従業員が退職した際、離職証明書の発行を請求されることがあります。この離職証明書は、失業手当の受給などに必要となるため、請求されれば必ず発行しなければなりません。
では、具体的にどのように記入すればよいのでしょうか?また、似た名前の退職証明書や離職票とは、どう違うのでしょうか?
この記事では、離職証明書の項目別の書き方や注意点について、わかりやすく解説します。
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離職証明書とは
離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)とは、従業員が退職した際に離職票の発行を受けるために、会社がハローワークに提出する書類です。
従業員が退職した場合、退職日の翌々日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」を届け出る必要がありますが、退職者が離職票の発行を希望する場合は、離職証明書も同時に提出します。
離職証明書は、3枚綴り複写式の定型書類で、1枚目が事業主控、2枚目がハローワーク提出用、3枚目が「離職票-2」としてハローワークから返却されます。なお、「離職票-2」と同時にOCRカード様式の「離職票-1」も交付されるため、両方忘れずに退職者に送付しましょう。
用紙は、各ハローワーク備付けのものを使う他、電子申請も可能です。なお、専用の複写式のため、ダウンロードなどはできませんが、ハローワークに事前申請した場合に限り、専用用紙以外の印刷物も提出可能であるため、個別に管轄ハローワークに問い合わせてみましょう。
離職証明書が必要な場合とは
離職証明書は、退職者が雇用保険の失業等給付の基本手当、いわゆる「失業手当」を受けるために必要となるため、給付を受ける退職者から請求があれば、会社は必ず発行しなければなりません。
また、退職者が退職時に59歳以上であれば、本人から特に請求がない場合でも、必ず発行しなければなりません。これは、60歳以上64歳までの労働者が「高年齢雇用継続給付」を受給するために、離職票の提出を求められるためです。
かりに、発行が必要であるにも関わらず、会社が離職証明書の発行を拒否した場合、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科される可能性があります。
離職証明書が不要な場合とは
既に再就職先が決まっている場合など、失業手当を受給する予定がなく、特に退職者(59歳未満に限る)からの請求がなければ、離職証明書の発行は不要です。また、退職理由が「死亡」である場合も、同様の理由で発行不要です。
離職票とはどう違う?
「離職票」は、退職者が失業手当を受けるために、ハローワークに提出する書類です。離職票には「離職票-1」と「離職票-2」の2種類があり、会社から離職証明書の提出を受けたハローワークは、記載内容を確認後に会社宛にこの2つの書類を同時に発行します。
「離職票-1」は、退職者の基本情報が記載されたOCRカード様式の書類です。「離職票-2」は、会社が提出した離職証明書の複写3枚目にハローワークが追記して返却されたものを指します。
会社は、ハローワークから交付された「離職票-1」「離職票-2」を揃えて速やかに退職者宛に送付し、退職者は失業手当の申請時に2つの離職票をハローワークに提出します。
つまり、「離職票-1」と離職証明書は別の書類ですが、「離職票-2」はまったく別の書類ではなく、離職証明書の一部がハローワークから「離職票-2」として返却される、という仕組みになっています。
退職証明書とはどう違う?
退職証明書は、会社が対象従業員が退職したことを証明する書類です。ハローワーク等に提出する公的書類ではないため、決まったフォーマットなどはありません。
必要となるケースとしては、転職先の会社から提出を求められた場合や、国民健康保険及び国民年金の加入手続きで離職票がまだ発行されていない場合などが考えられます。
なお、「使用(雇用)期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金」「退職の事由」については、本人が証明を希望すれば必ず記載しなければなりません。また一方で、この5項目については、本人が希望しない項目を記載してはなりません。
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離職証明書の項目別記載例
離職証明書の記入に使う用紙は、ハローワークに貰いに行くか郵送して取り寄せるのが一般的です。ただし、大企業など離職票の発行が多く、すべて手記入は困難という場合は、ハローワークへ事前申請することで、専用用紙以外での印刷物の提出も認められます。
ただし、専用用紙を使わない場合でも、以下の項目はすべて網羅しておく必要があります。
- 被保険者番号
- 事業所番号
- 従業員氏名
- 離職年月日
- 事業所・事業主
- 離職者の住所または居所
- 離職理由
- 被保険者期間算定対象期間
- 8.の期間における賃金支払い基礎日数
- 賃金支払い対象期間
- 10.の期間における賃金支払い基礎日数
- 賃金額
- 備考
- 賃金に関する特記事項
- 署名捺印
- 離職者本人の判断
①被保険者番号
「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」に記載されている11桁の番号を記入します。ただし、雇用保険加入時期が1981年7月6日以前の場合は、発行されている番号が16桁のため、下段の10桁の番号の末尾に「0」を加えた11桁を記載します。
②事業所番号
「雇用保険適用事業所設置届事業主控」や 「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」に記載されている11桁の番号を記載します。
③従業員氏名
退職する従業員の氏名とフリガナを記載します。
④離職年月日
「雇用保険被保険者資格喪失届」に記載した退職年月日と同じ日付を記載します。
⑤事業所・事業主
事業所の名称、所在地、電話番号、事業主の住所、氏名を記載します。ハローワーク提出用の複写2枚目に、事業主印の押印欄があるため、忘れないように注意しましょう。
⑥離職者の住所または居所
