勤怠管理業務をシステム化しようとする場合、既存の勤怠管理システムをパッケージ購入するほかに、自社で開発するという手段も考えられます。

その場合、まず最初に行うべき工程として「要件定義」があり、この要件定義の質がプロジェクトの成否を分けると言っても過言ではありません。

この記事では、勤怠管理システム開発における要件定義とは何をすべきなのか、わかりやすく解説したうえで、そもそも本当に勤怠管理システムは自社開発すべきなのかについても、お伝えしていきます。

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要件定義とは|システム開発の流れ

要件定義は勤怠管理システムに限らず、システムやソフトウェア開発をする上で、最も重要な工程です。クライアントが最も密接に関与できる工程であるだけでなく、システムの完成度を左右するからです。

システムの導入によってどのような課題を改善したいか、どのような機能が必要かなど、開発目的が明確になっていないと、導入後のミスマッチにつながります。

同様に開発ベンダーとのコミュニケーションが不足していた場合、修正工数増加に伴う追加費用や納期遅延を招きます。要件定義は開発コスト・納期・機能性など、多くの面に多大な影響をもたらす工程です。

疑問点や認識のズレを生まないよう、ベンダー側と密接なコミュニケーションを重ねることが重要です。

要件定義|「何をやりたいのか」を明確にする

要件定義は勤怠管理のシステム開発によって、「どのような目的を達成したいのか」「どのような業務をシステム化したいのか」、クライアントが自社の要望を開発ベンダーとすり合わせていく工程です。システム開発の最上流に位置し、最も重要な工程です。

開発ベンダーと自社の間で認識のズレが生じていると修正作業の工数が増大し、追加費用の発生や納期遅延など、当初の想定通りに開発が進まない可能性が高くなります。

最悪の場合は、本来の意図とはかけ離れた勤怠管理システムの開発につながり、高い投資に見合ったメリットが得られません。ミスマッチを避けるためにも、まずは対象業務を全て洗い出し、システム化が必要な内容と不必要な内容を選別します(業務要件)。

一般的に勤怠管理システムは、出退勤時刻の打刻・勤怠データの集計・有給休暇の取得状況管理など、勤怠管理に必要な基本的機能に加え、ワークフローや他システムとの連携機能も搭載しています。

どの機能をシステム化するかによって、開発コストと業務効率性に大きく影響を与えるため、社内で検討を重ねることが重要です。操作性や使い勝手を最大限追求するべく、大まかな費用と工数を見積もります。

さらに、整理された業務要件から、システムへの設定内容を検討していくシステム要件に移ります。システム開発のメリットは、既存製品に搭載されていない自社オリジナルの機能を加えられる点です。

ただし、ベンダー側の技術不足や予算オーバーによって、すべての要件が必ずしもシステム化できるわけではないことも、留意しておきましょう。要件定義で固まった内容に基づき、設計や開発を進めていきますので、納得いくまでベンダー側と協議することが重要です。

設計|システムの設計図を作る

要件定義が固まったらシステム化する業務を機能に落とし込み、具体的な開発に進むための設計書を作成します。設計書は基本設計と詳細設計の2種類に分類できます。基本設計は、システムの概要を記載した設計書です。

基本設計においては、システムの全体像を描き、スケジューリング、工数設計などを行います。また、サーバなどのハードウェア、データベースや開発ツールなどのソフトウェアの選定を行うのもこの工程です。

続く詳細設計においては、基本設計を踏まえた上で、実際の機能がどのように動くか、どのような部品が必要かなど、それぞれの単位に細分化した設計書を作成します。

設計工程におけるクライアントの作業として、設計書のレビューを行うのが一般的です。開発ベンダーから提示された基本設計書や詳細設計書の内容を確認し、要望や修正箇所をフィードバックして設計を詰めていきます。

曖昧な点が残った状態で開発に入ってしまうと、ギャップやミスマッチが発生するリスクが高くなります。クライアントの設計書レビューが完了次第、開発工程に移行します。

開発|プログラミングでシステムを作り上げていく

複数のプログラミング言語を使い、設計書で定義した仕様通りに動くようプログラムを開発していきます。開発工程ではベンダー側がプログラム開発を行うため、クライアントが行う作業はありません。

ただし、実際のプロジェクトにおいては、A機能の開発中にB機能の設計を行うなど、複数の工程が並行稼働する場合も珍しくありません。

テスト|単体~結合~統合

プログラミングによって指示した内容通りにシステムが正確に作動するか、コーディングの記載ミスがないか、基本的に以下の3段階に分けたテストを実施します。

  1. 単体テスト(プログラムテスト)
  2. 結合テスト(インテグレーションテスト)
  3. 総合テスト(システムテスト)

単体テストは、プログラム単体で正常に動作するかをテストします。PTやユニットテストなどとも呼ばれます。位置づけとしては、上流工程の詳細設計に対応しています。このテストは、開発ベンダーが行います。

結合テストはITとも呼ばれ、データ移行や画面切替など、複数のプログラムを結合して動作する機能が正常に動くかを確認します。位置づけとしては、上流工程の基本設計に対応しています。基本的には開発ベンダーとクライアントが、それぞれテストします。

