アニバーサリー休暇は、有休取得率低迷を打破する有効な手段として注目を集めている制度です。導入するとどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?また、導入の具体的な手続きはどうすれば良いのでしょうか?
この記事では、アニバーサリー休暇の導入を検討している事業主や管理者の方向けに、制度のメリットや導入のポイントについて、わかりやすく解説します。
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アニバーサリー休暇とは
「アニバーサリー休暇」とは、誕生日や結婚記念日など、従業員個人の記念日に合わせて取得できる休暇で、「メモリアル休暇」と呼ばれることもあります。
企業が福利厚生の一環として独自に設ける特別休暇(法定外休暇)の一つで、有給休暇取得率アップにも期待できるため、近年注目されています。
アニバーサリー休暇のメリット
アニバーサリー休暇を導入するメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。
- 有給休暇取得率がアップする
- 従業員のモチベーションやエンゲージメントが向上する
- 対外的なアピールにつながる
有休休暇取得率がアップする
アニバーサリー休暇を年次有給休暇として取得させることで、取得率アップに繋がります。
本来有休は、労働者からの時季指定によってなされるものであるため、使用者が一方的に取得させることは原則できません。ただし、個別付与方式の「計画年休」とすることで、有休として消化することが可能となります。
また、有休を取得するのに理由は不要ではあるものの、現実には「理由がないと取りづらい」と考える従業員も少なくないため、有休取得へのハードルを下げることにもなります。
かりに計画年休を導入しない場合でも、特別休暇であるアニバーサリー休暇と有休を組み合わせて、連続した休暇を取りやすくすることで、間接的に有休取得率アップが期待できます。
従業員のモチベーション、エンゲージメントが向上する
リフレッシュ休暇は、心身のリフレッシュという単純な休暇の効果に加えて、従業員にとっては大切な日に仕事から解放されるという喜びがあります。プライベートな時間の確保によってオンとオフの切り替えを促し、仕事へのモチベーションを高められます。
また、自分だけの特別な休暇という意味合いが強いため、会社が個別に自分に向き合ってくれているという感覚も生まれ、エンゲージメント向上も期待できます。
対外的なアピールにもつながる
採用活動において、「福利厚生が充実している」「従業員を大切にする」というイメージ付けがしやすいことも大きなメリットでしょう。
特に近年は、新卒だけでなく転職の場合でも、ワークライフバランスを重視して企業を選ぶ傾向が強いため、独自の制度として前面に押し出す効果が高いと言えます。求人情報などに掲載する際も、強力なアピールポイントになります。
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アニバーサリー休暇のデメリット
アニバーサリー休暇を導入することによる直接的なデメリットというのは、余り考えられません。ただし、ひとつ注意点として、無給扱いにしてしまうと、従業員にとっては取得するメリットが少なく、制度が形骸化するおそれもあります。
また、利用用途を限定しすぎると、休暇を取得できる従業員とできない従業員に差が生まれます。パートナーやペットの誕生日などでも取得も認めるなど、できるだけ取得要件を幅広く設定するのが無難な対応です。
アニバーサリー休暇の導入手順
アニバーサリー休暇を導入する際は、以下の手順に沿って手続きを進めるのが良いでしょう。制度として運用するためには、条件や対象者などを明確に定めて周知することが重要です。
- 利用目的を決める
- 有給か無給かを決める
- 取得条件を決める
- 就業規則に規定する
- 全従業員に周知する
利用目的を決める
利用目的は、誰にでも等しく訪れる「自身の誕生日」が最も一般的で無難です。「結婚記念日」や「家族の誕生日」なども有力ですが、従業員間であまり差が出ないのが望ましいと言えます。
従業員が利用しやすい内容を正確に把握することが重要です。アニバーサリー休暇を導入しても利用人数が少なければ、有給休暇取得率向上やモチベーションアップにつながりません。事前に社内メールなどでアンケートを実施し、従業員の声を拾うのも有効です。
有給か無給かを決める
有給扱いとする場合は、年次有給休暇の計画年休として取得させるか、あくまで特別休暇という位置づけで有給とするかの2パターンが考えられます。
