「プラチナくるみん」は、子育て支援に積極的な企業であることの認定マークである「くるみん」の上位認定マークです。2022年4月に改正が行われ、認定基準がより厳しくなりました。
この記事では、プラチナくるみんの新しい認定基準や認定企業の取り組み事例について、わかりやすく解説します。
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- プラチナくるみんとは
- プラチナくるみん取得のメリット
- 新しくなったプラチナくるみんの認定基準は?
- 1. 一般事業主行動計画を策定したこと
- 2. 行動計画の計画期間が2年以上5年以下であること
- 3. 策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと
- 4. 行動計画の外部への公表・従業員への周知を適切に行っていること
- 5. 計画期間において、男性従業員が育児休業等を一定割合以上取得していること
- 6. 計画期間において、女性従業員が育児休業等を一定割合以上取得していること
- 7. 未就学児に関する制度を設けていること
- 8. 計画期間の最終年度の労働時間について、一定基準を満たしていること
- 9. 労働環境改善措置について、具体的な目標を定め実施していること
- 10. 子を出産した女性労働者などの職場定着率が一定以上であること
- 11. 女性労働者が活躍できる取り組みを実施していること
- 12. 重大な法令違反がないこと
- 「プラス」マークとは
- プラチナくるみんの認定手続き
- プラチナくるみんの認定取り消し
- プラチナくるみん認定企業紹介
- くるみんの次はプラチナくるみん認定を狙ってみましょう
プラチナくるみんとは
「プラチナくるみん」は、仕事と子育ての両立支援に積極的な企業を公式に認定する「くるみん」マークの上位認定版です。
根拠法令である次世代育成支援対策推進法により、2015年4月に既存のくるみんに加えて創設されました。2022年4月には同法が改正され、より認定基準が厳しくなりました。プラチナくるみんの認定を受けるためには、先に「くるみん」認定を受けておく必要があります。
プラチナくるみん取得のメリット
プラチナくるみんを取得することで、以下のようなメリットが受けられます。
- 子育てサポート企業であることをPRできる
- 優秀な人材を採用・確保できる
- 生産性が向上する
- 公共調達における加点評価が受けられる
- 「くるみん」より、PR効果が大きい
子育てサポート企業であることをPRできる
プラチナくるみんを取得すると、認定マークをさまざまな商品やサービスに使用できます。マークを付けることで、対外的に「子育て支援に積極的な企業」としてアピールできます。
一般社会に対するイメージアップだけでなく、取引先の契約増加や、新規顧客獲得などにも繋がります。
優秀な人材を採用・確保できる
優秀な人材を確保しやすくなる点も、プラチナくるみんを取得するメリットの1つです。仕事と子育ての両立を重視する求職者が増えている現在において、おおきなアピール材料となるため、求人に有利になります。
また、エンゲージメント向上により出産や育児を理由とする離職者が減少し、社内キャリアを積んだ経験豊富な人材の流出を防止できます。
生産性が向上する
プラチナくるみんの取得に向けた取り組みの中で、残業時間抑制などのために業務の効率化が行われることで、生産性が向上します。
また、残業時間の削減は、従業員のワークライフバランス改善をもたらし、仕事に対するモチベーションアップにも繋がります。
公共調達における加点評価が受けられる
国や地方公共団体が実施する、総合評価落札方式や企画競争による公共調達において、加点評価が受けられます。
「ワーク・ライフ・バランス等の推進に関する指標」において、くるみんのグレード(種類)などによる一定の加点基準が示されており、プラチナくるみんはより大きな加点が得られます。
「くるみん」より、PR効果が大きい
プラチナくるみんは通常のくるみんマークよりも遥かに認定基準が厳しく、プラチナくるみんを取得している企業は非常に少ないことから、他社との違いを明確化でき、より大きなPR効果が期待できます。
また、くるみんマークが1色のみで変更不可であるのに対し、プラチナくるみんは12色から選択可能です。コーポレートカラーに合わせやすく、自社のデザインを損なうことなく使用できます。
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新しくなったプラチナくるみんの認定基準は?
