2022年1月1日より、国家公務員向けに不妊治療のための休暇制度「出生サポート休暇」が新設・実施されています。仕事と不妊治療の両立支援を国家主導で率先して推し進めた形となります。

この動きが、今後民間企業に対する義務として法制化されていくかは不透明ですが、既に独自の制度として不妊治療休暇を設けている企業も存在します。

この記事では、国家公務員向けの不妊治療休暇の概要をお伝えしたうえで、出生支援のために企業としてどのような取り組みができるのかについて、解説します。

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不妊治療休暇とは

仕事と不妊治療の両立支援のために、不妊治療にかかる通院時間を休暇として認める制度です。2022年4月からは、不妊治療の公的医療保険適用が開始されましたが、一方で仕事と不妊治療との両立は相変わらず大きな課題となっています。

そんな中、2022年1月から国家公務員を対象にした不妊治療休暇制度「出生サポート休暇」がスタートしました。また、民間でも大企業を中心に独自の不妊治療休暇が導入され始めています。

国家公務員のための「出生サポート休暇」

仕事と不妊治療の両立に向け、1日または1時間単位で有給の不妊治療休暇を取得できる制度です。年間5日間の取得をベースに、体外受精や顕微授精など頻繁な治療が必要な場合は5日間プラスで、最大10日まで休暇を取得できます。

ポイントは2点あり、1つ目は民間企業への法制化に先駆けて、不妊治療休暇の制度を導入した点です。少子化改善に不妊治療が重要であることを改めて印象付けられます。導入を検討している民間企業への参考モデルとして提示でき、今後の導入加速が期待できます。

2点目は性別を問わず取得できる点です。不妊は精管閉塞、先天性の形態異常、勃起障害など、男性側にも原因がある場合が珍しくありません。症状に応じて手術療法・薬物療法・人工授精などを使い分ける一方、検査をしても原因が分からない可能性もあります。

数年単位での治療を覚悟する必要があるため、パートナーの妊娠・出産につながりやすい若いうちから不妊治療を受けられる環境整備が重要です。

民間企業独自の不妊治療休暇

資金・人材リソースの両面で余裕のある大企業を中心に、企業ごとに独自の不妊治療休暇制度を導入しています。具体的な制度としては、以下のようなものがあります。

  • 従業員が集中して不妊治療に臨めるよう、消化しきれなかった有給休暇を積み立て、不妊治療目的で最大60日間利用できる
  • 高度不妊治療を受けるために最大1年休業可能で、補助金を20万円/2年以内で支給
  • プライバシー配慮のため、女性従業員が取得する有給休暇に統一した名称を使用し、通院目的で月一回取得可能

こうした不妊治療休暇を導入している企業は、まだ一部の大企業に留まっており、中小企業への認知・普及は進んでいないのが現状です。

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不妊治療休暇以外に会社ができる取り組みとは

企業としては、不妊治療への理解向上が重要です。不妊治療に関する知識不足によって周囲から偏見や差別を受けた場合、従業員が仕事を続けづらくなります。特に女性は排卵周期に合わせて通院を重ねているため、治療の影響で吐き気・めまい・頭痛などを誘発するリスクが高まります。

国家公務員の出生サポート休暇をモデルに、休暇制度を新設するのも有効ですが、有給休暇やフレックスタイム制など、既存の制度を利用して不妊治療を支援する取り組みも考えられます。

不妊治療休暇は利用されにくい?

不妊治療はプライベートな問題を多分に含み、「治療に励んでいる事実を周囲に知られたくない」と考える方が多いのも事実です。

また、不妊に治療が必要であることを知らない、あるいは「不妊治療は女性がするもの」という偏見や先入観を持っている上司や従業員も少なからず存在します。こうした無知や無理解が差別につながり、仕事と不妊治療の両立を諦め、退職を選んだ女性も少なくありません。

不妊治療へ取り組む従業員をサポートするため、明確な理由を明言しなくても気軽に休める職場環境の整備も重要です。不妊治療への理解が乏しい環境のまま制度を作ったとしても、実際の取得にはつながらない可能性が高いです。

休暇制度にこだわらなくても、ワークライフバランス改善や有給取得率を高める取り組みによって、不妊治療に割ける時間の確保は可能です。企業にとってもエンゲージメント向上や優秀な人材の流出を防げるなど、様々なメリットが望めます。

