残業代の計算をする際に必要とされる月平均所定労働時間は、どのように計算するのでしょうか?また、そもそも何故この月平均所定労働時間が必要なのでしょうか?
この記事では、事業主や給与計算担当者、労務管理者の方向けに、ケースごとに応じた月平均所定労働時間の計算方法について、わかりやすく解説します。
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月平均所定労働時間とは
月々の残業代を計算するには、基本的には当月の所定労働時間ではなく、年間の所定労働時間から算出する「月平均所定労働時間」が用いられます。
そして、年間の所定労働時間は、年度ごとの会社の勤務カレンダーによって変動するため、そのつど計算する必要が出てきます。
所定労働時間と法定労働時間
法定労働時間は、労働基準法が定める1日8時間・週40時間(特例措置対象事業場は44時間)という労働時間の上限を指します。
法定労働時間を超えて労働させるには、「時間外労働及び休日労働に関する労使協定」いわゆる36協定の締結・届出が必要です。また、実際に発生した法定時間外労働に対しては、割増率25%以上の時間外割増賃金が必要となります。
一方で所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で会社が独自に定める労働時間を指します。法定労働時間に収まっている限りは、所定労働時間を超える労働(法定内残業)には36協定も割増賃金も不要です。
たとえば、所定労働時間を7時間と定めた事業場においては、7時間を超え8時間までの残業に対しては1時間分の基礎賃金の支払いで足り、8時間を超えた時間分に対しては、基礎賃金に25%以上の割増賃金を加算した残業代の支払いが必要となってきます。
月平均所定外労働時間とは
よく似た言葉に「月平均所定外労働時間」というものがありますが、これは事業場別や業態別など、年間に発生した所定外労働時間の月平均を表す統計上の数値であり、給与計算などの実務で用いるものではため、特に意識する必要はないでしょう。
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月平均所定労働時間はなぜ必要?
残業代を計算する際に、その月の所定労働時間で計算した場合、暦日数によって時間単価が変動してしまいます。
たとえば、暦日数31日の月は、通常は28日の月より労働時間数が多くなります。一方で基本給は、月の歴日数に関わらず一定です。よって、同じ基本給でも歴日数の長い月の方が、時間単価が低く算出されることになります。
そこで、年間の所定労働時間から月当たりの平均所定労働時間を算出することで、毎月同じ時間単価で残業代が計算できるようにしたのが、「月平均所定労働時間」というわけです。
ただし、月平均所定労働時間が必要となるのは月給制の場合であって、時給制や日給制の場合はそもそも時間単価が決まっているため、その金額を用いれば良いということになります。
月平均所定労働時間の計算方法
具体的には、以下の計算式を用います。
(1年の暦日数 – 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12
年間休日は、会社ごとの勤務カレンダーによるため、必ずしも1/1~12/31の暦の区切りで計算する必要はありません。たとえば、会計年度が4/1~3/31で、年間休日もこれに従って決定される場合は、この期間で計算して差し支えありません。
ただし、つどつど会計年度で区切ったり、暦で区切ったりと変動させることは、重複期間あるいは空白期間が生じるため、認められません。
完全週休二日制で年間休日が104日もしくは105日の場合
祝日や年末年始休暇などを考慮しない完全週休二日制を採用している場合、2023年では年間休日が「365日 ÷ 7日(1週間)× 2日(休日)= 104.29」で104日~105日となります。1日の所定労働時間を8時間と設定している事業場の場合、月平均所定労働時間は、以下のとおりです。
104日:(365 – 104)× 8 ÷ 12 = 174
→月平均所定労働時間は174時間
105日:(365 – 105)× 8 ÷ 12 = 173.33…
→月平均所定労働時間は173時間または173.3時間
完全週休二日制で年間休日が120日の場合
完全週休二日制で祝日や年末年始休暇などを所定休日と定め、年間休日が120日である事業場の場合、月平均所定労働時間は以下のとおりです(1日の所定労働時間は8時間)。
(365 – 120) × 8 ÷ 12 = 163.33…
→月平均所定労働時間は163時間または163.3時間
1ヶ月単位の変形労働時間制の場合
1ヶ月単位の変形労働時間制の場合は、日や週によって所定労働時間が異なるため、1ヶ月の労働時間の上限から年間総労働時間を算出して、月の平均所定労働時間を求めます。
週の法定労働時間 | 月の歴日数 | |||
---|---|---|---|---|
28日 | 29日 | 30日 | 31日 | |
一般の事業場(40時間) | 160.0 | 165.7 | 171.4 | 177.1 |
特例措置事業場(44時間) | 176.0 | 182.2 | 188.5 | 194.8 |
まず、年間総労働時間を算出しますが、うるう年以外は28日の月が1、30日の月が4、31日の月が7であるため、上記表より「(160 × 1)+(171 × 4)+(177 × 7)」=2,083時間が一般の事業場における年間総労働時間となります。
そして、2,083時間を12で割った173.58時間が、一般の事業場において1ヶ月単位の変形労働時間制を採用した場合の、月平均所定労働時間ということになります。
1年単位の変形労働時間制の場合
1年単位の変形労働時間制の場合は、まず年間の所定労働時間の上限を求めて、これを12ヶ月で割って算出します。具体的には、以下のような計算式になります。
365日 ÷ 7日 × 40時間 = 2085.71…時間
2085時間 ÷ 12ヶ月 = 173.75時間
なお、うるう年の場合は、同様の計算式で「174.28時間」となります。
フレックスタイム制の場合
フレックスタイム制の場合は、通常の勤務形態と同様に「(1年の暦日数 – 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12」で計算します。
月平均所定労働時間の端数処理
労働時間や賃金の端数処理は、「労働者に有利となるように」行うのが原則です。よって、上記計算の173.33…や173.583など、端数が生じた場合は整数または小数点1位程度まで、切り捨て処理として計算します。
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基礎賃金の算出方法
月給制の従業員の割増賃金の元となる基礎賃金は、上記で算出した月平均所定労働時間を用いて以下のように計算します。
1時間あたりの基礎賃金 = 基本給 ÷ 月平均所定労働時間
なお、月給制以外の給与体系の場合は、それぞれ以下のように計算します。
給与体系 | 計算方法 |
---|---|
時間制 | 時給 |
日給制 | 日給額を一日の所定労働時間数で割った金額。但し、日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日の平均所定労働時間数で割る |
週給制 | 週給額を週の所定労働時間数で割った金額。但し、週によって所定労働時間数が異なる場合には、4週間における1週の平均所定労働時間数で割る |
週、月以外の期間によって定められた賃金 | その金額をその期間の所定労働時間数で割った金額 |
出来高払制等 | 賃金締切期間の賃金総額をその期間の総労働時間数で割った金額 |
月平均所定労働時間を算出して正しい給与計算を
月給制の残業代を正しく計算するためには、月平均所定労働時間も正しく算出しなければなりません。勤怠管理システムを導入することで、会社の就業規則に合わせた勤務カレンダー機能と連動して、年間休日数から簡単に月平均所定労働時間を計算できます。
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