総合テストはSTとも呼ばれ、システム全体が要件通りに正常に動作するかをテストします。位置づけとしては、上流工程の要件定義に対応しています。開発ベンダーが行うものをシステムテスト、クライアントが行うものを運用(受け入れ)テストと、区別して呼ぶ場合もあります。

特に、運用テストにおいて致命的バグや機能不足が発覚した場合、要件定義まで手戻りが発生することになり、納期の遅延やコスト超過から最悪の場合はプロジェクト自体が頓挫する可能性もあります。

運用・保守|実際に運用してみる

納品された勤怠管理システムを実際に運用していく段階です。システム部門や人事部門の担当者が、勤怠管理システムの操作方法に関して従業員に指導します。操作方法に関しての質問やトラブルが発生した場合は、すぐにベンダーへ相談しましょう。

なお、初期障害対応や保守のため、開発ベンダーの一部が一定期間クライアントのもとに常駐する場合もあります。

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勤怠管理システムの要件定義で注意すべきポイント

要件定義は勤怠管理システムの開発において、クライアント側が最も関与できる工程です。開発コスト・納期・ユーザビリティに影響するため、自社にとって必要な機能と不必要な機能の選別が非常に重要になります。

本当にシステム化が必要な業務か

限られた予算と納期の中で勤怠管理システムを開発するためには、洗い出した業務の振り分けが重要になります。必要な機能と不必要な機能を効率的に仕分ける判断材料として、業務の発生頻度が挙げられます。

例えば、出退勤時刻の打刻・残業申請・有給休暇の取得申請などは、日常的に発生する業務で、勤怠管理システムに欠かせない機能です。一方、海外進出や外国人労働者を採用する予定がない場合、多言語表示は必要ありません。

また、所定労働時間や就業形態が固定されている状態が前提になりますが、時差出勤に対応するためのスケジュール設定や所定労働時間の調整など、使用頻度が極端に低い機能も無理して追加する必要はありません。

現時点で使用予定がないまたは使用頻度が低い機能は、一旦要件定義から除外し、日常的に使用する機能だけに絞りましょう。

システム化に合わせて新制度導入という選択も

Excelやタイムカードで勤怠管理を行っていた場合、業務負担増大を理由に見送っていた働き方を勤怠管理システムの導入に合わせて、取り入れるのも一つの選択肢です。

例えば、フレックスタイム制は、1日の始業時間及び終業時間を従業員が自由に設定できる働き方で、アナログ管理だと労働時間や残業時間の把握が困難です。

そこで、勤怠管理システムを導入すると、フレックスタイム制に対応したスケジュール作成や労働時間の自動集計に対応でき、正確な勤怠データを効率的に収集できます。また、社外からアクセスできるように設定すれば、在宅勤務の導入が可能です。

また、時間単位年休なども、システムを介さない勤怠管理では非常に運用が困難な制度と言えます。

勤怠管理システムの導入によって働き方の自由度が高まり、優秀な従業員の流出防止やワークライフバランス改善など、企業と従業員の双方に多大なメリットをもたらします。

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勤怠管理システムは自社開発すべきか

結論から言うと、勤怠管理システムの自社開発はメリットよりもデメリットの方が多く、おすすめできません。低コストかつ多機能なクラウド型勤怠管理システムが、市場で多数登場している背景もあり、自社開発によって得られるメリットは、ほとんど望めないのが現状です。

システム化によって業務効率がアップし、会社全体の生産性向上に寄与することは、基幹業務であっても勤怠管理業務であっても変わりません。

ただし、基幹業務が会社の業種や商品・サービスによって多種多様であるのに対し、勤怠管理業務は多少会社ごとに就業規則などによる差異があるとは言え、基本的には同じ法律の枠組みの中で行うことになります。

現在、市場で提供されている勤怠管理システムは、出退勤打刻・シフト管理・休暇管理など、勤怠管理に必要な機能がある程度定型化・部品化されている状態です。

そのため、一から勤怠管理システムを開発した場合でも、多額の費用や長期に及ぶ開発期間を掛けた割に、最終的には既存製品と似たようなシステムになる可能性が高く、メリットは少ないと言えるでしょう。

また、納入後に法改正がありシステム改修が必要になった場合も、その都度改修依頼をする必要があり、万が一漏れてしまうと法律違反となるリスクもあります。

既存製品であれば、法改正への対応や機能追加に伴うアップデートも開発元で対応してくれるため、こうしたリスクはありません。

勤怠管理システムは既存製品の導入がおすすめ

勤怠管理システムの自社開発は、コスト・運用負担・納期など、あらゆる面においてメリットよりリスクのほうが大きくなります。一方、市場の既存製品は長年の運用実績があり、法改正にも自動で対応してもらえるなど、はるかに安心感が持てます。

「勤怠管理システムの選定・比較ナビ」をご利用いただくと、勤怠管理システムの中から、自社に最もマッチングするシステムを探し出せます。

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