就業規則を作成または変更して労働基準監督署に届け出る場合、就業規則に対する労働者代表の意見を記載した「意見書」を添付する必要があります。
この「労働者代表」とはどのような従業員が該当するのでしょう?また、意見書に「異議あり」と記載されたら変更は無効となるのでしょうか?
この記事では、意見書を作成する際に押さえておくべき3つのポイントと、記載例をわかりやすく解説します。
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意見書とは
就業規則の作成・変更を行う場合、労働者代表の意見を伺い、聴取した内容を記載した意見書を就業規則と共に、労働基準監督署へ届出しなければなりません。
(作成の手続)
労働基準法第90条|法令検索 e-Gov
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
② 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
労働基準法に基づき、常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則の作成が義務付けられています。一時的に10人未満となったとしても、常態として10人以上の労働者を雇用している場合や今後新たな人材を採用する場合、就業規則の作成が必要です。
就業規則作成・変更を行う上で、労働者代表から意見を聴取する理由として、会社側が恣意的に有利な内容で就業規則の作成・変更を行うことを抑制するということが挙げられます。
また、労働者側が就業規則に関心を持ち、内容理解に努めることで、無用な労使トラブルを未然に防ぎ、職場規律などに対する意識を共有するといった狙いもあります。
どのようなルールを作成すれば互いに気持ち良く働けるのか、ワークライフバランスを改善するためにはどのような制度が必要かなど、自分たちの働き方を見直すきっかけにもなります。
労働者代表とは
労働者代表は、以下に該当する労働組合または労働者とされています。
- 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合
- 上記労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者
なお、管理監督者は労務管理について事業主と一体的な立場にあり、労働者ではないため、労働者代表になれません。
事業場が複数ある場合は?
支店・営業所・工場など、事業場が複数ある場合は、事業場ごとに労働者代表を選出し、意見を聴取する必要があります。
なお、電子申請に限り、複数事業場の就業規則を本社一括届出が可能ですが、その場合でも意見書は事業場分必要なので、混同しないよう注意しましょう。
複数の規定を作成・変更する場合は?
就業規則・賃金規程・退職金規程など、対象規則が複数に及ぶ場合は、個別に意見書を添付する必要はなく、まとめて「就業規則等」の意見書として提出しても問題ありません。
また、正社員規定やパートタイム就業規定など、一部の労働者のみに適用される就業規則を作成・変更する場合も、事業場の全労働者が参加して労働者代表を選出する手続きを行い、意見書を作成する必要があります。
正社員規定であるからといって、非正規雇用の従業員を代表選出から除外することは認められません。
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労働者代表の選出方法
過半数労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する者を挙手や選挙など「民主的な方法によって」選出しなければなりません。
会社側が勝手に労働者代表を決めることは、認められていません。形式的に民主的な方法を採っていても、実態は会社側の意向が強く反映されているようであれば、その手続きは無効とみなされます。
使用者が選出に関与してはならない
使用者が、直接労働者代表を指名しなくても、以下のような行為は不当に選出に関与するものとして認められません。
- 使用者側が推薦した者の中から選出させる
- 選出された労働者代表を拒絶する
- 労働者代表となったことを理由として、不利益な取り扱いをする
民主的な選出方法とは
「就業規則の作成・変更に伴う意見聴取を目的とした労働者代表の選出であること」を明らかにした上で、以下のような方法により選出します。
- 労働者による挙手
- 労働者による投票
- 労働者による話し合い
なお、議事録の作成などは義務付けられていませんが、正しいプロセスを踏んで労働者代表を選出したと立証するため、日時・選出方法・代表者の氏名など、労働者代表の選出に関する情報を記録として残しておくことをおすすめします。
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「意見を聴く」とは?「異議あり」は無効?
就業規則作成・変更のプロセスで求められているのは、あくまでも「意見を聴く」ことであって、「同意を得る」ことではありません。
この点を踏まえて、以下のようなケースではどうすれば良いのかをみていきましょう。
- 意見書に反対意見を書かれた
- 意見を聞いたが、意見書への記入や署名を拒否された
反対意見を書かれてしまったら?
