サービス残業は、労働者が業務時間外に働いたにもかかわらず、その労働に対して適正な賃金が支払われない状況を指します。大きな社会問題にもなり、企業にとっても大きなリスクとなる問題です。

では、そもそもなぜサービス残業は違法とされるのでしょうか?そして、どのような状況下でサービス残業が起こり得るのでしょうか?

この記事では、サービス残業が違法とされる理由から、原因となる状況、サービス残業が企業にもたらすリスク、リスク回避のための対策までを、わかりやすく解説します。

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サービス残業とは?

サービス残業とは、所定労働時間を超えて働いたにもかかわらず、その労働に対して正当な賃金が支払われない状況を指します。これは労働基準法に違反する行為であり、企業にとって罰則や社会的信用の失墜など重大なリスクとなります。

サービス残業の定義

サービス残業は、法律で明確に定義が定められているわけではありませんが、一般的には所定労働時間を超えて働いたにも関わらず、残業代が支払われない残業を指します。

なお、いわゆる残業には、法定労働時間には収まっているものの所定労働時間を超える所定外残業(法定内残業)と、法定労働時間を超える法定外残業の2種類があり、法定労働時間は原則1日8時間・週40時間と定められています。

このうち、法定外残業については、基礎賃金の25%以上の割増賃金を加算する必要があります。たとえば、所定労働時間7時間の事業場にて9時間の労働が発生した場合、法定内の1時間分については基礎賃金のみで足りますが、法定外の1時間分については基礎賃金の1.25倍以上の残業代を支払う必要があります。

サービス残業が違法となる理由

サービス残業が違法とされる理由は、労働基準法が全ての労働時間に対して賃金を支払うこと、そして法定労働時間を超える労働に対して割増賃金を支払うことを義務付けているからです。サービス残業は、この法的義務に違反する行為ということになります。

労働基準法第24条では、賃金は全額を毎月一回以上、期日どおりに支払わなければならないと定められています。また、労働基準法第37条では、時間外労働に対する割増賃金の支払いが義務付けられています。

(賃金の支払)
第二十四条賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
②賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

労働基準法第24条|法令検索e-Gov

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

労働基準法第37条第1項|法令検索e-Gov

サービス残業は労働基準法に違反する違法行為であり、企業がこれを放置すると法的リスクが高まるだけでなく、社会的信用も失う可能性があります。企業は適切な労務管理を実施し、サービス残業の発生を未然に防ぐ必要があります。

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サービス残業の原因となる状況

サービス残業が発生する背景には、企業文化や管理体制の不備、労働者の意識などが絡み合っており、これらの要因が労働者に対する正当な賃金の不払いを招いています。具体的な原因としては、以下のような状況が挙げられます。

  • 虚偽の労働時間を報告している
  • 所定始業時間より前に業務を始める
  • 自主的な残業を上司が黙認している
  • 仕事を持ち帰らせている
  • 残業時間を違法に切り捨て処理している
  • 名ばかり管理職になっている

虚偽の労働時間を報告している

従業員が、実際よりも短い労働時間を報告することで、サービス残業が発生しているケースがあります。使用者(会社)は、労働時間を正確に記録し、労働者に賃金を支払う義務があります。

しかし、従業員が自ら、または上司の指示により、労働時間を虚偽に報告することで、本来支払われるべき残業代が支払われない状況が発生します。例えば、タイムカードの改ざんや勤務記録の虚偽入力などが挙げられます。

所定始業時間より前に業務を始める

従業員が、所定の始業時間よりも早く業務を開始し、その分の時間が残業として認識されていないケースも多く見られます。所定労働時間には始業時刻と終業時刻が定められており、この時間帯以外の労働は、原則として時間外労働(残業)に該当します。

例えば、出勤前にメールチェックや資料作成を行うなど、明らかに業務とみなせる準備作業はもちろんのこと、業務に必要な着替えや作業場への移動時間も労働時間に含めて計上する必要があります。