プラチナくるみんを取得するには、以下の12の基準をすべて満たす必要があります。2022年4月の改正により、一部基準が引き上げられました。
- 一般事業主行動計画を策定したこと
- 行動計画の計画期間が2年以上5年以下であること
- 策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと
- 行動計画の外部への公表・従業員への周知を適切に行っていること
- 計画期間において、男性従業員が育児休業等を一定割合以上取得していること
- 計画期間において、男性従業員が育児休業等を一定割合以上取得していること
- 未就学児に関する制度を設けていること
- 計画期間の最終年度の労働時間について、一定基準を満たしていること
- 労働環境改善措置について、具体的な目標を定め実施していること
- 子を出産した女性労働者などの職場定着率が一定以上であること
- 女性労働者が活躍できる取り組みを実施していること
- 重大な法令違反がないこと
1. 一般事業主行動計画を策定したこと
雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な行動計画を策定している必要があります。
行動計画には、行動計画策定指針の「一般事業主行動計画の内容に関する事項」「1 雇用環境の整備に関する事項」の、以下のいずれか(もしくは両方)が盛り込まれていることが必要です。
- 妊娠中の労働者及び子育てを行う労働者等の職業生活と家庭生活との両立等を支援するための雇用環境の整備
- 働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備
2. 行動計画の計画期間が2年以上5年以下であること
次世代育成支援対策推進法は、2025年3月末までの時限立法であるため、それまでに計画を策定し、提出しなくてはなりません。
3. 策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと
達成目標に応じて、以下の書類の提出が必要です。
目標 | 必要書類 |
---|---|
制度導入 | 就業規則、社内周知資料など |
数値目標 | 育休の取得状況が確認できる書類など |
制度の周知や情報提供 | 周知年月日がわかる社内周知資料など |
意識啓発 | 社会周知資料、研修実施通知・結果など |
4. 行動計画の外部への公表・従業員への周知を適切に行っていること
計画策定日から3ヶ月以内に、社内に通知、外部に公表する必要があります。社内通知方法としては、「事業場内の見やすい場所への掲示」「メール送信」「社内ネットワークに掲載」などがあります。
また、外部公表方法としては、「自社ホームページへの掲載」「厚生労働省が運営する『両立支援のひろば』への掲載」などがあります。
5. 計画期間において、男性従業員が育児休業等を一定割合以上取得していること
以下のいずれかを満たすことが必要です。
- 計画期間中の男性従業員の育児休業等取得率が30%以上であり、その割合を厚労省の「両立支援のひろば」で公表していること
- 計画期間中の男性従業員の育児休業等取得率および企業独自の育児目的休暇制度利用率が、合わせて50%以上であり、かつ育児休業等を取得した者が1人以上いること
2022年4月改正により、1.は13%から30%に、2.は30%から50%に、それぞれ引き上げられました。なお、2022年10月スタートの出生時育児休業(産後パパ育休)は、育児休業のカウントに含めます。
6. 計画期間において、女性従業員が育児休業等を一定割合以上取得していること
計画期間中の女性従業員の育児休業等取得率が75%以上であり、その割合を厚労省の「両立支援のひろば」で公表していることが必要です。2022年4月改正により、「両立支援のひろば」への公表が追加されました。
7. 未就学児に関する制度を設けていること
3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者について、以下のような措置を講じていることが必要です。
- 育児休業に関する制度
- 所定外労働の制限に関する制度
- 所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に準ずる制度
「始業時刻変更等の措置」には、フレックスタイム制や時差出勤制度などが該当します。
8. 計画期間の最終年度の労働時間について、一定基準を満たしていること
計画期間の終了日の属する事業年度において、次のいずれも満たしていることが必要です。
- フルタイムの従業員等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が、各月45時間未満であること
- 月平均の法定時間外労働60時間以上の従業員がいないこと
認定申請時にすでに退職している労働者や、労働時間の適用除外である管理監督者は、カウントしないので注意しましょう。
9. 労働環境改善措置について、具体的な目標を定め実施していること
以下のすべての措置を実施しており、かつ、1.または2.のうち、少なくともいずれか一方について、定量的な目標を定めて実施し、その目標を達成したことが必要です。
- 所定外労働の削減のための措置
- 年次有給休暇の取得の促進のための措置
