継続雇用制度とは、雇用している高年齢者を、本人の希望に応じて定年後も引き続き雇用する制度のことです。2021年4月の法改正では、70歳定年に向けた取り組みが努力義務として追加されるなど、高年齢者の雇用確保の動きは今後も続いていくと見られています。

具体的にどのような措置を講ずべきなのか、継続雇用した高年齢者の賃金設定はどうすべきかなどに、頭を悩ませている事業主の方も少なくないのではないでしょうか?

この記事では、継続雇用制度で求められている措置や、制度導入にあたって注意すべきポイントについて、わかりやすく解説します。

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継続雇用制度とは

継続雇用制度とは、雇用している高年齢者について、本人の希望に応じて定年後の雇用を確保する制度のことです。根拠法令は「高年齢者雇用安定法」で、大きく「再雇用制度」と「勤務延長制度」の2種類に分けられます。

高年齢者雇用安定法とは

高年齢者雇用安定法は、正式名を「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」と言います。少子高齢化による労働力人口の減少を受けて、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう環境整備を図ることを目的として制定されました。

本法における「高年齢者」とは55歳以上の者、「中高年齢者」とは45歳以上の者を指します。2013年の改正では、継続雇用制度の対象者に制限をかけることが原則禁止され、高年齢者雇用確保措置の義務違反に対する企業名公表などが追加されました。

また、2021年の改正では、「定年年齢を65歳から70歳まで引き上げる」などの措置が努力義務として追加されました。

再雇用制度とは

再雇用制度とは、定年年齢で一度退職扱いにしてから、再度雇用契約を締結して雇用を延長する制度です。一般的には、定年前の雇用形態から嘱託社員や契約社員などに変更したり、賃金引き下げなど労働条件が変更されたりします。

なお、退職金制度がある場合は、定年退職時に支払われることになります。

勤務延長制度とは

勤務延長制度とは、定年年齢を迎えても退職扱いとはならず、そのまま雇用期間を延長する制度です。一般的には、定年前の雇用形態や労働条件が変更されることなく、そのまま適用されます。

専門的知識やスキル、会社への貢献度が特に高い従業員に対して多く適用されます。なお、退職金制度がある場合は、延長した雇用期間の終了時に支払われることになります。

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継続雇用制度のメリット

継続雇用制度の導入によって得られるメリットには、以下のようなものがあります。ただし、再雇用制度と勤務延長制度では、多少異なる場合もあります。

  • 人的リソースが確保できる
  • 助成金を活用できる
  • 人件費を抑制できる

人的リソースが確保できる

熟練労働者の高いスキルや貴重なノウハウを継続して活用でき、人員不足を回避できます。少子高齢化や労働者の志向の変化などによって、市場で優秀な人材を確保するのは難しい状況です。

豊富な実務経験を持つ高年齢者の継続雇用によって、採用コスト削減や人員不足解消につなげられます。また、高年齢者が培ってきた知識・経験・スキルを共有し、効果的な人材育成を実現できます。

助成金を活用できる

継続雇用制度を導入すると、雇用関係助成金を受給できる可能性があります。

「65歳超雇用推進助成金」は、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する措置を講じた場合に、実施内容に応じた一定額の助成を受けられます。

「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」は、65歳以上の高齢者をハローワーク等の紹介により雇い入れた場合に、助成を受けられます。なお、65歳以上の高齢者のみを対象とした「生涯現役コース」は、2022年3月で廃止され2023年度より当コースに統合されています。

雇用関係助成金は、審査や抽選が行われる補助金と違って、申請要件を満たしていれば必ず受給できるため、制度導入に合わせて活用を検討してみましょう。

人件費を抑制できる

再雇用制度の場合、新たに雇用契約を締結する際に労働条件の見直しにより、従前の賃金が引き下げられることが多くなっています。一般的に、定年時点の労働者は、賃金が高額であることが多いため、人員を確保しつつ人件費が削減できることになります。

ただし、正社員と業務量や責任範囲が同等の場合は、合理的な理由がない限り、賃金を大幅に減額しての再雇用契約締結は無効とされる可能性もあります。労働者とのトラブルを避けるためにも、賃金決定の評価基準を明確化しておくことが重要です。

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継続雇用制度のデメリット

継続雇用制度には、メリットの裏返しとも言える、以下のようなデメリットが考えられます。

  • 世代交代が進まない
  • 生産性が低下する
  • 管理が難しくなる

世代交代が進まない

継続雇用制度は、世代交代を阻害する要因になる可能性があります。高年齢者から継続雇用の申し出があった場合、基本的に会社これを拒否できません。優れた能力や豊富なノウハウを持つ人材がいる一方、全員が一定水準以上の能力を持つとは限りません。

再雇用を見送りたい高年齢者とも雇用契約を結ばなければならず、若い労働者の採用に充てられる費用や業務が少なくなります。若手従業員の育成やキャリアアップに悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

高年齢者が培ってきた能力や経験を若手従業員に共有できるよう、業務体制の再編や役割の割り当てが重要になります。また、組織の若返りを促進する場合、早期退職制度を設けて再雇用契約の対象者を減らすのも1つの選択肢です。

