「特別休暇」とは、法律で義務付けられた法定休暇と違って、会社が福利厚生として独自に設けることのできる休暇制度です。
さまざまなメリットがある反面、ルール設計が曖昧だとトラブルの原因にもなりかねません。

この記事では、特別休暇の種類をご紹介しつつ、導入に当たってのポイントについてわかりやすく解説します。

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特別休暇とは

企業側が取得日数・要件・賃金の扱いなどを自由に設定できる休暇制度です。要件や付与義務が明確に定められている法定休暇と区別するため、「法定外休暇」とも呼ばれます。

古くから導入されている「慶弔休暇」に加え、近年は福利厚生を充実させるため、ユニークな特別休暇を導入している企業が増えています。

特別休暇の内容や有給・無給は会社が決められる

特別休暇に関して規定する法律は無いため、どの特別休暇を導入するか、休暇中の賃金の扱いをどのようにするかは、各会社の判断に委ねられています。

従業員のリフレッシュやワークライフバランス改善に向けて、取得しやすさや管理しやすさなども考慮しながら導入するのが良いでしょう。

なお、年次有給休暇が付与されるためには出勤率8割以上という要件がありますが、特別休暇を取得した日を、出勤率の算定元となる出勤日に算入するかは、会社が任意に決めることができます。

ただし、特別休暇を取得したことをもって、賞与や人事考課のマイナス査定の対象とすることは、制度趣旨から避けるべきでしょう。

法定休暇とは

年次有給休暇を始めとする、法律によって規定されている休暇です。従業員から申請を受けた場合、会社側は原則的に取得を許可しなければなりません。法定休暇には、労働基準法を根拠とするものと、育児・介護休業法を根拠とするものの2種類が存在します。

  • 労働基準法:年次有給休暇、生理休暇、公民権行使による裁判員休暇
  • 育児・介護休業法:子の看護休暇、介護休暇

また、厳密には「休暇」と「休業」は意味が異なるものの、上記に産前・産後休業、育児休業、介護休業を加えて捉えることもあります。

なお、年次有給休暇以外の休暇は、有給・無給扱いを会社ごとに決めることができます。

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特別休暇の種類や日数

古くから一般的によく見られる特別休暇から、独自のユニークな特別休暇までを紹介していきます。自社の業務体制やビジネスモデルを考慮し、従業員が利用しやすい特別休暇を導入してみましょう。

夏季休暇・年末年始休暇

お盆や年末年始に合わせて、全従業員または部署単位で一斉に与える休暇です。夏季休暇と年末年始休暇を特別休暇ではなく、有給休暇取得率向上に向け計画年休として付与する場合があります。

計画年休として組み込まれると、従業員にとっては大型連休を確保できるため、プライベートな時間を満喫できる点がメリットです。

日数については、夏季休暇の場合は国家公務員の例にならって、3日と設定している企業が多いようです。お盆前後が繁忙期の場合は、業務に支障が出ないよう、時期をずらすこともあります。

年末年始休暇の場合は、夏季休暇よりも日数が長めに設定されるのが一般的で、有給休暇と組み合わせて大型連休とするケースも多く見られます。

結婚休暇

結婚予定の従業員が企業に申請し取得できる休暇です。主に結婚式やハネムーンに利用されています。

日数については会社によって幅広く、従業員本人が結婚する場合は、結婚式の前後を含めた3日間程度から、新婚旅行まで含めて10日間程度認めている会社まであります。

また、従業員の子が結婚する場合でも結婚休暇を利用できることがあり、その場合は2~3日程度とすることが多いようです。

結婚休暇中の無給・有給の扱いも会社が自由に決められますが、無給とした場合でも、別途結婚祝い金を支給するのが一般的です。

忌引休暇

親族が亡くなった場合の通夜・葬儀へ参加、相続などの諸手続きに充てるための休暇です。結婚休暇と合わせて「慶弔休暇」としている会社もあります。

どの親族の範囲まで認めるか、続柄によって日数をどうするかなど、あらかじめ決めておく必要がありますが、一般的には以下のような日数とされることが多いようです。

  • 配偶者:10日
  • 父母:7日
  • 子:5日
  • 祖父母、孫、配偶者の父母、兄弟姉妹:3日
  • その他の親族:1日

故人が遠方に住んでいる場合は、移動時間なども考慮しなくてはならないため、年次有給休暇と併せて取得するケースも見られます。

慶弔休暇は有給である会社が比較的多いですが、無給の企業であっても、別途慶弔金を支給するのが一般的です。

リフレッシュ休暇

リフレッシュ休暇は、文字通り従業員のストレス解消や心身のリフレッシュを目的とした休暇です。勤続5年・10年・20年など、入社から一定期間経過した従業員を対象としたケースが一般的です。