時間単位年休を利用した不妊治療支援

1時間~3時間単位で時間単位年休を導入することで、不妊治療の通院に充てる時間を確保できます。仕事の状況に合わせて時間を使えるため、従業員は周囲への負担を気にせず通院可能です。一方、企業側も有給取得率向上や作業効率改善が見込めるなど、双方にメリットがあります。

時間単位年休は、各企業が定める1日の指定労働時間×5日分が付与され、消化しきれなかった分は繰り越しになります。半日単位の有給休暇と併用できるため、午前休・午後休を利用しても時間単位年休の残数には影響ありません。

また、半日単位の年休と違って、時間単位年休の導入時には労使協定の締結が必要です。また、労使協定の内容に沿って、就業規則の変更も生じます。なお、変更後の就業規則は労働基準監督署に届け出る必要がありますが、労使協定の届け出は不要です。

フレックスタイム制を利用した不妊治療支援

フレックスタイム制は、清算期間と呼ばれる一定期間内で決められた総労働時間の枠の中で、労働者が始業・終業時間を自由に調整できる制度です。プライベート時間の確保、作業効率向上、休日出勤削減など、さまざまなメリットが望めます。

フレックスタイム制導入により、働き方の自由度が高まるため、不妊治療の時間確保や体調に応じた出勤スタイルを確立できます。

なお、フレックスタイム制には必ず出勤しなければならない「コアタイム」と呼ばれる時間を設定できますが、不妊治療通院などに柔軟に対応するために、コアタイムを設けないという選択肢もあります。

テレワークを利用した不妊治療支援

コロナ禍の影響で急速に普及したテレワークは、不妊治療に励む従業員のサポートにも有効です。通勤による体力消耗やストレスの蓄積を回避できるからです。在宅勤務の導入で心身への負担を軽減し、業務に取り組みやすい環境を整えられます。

スピーディーなやりとりが望めるチャットツールを併せて導入すると、部署内でのコミュニケーション不足に悩む心配もいりません。

ただし、テレワークはオフィスへの出社とは異なり、仕事とプライベートの境界線が曖昧になりがちです。スマートフォンやノートPCから手軽に勤怠入力を行えるモバイル端末打刻を搭載した勤怠システムを導入し、メリハリを付けた働き方を実現することも必要になります。

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両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)の活用

厚生労働省が実施している「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」を活用することで、システムや制度導入に伴う費用を補填しながら出生支援を推し進めることができます。

以下で、実施内容・申請手続き・支給金額などについて、簡単にご紹介します。

助成対象となる取り組み

以下のいずれか又は複数の制度を導入し、労働者に利用させた中小企業事業主に対して支給されます。

  1. 不妊治療休暇制度(多目的/特定目的どちらでも可)
  2. 所定外労働制限制度
  3. 時差出勤制度
  4. 短時間勤務制度
  5. フレックスタイム
  6. テレワーク

申請手続き

以下のステップに沿って、手続きを進めます。

  1. 社内ニーズ調査
    • 社員の意識、希望する制度・環境整備について調査します
  2. 就業規則等への規定・ 周知
    • 制度内容、制度利用に係る手続きや賃金等の取扱いについて、就業規則等に規定し、労働者に周知します
  3. 両立支援担当者の選任
    • 不妊治療を受ける労働者からの相談への対応、不妊治療両立支援プランの策定を行う担当者を選任します
  4. 労働者のための「不妊治療両立支援プラン」の策定
    • 両立支援担当者は、対象労働者が制度を利用する前日までに少なくとも1回以上面談し、プランを策定します

支給額

支給申請は、2段階のステップがあります。

【A.「環境整備、休暇の取得等」に係る助成金】
最初の労働者が、不妊治療休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)利用した場合に、28.5万円(※)受給できます。

【B.「長期休暇の加算」に係る助成金】
Aを受給したうえで、労働者が不妊治療休暇を20日以上連続して取得し、原職等復帰後3ヶ月以上継続勤務させた場合に、対象者1人当たり28.5万円(※)受給できます(1年度5人まで)。

※A、B共に、生産性要件(「(営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷ 雇用保険被保険者数」で算出された数値が、3年前と比較して6%以上向上している)を満たした場合、支給額が36万円に増額されます。

勤怠管理システム導入で不妊治療をバックアップ

不妊治療休暇や時間単位年休には、イレギュラーな勤怠管理が必要になります。また、助成金の申請には客観的に勤怠実績を確認できる資料を提出しなければなりません。

勤怠管理システムを導入することで、法定外休暇・時間単位年休・フレックスタイム制など、柔軟な働き方に対応できるため、勤怠管理の負担を増やすことなく制度を導入できます。

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