少子高齢化で労働力人口が減少する一方で、定年退職後も働く高齢者は増加しており、定年後再雇用制度が注目されています。

再雇用制度を導入する場合は、そのメリット・デメリット、再雇用時の給与や労働時間の適切な設定などについて、しっかり押さえておく必要があります。この記事では、再雇用制度の導入のポイントや注意点を、事業主や労務管理者の方向けにわかりやすく解説します。

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再雇用制度とは

再雇用制度とは、定年年齢に達した従業員を一度退職扱いにしてから、再度雇用契約を締結して雇用関係を継続する制度です。

「高年齢者雇用安定法」において、事業主に義務づけられた「継続雇用制度」のうちのひとつで、従業員から再雇用の申し出があった場合、会社は原則拒否できません。

継続雇用制度とは

継続雇用制度とは、雇用している高年齢者について、本人の希望に応じて定年後の雇用を確保する制度です。継続雇用制度には、本記事で解説する「再雇用制度」と、「勤務延長制度」の2種類があります。

根拠法令である高年齢者雇用安定法(正式名「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」)は、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、環境整備を図ることを目的として制定されました。

勤務延長制度との違いは?

再雇用制度は定年後に一旦退職扱いとなるため、あらためて雇用契約を締結する際は、定年前の労働条件が変更されるのが一般的です。

対して「勤務延長制度」は。定年年齢を迎えても退職扱いとはならず、そのまま雇用期間を延長する制度です。よって、基本的に定年前の雇用形態や労働条件は変わりません

復職制度との違いは?

復職制度とは、育児・介護・配偶者の転勤などの理由で退職した労働者を再び雇用する制度です。ジョブ・リターン制度やカムバック制度とも呼ばれています。再雇用制度のように法律で導入が義務付けられている制度ではなく、その内容は会社によってさまざまです。

復職制度は、自社での勤務経験のある従業員を雇うため、採用・教育コストを抑えられ、エンゲージメントを高めるメリットがあります。一方で、設計や運用があいまいだと、安易な退職が増えるというデメリットもあります。

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再雇用制度のメリット・デメリット

再雇用制度導入によるメリット・デメリットに関して、会社側と労働者側双方の視点からまとめました。

会社側のメリット・デメリット

再雇用制度の導入による会社側のメリットとしては、人件費を削減できる点が挙げられます。再雇用後は契約社員や嘱託社員など、労働者と有期雇用契約を結ぶことが多いため、賃金を抑えられます。賃金は再雇用前の60~90%に定めるのが一般的です。

新たに人材を採用する必要もないため、採用コストも削減できます。また、労働者がこれまで培ってきたノウハウ・経験・知識を活かせるため、人材教育にも良い影響を与えられます。担当変更にともなう顧客ロイヤリティ低下を心配する必要もありません。

一方、デメリットとしては、労働者のモチベーション管理が難しい点が挙げられます。雇用形態や労働時間が変更となるため、業務内容が変わらなかったとしても再雇用前と比べて賃金は減ります。事前に労働者と個別に話し合いの場を設け、同意を得ることが重要です。

さらに、労働者が継続雇用を希望した場合、スキルや実績に関わらず対象者全員を再雇用しなければなりません。再雇用を見送りたい労働者がいたとしても、再度雇用契約を締結せざるを得ず、世代交代が遅れる可能性があります。

労働者側のメリット・デメリット

労働者側のメリットとしては、健康状態に合わせた働き方が選択できる点が挙げられます。再雇用前よりも1日の労働時間や1週間の勤務日数は減るため、心身にかかる負担を軽減できます。自分のペースで引き続き仕事を継続でき、充実した日々を送れます。

定年前より賃金は減るものの安定した収入源の確保によって、経済的な不安を軽減できる点もプラスです。また、再雇用前と業務内容が変わらなければ、これまで培ってきた経験や技術を活かせます。

一方で、定年前と業務内容や役割が変わらなかったとしても、賃金が下がることが多いため、モチベーションを保ちづらくなります。また、再雇用後の職場における立場が、定年前とは逆転する可能性もあり、人間関係がこじれることも考えられます。