- 短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置
「くるみん」の場合は、上記の「いずれかの措置」でよく、また目標達成までは求められていないのに対し、プラチナくるみんでは目標達成まで要件となっている点に注意が必要です。
10. 子を出産した女性労働者などの職場定着率が一定以上であること
以下のいずれかを満たしていることが必要です。
- 子を出産した女性労働者のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職(育休中の者を含む)している者の割合が90%以上であること
- 出産した女性労働者及び出産予定だったが退職した女性労働者のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職している者(育休等を利用している者を含む)の割合が70%以上であること
2022年4月の改正により、2.が55%から70%に引き上げられました。
11. 女性労働者が活躍できる取り組みを実施していること
育児休業等をし、または育児を行う女性労働者が就業を継続し活躍できるような、能力の向上またはキャリア形成の支援のための取組にかかる計画を策定し、実施していることが必要です。
女性労働者に向けた取組としては、以下のような者があります。
- 女性労働者のための、出産および子育てキャリアイメージ形成を支援する研修
- 育休からの復職した女性労働者などを対象とした能力の向上のための取組やカウンセリング等
また、管理職に向けた取組としては、「企業トップ等による女性の活躍推進および能力発揮に向けた職場風土の改革に関する研修」などがあります。
12. 重大な法令違反がないこと
以下の事例のような、重大な法令違反がないことが必要です。
- 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パート・有期雇用労働法などに関して、勧告を受けた
- 労働基準法、労働安全衛生法等に違反して送検公表処分を受けた
- 長時間労働等に関する重大な労働関係法令に違反したが、是正する意思が見られない
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「プラス」マークとは
くるみんプラスマークとは、3種類いずれかの「くるみん」認定を受けた企業が、不妊治療と仕事との両立の取組について、一定の認定基準を満たした場合に、それぞれ「プラス」認定を追加で受けられる制度です。
認定を受けようとする「くるみん」の基準を満たした上で、以下のすべてを満たすことが必要です。
- 不妊治療のための休暇制度。及び不妊治療のために利用することができる半日単位・時間単位の有休、所定外労働の制限などの制度を設けていること
- 不妊治療と仕事との両立に関する方針、措置の内容を社内に周知していること
- 不妊治療と仕事との両立に関する研修など、労働者の理解を促進するための取組を実施していること
- 不妊治療を受ける労働者からの不妊治療と仕事との両立に関する相談に応じる担当者を選任し、社内に周知していること
プラチナくるみんの場合は、1.の休暇制度や講じている措置の内容、2.の取組の内容について、公表日の前事業年度における状況を「両立支援のひろば」で公表する必要があります。
プラチナくるみんの認定手続き
プラチナくるみん認定のためには、大まかに以下の流れに沿って手続きを行います。
- 自社の現状や従業員のニーズを把握し、行動計画を策定する
- 行動計画を策定後、おおむね3ヶ月以内に公表し、従業員に周知する
- 行動計画を策定後、おおむね3ヶ月以内に、策定した旨を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ 届出
- 行動計画の実施
- 行動計画期間の終了後、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ、「くるみん」認定の申請
- くるみん認定後の行動計画の期間終了後、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ、プラチナくるみん認定の申請
- 毎年少なくとも1回、次世代育成支援対策の実施状況を公表
認定申請に必要な書類
「プラチナくるみん認定申請書(基準適合認定一般事業主認定申請書)」に、以下の書類を添付します。
- 一般事業主行動計画
- 労働契約や就業規則のコピー(一般事業主行動計画で定めた目標の達成を証明する書類)
- 一般事業主行動計画の社外公表や従業員への周知が確認できる書類(両立支援ひろばの画面印刷書類や従業員へ送ったメールの印刷など)
- 育児休業を利用した男性従業員の氏名や子どもの年齢、利用期間がわかる書類
- タイムカードや出勤簿など、計画最終年度の労働時間がわかる書類
- 出産した女性労働者の職場定着率と自社が掲げた目標数値を証明する書類(労働協約のコピーやホームページ画面を印刷した書類など)
- 計画期間開始~終了1年前まで、子どもを出産してから1年後も継続している女性労働者の氏名が記載された書類(労働者名簿)
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プラチナくるみんの認定取り消し
以下のいずれかに該当した場合は、プラチナくるみんの認定が取り消されます。
