excelの複雑な数式と格闘し、勤怠データとの突合作業に追われる日々。社会保険料率や税制の変更がないか、常にアンテナを張り続ける緊張感。そして、従業員の生活に関わる大切なお金だからこそ、「もし間違えたら…」というプレッシャーは計り知れません。
その貴重な時間と精神的な負担、本来は事業の成長や、より良い職場づくりのために使うべきではないでしょうか。手作業での管理を続ける限り、この悩みは従業員が増えるほどに大きくなっていきます。
その根深い課題を解決し、担当者と企業の双方に余裕を生み出す鍵が、「自社に最適な人事給与システム」の導入です。
しかし、いざ導入を検討しても、「機能や料金、何から比較すればいい?」「クラウドとオンプレミスって何が違う?」「結局、うちの会社にはどの製品が合うの?」と、新たな悩みが生まれるのも事実です。
そこで本記事では、人事給与システムの基本的な役割から、失敗しないための具体的な比較ポイント、そして2025年現在の市場を踏まえた最新のおすすめ製品までを、わかりやすく解説・ご紹介します。
勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。
人事給与システムとは
人事給与システムとは、企業の根幹業務である「人事管理」と「給与計算」を統合的に管理し、業務効率化とコンプライアンス遵守を実現するためのITシステムです。
従来はExcelや手作業で行われることも多かった、従業員情報の管理、勤怠データの集計、社会保険料や所得税の計算といった一連の作業を、このシステム一つで自動化・完結させることが可能になります。
労働基準法をはじめ、企業が遵守すべき法律は多岐にわたり、年々その内容は複雑化しています。人事給与システムは、頻繁な法改正にも迅速に対応し、煩雑な人事労務業務における人的ミスや法令違反のリスクを低減します。
これにより、人事・労務担当者の負担が大幅に軽減され、人材育成や制度設計といった、より付加価値の高い戦略的な人事業務に注力できるようになります。結論として、人事給与システムは単なる給与計算ソフトではなく、企業の健全な成長を支える人事戦略の基盤となる、不可欠な経営ツールと言えるでしょう。
人事給与システムの役割
人事給与システムの主な役割は、「正確な給与計算の自動化」「複雑な人事情報の統合管理」「法改正への迅速な対応」の3つに集約されます。
まず、毎月の給与計算は、勤怠データや各種手当、社会保険料など多くの項目が絡み合い非常に複雑ですが、システムはこれらを自動で計算し、人的ミスを大幅に減らします。
次に、従業員の基本情報から評価、異動履歴といった人事情報を一元管理することで、必要なデータを迅速に抽出し、適切な人材配置や育成計画に活用できます。これは、経済産業省が推進する「人的資本経営」の観点からも重要視されています。
さらに、毎年のように行われる保険料率の変更や税制改正といった法改正にも、信頼できるシステムであれば自動でアップデート対応するため、担当者が都度情報を追いかける手間を削減し、コンプライアンス違反のリスクを回避します。
具体的には、以下のような多岐にわたる業務をカバーします。
- 月々の給与・賞与計算
- 年末調整業務の自動計算
- 社会保険(算定基礎届・月額変更届など)の手続き書類作成
- 労働保険の年度更新
- 給与明細や源泉徴収票のWeb発行(ペーパーレス化の実現)
- マイナンバーの収集・厳格な管理
このように、人事給与システムは煩雑なルーティンワークを効率化し、企業の法的義務の遵守を確実にするだけでなく、蓄積された人事データを活用することで、組織全体の生産性向上に貢献する役割を果たします。
給与計算ソフトとの違い
給与計算ソフトが「給与計算」という特定の業務に特化しているのに対し、人事給与システムは、給与計算に加えて「人事管理」や「労務管理」の機能までを網羅的にカバーする、より広範囲なシステムであるという点が決定的な違いです。
両者の違いは、その機能範囲と目的にあります。給与計算ソフトの主目的が「給与計算の効率化」であるのに対し、人事給与システムの目的は、業務効率化に加えて「人事情報の可視化と戦略的活用」「組織全体の生産性向上」までを見据えています。この目的の違いが、搭載される機能の差となって表れます。
比較項目 | 給与計算ソフト | 人事給与システム |
主な機能 | 給与・賞与計算、給与明細発行 | 給与計算、人事管理、労務管理、年末調整、社会保険手続き |
管理データ | 勤怠、支給・控除項目など | 従業員の基本情報、評価、スキル、異動履歴などを含む人事情報全般 |
主な目的 | 給与計算業務の効率化 | 人事労務業務全体の効率化、人事情報の戦略的活用 |
