「皆勤手当」は、従業員が欠勤や遅刻・早退を防ぎ、安定的な出勤を促すための制度として広く活用されています。給与とは別に支給される金銭的インセンティブは、従業員のモチベーションを向上させる効果が期待されています。

一方で「コスト負担が大きい」「有給休暇の取得を阻害する」といった課題があるのも事実です。また、具体的にどのような支給条件を設定すべきか、支給額はいくらにすべきかなどについて、お悩みの方も多いのではないでしょうか?

この記事では、皆勤手当についての基本的な定義や目的から、支給条件の考え方、メリット・デメリットなどについて、わかりやすく解説します。また、皆勤手当に代わる柔軟な制度の提案や、残業代との関係や支給額の相場についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

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皆勤手当とは

皆勤手当とは、一定の給与計算期間内に欠勤・遅刻・早退をせず、全日出勤した従業員に支給される手当です。企業が任意に設定する手当であり、出勤率の向上や労働者のモチベーション維持を目的としています。

労働基準法上の位置づけ
労働基準法第11条では「労働の対償として支払われるものは賃金とみなす」とされており、皆勤手当も賃金に該当します。 導入状況のデータ
給条件 期間中に欠勤がないこと
遅刻・早退がないこと
年次有給休暇は出勤扱いとしてカウントされることが多い
支給金額の相場 平均支給額: 約9,000円
中小企業(30~99人規模): 11,200円
大企業(1,000人以上): 6,400円

皆勤手当の定義と目的

皆勤手当は、従業員が所定の労働日数を欠勤・遅刻・早退なく働いた場合に支給される手当です。法律で定められたものではなく、各企業が独自に支給条件や金額を設定しており、主な目的としては以下の2点が挙げられます。

  • 出勤率の向上: 欠勤や遅刻を抑制し、安定した業務運営を確保する。
  • 労働者のモチベーション向上: 金銭的インセンティブによって勤労意欲を引き出す。

精勤手当との違い

皆勤手当と精勤手当は似ているものの、支給条件などに以下のような違いがあります。ただし、両者を同義で使っている企業もあるため、定義や要件は就業規則等で明記しておきましょう。

皆勤手当精勤手当
支給条件無遅刻・無欠勤・無早退勤怠状況が良好であること
支給額固定額遅刻・早退の回数に応じて減額
厳格さ高い低い

なお、企業によっては、皆勤手当の条件を緩和し「精勤手当」として運用することで、従業員の勤労意欲を維持しつつ制度の柔軟性を確保しています。 企業は自社の就業環境や従業員の働き方に応じて、どちらを導入するか適切に判断することが求められます。

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皆勤手当の支給条件

皆勤手当の支給条件は企業ごとに異なりますが、トラブルを避けるためにも、就業規則等に明記することが重要です。特に、欠勤、遅刻・早退、有給休暇取得などが、皆勤手当の支給にどのように影響するのかを明確に定めておく必要があります。

欠勤があった場合

欠勤があった場合、基本的に皆勤手当は支給されません。皆勤手当は、文字通り「皆勤」したことを評価して支給される手当であるため、欠勤があれば支給要件を満たさないという考え方です。

病気やケガなどにより欠勤した場合でも、原則として皆勤手当は支給されませんが、会社によっては、傷病休暇を取得した場合などは、欠勤扱いとしないケースもあります。

遅刻・早退があった場合

遅刻や早退があった場合でも、皆勤手当を不支給とするのが一般的です。ただし、1ヶ月の遅刻・早退の合計時間が一定時間以内であれば、皆勤手当を支給する、といった柔軟なルールを設けている企業もあります。

また、遅刻や早退の理由を考慮し、電車遅延による遅刻や、災害時に帰宅が困難になる事態を避けるために会社が早退を命じた場合など、やむを得ない理由による遅刻・早退は、皆勤手当の支給対象とするケースもあります。

有給休暇を取得した場合

有給休暇を取得した場合は、原則として「出勤扱い」として、皆勤手当の支給に影響がないようにしましょう。労働基準法第136条では、有給休暇取得を理由に不利益な取り扱いをしないよう定めています。

第百三十六条使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

労働基準法第136条|e-Gov 法令検索

有給休暇は、労働基準法で労働者の権利として保障されているものです。皆勤手当の支給要件に「有給休暇取得は欠勤扱いとする」といった規定を設けることは、労働者の正当な権利の行使を妨げることになってしまいます。

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皆勤手当のメリット

皆勤手当は、従業員が欠勤や遅刻・早退なく働くことを促すための金銭的インセンティブであり、企業と従業員双方にメリットがあります。企業側の主なメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 従業員のモチベーション向上
  • 欠勤や遅刻の減少

従業員のモチベーション向上

皆勤手当は、従業員が日々の業務に前向きに取り組むための動機付けとして効果的です。 金銭的なインセンティブは、従業員にとって大きなモチベーションとなります。

皆勤手当は、従業員の努力や貢献を認め、評価しているというメッセージを伝えることができます。皆勤手当によって、従業員は会社への帰属意識を高め、より積極的に業務に取り組むようになる可能性があります。

また、勤怠が良好であることを評価されることで、従業員は業務への責任感や達成感を感じやすくなり、自己管理能力の向上にもつながります。

欠勤や遅刻の減少

皆勤手当は、欠勤や遅刻・早退を抑制するための効果的な手段として運用されています。 皆勤手当を導入することで、従業員の欠勤や遅刻を抑制し、安定した勤怠状況を確保することができます。

