恒常的な勤務地の変更を指します。
  • 単身赴任の定義: 転勤に伴い、家族と別居して赴任先に住むことを指します。

具体的には、配偶者が就労中で勤務地に同伴できない場合や、子どもが教育上の理由で転居できない場合(例: 高校受験や大学進学)などが該当します。

また、上記要件を満たしている場合でも、将来的に家族が赴任先に合流する予定がある場合などは、支給対象外となることがあります。

支給対象となる赴任先

単身赴任手当は、従業員の本宅から勤務地までの距離が一定以上ある場合に支給されます。公務員の場合は通勤困難な距離(60㎞以上)であることが条件とされ、人事院規則に基づいて運用されています。

民間企業においては、たとえば「自宅から勤務地までの直線距離が50㎞以上」「勤時間が2時間以上かかる」などが赴任先の要件として挙げられます。

ただし、赴任先が海外の場合は、距離の基準が適用されないことが多く、会社が用意した社宅や寮に入居する場合は、支給対象外となることがあるなど、いくつかの例外も考えられます。

支給期間

単身赴任手当の支給期間は、転勤が続く限り有効とされるのが一般的です。ただし、企業によっては一定期間を上限としている場合もあります。

一時的な帰省や赴任先からの長期出張などの期間は、支給期間から除外される場合があります。また、支給期間の途中であっても、家族が赴任先に合流したときや、従業員が新たに扶養義務を持たなくなったときは、その時点で支給が終了する場合があります。

申請手続き

単身赴任手当を受け取るには、事前に企業が指定する申請手続きを行う必要があります。一般的には、単身赴任の実態を証明する以下の書類の提出を求めます。

  • 申請書(企業が用意したフォーマット)
  • 扶養家族がいることを証明する書類(例: 住民票や戸籍謄本)
  • 転勤命令書または勤務命令書
  • 赴任先に居住することを証明する賃貸契約書など

また、定期的に支給条件を確認するため、扶養家族の状況や勤務地の変更について報告を求める企業もあります。

手続きが煩雑な場合、申請漏れや不備が発生しやすいため、オンライン申請を認めるなど、従業員が単身赴任手当を申請しやすいよう、手続きを簡素化し、必要な情報を分かりやすく提供することが重要です。

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単身赴任手当についてよくある質問

単身赴任手当について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
単身赴任手当は課税対象?
Q
単身赴任手当を必ず支給しなければならない?

単身赴任手当と勤怠管理システムで従業員に安心して働いてもらいましょう

単身赴任手当は、従業員が職務上やむを得ず単身で勤務地に赴任する際に支給される手当です。家賃や生活費、帰省費などの負担を軽減し、従業員の生活基盤を支える重要な制度として多くの企業で導入されています。

単身赴任手当には、経済的支援を通じて従業員の満足度向上や心理的な安定をもたらし、結果として人材定着率の向上にも寄与するなど、多くのメリットがあります。

しかしその一方で、人件費の増加や制度運用の手間、不公平感の発生といった課題も伴います。こうしたデメリットは、透明性の高い制度設計や運用ルールの明確化によってある程度避けることができます。

制度運用の成功には、労務管理の効率化が欠かせません。支給条件や支給額の確認、申請手続きの管理など、単身赴任手当の運用には煩雑な業務が伴います。こうした業務負担を軽減し、正確かつ効率的な運用を実現するためには、勤怠管理を支援するシステムの導入が非常に効果的です。

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