連携性 | 限定的(一部の勤怠ソフトなど) | 勤怠管理、会計、ERP、タレントマネジメントなど多様なシステムと連携可能 |
クラウド型とオンプレミス型
人事給与システムには、インターネット経由で利用する「クラウド型」と、自社内にサーバーを設置して運用する「オンプレミス型」の2タイプがあり、コスト、運用、カスタマイズ性の面で大きな違いがあります。
近年、DX推進の流れや働き方の多様化を背景に、クラウド型(SaaS)が市場の主流です。これは、クラウド型が持つ「場所を選ばないアクセス」や「法改正への自動アップデート」といったメリットが、現代の企業ニーズに高く合致していることを示しています。
クラウド型とオンプレミス型の特徴は対照的であり、自社にどちらが適しているか、以下の比較表でご確認ください。
比較項目 | クラウド型 (SaaS) | オンプレミス型 |
初期費用 | 低い、または無料 | 高い(サーバー、ソフトウェアライセンス購入費) |
月額料金 | 発生する(月額・年額課金) | 基本的に発生しない(年間保守費用は別途) |
導入期間 | 短い(最短即日) | 長い(数ヶ月単位) |
法改正対応 | ベンダーが自動でアップデート | 自社でインストール・設定変更が必要 |
運用・保守 | ベンダーに一任(メンテナンス不要) | 自社で対応(専門知識を持つ人員が必要) |
カスタマイズ性 | 制限あり(設定範囲内) | 高い(自社の業務フローに合わせやすい) |
セキュリティ | 高度なセキュリティ体制を持つベンダーが多い | 自社のポリシーに合わせて自由に構築可能 |
初期費用を抑えて迅速に導入し、運用の手間をかけたくない企業にはクラウド型がおすすめです。一方、独自の業務フローに合わせた大幅なカスタマイズや、厳格なセキュリティ要件を持つ大企業などではオンプレミス型が選択される場合があります。
勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい
勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。
人事給与システムの種類
人事給与システムは、搭載されている機能の範囲によって、いくつかの種類に大別されます。これは、企業が抱える課題や組織の成熟度が多種多様であるため、ベンダー各社がそれぞれ異なるニーズに応える製品パッケージを提供しているからです。
例えば、勤怠管理や会計まで含めたバックオフィス全体の効率化を目指す企業もあれば、まずは複雑な給与計算と人事管理を正確に行うことを最優先する企業もあります。また、近年では人材育成や評価制度といった戦略的人事(タレントマネジメント)の機能を重視する声も高まっています。
自社の課題を解決し、将来の成長に繋がる導入を実現するためには、まずこれらのシステムの種類とそれぞれの特徴を理解することが、適切な製品を選択する上で最も重要な第一歩となります。
トータルカバータイプ
トータルカバータイプは、一般的にERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)と呼ばれるシステムの一部として提供され、人事・給与だけでなく、会計、販売、購買といった企業の基幹業務全体を統合管理する包括的なシステムです。
このタイプを導入する最大の目的は、部門ごとに分散した経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)のデータを一つに統合し、経営の全体最適化を図ることにあります。
人事情報や人件費データが会計システムとシームレスに連携することで、二重入力の手間が削減され、データの正確性が向上し、経営層はリアルタイムで正確な経営数値を把握できるようになります。
特に、複数の事業部門や拠点を持ちデータが分散しがちな中堅・大企業や、経営情報を一元化してデータドリブンな経営判断を実現したい企業に向いています。
ただし、導入には全社的なプロジェクトとして取り組む必要があり、費用や期間は他のタイプより大きくなる傾向があるため、企業全体の基幹業務を統合し、戦略的に活用したいと考える企業にとってのパワフルな選択肢となります。
人事・給与・勤怠対応タイプ
このタイプは、人事労務業務の中でも特に関連性の深い「人事管理」「給与計算」「勤怠管理」の3つの機能を統合したシステムです。労働基準法では、正確な労働時間の管理と、それに基づいた適切な割増賃金(残業代)の支払いが厳格に定められています。
このシステムは、従業員の打刻データから労働時間を自動集計し、その結果を直接給与計算に反映させることが可能です。これにより、手作業による転記ミスや計算ミスを劇的に削減し、コンプライアンスを遵守した正確な給与支給を実現します。