意見書に反対意見を書かれた場合でも、意見書や就業規則の有効性が失われるわけではありません。届出の手続きを正しく踏んでいれば、労働基準監督署には問題なく受理されます。
ただし、どのような反対意見が出ていたかについては、しっかり労使間で共有し、内容については真摯に受け止める必要はあるでしょう。
すぐに対応が難しい場合でも、今後の課題として引き続き検討する旨や段階的な移行措置などを伝えるだけでも、将来的な労使トラブルの防止に繋がります。
そもそも意見書を書いてもらえなかったら?
労働者代表に意見の聴取を求めたものの、意見書の記入・署名や提出を拒否されるといったことも考えられます。
この場合は、「労働者代表から意見を聴取したが、意見書の提出を拒絶された」といった旨の「意見書不添付理由書」を意見書の代わりに添付することが認められています。
多くの場合は後日、届出した労働基準監督署から会社宛に連絡があり、労働者代表に対して事実確認が行われることになります。
このケースは、意見書に反対意見を書かれるよりも、労使間の溝が深くより深刻な事態であると言えます。手続き的に問題無くても、「意見書不添付理由書」の提出だけで終わらせないよう、事後の関係改善に努めましょう。
また、意見書を提出してくれないからと言って、会社側が勝手に意見書を偽造することはもちろん違法ですので、くれぐれも止めておきましょう。
意見書の記入例
意見書のフォーマットは特に指定されていませんが、労働局などからテンプレートが提供されているため、そちらを参考に作成するのが良いでしょう。
就業規則意見書(Word版)|東京労働局
就業規則意見書(PDF版)|東京労働局
意見書に記載する項目は、以下の5つです。
- 年月日
- 会社名・代表取締役氏名
- 労働者代表の意見
- 労働者代表の職名・氏名
- 代表者選出の方法
年月日
就業規則(変更)届の提出日ではなく、労働者代表が就業規則の内容に関して、意見聴取が行われた日付を記載します。
会社名・代表取締役氏名
意見書は労働者代表から会社宛てに提出する書類となります。よって「〇〇株式会社・代表取締役●●●●殿」のように、会社名(屋号)と代表取締役名を記載します。
労働者代表の意見
就業規則の内容に対して、異議の有無やどのような意見を持っているかなどを記載します。以下は一例です。
- 異議なしの場合
- 特にありません
- 異議はありません
- 内容につき、問題ないことを確認しました
- 異議ありの場合
- 第○条につき、~~のように変更して頂きたい
- 全面的に反対します
特に反対意見がある場合は、単に「異議あり」ではなく、なるべく具体的に記載してください。
労働者代表の職名・氏名
労働組合がある場合は労働組合の名称を記載し、過半数代表者で労働者代表を選出した場合は、労働者代表の職名と氏名を記載します。職名については、特に気にする必要はなく、「一般職」などと記載すれば問題ありません。
なお、2021年4月1日から意見書への押印は廃止となっていますので、注意しましょう。
代表者選出の方法
選挙・挙手・話し合いなど、労働者代表を選出した方法を記載します。選出方法がわかれば良いので、選挙の際の獲得票数など、詳細な内容までは記載不要です。
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就業規則の意見書でよくある質問
就業規則の意見書に関してよく寄せられる質問を、Q&A形式でまとめました。
- Q従業員が10人未満に減った事業場は意見書不要?
- Q意見聴取はいつすべき?
- Q実際には意見を聴いていなかったらどうなる?
就業規則の意見書は重要な書類
意見書に記載された内容は、就業規則の効力自体には影響がないものの、従業員側の就業規則に対するスタンスを把握できる貴重な書類です。特に反対意見があった場合、どのような内容が記載されているかが重要です。
勤務時間の変更・フレックスタイム制の導入・特別休暇の新設など、意見書の記載内容を把握することで、自社が抱えている課題の理解にもつながります。また、不利益変更を伴う場合には意見書とは別に、「労働者の同意」や「合理的理由」なども求められます。
日頃から従業員との間に軋轢を生じないよう、客観的な勤怠管理や労働時間の把握に努めることが重要です。
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