勤怠管理業務をシステム化する場合、「既存製品を導入するのではなく、自社でシステム開発したい」と思われる事業主の方もいらっしゃると思います。

勤怠管理システムの自社開発そのものは、リソースが揃っていれば十分可能です。ただし、費用対効果や長期的な保守の面から考えると、必ずしもベストな選択とは言えません。

この記事では、勤怠管理システムを自社開発するメリット・デメリット、開発における注意点などについてわかりやすく解説します。また、自社開発と既存製品の導入とどちらがおすすめなのか、という点についてもお伝えしていきます。

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結論:勤怠管理システムの自社開発はおすすめしません

先に結論からお伝えすると、勤怠管理システムの自社開発は、開発コスト・納期・運用負担など、様々な面でデメリットが多く、おすすめできません。

特に既存のパッケージソフトを流用せず、一からシステムを作っていくスクラッチ開発を選択した場合、多額の開発費用と長期的な納入計画が必要になります。

また、勤怠管理システムの運用中にメンテンナンスや法改正への対応が必要になった場合、基本的に自社で対応しないといけません。開発ベンダーへ常駐を依頼する形も取れますが、毎回費用が掛かります。

勤怠管理システムは、会社の業務に応じて要件が全く異なる基幹システムと異なり、法律の枠組みの中で開発を進めていくため、ある程度要件が統一化されるのが特徴です。

出退勤打刻・勤怠データの自動集計・休暇管理など、勤怠管理に必要な機能も決まっており、自社で開発を進めたとしても、最終的には市場で販売されている既存製品と似たようなシステムになります。

近年は、低コストで機能性に優れたクラウド型勤怠管理システムが、多数市場に登場しています。ベンダーが提示している月額料金を支払えばすぐに利用できるため、初期費用はほとんど掛かりません。

月額料金は、数千円の定額のほかに、利用人数×単価費用という従量制の製品も多く、無駄なコストの発生を抑えられます。

また、インターネット環境さえ整っていれば、場所を問わずアクセスできるため、テレワークの導入も併せて進められます。アップデートや法改正への対応もベンダー側が対応するため、自社の従業員が作業を行う必要はありません。

上記のように、既にハイスペックな勤怠管理システムが安く入手できる環境が整備されています。わざわざ勤怠管理システムを一から開発するメリットは、ほとんどありません。

勤怠管理システムを自社開発するメリット

勤怠管理システムのスクラッチ開発を選択した場合に得られるメリットとしては、カスタマイズ自由度の高さと社内浸透度の早さが挙げられます。

カスタマイズの幅が広い

勤怠管理システムを自社開発する最大のメリットは、カスタマイズ自由度が高いことです。既存のフレームワークやテンプレートを使用しないスクラッチ開発を選択した場合、自社の要望を可能な限り詰め込んだオリジナル性の高い勤怠管理システムに仕上げられます。

例えば、テレワークの導入を併せて検討していた場合、出退勤時刻を正確に把握するべく、スマートフォンの位置情報を活用したジオフェンシング機能を搭載することが考えられます。

会社側で従業員が打刻可能な行動範囲を設定できるので、在宅勤務やサテライトオフィスワークなど、様々な働き方に対応可能です。

また、開発コストを抑えたい場合、既存のフレームワークやテンプレートを流用するパッケージ開発を選択すると、コストと開発期間を抑えつつ追加機能を加えられます。

もちろん、既存製品の中にも、導入段階で必要に応じて機能を取捨選択できたり、自社の運用に合うように機能修正したりといったカスタマイズが可能なものもあります。ただし、もともとの製品の備えている機能の範囲内に限られるため、自由度は自社開発に比べると劣ります。

従業員がシステムに慣れるのが早い

自社開発の場合は、開発工程の最下流に運用テストが行われることから、従業員が実稼働環境で操作性や画面遷移などを確認できます。事前に設定や機能を確かめられるため、納品後に滞りなく実運用が開始可能です。

また、スクラッチ開発の場合、搭載機能やユーザーインターフェースに関して、自社の要望に合わせて自由に設計できるため、機能性や操作性を最大限追求できる点も特徴です。

これが既存製品の場合だと、導入してしばらくは、機能や操作についてシステム担当者への問い合わせが集中するなどして、従業員が慣れるのに時間がかかってしまいます。

勤怠管理システムを自社開発するデメリット

勤怠管理システムを自社で開発するデメリットとしては、主に以下の4つが挙げられます。

  • システム会社選定が手間
  • 運用に乗るまでの期間が長い
  • 保守コストがかかる
  • 法改正に個別対応が必要となる

システム会社選定が手間

自社にシステム部門がない場合、複数の部署から従業員を選んでプロジェクトチームを立ち上げ、まずは開発ベンダーの選定を行う必要があります。

ベンダー選定は、勤怠管理システムのユーザビリティ・開発費用・納品後のサポート体制など、様々な影響に関与してくるため、非常に重要な作業です。

また、勤怠管理システムは、従業員の個人情報・勤怠データ・給与などを扱うため、開発ベンダーには労働法務関係への豊富な知識と勤怠管理システム開発の実績が求められ、ベンダー選定作業は相当の手間となります。