特にシフト勤務や変形労働時間制などで勤怠が複雑な企業や、毎月の勤怠締めから給与計算までの作業を大幅に効率化したい企業にとって、非常に実用的で効果の高いソリューションと言えます。
人事・給与・タレマネ対応タイプ
このタイプは、標準的な人事・給与機能に加えて、従業員の評価やスキル管理、目標設定といった「タレントマネジメント(タレマネ)」機能を統合したシステムです。管理業務の効率化から一歩進んで、戦略的な人材育成・活用を目指す企業に適しています。
近年、投資家が企業価値を測る上で、財務情報だけでなく「人的資本」に関する情報を重視する傾向が強まっており、企業には従業員のスキルや経験を可視化し、その成長を促す取り組みが求められています。
このシステムは、人事評価のデータを蓄積・分析し、適切な人材配置や後継者育成計画の策定を支援することで、そのニーズに応えます。評価結果を賞与や昇給の計算に連携させることも可能で、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、それを企業の成長エンジンとしたいと考える企業にとって不可欠な戦略的ツールとなります。
人事・給与特化タイプ
このタイプは、その名の通り「人事管理」と「給与計算」という中核機能に特化したシステムで、その専門性の高さが強みです。
複雑な給与体系や社会保険料の計算ロジック、頻繁な法改正への追従といった、給与計算業務の根幹部分を確実かつ正確に処理することに重点を置いて開発されています。既に勤怠管理や会計で使い慣れたソフトがある企業が、給与計算部分だけを強化したい場合に適しています。
コア機能に絞られているため比較的低コストで導入できる場合が多く、まずは中核となる給与計算業務からシステム化したい企業にも向いています。ただし、他システムとの連携はCSVファイルのインポート・エクスポートで行うことが一般的であるため、その運用方法を確立した上で導入を検討するのが良いでしょう。
勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい
勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。
人事給与システム比較のポイント
人事給与システムを選択する際、単に機能の多さやデザインだけで比較するのは導入失敗の元です。重要なのは、自社の事業規模や課題、将来の展望といった独自の状況(コンテキスト)に合致したシステムを見極めることです。
自社のニーズとシステムの間にミスマッチを避けるため、以下の5つのポイントに基づいた「比較検討リスト」を作成し、客観的な視点で評価することが不可欠です。このプロセスを経ることで、導入後の投資対効果(ROI)を最大化し、確実な成功へと繋げることができます。
自社の規模・業種
比較検討の最初のステップは、「自社の規模(従業員数)」と「業種特有のニーズ」を明確にすることです。最適なシステムは、これらの要因によって大きく異なるため、最初にこの軸を定めることで、検討すべき製品を効果的に絞り込めます。
例えば、中小企業向けは直感的な操作性や導入しやすい料金が重視される一方、大企業向けでは複数拠点に対応できる権限設定や内部統制への対応が重要視されます。業種による勤怠管理や給与体系の違いも、無視できないポイントです。
【企業規模別のチェックポイント】
- ~50名: シンプルで分かりやすい一体型のクラウド型が主流。サポートの丁寧さも重要。
- 50~300名: 組織の拡大・変化に対応できる柔軟性や、他システムとの連携性が重要になる。
- 300名~: 厳格な権限管理や内部統制への対応が必須。ERPの一部としての導入も視野に入る。
【業種別のチェックポイント】
- 飲食・小売業: アルバイト・パートの複数の時給設定、複雑なシフト管理への対応。
- 建設業: 日給・月給の混在、現場ごとの工数管理との連携。
- IT・Web業: 裁量労働制やフレックスタイム制など、多様な働き方への対応。
自社の規模と業種という基本情報を明確に定義することで、数多ある製品の中から自社に無関係なものを除外し、比較検討の精度と効率を飛躍的に高めることができます。
必要な機能とカバー範囲
導入するシステムに求める機能について、「絶対に必要な中核機能(Must-Have)」と「あれば便利な付加機能(Nice-to-Have)」を明確に切り分け、優先順位を付けることが費用対効果の高い選択に繋がります。
多機能なシステムは一見魅力的に映りますが、使わない機能が多ければ、その分無駄なコストを払い、操作画面を複雑にするだけです。導入の目的は、あくまで自社が抱える課題の解決です。以下の手順で自社に本当に必要な機能を洗い出しましょう。