有休取得率向上を狙うのであれば、個別付与方式の計画年休制度を導入することになり、労使協定の締結が必要になります。
なお、無給とする場合でも、賃金としてではなく、別途祝い金のようなものを支給することで、従業員のモチベーションも上がり、制度として利用してもらいやすくなるでしょう。
取得条件を決める
取得条件としては、主に以下のような事項について定めます。
- 全従業員を対象とするのか、取得できる従業員を限定するのか
- 対象範囲(自身の誕生日、家族の誕生日など)
- 申請期限
- 記念日の当日のみ認めるか、当日を含めた前後数日間まで認めるか
- 連続数日に渡る取得を認めるか
取得できる従業員を限定する場合でも、「勤続○年目以降」程度とするのが無難であり、年齢や性別はもちろんのこと、正規・非正規で取得の可否を設けるのは避けるべきです。
また、記念日当日のみ認めるとなると、休日と重なった場合に取得できない従業員が出てくるため、前後数日の範囲であれば認めるのが望ましいと言えます。
就業規則に規定する
上記で定めた事項は。就業規則へしっかり規定しておくことが重要です。就業規則の変更手続きが必要となるため、過半数労働者代表の意見書を添付して、就業規則変更届を労働基準監督署に提出します。
全従業員に周知する
せっかくアニバーサリー休暇を導入しても、従業員が制度の存在を知らなければ、利用率は高まりません。社内掲示板や一斉送信メールなどで、全従業員に制度の内容を周知しましょう。
なお、取得対象が全従業員でない場合でも、制度の周知は全従業員に対して行うことが必要です。
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アニバーサリー休暇の導入事例
アニバーサリー休暇の導入事例を以下の3社紹介します。自社導入の際の参考にしてください。
- リクルート株式会社
- 株式会社タカラトミー
- アサヒビール株式会社
リクルート株式会社
リクルート株式会社は就職支援やグルメサイトの運営など、様々な業界でのサービスを提供する企業です。同社は2021年度から全社でアニバーサリー休暇を展開しました。勤続年数1年以上の従業員を対象に、連続4営業日以上の取得を毎年可能とする制度です。
連続4営業日以上を取得した従業員には5万円が支給され、従業員のモチベーションアップと有給休暇の取得率向上につなげています。他にも3年ごとに最大28日連続で休暇を取得できるステップ休暇も同社独自の制度です。
仮に休暇を利用しなくても、30万円で企業側が権利を買い取るため、従業員は損をせずに済みます。
株式会社タカラトミー
株式会社タカラトミーはトミカやプラレールなど、おもちゃを製造するメーカーです。同社は2012年からアニバーサリー休暇を導入しています。当初は誕生月1日のみの休暇取得を条件としていました。
ですが、「誕生日が繁忙期と重なると取得できない」、「もう少し柔軟に利用したい」など、従業員から多数の要望が寄せられ、制度改正に踏み切りました。
現在では家族の誕生日や結婚記念日など、記念日であれば年1回取得できる体制となり、利用できる幅が拡がりました。
アサヒビール株式会社
アサヒビール株式会社は、スーパードライやオリオンザ・ドラフトなどを販売する日本を代表するビールメーカーです。同社は1996年からアニバーサリー休暇を取り入れ、ワークライフバランスの充実に努めてきました。
同社は結婚記念日・家族の誕生日・子どもの卒業式などに、年2日まで休暇を利用できます。他にもリフレッシュ休暇やナイスライフ休暇など、同社には20の休暇制度が導入されており、有給休暇の取得率向上につなげています。
2010年には年間休日数を120日→123日に増やしました。様々な取り組みによって、休暇の取得やオンとオフのメリハリの重要性について、組織全体の意識が高まりました。
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アニバーサリー休暇を有効活用するために
アニバーサリー休暇は大企業が先駆けて導入していますが、近年は中小企業でも導入する企業が増えています。ただし、従業員の要望を汲み取らず、アニバーサリー休暇を導入しただけでは思うような効果は得られません。
従業員のニーズに応じた制度設計をおこなうことで、企業側も大きなメリットを享受できます。特に計画年休として導入する場合は、有給休暇を正確に管理しなければなりません。正社員を中心にフルタイムで働く従業員は、年5日の取得が義務化されています。
コンプライアンス違反を回避するには、休暇管理が充実した勤怠管理システムの導入が有効です。
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