自主的な残業を上司が黙認している

従業員が自主的に残業をしている場合でも、上司がそれを黙認することで、サービス残業が横行するケースが多く見られます。使用者は、労働者の労働時間を適切に管理する義務がありますが、従業員の自主的な残業を黙認することは、事実上この労働時間の管理義務を果たしていないことになります。

明確に残業の指示命令がなく、たとえばノルマ達成のためや評価向上のため、従業員が自ら残業している場合でも、上司がその事実を知りながらあえて黙認している場合、企業にはその時間に対する賃金を支払う義務があります。

仕事を持ち帰らせている

従業員が仕事を自宅に持ち帰り、私的な時間を使って業務を行うことで、サービス残業が発生するケースもよく見られます。仕事を持ち帰らせることで、労働時間の把握が難しくなり、サービス残業の原因となります。

事業場内で行う業務のみが労働時間の対象となるわけではありません。持ち帰りの仕事を命じる、あるいは従業員が自ら持ち帰っていることを知りながら、これを容認することは残業を命じていることと同一視されます。

残業時間を違法に切り捨て処理している

企業が、従業員の残業時間を意図的に切り捨て、本来支払われるべき残業代を支払っていないケースもあります。労働時間は1分単位で計算する必要があり、勝手に切り捨て(丸め)処理することは認められません

例えば、「残業は30分単位で計算し、30分未満の時間は切り捨てる」というケースが典型例で、たとえ就業規則等にこのような規定を設けていたとしても、この規定自体が違法であるため無効となります。

名ばかり管理職になっている

肩書ばかり管理職の地位にあるものの、実質的には一般従業員と変わらない業務を行っている場合は、いわゆる「名ばかり管理職」として、サービス残業の温床となっているケースが多く見られます。

労働基準法では、管理監督者について労働時間、休憩、休日などの規定が適用除外とされています。そのため、実際には労働者を管理監督する権限がないにもかかわらず、肩書・職名のみ管理監督者とすることで、残業代の支払いを免れようとするのが「名ばかり管理職」の実態です。

厳密には管理職と管理監督者は異なりますが、名ばかり管理職が労働基準法上の管理監督者として認められない以上、通常の労働者と同様に残業代の支払いが必要です。

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サービス残業のリスク

サービス残業は、企業にとって重大なリスクを伴います。法的な罰則や是正勧告、付加金の支払いといった直接的な経済的負担に加え、企業の社会的信用の失墜や従業員のモチベーション低下など、長期的に企業の存続に影響を与えるリスクがあります。

サービス残業に対する罰則

サービス残業が発覚すると、企業は労働基準法に基づき、厳しい罰則を受ける可能性があります。労働基準法第119条では、割増賃金不払いなどの違反行為に対する罰則が定められており、具体的には「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。

是正勧告の可能性

サービス残業が発覚した場合、企業は労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性が高く、速やかに対応しなければなりません。是正勧告は、労働基準法違反に対して、労働基準監督署から違法状態を改善するよう求める行政指導です。

是正勧告は行政指導であるため、それ自体に強制力はありませんが、是正勧告に従わないまま放置すると、先に挙げた罰則が科せられる可能性があります。また、悪質であると判断された場合には、企業名を公表される可能性もあります。

付加金の支払い

サービス残業による未払い賃金に対して、企業は付加金の支払いを命じられることがあります。労働基準法第114条において、裁判所は割増賃金の不払いがあった使用者に対して、労働者の請求に応じて、付加金の支払いを命じることができると規定されています。

この付加金は、「未払金と同額」とされており、つまり未払賃金分の2倍の金額を支払わなくてはならないということになります。

企業イメージの失墜

サービス残業が明るみに出ると、企業の社会的信用が大きく損なわれ、ブランドイメージに致命的なダメージを与える可能性があります。現代のビジネス環境では、企業の社会的責任(CSR)が非常に重要視されています

サービス残業が発覚することで、企業は「ブラック企業」としてのレッテルを貼られ、取引先や顧客からの信頼を失うリスクが高まります。また、一度ついたイメージを回復するのは困難で、売上減少や優秀な人材の採用難など、企業の存続に関わる深刻な問題となりえます。