- 現状の業務をリストアップする: 給与計算、勤怠管理、年末調整、入退社手続きなど、関連する業務を全て書き出します。
- 課題を特定する: それぞれの業務で「時間がかかっている」「ミスが発生しやすい」といった課題を明確にします。
- 課題解決に必要な機能を定義する: 例えば「給与明細の印刷・封入が手間」なら、「Web給与明細発行機能」が必須となります。
- 将来のニーズを考慮する: 2年後には人事評価制度を導入したい、といった将来の計画も考慮に入れます。
このプロセスで作成した「機能要件チェックリスト」は、各社製品を比較する際の客観的な物差しとなり、コストパフォーマンスに優れたシステムを選択することを可能にします。
他システム(ERP・勤怠・経理など)との連携
人事給与システムが、既に導入済みの他システム(勤怠管理、会計ソフトなど)と円滑に連携できるかどうかは、バックオフィス全体の生産性を左右する極めて重要な比較ポイントです。
システム間の連携が取れていないと、システム内にデータが孤立する「データのサイロ化」が生じ、システム間でCSVデータを手作業でやり取りするといった二度手間が発生します。APIなどによる自動連携は、これらの課題を解決し、常にデータの整合性を保ちます。
【連携に関する確認ポイント】
- 勤怠管理システムとの連携: 労働時間や残業時間などの勤怠データが自動で取り込まれるか。
- 会計ソフトとの連携: 人件費に関する仕訳データが自動で登録されるか。(例: freee会計、マネーフォワード クラウド会計など)
- 労務管理システムとの連携: 従業員の入退社手続きや社会保険関連の書類作成がシームレスに行えるか。
- 連携方法の確認: APIによる自動連携か、CSVファイルの手動アップロードか。
人事給与システムを単体のツールとしてではなく、バックオフィス業務を自動化するエコシステムの一部として捉え、その連携性を評価することが、真の業務効率化を実現する上で不可欠です。
料金体系
料金を比較する際は、表面的な月額費用だけでなく、初期費用やオプション費用、サポート費用までを含めた「総所有コスト(TCO)」で評価しなければ、導入後に想定外の出費に繋がるリスクがあります。
クラウド型製品の料金体系は多様化しており、年末調整機能などが別料金のオプションになっている場合もあります。
【料金体系のチェックポイント】
- 初期費用: 導入時の設定サポートなどに費用はかかるか。
- 月額(年額)費用: 課金単位は何か(利用ユーザー数、従業員登録数など)。
- オプション料金: 自社が必須とする機能の中に、別料金のオプションは含まれていないか。
- サポート費用: 電話やチャットでの問い合わせは無料か。
- 最低利用期間と違約金: 契約期間の縛りや、途中解約時の料金は発生するか。
複数のベンダーから、自社の利用状況を伝えた上で正式な見積もりを取得し、料金体系の全体像を詳細に比較・検討することが、導入後の「想定外のコスト」という失敗を避けるために不可欠です。
導入実績・サポート体制
製品の信頼性を測る上で、ベンダーの「導入実績」、特に自社と同規模・同業種の企業への導入事例と、万が一の際に頼りになる「サポート体制」の充実は、機能や価格と同等に重要な比較ポイントです。
人事給与は、一日たりとも止めることのできない最重要業務の一つであり、システムの安定性や信頼性が絶対的に求められます。自社と類似した企業への導入実績が豊富にあれば、そのシステムが自社の課題を解決できる可能性が高いと判断できます。
また、操作に迷った時や予期せぬトラブルが発生した際に、迅速かつ的確なサポートを受けられるかどうかは、担当者の負担を最小限に抑える上で死活問題となります。
【導入実績の確認ポイント】
- 公式サイトで、自社と似た企業(規模・業種)の導入事例があるか。
- システム全体の導入企業数や、継続利用率は公開されているか。
【サポート体制の確認ポイント】
- 問い合わせ方法: 電話、メール、チャットなど、どのような手段があるか。
- 対応時間: 平日のビジネスタイムに対応しているか。
- サポートの範囲: 導入時の初期設定やデータ移行を支援してくれるか。
- 無料トライアル: 契約前に、システムの操作性やサポートの質を体験できるか。
勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい
勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。
おすすめの人事給与システム12選