取得日数は、勤続年数に応じて「10年なら3日」「20年なら7日」という具合に付与されるのが一般的です。積極的なリフレッシュ休暇制度の利用につながるよう、有給としている会社が比較的多くなっています。

2019年時点でリフレッシュ休暇を導入している企業は、従業人数1000人以上の大企業で43%、従業員数100人以下の中小企業では8.6%に留まっています。

サバティカル休暇

サバティカル休暇は一定期間以上会社に在籍している従業員に対し、1か月~1年の休暇を認める制度です。留学やスキルアップに向けての勉強などに利用されるのが一般的です。

元々、サバティカル休暇はワークライフバランス改善に向け、欧米企業で導入された制度です。従業員の自己成長・新たなアイデアの発見・企業のイメージアップなど、従業員と企業側双方に多くのメリットが見込めます。

ただし、担当者不在に伴う業務体制の再整備・離職中の職場環境の変化・従業員の退職など、多くの課題を抱えており、日本ではヤフージャパンやソニーグループなど、導入事例は一部の大企業に限定されています。

私傷病休暇

自宅や旅行先などで発生した、業務以外の原因によるケガや病気のため就業ができない場合に取得できる休暇です。従業員は会社に在籍しながら療養に務めることができます。

基本的には無給扱いとする会社が多いですが、健康保険に加入している従業員であれば、一定要件のもと傷病手当金の支給が受けられます。

なお、業務中や通勤途中に傷病に対しては労災保険が適用され、休業補償や療養補償などの給付が受けられます。また、業務災害による休業期間中及び休業明け30日間は解雇が禁止されています。

不妊治療休暇

不妊治療休暇は国家公務員を対象に、2022年1月から施行された仕事と不妊治療の両立を図るための制度です。民間企業よりも早く「不妊治療のための有給休暇」が行政側で導入され、大きな話題を呼びました。

不妊治療休暇は1時間または1日単位で利用でき、年間5日分取得できます。体外受精や顕微授精など頻繁な治療が必要な場合、年間10日分取得可能です。

民間企業への適用はないため、現時点では法定外休暇扱いとなります。ただし、2022年4月からは不妊治療が保険適用となっているなどの流れから、将来的には法定休暇となる可能性もあります。

公務員の不妊治療休暇制度をモデルケースとして、出生支援に積極的な会社として、導入を検討するもの良いでしょう。

アニバーサリー休暇

配偶者との結婚記念日、子どもの誕生日、パートナーの誕生日など、家族との特別な日に休暇を取得できる制度で、「メモリアル休暇」とも呼ばれます。従業員は家族と過ごせる時間を確保できる一方、会社側は福利厚生が手厚いというイメージアップが期待できます。

また、企業によっては従業員本人の誕生日に休暇を取得可能なバースデー休暇を設けている場合もあります。

ボランティア休暇

ボランティア休暇は、従業員が自発的に社会貢献活動に携わっている場合、活動支援の目的で休暇取得を認める制度です。

取得日数は1日~5日といった短期間から1ヶ月程度まで認めるケースがあります。また、青年海外協力隊や社会福祉施設での活動に参加により期間が長期に及ぶ場合は、「自己都合休職」として扱うのが一般的です。

2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、ボランティア休暇を導入する企業が増えました。ただし、導入事例は大企業の一部に留まっています。

赴任休暇

赴任休暇とは、転勤や出向による従業員の引っ越しなどを考慮して与える休暇のことです。

単身者の場合と、家族と一緒に引っ越す場合で、取得できる日数に規定があるケースもありますが、2日~5日程度が一般的です。

教育訓練休暇

教育訓練休暇とは、仕事に必要なスキルや能力を高める目的で、会社が指示した教育訓練を埋める場合に取得できる休暇のことです。一定期間働かずに教育訓練に専念させ、有給扱いとするケースが多いです。教育訓練休暇制度を利用すると、国から助成金が支給される場合もあります。

配偶者の出産休暇

配偶者の出産休暇とは、妻が出産する際に、夫が取得できる休暇のこと。会社によって詳細は異なりますが、出産日1日~前後5日程度で取得できるケースが多いようです。

犯罪被害者等の被害回復のための休暇

従業員自身または家族が犯罪被害を受けた場合に利用できる制度です。犯罪被害そのものだけでなく、周囲からの好奇な視線や加熱する報道に伴う精神的負担も大きく、就業可能な状態になるため心身の回復に必要な時間として活用します。