従業員のモチベーション低下

サービス残業が常態化すると、従業員のモチベーションが著しく低下し、企業全体の生産性にも悪影響を及ぼします。サービス残業は労働者に対して不当な負担を強いる行為であり、これが長期的に続くと、従業員のやる気や働く意欲が失われていきます。

過重労働は従業員のメンタルヘルスに悪影響を与え、離職率の上昇や生産性の低下を引き起こす要因となっています。

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違法なサービス残業をなくすための対策

サービス残業をなくすためには、企業全体での労務管理の見直しと従業員の意識改革が重要です。労働時間の適正管理や残業申請フローの改善、柔軟な勤務形態の導入などの対策と並行して、管理者と従業員双方の意識を変革し、法令遵守と公正な労働環境の整備を進めることが求められます。

労働時間の適正管理

労働時間の適正管理は、サービス残業を防ぐための基本であり、最も重要な対策です。企業は従業員の労働時間を正確に把握し、法定労働時間を超える労働には適切な割増賃金を支払う必要があります。

適切な労働時間管理のためには、勤怠管理システムの導入を進め、、従業員の労働時間をリアルタイムで把握する体制を整える必要があります。労働時間の透明性が向上することで、サービス残業を防止することは、従業員の健康と安全を守ることにも繋がります。

残業申請フローの改善

残業申請フローの改善は、サービス残業を防ぎ、適正な労務管理を実現するために不可欠です。残業申請を義務化し、申請理由や内容を詳細に記録することで、残業の発生原因を分析し、改善することができます。

また、従業員が適切な手続きを経て残業を申請し、上長がその申請を管理することで、安易なサービス残業の発生を未然に防ぐことが可能となります。

柔軟な勤務形態の導入

柔軟な勤務形態の導入は、サービス残業を防ぎ、従業員のワークライフバランスを改善するために効果的な手段です。従業員一人ひとりの状況や業務内容に合わせて、柔軟な働き方を認めることで、従業員は自分のペースで業務に取り組むことができ、残業に繋がりにくい環境を構築できます。

例えばフレックスタイム制の導入により、従業員は自分のペースで仕事を進められるようになります。また、テレワークの導入により、移動時間の削減や業務効率の向上が実現し、結果としてサービス残業の削減も期待できます。

管理者及び従業員の意識改革

管理者及び従業員の意識改革は、サービス残業を根絶するために不可欠です。サービス残業の根底には、企業文化や労働者の意識が影響していることが多く、これを是正するためには全社的な意識改革が必要です。

管理者が残業を奨励する風土があると、従業員は残業を当たり前と考えてしまい、サービス残業が慢性化します。そのため、管理者が率先して定時退社を心がけ、従業員にも働きかけを行う必要があります。

また、従業員も、自分の仕事は自分で管理し、定時退社を目標とする意識を持つことが大切です。残業削減目標の設定、残業削減に関する研修の実施、従業員間の情報共有など、様々な取り組みを通じて、意識改革を進めることができます。

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サービス残業についてよくある質問

サービス残業について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
従業員が自主的にサービス残業した場合でも罰則はある?
Q
サービス残業が違法とならない場合はある?

勤怠管理システムの導入で違法なサービス残業をなくしましょう

サービス残業は、企業にとって重大なリスクを伴う問題であり、適切な労務管理と従業員の意識改革が不可欠です。従業員が自主的にサービス残業を行った場合でも、企業には法的責任が生じる可能性があります。

サービス残業を防ぐためには、労働時間の適正管理が最も基本的かつ重要な対策です。企業は従業員の労働時間を正確に把握し、適切な管理を行うことで、無駄な時間外労働を防ぎ、健全な労働環境を維持することが求められます。

そこで有効となるのが勤怠管理システムの導入で、労働時間のリアルタイムな把握が可能となり、サービス残業の発生を未然に防ぐことができます。さらに、残業申請の電子化や労働時間の可視化により、従業員の労働時間が適正に管理され、適切な対応が行えるようになります。

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