これまでの比較ポイントを踏まえ、ここではおすすめの人事給与システム12製品を種類別に紹介します。自社がどのタイプに当てはまるかを念頭に置きながら、具体的な製品の比較・検討にお役立てください。
なお、掲載している情報や料金は今後変更される可能性があるため、検討の際は必ず各製品の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
トータルカバータイプのおすすめ製品
人事・給与から会計、販売管理まで、企業の基幹業務全体を統合し、経営データの一元化を目指す企業には、以下のERP(統合基幹業務システム)がおすすめです。
これらの製品は、特に中堅から大企業において、複数部門にまたがる複雑な業務フローを標準化し、経営の可視性を高めてきた豊富な導入実績を持ちます。ただし、大規模な投資となることが一般的なため、自社の業務プロセスとの適合性を慎重に分析することが成功の鍵となります。
COMPANY(株式会社Works Human Intelligence)
「COMPANY」は、日本の大企業向けERP市場、特に人事給与領域において圧倒的なシェアを誇る、デファクトスタンダード(事実上の標準)のシステムです。その信頼性は、人事・給与業務分野で長年売上金額シェアNo.1を獲得し続けている実績が証明しています。
最大の強みは、大手企業グループの複雑な人事制度や給与体系に、プログラムのカスタマイズをすることなく、システムが持つ豊富なパラメータ設定のみで対応できる「ノーカスタマイズ思想」にあります。
【特徴】
- 対象企業規模:主に従業員1,000名以上の大企業、グループ企業
- 機能:人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメント、グループ会社管理まで、人事領域のあらゆる業務を網羅
- 評価:非常に複雑な給与計算にも対応できる強力な計算エンジンと、高い信頼性・安定性が評価されています。
マネーフォワード クラウドERP(株式会社マネーフォワード)
「マネーフォワード クラウドERP」は、会計、人事、経費精算など、バックオフィス業務全体をシームレスに連携させることを目的とした、モダンなクラウドネイティブERPです。
会計ソフトで高いシェアを持つ同社の強みを活かし、人事給与システムで計算された人件費の仕訳データが、会計システムに自動連携されるなど、データの整合性を保ちながら経理担当者と人事担当者の両方の業務を劇的に効率化します。
【特徴】
- 対象企業規模:成長中の中堅企業から大企業まで
- 機能:人事管理、給与計算、勤怠管理、経費精算、債権債務管理、会計システムまでを統合
- 評価:直感的で分かりやすいユーザーインターフェースと、他サービスとの柔軟な連携性が高く評価されています。
最新のクラウド基盤上で、バックオフィス業務全体のなめらかな連携と効率化を最優先で実現したい企業にとって、「マネーフォワード クラウドERP」は非常に有力な候補となります。
freee統合型ERP(フリー株式会社)
「freee統合型ERP」は、特に中小企業をメインターゲットとし、「自動化」をコンセプトに会計と人事労務の業務を一体化させるソリューションです。
「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げる同社の製品は、複雑な操作を極力排除し、業務フローを自動化することに重点を置いています。給与計算から振込、そして会計帳簿への記帳までが、最小限の手間で完了する設計思想が貫かれています。
【特徴】
- 対象企業規模:中小企業から中堅企業
- 機能:freee会計とfreee人事労務を核とし、販売管理や経費精算などの周辺サービスと密に連携
- 評価:簿記の知識がなくても使えるほどの分かりやすさと、徹底した自動化による効率化が魅力です。
会計と人事労務の垣根をなくし、バックオフィス業務全体を可能な限り自動化したいと考える企業にとって、「freee統合型ERP」は業務のあり方を根本から変える可能性を秘めたシステムです。
人事・給与・勤怠対応タイプのおすすめ製品
日々の勤怠データを正確に給与計算へ反映させる、という人事労務業務の最も基本的なサイクルを、確実かつ効率的に実行したい企業には、以下の製品がおすすめです。
これらの製品は、従業員の労働時間管理と給与計算という、法的要請が強く、ミスが許されない二大業務の連携に特化しており、多くの企業で導入が進んでいます。特に、多様な働き方が広がる現代において、正確な勤怠管理と給与計算の自動連携は、コンプライアンス遵守と担当者の負担軽減に直結します。
ジンジャー給与(jinjer株式会社)
「ジンジャー給与」は、同一プラットフォーム上で勤怠管理、経費精算、人事管理などを連携させられる、クラウド型の人事労務システムです。