また、病院への通院・警察での手続き・裁判への出廷など、様々な事後対応のために時間を割く必要も出てきます。

もちろん有給・無給の判断は会社の任意ですが、経済的被害を受けるケースも多いため、従業員が不安を抱えないよう、有給扱いとして対応することが望ましいでしょう。

罹災休暇

自然災害等によって自宅が全半壊したり浸水したりするなど、生活の立て直しのために利用できる休暇です。性質上、有給であることが多く、併せて「災害見舞金」を支給する会社も見られます。

骨髄ドナー休暇

骨髄ドナーとして造血幹細胞を提供するため、必要な外来受診や入院のために利用できる休暇です。通常、ドナーとなって骨髄提供するには、3泊4日程度の入院を含め、合計10日間前後の休業が必要であるため、ドナーの負担軽減のために設けられます。

ボランティア休暇の枠として利用可能な会社もありますが、別途「ドナー休暇」として設けている会社もあります。各都道府県が制度導入の協力を要請している点も大きな特徴です。

その他のユニークな特別休暇

自社のビジネスモデルや扱う商材に関連した特別休暇を設けている企業もあります。2つの企業の取り組みを紹介します。

宿泊・温浴施設を運営する「温泉道場」は、特別休暇として湯治休暇を設けています。自社が運営している宿泊施設に顧客として滞在し、改善点や新たなアイデアを見つけることが目的です。県外の施設へ2泊3日宿泊することが条件となっており、仕事と旅行を兼ねた制度です。

また、2週間前に湯治休暇を申請した従業員には、3万円分の補助金を支給しており、最小限の出費で旅行を楽しめる工夫もなされています。

2つめの事例は、ペットフードを扱う「日本ヒルズ・コルゲート」で、特別休暇としてペット忌引休暇を設けています。飼っているペットが亡くなった場合、1日休暇が与えられる制度で、ペットと共生していく自社の事業理念を体現した制度です。

ほかにも、さまざまなユニークな特別休暇がありますので、自社で特別休暇の導入を検討している場合は、参考にしてみてください。

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特別休暇のメリット

従業員にとっては、リフレッシュや人生の大切なイベントに充てられる時間を確保できる点がメリットです。オンとオフの切り替えがスムーズになり、仕事へのモチベーションアップや生産性向上につながります。

一方、企業側にとってはワークライフバランス改善によって、業務効率改善・ミスの削減・成果物の品質向上が期待できます。メリハリの付いた働き方を実現し、従業員の仕事へ取り組む姿勢に好影響を与えられます。

また、「従業員を大事にするホワイト企業」とのイメージを印象付けられ、離職率低下や求人数増加といった効果も期待できます。

特別休暇のデメリット・注意点

特別休暇を導入したからと言って、直接的にデメリットとなるようなことはありませんが、付随的に注意すべきポイントがいくつかあります。

不公平感が生まれないように注意

特別休暇を取得できる条件が性別・年齢・勤続年数などによって偏りが大きくなると、特定の従業員は取得できる特別休暇が少なくなってしまい、不公平感が生まれます。

また、正社員と非正規社員の間で福利厚生に差を設けること自体は、ただちに違法となる措置ではありませんが、合理的な理由を説明できないような差を設けるのは避けるべきとされています。

種類によっては、取得可能期限や日数を設ける

特定のイベントに関連した特別休暇を導入する場合、取得可能期限や日数を明確化しておくことをおすすめします。取得原因となる出来事と実際の取得日があまりにもかけ離れてしまうと、特別休暇の本来の意義が失われてしまいます。

たとえば、結婚休暇を利用する場合は、「入籍もしくは挙式から1年以内に取得すること」といったルール設定が重要です。

法定休業や法定休暇との重複取得は不可

法定休業と特別休暇の同時利用はできません。たとえば、「配偶者の出産休暇」のような特別休暇を取得した場合に、これを「育児休業」を取得したと取り扱うことはできません。

「所定労働日の労働を免除する」休暇を取得中に、さらに法定の育児休業などを成立させる余地はないため、このような運用は認められません。

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特別休暇に関してよくある質問

特別休暇に関して多く寄せられる質問をまとめました。参考にしてみてください。

Q
特別休暇は有給ですか?
Q
特別有給って何?
Q
特別休暇は何日?

特別休暇の管理は、勤怠管理システムで

特別休暇の導入は、会社・従業員双方にとってメリットが大きいものの、種類が増えると「誰が・どんな休暇を・どれだけ取得したか」の管理が、煩雑になります。

勤怠管理システムを導入することで、独自の休暇設定から取得状況管理まで一元管理ができ、思い切った休暇の導入にも安心して対応できます。

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