生産性が低下する

再雇用制度の場合は、雇用形態や労働条件が変更されるのが一般的です。勤務日数や労働時間の削減によって負担は減る一方、定年前と比べて大幅に賃金が削減される可能性も十分考えられます。労働者は定年前とのギヤップを受け入れなければなりません。

業務内容の変更や職場の人間関係への適応も強いられた場合、業務へのモチベーションが低下します。やりがいや充実感を得られなくなったとしても、不思議ではないでしょう。

また、体力の衰えや体調面への不安から、判断力・記憶力・注意力が低下し、作業効率や正確性が低下する可能性もあります。高年齢者の雇用が生産性低下や組織の弱体化を招く可能性もあるため、高年齢者へ任せる業務や役割の選定が重要です。

管理が難しくなる

再雇用制度によって、役員や管理職に就いていた労働者が、一般従業員として職場復帰する可能性もあります。定年前と職場での立場が逆転することが考えられ、新たな人間関係や立場へ適応しなければなりません。

かりに定年前とのギャップを高年齢者が受け入れられない場合、人間関係のこじれから職場内トラブルに発展するケースも出てきます。こうしたトラブルは職場の雰囲気も悪化させ、若手従業員が流出する可能性もあります。

また、上長や人事労務担当者は、人間関係の調整や若手従業員から寄せられた不満や要望に対応しなければなりず、業務負担やストレスが増大することも考えられます。

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継続雇用制度の導入で注意すべきポイント

継続雇用制度のうち、特に再雇用制度を選択した場合は、労働条件の見直しに伴い以下のような課題や問題点が出てきます。

  • 賃金の見直し
  • 必要な制度の導入・整備
  • 就業規則の変更・届出
  • 社会保険の手続きと住民税の取り扱い

賃金の見直し

再雇用制度の場合、雇用形態や労働条件が変更になることが多いため、一般的には賃金も下がることになります。賃金を引き下げる場合は、同一労働同一賃金の原則を踏まえ、新しい業務内容や責任範囲などに照らして適切な設定をすることが必要です。

「再雇用である」という事実のみをもって、極端に金額を引き下げることは認められません。一方で、退職前の役職や長年の功績という理由により、不自然に高額な賃金を設定するのも、他の従業員の反発を招く恐れがあるため、十分な説明ができないようであれば避けるべきでしょう。

必要な制度の導入・整備

再雇用した高年齢者の希望に合わせた働き方を実現するため、必要に応じて制度の導入や整備を進めましょう

たとえば、低下した体力に配慮した短時間勤務制度、柔軟な勤務に対応できるフレックスタイム制の導入などが考えられます。また、適切な賃金の設定ができるよう、人事評価制度の見直しなども進める必要があるでしょう。

就業規則の変更・届出

継続雇用制度導入や定年の引き上げ、それに伴う新しい制度導入などに沿って、就業規則の変更が必要です、また、変更した就業規則は、労働基準監督署に届け出て、その内容は従業員に周知しなれければなりません

なお、「継続雇用制度に係る就業規則の規程例」が厚生労働省から提供されているため、こちらを参考にするのがおすすめです。

社会保険の手続きと住民税の取り扱い

再雇用制度の場合、賃金が定年前より大幅に下がる可能性があるため、標準報酬月額の変更が必要です。なお、標準報酬月額とは、月給などをもとにした社会保険料算定の基礎となる金額です。

かりに賃金が大幅に減少したとしても、原則3ヶ月間は従前の給与水準に基づいた社会保険料を支払う必要がありますが、「同日得喪」の手続きをすることで賃金が下がった月から社会保険料の引き下げが可能です。

なお、「同日得喪」が認められるのは、定年退職翌日に再雇用した場合のみです。定年退職日から再雇用までに空白が1日でもあると適用できないため、注意が必要です。

住民税は、前年の所得に応じて決まるため、定年後再雇用された年は、下がった賃金に対して割高な住民税を支払う必要が有ることを、あらかじめ本人に伝えておきましょう。

なお、勤務延長制度の場合は、基本的に賃金などの労働条件が変わらないため、基本的に社会保険料の手続きは発生せず、住民税に関する説明も必要ないでしょう。

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継続雇用制度についてよくある質問

継続雇用制度について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
継続雇用制度の対象となる労働者を制限できる?
Q
継続雇用制度を拒否されたら、義務違反になる?
Q
継続雇用制度を利用したら、有給休暇はリセットされる?
Q
定年を迎える人がしばらくいない場合は導入不要?

継続雇用制度で人材の有効活用を

働く意欲を失わない高年齢者の経験やスキルの活用は、企業にとって多大な利益をもたらします。ナレッジを共有し、ノウハウの継承や若手従業員の育成につなげられます。また、助成金を活用すれば、継続雇用制度導入によって生じる経済的負担も削減可能です。

ただし、助成金の活用には複数の書類提出や様々な手続きをこなさなければなりません。雇用形態や労働条件変更に伴う正確な勤怠管理も求められます。勤怠管理や事務作業を効率化するには、勤怠管理システムの導入が有効です

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