「1つのデータベースで、人事のすべてを」というコンセプトの通り、従業員情報を一度登録すれば、複数のサービスでそのデータが活用されます。これにより、システムごとに従業員情報を登録し直す手間がなくなり、常に最新のデータに基づいた業務が実現します。
【特徴】
- 対象企業規模:中小企業から中堅企業
- 機能:給与計算、Web給与明細、年末調整などに加え、ジンジャーシリーズの勤怠管理や経費精算とシームレスに連携
- 評価:モダンで使いやすい画面設計と、必要な機能を組み合わせて導入できる柔軟性が評価されています。
まずは給与計算と勤怠管理から始め、将来的には他の人事業務も同じシステム上で統合していきたいと考える、成長段階の企業に最適な製品です。
TimePro-NX(アマノ株式会社)
「TimePro-NX」は、タイムレコーダーのトップメーカーであるアマノが提供する、勤怠管理を中核とした就業・人事・給与統合システムです。
長年の勤怠管理に関するノウハウが最大の強みで、アマノ製のタイムレコーダーやICカードリーダーと完全連携し、打刻データを正確かつリアルタイムに収集。そのデータを基に、複雑なシフトや労働形態にも対応した給与計算を実現します。
【特徴】
- 対象企業規模:中堅企業から大企業
- 機能:就業(勤怠)管理、人事管理、給与計算を一つのパッケージで提供
- 評価:ハードウェア(タイムレコーダー)とソフトウェアの一貫したサポートが受けられる安心感と、勤怠管理機能の信頼性が高く評価されています。
正確な勤怠管理を何よりも重視し、ハードウェアを含めたトータルなサポートを求める企業にとって、「TimePro-NX」は非常に有力な選択肢となります。
ADPS(カシオヒューマンシステムズ株式会社)
「ADPS(アドプス)」は、人事・給与・就業の基幹業務をカバーし、企業の「人」に関する情報を戦略的に活用することを目指す統合ソリューションです。
40年以上にわたる開発・導入実績があり、日本の企業における人事労務業務のノウハウが豊富に蓄積されています。システムの安定性と、多様な業種・業態のニーズに応えてきた実績が信頼の証です。
【特徴】
- 対象企業規模:中堅企業から大企業
- 機能:人事情報管理、給与計算、就業管理を基本とし、人材開発や目標管理などのオプションも選択可能
- 評価:堅牢なシステム基盤と、長年の実績に裏打ちされた業務適合性の高さが特徴です。
長期間にわたって安心して利用できる、安定した人事給与システムを求めている企業や、実績豊富なベンダーのサポートを重視する企業におすすめの製品です。
人事・給与・タレマネ対応タイプのおすすめ製品
定型的な管理業務の効率化に留まらず、従業員のパフォーマンスやスキルを可視化し、戦略的な人材育成や配置に繋げたい企業には、以下のタレントマネジメント機能を統合した製品が適しています。
人的資本経営への注目が高まる中、人事評価、スキル管理、目標管理といった機能は、企業の持続的成長に不可欠なツールとなりつつあります。これらのシステムは、評価と処遇(給与・賞与)の連動性を高め、従業員のエンゲージメント向上にも貢献します。
POSITIVE(株式会社電通総研)
「POSITIVE」は、大企業グループ向けに、人事・給与・勤怠管理から、高度なタレントマネジメントやグローバル人事管理までをカバーする統合HCM(Human Capital Management)ソリューションです。
ERPパッケージの一つとして30年近い歴史と2,000社以上の導入実績を誇り、特にグループ全体の人事情報を統合し、グローバルレベルでの人材データ分析や、後継者育成計画といった戦略的人事の領域で高い評価を得ています。
【特徴】
- 対象企業規模:大企業、グローバル企業
- 機能:人事・給与・勤怠に加え、人事評価、目標管理、スキル管理など、HCMに求められる機能を網羅
- 評価:システムの網羅性と拡張性、大規模組織の複雑なニーズに対応できる柔軟性が強みです。
グループ全体の人事基盤を統合し、グローバル基準のタレントマネジメントを実現したい大企業にとって、「POSITIVE」は最適なソリューションの一つです。
ProActive 人事給与(SCSK株式会社)
「ProActive」は、純国産のERPパッケージとして長年の実績を持ち、特に人事・給与・会計の領域で高いシェアを誇るシステムです。
日本の商習慣や法制度への深い理解に基づき開発されており、経理・人事部門のユーザーから高い支持を得ています。IFRS(国際財務報告基準)への対応や、グループ経営管理機能も充実しており、企業の成長フェーズに合わせて拡張していける点が特徴です。
【特徴】
- 対象企業規模:中堅企業から大企業
