昨今の「働き方改革」の波を受けて、欧米企業のように1ヶ月以上の長期休暇を付与する「サバティカル休暇」は、大手日本企業の間で話題になっています。

ただし、世間的に広く浸透しているとは言い難く、特によほど体力のある企業でない限りは、1年を超えるような長期休暇を認めるというのは、現実的に難しい面もあります。

この記事では、サバティカル休暇のメリット・デメリットを紹介しつつ、現実的な範囲で導入する場合のポイントについて解説します。

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サバティカル休暇とは?

サバティカル休暇とは、ある程度継続勤務年数のある労働者に対して、1ヶ月以上から1年程度の長期休暇を与える制度です。

元々は、海外の大学教授のための休暇制度であり、ヨーロッパで次第に一般企業に浸透していったとされています。近年は日本企業でも、労働者のワークライフバランスの向上や、働き方の多様化を実現させる意味で注目されています。

日本では大手企業を中心に導入され始めた

2018年に経済産業省がまとめた「人材力研究会報告書」では、「リカレント教育」の重要性を解説し、日本企業に対してサバティカル休暇の導入を呼び掛けています。

企業によるサバティカル休暇等の個人の学び直しや振り返りを支援するための制度整備を促進するため、そのような制度を整備する企業に対する助成の在り方について関係省庁と連携して検討する。

人材力研究会報告書|経済産業省・中小企業庁

大手企業のサバティカル休暇導入事例を見ると、ヤフージャパンでは勤続10年以上の正社員を対象に導入されています。また、ソニーでは「フレキシブルキャリア休職制度」という名称で、導入されています。

サバティカル休暇に関して法的な規定はないため、「給与1ヶ月分の特別支援金が支給される」「最長5年取得できる」など、企業独自の制度を打ち出しているケースもみられます。

中小企業での浸透率は低い

大企業においては、サバティカル休暇への関心度合いが高く、今後も導入する企業は増える方向にあります。

一方、中小企業においては、2020年4月から義務化された「年次有給休暇5日の取得」の達成だけでも大変な状況です。有給休暇取得率さえ依然として低い状況で、サバティカル休暇を導入できる中小企業は少ないのが現状です。

また、現在のサバティカル休暇の旗振り役は経済産業省であり、労働関係よりも、日本の超少子高齢化に伴う日本企業のビジネスモデル変革の必要性にスポットが当てられています。

厚生労働省を中心とした労働関係の法整備がまだ進んでおらず、具体的な指針がないことも、中小企業が導入に踏み切れない要因になっています。

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サバティカル休暇のメリット・デメリット

サバティカル休暇は、労働者に対する福利厚生制度の1つであり、明確な数値として効果が見えにくい制度です。そのため、メリット・デメリットを中長期的な視点で判断する必要があります。

会社にとってのメリット・デメリット

会社のメリット

  • 労働者にさまざまな経験を積ませられる
  • 労働者のワークライフバランス向上
  • 労働者の心身リフレッシュによるモチベーションアップ
  • 「労働者の多様な働き方を実現する会社」として企業イメージ向上
  • 介護・育児による離職防止
  • 生産性の向上

会社のデメリット

  • 長期不在による業務の混乱、他への負担増(マンパワー不足に陥る可能性が高い)
  • 休暇前の引継ぎや、代替人員の確保が必要
  • 休暇中の生活・経験によってはかえって離職を招く可能性がある
  • 休暇明け労働者の職場復帰問題(フォローアップが必要)

労働者にとってのメリット・デメリット

労働者のメリット

  • 普段できないような経験ができ、スキルアップにつながる
  • 心身ともに、短期休暇では得られないリフレッシュ効果がある

労働者のデメリット

  • 復職後の職場への適応が難しく、休暇前の職場感覚を取り戻すには一定の時間を要する
  • 長期間の休暇になるため収入が減り、最悪の場合は無給となる
  • 休暇によって、これまでの人生観が大きく変貌し、そもそも会社に戻りたくなくなる

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サバティカル休暇導入の注意点

たとえば、対外的なアピールだけを考えて、サバティカル休暇を導入するだけでは、本来の制度の効果は発揮されず、かえって会社・労働者双方とも混乱を招くだけです。サバティカル休暇を導入しても、実際に活用されなければ意味がありません。

効果的で、労働者に気兼ねなく活用してもらえるサバティカル休暇にするには、現実的な範囲で制度を設計する必要があります。

目的を明確にする

サバティカル休暇を独自の休暇制度として設ける以上は、目的を明確にすることが大切です。目的が明確になっていないサバティカル休暇は、休暇中や休暇明け直後に労働者の離職を誘発しかねません。

会社は、サバティカル休暇制度を導入する際に、就業規則などでサバティカル休暇に関する目的などの定義づけをしっかり明示するのが重要です。

具体的には「心身のリフレッシュのため」「研鑽を積みスキルアップを目指す」などが目的として挙げられます。もちろん、サバティカル休暇の目的については、労働者本人にもその目的や意義について考えさせる必要があります。

たとえば、休暇の目的が「研鑽を積みスキルアップを目指す」であれば、定期的な課題(レポートや小論文)の提出など、目的に応じて成果を確認・把握できる仕組みがあるのが理想です。

代替要員の確保できる体制を作る

通常の有給休暇とは異なり、長期間にわたるサバティカル休暇では、特に代替要員の確保が重要です。

労働者からサバティカル休暇の申請があった場合、どのタイミングで休暇を取得しても対応できるように、引き継ぎや代替要員の確保体制は普段からしっかり構築しておく必要があります。

また、サバティカル休暇取得中の労働者しか知り得ない情報が必要になったり、当人しかできない作業が発生すると、業務の混乱を招き、周囲の労働者の生産性まで落としかねません。
業務の混乱を防止するためにも、情報やスキルの共有ができる体制を整備をしましょう。

取得できる社内風土づくり

サバティカル休暇は、形だけの導入にとどまらず、実際に労働者が取得できるような社内環境や風土づくりは必要です。

単純な社内への声かけのみでは、サバティカル休暇のように長期間の休暇である特性上、そう簡単に自ら率先して休暇申請する労働者は少ないはずです。

そのために有効なのは、管理監督者自らが率先してサバティカル休暇を取得することです。管理監督者がサバティカル休暇を取得して、自己研鑽しスキルアップしていく姿を実際に見せることで、一般労働者の取得にもつながっていく可能性が高くなります。

また、管理監督者自らが、取得によって感じるサバティカル休暇のメリットとデメリットを実感することで、その後に取得した一般労働者へのアフターフォローに活かすことができます。

サバティカル休暇中の給与について

サバティカル休暇についての法律上の規定はなく、あくまでも任意の制度です。よって、有給休暇とする必要はありませんが、例えば「1ヶ月分の給与相当分の研修費を支給する」など、会社の負担が大きくならない程度のインセンティブは考えられます。

また、社会保険料については在籍している以上は必要になるため、労働者負担分に関しては会社指定口座に振り込んでもらうなどの取り決めが必要です。

企業イメージアップ効果は大きいが、導入へのハードルは高い

サバティカル休暇は導入のハードルが高い一方、社内規定を整備してうまく活用できれば、企業にとってもメリットがある制度です。サバティカル休暇の付与要件の管理や取得に伴う人員配置転換には、勤怠管理システムが有効活用できます。

サバティカル休暇を導入して企業のイメージアップにつなげるためにも、勤怠管理システムの導入をおすすめします。

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