勤怠改善が進むことで、業務運営が安定し、他の従業員への負担が軽減されます。特に、欠員が出ると業務に大きな支障をきたす職種や、チームワークが重要な職場においては、皆勤手当による欠勤抑制効果は大きいと言えます。

皆勤手当のデメリット

皆勤手当は出勤率向上や従業員のモチベーション維持に効果がありますが、企業にとっては以下のようなデメリット・注意点があります。

  • 人件費のコスト増大
  • 有給休暇取得の阻害

人件費のコスト負担増大

皆勤手当を支給することで、企業の人件費が増加します。皆勤手当の平均支給額は約9,000円と他の諸手当に比べて低めではありますが、対象者が多数存在する場合には年間で大きな負担となります。

出勤率が向上しても、必ずしも業務効率や質が向上するわけではありません。手当を支給するだけでは、費用対効果が不透明になる場合があります。

費用負担が大きくなりすぎないよう、支給額を低く設定したり、出勤日数に応じて段階的に支給したりするなどの工夫も考えられます。皆勤手当は比較的導入しやすい制度ですが、長期的なコスト負担を考慮し、費用対効果を見極めることが必要です。

有給休暇取得の阻害

「皆勤手当の支給条件」でもお伝えしましたが、有給休暇を取得したことをもって皆勤手当の支給条件から除外することを避けるべきです。かりに有給取得を欠勤とみなしている場合、従業員の有給休暇取得を阻害する要因になります。

有給休暇取得が減少すると、従業員の健康やワークライフバランスにも悪影響を及ぼします。また、企業にとっても、従業員の健康管理や法令遵守の面でリスクを抱えることになります。

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皆勤手当に代わる制度

皆勤手当は出勤率向上やモチベーション維持に一定の効果がありますが、現代の労働環境ではコスト負担や有給取得阻害のデメリットも懸念されます。皆勤手当に代わる柔軟で効果的な制度として「表彰制度」や「インセンティブ制度」があります。

表彰制度は非金銭的な報酬を活用してコストを抑えつつ従業員の承認欲求を満たし、インセンティブ制度は業績や成果に応じた公平な報酬を提供することで、生産性向上とモチベーション維持を実現します。

表彰制度

表彰制度は、一定期間内に優れた業績や努力を見せた従業員を表彰し、その功績を称える制度です。金銭的報酬だけでなく、非金銭的な報酬(感謝状や表彰など)も活用できるため、企業の状況に合わせた柔軟な運用が可能です。

表彰制度には、以下のように様々な種類があります。

  • 永年勤続表彰:長期勤続者を表彰する
  • 目標達成表彰:特定の目標を達成した従業員を表彰する
  • 功労賞:会社に貢献した従業員を表彰する
  • チームワーク賞:チームで優れた成果を上げた従業員を表彰する
  • グッドジョブ賞:日々の業務の中で、他の模範となる行動をとった従業員を表彰する

表彰されることで従業員は承認欲求が満たされ、業務への意欲や責任感が高まります。称賛や承認は、経済学や心理学においても高いモチベーション効果が証明されています。

業績だけでなく、勤続年数や業務への貢献度などさまざまな基準で表彰対象を設定でき、幅広い従業員の労働意欲を引き出せます。表彰制度は、非金銭的な報酬を活用することでコストを抑えつつ、効果的な運用が可能です。

インセンティブ制度

インセンティブ制度は、従業員の業績や成果に応じて報酬を支給する仕組みです。出勤率だけを評価する皆勤手当とは異なり、業務成果や貢献度を基準にするため、企業の生産性向上や公平な評価につながります。

現代の労働環境では、業績や効率を重視する傾向が強まっており、成果に応じた報酬制度は企業の生産性向上に繋がります。インセンティブには、以下のような種類があります。

インセンティブの種類内容例
成果インセンティブ個人またはチームの業績に応じた報酬
提案・改善インセンティブ業務改善や新提案に対する報奨金
特別インセンティブ繁忙期やプロジェクト達成時の報酬

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皆勤手当についてよくある質問

皆勤手当について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
皆勤手当は課税対象?
Q
皆勤手当は残業代の計算に含める?
Q
皆勤手当の相場は?

皆勤手当の運用は勤怠管理システムが有効

皆勤手当は、出勤率向上や従業員のモチベーション向上を目指して導入されている制度です。しかし、人件費負担の増加、有給休暇取得の阻害といったデメリット・注意点もあり、現代の多様な働き方に適応するには課題が残ります。

こうした状況の中、表彰制度やインセンティブ制度といった皆勤手当に代わる柔軟な取り組みも検討の価値はあるでしょう。これらの制度は企業の負担を抑えつつ、従業員のエンゲージメントを高める効果的な方法として、多くの企業で導入が進んでいます。

また、皆勤手当や代替制度を効果的に運用するためには、正確で効率的な勤怠管理が不可欠です。適切な勤怠管理は、出勤状況の把握や制度運用の透明性を保つだけでなく、従業員の負担軽減や労務トラブルの防止の観点からもにも欠かせません。

特に、法令遵守や適切な労務管理が求められる現代では、システムを活用した勤怠管理が重要です。勤怠管理システムを導入することで、出退勤データの自動収集や有給休暇の取得管理、残業代の正確な計算が可能になり、管理者の業務負担を大幅に軽減できます。

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