- 機能:人事・給与システムを中核に、会計や販売などのモジュールと連携可能。タレントマネジメント機能も搭載。
- 評価:国産パッケージならではのきめ細やかな機能と、安定した運用実績が評価されています。
日本の企業文化にフィットした、信頼性の高いERPパッケージを導入し、人事と会計を密に連携させたい企業におすすめです。
One人事(One人事株式会社)
「One人事」は、給与計算から勤怠管理、人事評価、タレントマネジメントまでを、一つのシステムで提供する、新進気鋭のクラウドサービスです。
「パフォーマンス評価を、すべての人の力に。」をコンセプトに、特に人事評価や目標管理、従業員サーベイといったタレントマネジメント領域の使いやすさに注力。評価データを給与や育成にスムーズに連携させることで、従業員の成長を促すサイクルを実現します。
【特徴】
- 対象企業規模:中小企業から大企業まで幅広く対応
- 機能:給与計算、勤怠管理、労務管理、人事評価、目標管理(OKR/MBO)、スキル管理などを網羅
- 評価:使いやすさを追求したUI/UXと、必要な機能を柔軟に組み合わせられる点が魅力です。
旧来の人事システムから脱却し、従業員のパフォーマンス向上に繋がる、モダンで一体感のあるシステムを求めている企業にフィットするソリューションです。
人事・給与特化タイプのおすすめ製品
まずは中核業務である「人事管理」と「給与計算」を、確実かつ正確に運用することに集中したい企業には、以下の専門性の高い製品がおすすめです。
これらの製品は、多機能ではありませんが、その分、給与計算エンジンの信頼性や、日本の複雑な社会保険制度・税制へのきめ細やかな対応といった点で、長年の実績とノウハウを持っています。既に使い慣れた勤怠管理システムや会計ソフトを活かしながら、給与計算部分のみをリプレイスする、といった導入方法に適しています。
EXPLANNER/S(日本電気株式会社)
「EXPLANNER/S」は、NECが提供する中小企業向けのERPパッケージであり、その中核モジュールとして人事給与システムが提供されています。
大手ITベンダーであるNECが開発・サポートしているという信頼感が最大の強みです。長年にわたり、多くの中小企業の基幹業務を支えてきた実績があり、システムの安定性には定評があります。
【特徴】
- 対象企業規模:主に中小企業
- 機能:人事・給与をコアとし、会計や販売などの他モジュールと連携することでERPとして利用可能
- 評価:全国のパートナー企業による手厚い導入支援・サポート体制が整っています。
システムの導入から運用まで、信頼できるベンダーに一貫して任せたいと考える中小企業にとって、安心して選択できる製品です。
リシテア/人事給与管理クラウドサービス(株式会社日立ソリューションズ)
「リシテア」シリーズは、日立グループが長年培ってきたノウハウを結集したHCMソリューションであり、特に大企業の人事部門から高い評価を得ています。
人事給与管理だけでなく、就業管理やタレントマネジメント、健康管理まで、従業員に関するあらゆる業務をサポートする幅広いラインナップが特徴で、必要な機能を組み合わせて導入することができます。
【特徴】
- 対象企業規模:中堅企業から大企業
- 機能:人事・給与管理を基本に、就業管理や人事評価など多彩なサービスと連携
- 評価:大企業の複雑な要求に応える機能の網羅性と、システムの堅牢性が強みです。
自社の課題に合わせて必要な機能を柔軟に組み合わせ、信頼性の高い人事基盤を構築したいと考える企業におすすめのソリューションです。
弥生給与 Next(弥生株式会社)
「弥生給与 Next」は、会計ソフトで絶大な知名度を誇る弥生が提供する、クラウド版の給与計算ソフトです。
「弥生シリーズ」の強みである、初心者にも分かりやすい操作性と、導入しやすい料金体系を継承。給与計算から年末調整、社会保険手続きまで、中小企業の給与業務に必要な機能を過不足なく搭載しています。
【特徴】
- 対象企業規模:小規模事業者から中小企業
- 機能:給与計算、賞与計算、社会保険、年末調整
- 評価:何よりもまず「かんたん」であることが重視されており、専門の担当者がいない企業でも安心して導入できます。クラウドなので法改正にも自動対応します。
複雑な機能は必要なく、とにかく簡単で安心して使える給与計算ソフトを求めている小規模・中小企業にとって、「弥生給与 Next」は最適な選択肢の一つです。
人事給与システムについてよくある質問
人事給与システムについて、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
- Q人事給与システムと会計ソフトの違いは?
