定時で働く通常の勤務以外に、みなし労働時間で働く制度があるのはご存知でしょうか。「聞いたことはあるけど詳しくはわからない」「導入を検討していて調べている」という方も多いと思います。
この記事では、みなし労働時間制について徹底解説します。メリットやデメリット、導入効果についてわかりやすく説明しているので、ぜひ参考にしてください。
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みなし労働時間制とは
みなし労働時間制とは、その日の実際の労働時間に関わらず、あらかじめ定めた時間働いたとみなす制度です。業種や職種によっては、必ずしも一律の労働時間で管理することが適当でない場合もあるため、柔軟な働き方の一種として定められています。
みなし労働時間制には、裁量労働制と事業場外みなし労働制があり、それぞれ対象業務や労働時間の考え方が異なります。
決められた時間分、働いたとみなす
みなし労働時間制では、会社が指定したある一定の仕事をこなすと、決められた時間分働いたとみなされます。会社が決めるといっても、会社の都合のいいように無茶な仕事を短時間でさせることはできません。
みなし労働時間制を導入する企業は、実態の労働時間とみなし労働時間の差がないように調整しなければならず、あまりにかけ離れた時間の設定は無効とされます。
みなし残業はまったく異なるので注意
みなし労働時間制と似ている言葉で誤解が生じやすいのが「みなし残業」。みなし残業は、みなし労働時間制とは全く別物です。
みなし残業制度は、会社があらかじめ算定した時間だけ残業したものとみなして、月に定額の残業代を支給する制度で、労働基準法の正式な制度ではありません。
例えば、月20時間分とする固定残業制度を導入した場合、実際には月20時間の時間外労働が発生しなかったとしても、毎月支払う賃金に20時間分の残業代(みなし残業代)を含めて支払います。
一方で、実際の時間外労働がみなし残業時間を超過した場合は、超過分の残業代を追加で支払う必要があります。
みなし労働時間制は、あくまでも労使協定で定めた時間分だけ労働したものとみなされる「みなし労働時間」で考えるのに対し、みなし残業制度はあらかじめ算定した時間だけ残業したものとして算出した「みなし残業代」で考える点で、全く別の制度です。



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みなし労働時間制の種類
みなし労働時間制には2種類あります。1つが裁量労働制で、もう1つが事業外みなし労働時間制です。さらに裁量労働制の中に2種類あり、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制に分かれます。

事業場外みなし労働時間制
事業場外みなし労働制は、外まわりの営業職やツアーガイドなど、事業場外で労働する従業員に対して適用される制度です。
事業場外で業務に従事しており、かつ使用者の具体的な指揮監督ができずに労働時間を算定するのが困難な業務が対象になります。
事業場外みなし労働時間制では、「所定労働時間分、労働したものとみなす」場合と「通常その業務を遂行するのにかかる時間分、労働したものとみなす」場合があります。
このうち、「通常その業務を遂行するのにかかる時間分、労働したものとみなす」場合は労使協定の締結が必要であり、さらにその時間が法定労働時間を超える場合は協定書を管轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
なお、外まわりの営業職などであっても、労働時間を関する立場の者が同行している場合や、通信機器などにより随時指示を受けながら業務を行う場合は、「労働時間を算定するのが困難」とは認められません。

専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として定められた19業務に限って認められる制度です。
対象業務から実際に適用する業務を労使間で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合に、労使協定であらかじめ定めた時間働いたものとみなされます。対象業務は以下のとおりです。
- 新商品・新技術の研究開発、人文科学、自然科学に関する研究の業務
- 情報処理システムの分析、設計の業務
- 新聞、出版事業において記事の取材、編集の業務
- デザイナー業務
- 放送番組、映画等の制作プロデューサーまたはディレクター業務
- コピーライター業務
- システムコンサルタントの業務
- インテリアコーディネーターの業務
- ゲーム用ソフトウェア創作の業務
- 証券アナリストの業務
- 金融工学ほか統計学、数学、経済学等の知識を用いて行う金融商品の開発を行う業務
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士の業務(一級、二級建築士)
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
- 大学における教授研究の業務
企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、本社や本店など事業運営の決定権を持つ事業場の対象業務につく労働者に対して、労使委員会であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
専門業務型と違って、要件を満たす事業場の労働者であれば、ある程度幅広い労働者が対象者になり得ます。恣意的な運用を防止するため、個々の労働者の同意や労使委員会の決議など、企画業務型裁量労働制の導入には、厳格な手続きが要求されています。
対象業務とするには、以下の4要件が必要です。
- 事業の運営に関する事項についての業務であること。
- 企画、立案、調査および分析の業務であること
- 業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること
- 業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないことと業務であること
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みなし労働の導入実態
みなし労働時間制の導入実態は厚生労働省が発表しています。厚生労働省の令和2年の調査では、みなし労働時間制を採用している企業は全体の13%でした。
そのうち事業場外みなし労働時間制を採用している企業は11.4%、専門業務型裁量労働制を導入している企業は全体の1.8%、企画業務型裁量労働制を導入している企業は全体の0.8%という結果に。
さらに1000人以上の大きな企業に限ると、みなし労働時間制を採用している企業は26.1%。300人〜999人の従業員規模の場合は16.9%、99人以下の小さな企業だと10.8%でした。
この調査結果から、大きな企業ほど様々な働き方を導入していることが分かります。