退職者の住所と電話番号を記載します。失業手当の申請手続きは、「離職者の居住地管轄ハローワーク」でしか行えないため、退職時に住所を変更することが決まっている場合は、変更後の住所を記載します。
⑦離職理由
用紙右側に記載されている16種類の離職理由から該当のものを選択し、「具体的事情記載欄」に具体的な理由や経緯を記載します。「事業主記入欄」と「離職者記入欄」があるので、間違えないように注意しましょう。
離職理由によって失業手当の所定給付日数、つまり給付額が変わってくるため、退職者から理由をしっかり聞いて間違いのないよう記載することが重要です。
⑧被保険者期間算定対象期間
退職者が被保険者であった期間を、離職日から1ヶ月ずつ遡り、上から下に12ヶ月分記載します。退職者が「一般被保険者・高年齢被保険者」であればA欄、「短期雇用特例被保険者」であればB欄に記載します。
なお、短期雇用特例被保険者とは、季節的に雇用される者(スキー場の従業員、海水浴の監視員など)のうち、次のいずれにも該当する者を指します。
- 4ヶ月を超える期間を定めて雇用される者
- 1週間の所定労働時間が30時間以上である者
⑨⑧の期間における賃金支払い基礎日数
⑧の各期間における、賃金支払の基礎となった日数を記載します。以下のとおり、給与形態によって、記載内容が異なります。
- 欠勤控除のない完全月給制の場合:暦日数
- 欠勤控除のある日給月給制であって、月ごとの控除割合が一定の場合:以下のケースに応じて記載
- 年間の出勤日数に応じて月給が決められる場合:年間出勤日数÷12が基礎日数
- 欠勤1日につき1/30減額される場合:基礎日数は30日(2月は暦日数)
- 日給制、時給制、月ごとに欠勤控除割合が変わる日給月給制の場合:出勤日数が基礎日数
有給休暇取得日、休日出勤日は基礎日数に加え、欠勤があれば基礎日数から控除します。
失業手当の受給のためには、この基礎日数11日以上の期間が12ヶ月あることが必要であるため、直近の12ヶ月だけで満たさない場合は、12ヶ月に達するまで遡って記載します。
⑩賃金支払い対象期間
1行目は、離職日から最後の締め日翌日までを、以降は賃金締め日をもとに1ヶ月毎に区切った期間を記載します。たとえば、離職日が3/31で、締め日が毎月15日であれば、1行目は「3/16~3/31」、以降は「2/16~3/15」「1/16~2/15」のように記載します。
記載するのは6ヶ月分ですが、最後の締め日から離職日までが1ヶ月に満たない場合は、最初の行はカウントに含めません。
⑪⑩の期間における賃金支払い基礎日数
基本的な考え方は、⑨と同じです。失業手当の受給のためには、この基礎日数が完全月で11日以上の月が6ヶ月あることが必要であるため、6ヶ月に達するまでは遡って記載する必要があります。
⑫賃金額
対応する期間に支払われた賃金を、月給制の場合はA欄、日給制や時給制の場合はB欄に記載します。通勤手当など、月極で支給される手当がある場合はA欄(日給制や時給制でも)に記載します。
残業代については、実際に当該残業が発生した月に計上します。つまり、3月に支給された残業代でも、2月に行われた残業分として支払われている場合は、2月の賃金額に計上します。
⑬備考
未払い(未確定)賃金、欠勤控除、休業手当の支給、締め日の変更などがあれば記載します。
⑭賃金に関する特記事項
月ごとの賃金以外に、3ヶ月以内の期間ごとに支払われる賃金がある場合、その賃金の支払日、名称、支給額を記載します。「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」つまり賞与などは該当しないので、間違えないよう注意しましょう。
⑮署名捺印
ハローワーク提出前に、退職者に内容を確認のうえ、署名・捺印をもらいます。本人と連絡が取れないなどの理由により、署名・捺印を受けられない場合は、やむを得ない旨を記載して事業主が署名・捺印します。
⑯離職者本人の判断
⑦で、事業主が○をつけた離職理由に異議がないかを記載します。また、本人が記載した離職理由に関して間違いないことを確認のうえ、署名・捺印をもらいます。
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離職証明書記入時の注意点
離職証明書を記入する際、以下のような点に注意しましょう。
- 退職者が時短勤務をしていた場合
- 退職者が高年齢被保険者の場合
- 離職証明書の添付書類
退職者が時短勤務をしていた場合
在職中に育児・介護等で時短勤務をしていた期間がある場合、賃金額は時短勤務開始前ではなく、実際に支払われた賃金を記載します。
ただし、特定受給資格者(倒産や解雇により離職した者)に時短勤務期間がある場合、特例により時短勤務開始前の賃金日額を算定することになっています。この場合は、離職証明書提出時に「雇用保険被保険者短縮措置等適用時賃金証明書」の添付が必要です。
退職者が高年齢被保険者の場合
「高年齢被保険者」とは、65歳以上で雇用保険に加入している労働者のうち、「短期雇用特例被保険者」や「日雇労働被保険者」に該当しない者を指します。
退職者が高年齢被保険者に該当する場合、⑧⑨欄には、それぞれ退職前の6ヶ月以上に当たるところまで、1ヶ月ずつ遡って記載します。
離職証明書の添付書類
離職までの賃金の支払い状況を確認できる書類として、「労働者名簿」「出勤簿」「賃金台帳」のいわゆる労働三帳簿を添付します。
また、以下の離職理由を確認できる書類も添付が必要です。
- 労働者の判断による(自己都合):退職届、賃金規程など
- 事業所倒産など:破産手続開始の申立て書類、解散決議の株主総会議事録(写し)
- 定年、労働契約期間満了など:雇用契約書、労働条件通知書、就業規則など
- 解雇など:解雇予告通知書、就業規則など
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離職証明書は電子申請がおすすめ
離職証明書は、退職した従業員が失業給付金の受給申請をおこなう上で欠かせない書類です。しかし、提出期限が短く、退職者本人に記入してもらう必要があるなど、迅速な対応が求められます。
また、自己都合退職の場合、添付書類として出勤簿や賃金台帳の提出も求められます。会社都合退職や定年退職時も、破産手続開始の申立て書類や雇用契約書などの添付が必要です。
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