運用に乗るまでの期間が長い

勤怠管理システムの開発プロジェクトが発足後、システム開発の予算や人的リソースによって変動もありますが、納品までに最低でも1年~1年半の期間が必要です。

自社開発はカスタマイズの自由度が高い半面、プログラムやフレームワークを全て一から開発していくため、完成までに膨大な工数が必要となります。

一方で、クラウド型の勤怠管理システムを利用する場合は契約締結後にすぐ利用が可能です。ソフトウェアのインストールやインフラ環境構築も必要とせず、初期費用はほとんど掛かりません。

保守コストがかかる

自社で勤怠管理システムを開発した場合、セキュリティ対策やシステム障害へ対応するため、保守要員が必要になります。自社にセキュリティやシステムに精通した人材が不在の場合、開発ベンダーを常住させる形となり、人件費がかさみます。

一方、市場でクラウド型の勤怠管理システムを購入した場合、アップデートやメンテナンス作業はベンダー側が対応するため、自社で作業を行う必要はありません。運用負担やランニングコストを大幅に削減できます。

法改正に個別対応が必要となる

自社で勤怠管理システムを開発した場合、法改正のたびにシステム改修が必要になります。仮に法改正を把握しておらず対応が漏れていると、違法状態、コンプライアンス違反とみなされる可能性があるため、注意が必要です。

一方で既存製品であれば、法改正があった場合の仕様変更や機能追加は、サポートサービスとして含まれており、自社で対応する必要はありません。開発元で自動アップデート対応してくれるため、法改正に伴う混乱やトラブルのリスクを最小限に抑えられます。

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勤怠管理システムを自社開発するためのポイント

勤怠管理システムを自社開発する場合、失敗のリスクを最小限に抑えなければなりません。重要なポイントは、開発の流れとデータベース設計の重要性を理解することです。

勤怠管理システム開発の流れ

基幹システムや情報システムなど、一般的なシステム開発と同様、基幹管理システムを開発する場合も以下の手順に沿って、開発を進めます。

  1. 要件定義
  2. 設計
  3. 開発
  4. テスト
  5. 運用

最も重要な工程は、要件定義です。クライアントが最も関与できる工程で、勤怠管理システムの完成度やユーザビリティを左右する重要な工程です。

要件定義で自社とベンダーの間で認識のズレが起きると、修正工数の増大に伴い、追加費用の発生や納期遅延を招くリスクが高まります。疑問点や曖昧な点を残したまま設計や開発に移らないよう、要件定義の段階で納得いくまでベンダー側とすり合わせを重ねることが重要です。

データベースの設計

データベースを設計するためには、マスタデータとトランザクションデータにデータを分類する必要があります。

マスタデータはデータ処理の基礎に該当し、管理者のみが編集権限を持つデータです。データベースの設計に欠かせません。社員テーブルや部課テーブルなど、データの追加や変更回数が少ないデータが、マスタデータに該当します。

一方、トランザクションデータは、勤怠テーブルや有給管理テーブルなど、編集頻度が高い個別データが該当します。

リレーションに矛盾や冗長が発生していないか、入念にチェックが必要です。基本的にデータベース設計や検証は、開発ベンダーが行うことになりますが、クライアントの視点からもチェックしておくことで、よりリスクを軽減できます。

開発プログラミング言語について

勤怠管理システムは、Webアプリとしての開発が主流になるため、Webアプリ向けのプログラミング言語であれば、特にこだわる必要はありません。

フロントエンド言語としては、HTML・CSS・JavaScriptの組み合わせが基本ですが、バックエンド言語はJava、Ruby、PHPなどが候補になるでしょう。

勤怠管理システムは既存製品のほうがリスクは少ない

勤怠管理システムの自社開発は、開発コスト・納期・運用負担など、既存製品と比べメリットよりもリスクのほうが、はるかに大きいです。市場で販売されている既存製品であれば、長年の運用実績もあり、法改正への自動対応も望めるなど、安心して導入できます。

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