- A
両者の最も大きな違いは、管理する対象と目的にあります。人事給与システムが「人(ヒト)」に関する情報と、それに紐づく「給与」を管理するのに対し、会計ソフトは「お金(カネ)」の流れ全般を管理するシステムです。
人事給与システムは、労働基準法や社会保険関連法規といった「労働法」を遵守することが設計の根幹にあり、従業員マスタを基に人事労務領域の業務を遂行します。
一方、会計ソフトは、法人税法や企業会計原則といった「会計基準」に準拠し、企業のあらゆる取引を記録して最終的に財務諸表を作成することが目的です。
比較項目 人事給与システム 会計ソフト 管理対象 従業員情報、勤怠データ、給与データ 取引データ(売上、経費)、資産、負債 主な機能 給与計算、年末調整、社会保険手続き 仕訳入力、試算表作成、決算書作成 準拠法規 労働基準法、社会保険関連法規など 企業会計原則、法人税法など 作成する主な書類 給与明細書、源泉徴収票、算定基礎届 貸借対照表、損益計算書、総勘定元帳 このように、両者は異なる領域の業務を担いますが、給与計算で算出された「人件費」は、会計ソフトで「費用」として計上されるため、密接に関連しています。
近年のクラウド型システムでは、APIなどを通じてこれらのデータが自動連携され、バックオフィス全体の効率化に大きく貢献します。
- Q無料で使える人事給与システムはある?
- A
一部の製品には「無料プラン」が用意されています。ただし、その多くは従業員数や機能に厳しい制限があり、主に個人事業主や数名規模の法人、あるいは本格導入前のお試し利用を想定したものと言えます。
ベンダーが無料プランを提供する主な目的は、製品の認知度を高め、将来の有料顧客を獲得するためのマーケティング戦略(フリーミアムモデル)です。まず無料で使ってもらい、企業の成長に伴って必要な機能が増えた段階で、高機能な有料プランへアップグレードしてもらうことを狙いとしています。
無料プランにありがちな制限には、以下のようなものがあります。
- 従業員数の制限: 「5名まで無料」など、利用できる人数が限られている。
- 機能の制限: 基本的な給与計算はできても、「年末調整」や「Web給与明細の発行」といった機能が有料オプションとなっている。
- サポートの制限: 電話やチャットでの問い合わせができず、メールやFAQのみの対応となる。
- データ保存期間の制限: データを保管できる期間が限られている場合がある。
無料プランは、従業員がごく少数で、代表者が一人で業務を行っているような小規模な事業者がまず給与計算を始めてみる、といったケースには適しています。
しかし、従業員を継続的に雇用していく一般的な中小企業にとっては、機能不足やサポート不在が業務上のリスクとなる可能性があるため、「入り口」または「試用版」と捉えるのが賢明です。
事業の継続性とコンプライアンスを担保し、安心して運用していくためには、機能やサポート体制が充実した有料プランの導入が現実的な選択肢となります。
勤怠管理システムの検討でお困りのあなたへ
・システム検討時に注意すべき点を整理したい
・システムにより効率化できる点を整理したい
・システムの運用で注意すべき点を整理したい
勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。
まとめ
本記事では、人事給与システムの基本的な役割から、自社に最適な製品を比較・選択するための具体的なポイントまでを、解説しました。
人事給与システムは単なる給与計算ソフトではなく、従業員の入社から退社までの人事情報を一元管理し、複雑な給与計算や年末調整、社会保険手続きを自動化することで、企業のコンプライアンス遵守と業務効率化を実現する中核的なシステムです。
正確な給与計算の実現に不可欠なのが、その大元となる「正確な勤怠データ」であることは言うまでもありません。いかに優れた人事給与システムを導入しても、日々の勤怠管理が適切でなければ、その効果は半減してしまいます。
人事給与システム選びと並行して、自社の働き方に合った勤怠管理システムの導入も検討しましょう。勤怠管理システムの選定・比較サイト「勤怠管理システムの選定・比較ヨウケン」では、多様な勤怠管理システムの機能や価格を客観的に比較検討できますので、ぜひご活用ください。
勤怠管理システムでお困りのあなたへ
・今よりも良い勤怠管理システムがあるか知りたい
・どのシステムが自社に合っているか確認したい
・システムの比較検討を効率的に進めたい
勤怠管理システムを見直したい方は、勤怠管理システムの選定・比較ヨウケンをご活用ください。無料でご利用できます。