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再雇用制度導入のポイントと注意点


ここでは、再雇用制度導入における注意点や、活用できる助成金などについてご紹介します。

再雇用時の給与の決め方

再雇用時の賃金については、会社ごとの規定により異なりますが、退職前の60~90%程度とするのが一般的です。退職前に比べて労働時間が少なくなったり、業務内容が軽くなったりするため、これに応じた賃金の引き下げは合理性があると言えます。

ただし、退職前と同じ業務内容に同じ労働時間従事させる場合、同一労働同一賃金の原則が適用されるため、再雇用のみを理由とする賃金の引き下げは、合理性を欠くと判断される可能性もあります。

なお、定年前に何らかの役職に就いていた場合でも、再雇用後は一般従業員に戻るケースが多く、この場合は役職手当などが支給されないため、賃金全体も下がることになります。

再雇用制度に関する助成金の活用

再雇用制度を導入した場合は、雇用関係助成金の「65歳超雇用推進助成金」や「特定求職者雇用開発助成金」を受給できる可能性があります。

「65歳超雇用推進助成金」は、「65歳超継続雇用促進コース」「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」「高年齢者無期雇用転換コース」という3つのコースで構成されています。

このうち「65歳超継続雇用促進コース」は以下のいずれかの措置を実施した事業主に対して、実施内容に応じた額が助成されます。

  • 65歳以上への定年引上げ:対象者数及び措置内容に応じて15~105万円
  • 定年の定めの廃止:対象者数に応じて40~160万円
  • 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入:対象者及び措置内容に応じて15~100万円
  • 他社による継続雇用制度の導入:措置内容に応じて10万円または15万円

また、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」は、高年齢者などの就職困難者を、ハローワーク等の紹介により雇い入れた場合に助成されます。

支給額は、高年齢者を短時間労働者以外として雇用する場合は最大60万円(50万円)、短時間労働者として雇用する場合は最大40万円(30万円)となっています。
※()内は、中小企業事業主以外に対する支給額

再雇用制度の就業規則規定例

再雇用制度の内容は、就業規則等に明記して労働者に周知しておく必要があります。たとえば、60歳定年の定めがある事業場において、65歳までの再雇用制度を導入する場合は、以下のように規定します。

(定年後再雇用)
第○条 従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日をもって退職とする。ただし、定年後も引続き就業を希望する者については、65歳まで再雇用する。

再雇用制度の手続きと契約時の注意点

雇用契約書には雇用形態・賃金・賞与など、労働条件全般に関して記載をします。契約期間に関しては、契約社員や嘱託社員として契約するケースが多いため、1年ごとに契約更新するのが一般的です。

なお、有期雇用労働者の場合、有期契約の通算期間が5年を超えた場合、労働者に無期転換申込権が発生します。ただし、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者については、労働局の認定を受けることにより、無期転換申込権を発生させないことも可能です。

また、再雇用した場合の年次有給休暇の扱いにも注意が必要です。再雇用制度による継続雇用の場合、一度退職扱いとはなるものの、雇用契約は継続されているとみなされるため、有給休暇の付与日数はリセットされません

ただし、労働条件の変更により週の所定労働日数が少なくなる場合は、比例付与となるため、フルタイム勤務よりも付与日数は減ることになります。

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再雇用制度についてよくある質問

再雇用制度についてよく寄せられる質問に関して、Q&A形式でまとめました。

Q
再雇用制度の対象者は?
Q
退職時に休職中でも再雇用は必要?
Q
再雇用時の労働条件を拒否されたら?

再雇用制度で働く意欲のある高年齢者を有効活用

高年齢者の蓄積された知識やスキルは、会社にとって貴重な財産です。再雇用制度導入によって、長期にわたって高年齢者の持つノウハウを活用できます。効果的な人材育成や良質な顧客体験の提供など、さまざまなメリットをもたらします。

再雇用制度は勤務延長制度を活用するよりも、人件費を削減できる点も魅力です。ただし、再雇用後の給与や契約期間など、多くの点を明確にしておかなければなりません。制度に関するルールが曖昧だと、導入後にトラブルを招く可能性が高まります。

制度への理解を深めてから、ルールの整備に着手しましょう。運用体制やルールが決まったら就業規則へ明記し、従業員全体へ周知する場を設けましょう。

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