※参考サイト/厚生労働省『令和2年就労条件総合調査の概況』
みなし労働時間制の残業代はどうなる?
みなし労働時間制は、実労働時間が法定労働時間の適用を受けないため、基本的には時間外割増賃金(残業代)は発生しません。
ただし、まったく発生しないわけではないため、事業主や管理者としては、みなし労働時間制において残業代が発生するケースを押さえておく必要があります。
みなし労働時間制に残業は原則ない
みなし労働時間制では残業は原則として発生しません。
みなし労働時間が8時間の場合、9時間働いても支払われる賃金は8時間分です。一方で、7時間しか働かなかったとしても8時間分の賃金は保障されます。
残業となる場合
みなし労働時間制であっても残業代が発生するケースとして考えられるのは、設定したみなし労働時間が、そもそも1日の法定労働時間の8時間を超えていた場合です。
みなし労働時間制は実労働時間に関係なく労働時間を一定とみなす制度であり、そのみなし労働時間は法定労働時間の適用を受けます。
よって、みなし労働時間を法定労働時間の8時間を超えて設定した場合は、その超える時間分につき、通常賃金に加えて25%以上の時間外割増賃金を上乗せした時間外手当を支払わなければなりません。
休日・深夜労働の扱い
みなし労働時間制でも、休日出勤や深夜労働に関しては、通常の定時制と同じく割増賃金を支払わなければなりません。
法定休日に労働が発生した場合は、35%以上の休日割増賃金の支払いが必要です。そして、この休日労働の時間については、みなし労働時間ではなく「実労働時間」で計算する必要があります。
なお、法定外休日労働の労働時間については、特に休日労働についての取り決めがなかった場合はみなし労働時間分働いたと扱われます。
また、深夜労働(22時~翌朝5時)が発生した場合には、実労働時間数に応じて25%以上の深夜割増賃金を支払う必要があります。
このように、みなし労働時間は休日労働や深夜労働には適用されないため、注意が必要です。

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みなし労働時間制のメリット
会社側のメリットとして大きいのは、人件費が安定することです。
みなし労働制を導入した場合、あらかじめ定めた時間分を労働者が働いたとみなして計算し賃金を支払うため、人件費コストが安定して管理がしやすくなります。
また、残業しても給与が増えないため、より短時間で仕事を終了させるという意識が従業員に根付き、生産性の向上が期待できます。
従業員の目線でのメリットは、与えられた業務を遂行すれば早く退勤することができます。予定に合わせて「今日頑張って終わらせて、明日は早く帰ろう」と、ワークライフバランスを自分の裁量でコントロールできるメリットが期待できるでしょう。
みなし労働時間制のデメリット
会社側のデメリットとしては、従業員の労務管理や健康管理が煩雑になる点が挙げられます。労働者ヘの業務の割り当てが、みなし労働時間とつり合いがとれていないケースでは、長時間労働を誘発して習慣化する恐れがあります。
従業員にとっては、繁忙期や業務が多い日でも、深夜労働と休日勤務以外の残業代が出ないのがデメリットです。
また、長時間労働に陥りやすく、とくに自己管理能力の乏しい労働者は生産性が上がらないため、その傾向が強くなります。
みなし労働時間制と36協定・就業規則
36協定は、労働時間が1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える場合や休日労働をさせる場合に締結しなければならない労使協定です。みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には、36協定の締結・届出が必要となります。
また、みなし労働時間制を採用する場合には、就業規則にその旨を記載する必要があります。
法定労働時間を超える場合は36協定届け出が必要
みなし労働時間制の場合は、みなし労働時間が法定労働時間の範囲内であれば、基本的には36協定を結ぶ必要はありません。
ただし、 みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には、36協定を締結して管轄の労働基準監督署へ届け出が必要となります。
みなし労働時間制を採用する場合、全社員が同じ働き方をする必要はありません。例えば、取材や営業で外回りに行く従業員に限って、みなし労働時間制を採用することも可能です。
対象業務が限定される場合は、就業規則にみなし労働時間制が適用される対象業務を明確に決めておく必要があります。
みなし労働時間制は勤怠管理システムで楽に
みなし労働時間制を導入することで残業代の計算が楽になるとはいえ、休日出勤、深夜労働の把握や長時間労働に対するメンタルヘルスケアなど労働時間の管理は必要です。
また、適切なみなし労働時間を設定するには、勤怠管理システムによる定量的な分析が非常に有効です。みなし労働時間制をスムーズな運営に、勤怠管理システムは不可欠です。
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