- 制度の廃止・改定によって要件を満たさなくなったなど、くるみん認定が取り消された場合
- 「両立支援のひろば」にて公表した「次世代育成支援対策の実施状況」が基準を満たしておらず、その公表の翌事業年度の公表においても基準を満たさない場合
- 次世代育成支援対策の実施状況について、公表しないまたは虚偽の公表をした場合
- 法および法に基づく命令に違反した場合(例:プラチナくるみんの表示と紛らわしい表示をした)
- 特例認定一般事業主として適切でなくなったと認める場合(例:不正な手段による認定など)
プラチナくるみん認定企業紹介
ここでは、プラチナくるみんの認定を受けている企業の、具体的な取り組み事例をご紹介します。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは、お茶・炭酸飲料・缶コーヒーなど、様々なソフトドリンクを販売する飲料メーカーです。同社は2008年にくるみんマークを取得した後、2018年にプラチナくるみんに認定されました。
ワークライフバランスに配慮した労働環境整備のため、働き方や休暇制度の見直しなど、様々な改革に取り組みました。サービス残業の禁止や勤怠管理システムの導入により、長時間労働を是正し、2017年~2021年までの直近5年間の残業時間は年間219時間にまで抑えられました。
2010年からはコアタイムを廃止したスーパーフレックス制を導入し、より自由の高い働き方を実現しています。同時にテレワークも導入し、育児と仕事を両立しやすい環境を整えています。
また、2011年には男性従業員の育児休業取得率向上に向け、ウェルカム・ベビー・ケア・リーブと呼ばれる育児休業を一部有給化する制度を設立しました。取り組みの結果、2021年の男性従業員の育児休業取得率は、プラチナくるみんの認定基準を大きく上回る58%を達成しました。
同社は2024年までに男性従業員の育児休業取得率100%を目指しており、育児関連セミナーや経験者座談会を積極的に開催する予定です。さらに、女性従業員が安心して職場復帰ができるよう、ベビーシッターの紹介や費用の一部補助もおこなっています。
トマト銀行
トマト銀行は岡山市に本店を構える銀行です。2017年に中国地方の金融機関として初めてプラチナくるみんに認定されました。同社は女性のキャリアアップ支援に力を入れており、育児中の従業員が働きやすい環境整備に注力しました。
短時間勤務制度を導入し、育児中の従業員は1日の所定労働時間を6時間または7時間に設定可能とし、育児休業中の従業員が不安や悩みを相談できるよう、カウンセリングを実施しています。県内の保育園とも連携を強化しており、預け先の保育園を確保しやすくなっています。
様々な取り組みによって、同行の従業員中に占める女性管理職(係長以上)の割合は、2021年時点で17.2%を達成しました。日本企業における女性管理職の割合は平均9.4%に留まっており、他企業に比べて女性が活躍しやすい職場環境が整っていると言えます。
中外製薬
中外製薬株式会社は、がん領域の医薬品販売で国内トップシェアを誇る企業です。同社は2018年にプラチナくるみんに認定されました。同社はワークライフバランス推進に向け、働き方改革や育児費用援助の拡充に取り組みました。
在宅勤務・スーパーフレックスタイム制・短時間勤務などの導入によって、ライフスタイルに応じた働き方を選択できます。保育園の送迎や通院がしやすくするよう、営業車での通勤も認めました。
子の看護休暇や時間単位での有給制度も導入し、急なアクシデントがあっても、すぐに駆け付けられる体制を整えました。女性従業員が安心して職場復帰ができるよう、ベビーシッター費用や認可外託児所費用も一部補助しています。
結果、2020年の時間外労働は1か月平均わずか4.3時間に抑えられ、従業員は家族と過ごす時間を確保できています。
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くるみんの次はプラチナくるみん認定を狙ってみましょう
晩婚化や未婚率上昇によって、少子高齢化が加速しています。少子化対策が急務な一方、価値観の多様化に伴い、ワークライフバランスを重視する学生やビジネスパーソンは珍しくありません。
くるみんマークを取得できれば、仕事と育児の両立が望める企業として自社をアピールできます。プラチナくるみんは認定企業も少なく、くるみんマークを取得している企業よりも、広範囲へのPR効果が望めます。
2022年の法改正によって一部基準が引き上げられたものの、プラチナくるみんに認定されれば、多くのメリットが望めます。ただし、プラチナくるみんを取得するためには、ワークライフバランス推進に向けた様々な取り組みを実施しなければなりません。
残業時間削減や有給休暇の取得率向上など、長時間労働是正に向けた取り組みが求められます。従業員一人ひとりの勤怠状況を正確に把握するには、クラウド型勤怠管理システムの導入が有効です。
「勤怠管理システムの選定・比較ナビ」をご利用いただくと、必要な要件を満たしている勤怠管理システムの中から、自社に最もマッチングする製品を探し出せます。低コストでハイスペックな機能を搭載している勤怠管理システムを多数扱っている点も、嬉しいポイントです。
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