2021年1月より、「子の看護休暇及び介護休暇」の時間単位での取得が可能となっていますが、実務上で取り扱いに迷うポイントがいくつか存在します。
この記事では、子の看護休暇の時間単位取得について、勤務形態や所定労働時間との関係で、どのように扱うのが適切なのか、わかりやすく解説します。
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2021年1月の改正ポイントをおさらい
改正からは1年以上経過していますが、あらためて改正ポイントをおさらいしておきましょう。就業規則等の変更が済んでいない場合は、早急に対応する必要があります。
子の看護休暇とは|有給・無給は会社が決められる
小学校入学前の子どもが怪我や病気に掛かった場合、看護のために休暇の取得を申請できる制度です。対象となる子は実子に限らず、養子であっても対象となります。取得日数は年間5日で、未就学児を2人以上養育している場合は最大10日まで取得可能です。
(子の看護休暇の申出)
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第16条の2|法令検索 e-Gov
第十六条の二 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話又は疾病の予防を図るために必要なものとして厚生労働省令で定める当該子の世話を行うための休暇(以下「子の看護休暇」という。)を取得することができる。
休暇中の給与に関しての規定は無いため、有給・無給の扱いは企業の判断に委ねられています。トラブルを避けるためにも、休暇中の賃金については就業規則へ明記しておきましょう。
子の看護休暇の時間単位取得とは
2021年1月の改正法施行により、それまで1日単位もしくは半日単位のみ認められていた子の看護休暇が、時間単位で取得可能になりました。状況に応じて柔軟な使い方ができるため、仕事への影響を抑えながら積極的に利用できるようになっています。
また、本改正に伴い、従来は取得が認められなかった「1日の所定労働時間が4時間以下の労働者」も、子の看護休暇を取得可能となりました。
「時簡単位」とは1の整数倍であり、たとえば「2時間単位で認める」というような規定は認められません。一方で、「30分単位で認める」という規定は、法の内容をより柔軟にした措置であるため、差し支えありません。
なお、法が最低限求めているのは、「始業時間から連続(遅出)」または「終業時間に連続(早退)」する形での取得ですが、より便宜を図って「中抜け」による取得を認めるのが望ましいと言えます。
子の看護休暇の対象者
基本的に、日雇い労働者を除き「未就学児を養育する」労働者であれば、男女問わず取得可能です。前述のとおり「1日の勤務時間が4時間以下の労働者」の取得制限は撤廃されました。
ただし、以下の要件に該当する労働者については、労使協定を締結することにより対象外とすることが可能です。
- 継続雇用期間が6ヵ月未満の労働者
- 1週間の所定労働⽇数が2⽇以下の労働者
- 時間単位で取得することが困難な業務に従事する労働者
1日に取得可能な時間は?
基本的には、1日の所定労働時間に満たない時間まで取得が可能です。1日の所定労働時間が8時間の場合は、最大7時間まで利用できます。出勤して1時間働いた段階で子どもの体調不良が発覚した場合、子の看護休暇を利用して子どもの看病に専念できます。
子の看護休暇の取得時間数が一日の所定労働時間に達すると、1日としてカウントします。1日8時間勤務の場合、4日連続で2時間利用した労働者は子の看護休暇を1日分利用したとカウントされるため、残りの休暇数は4日となります(未就学児が2人以上の場合は9日)。
シフト制などで日によって所定労働時間が変わる場合は、1年間における1日あたりの平均所定労働時間が基準となります。また、1年間における総所定労働時間数が決まっていない場合には、所定労働時間数が決まっている期間における1日平均所定労働時間数が基準となります。
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子の看護休暇の時間単位取得についての実務のポイント
年度途中で短時間勤務に切り替わった場合やフレックスタイム制を採用している場合は、注意が必要です。実務上起こりうる以下のケースについて、それぞれの適切な取り扱いを解説します。
- 1日の所定労働時間が時間単位ではない場合
- 途中で所定労働時間が変わった場合
- 子の看護休暇の時間単位取得が休憩時間にかかる場合
- フレックスタイム制における取り扱い
- 変形労働時間制における取り扱い
1日の所定労働時間が時間単位ではない場合
1日の所定労働時間が7時間30分など、時間単位に満たない端数がある場合は、時間単位に切り上げて取得単位をカウントする必要があります。
たとえば、所定労働時間が7時間30分の場合は分単位の時間を切り上げて8時間とみなし、かりに7時間の取得があった場合は、残りは4日と1時間ということになります。
途中で所定労働時間が変わった場合
年度途中で短時間勤務に切り替わるなどして所定労働時間が変わった場合は、変更された時間に比例して取得可能な時間数が変動します。この場合も、変更後の時間に生じた端数は、、時間単位に切り上げる必要があります。
たとえば、取得可能日数が「4日と4時間」残っている労働者が、時短勤務となり1日の所定労働時間が7時間から5時間に変更となった場合は、次のように扱います。
4時間 × (5時間 / 7時間)=2.857時間
端数を切り上げて3時間とし、残りは「4日と3時間」となって、以降は5時間取得ごとに1日としてカウントします。
子の看護休暇の時間単位取得が休憩時間にかかる場合
時間単位の子の看護休暇取得が、休憩時間にかかる場合は、休憩時間を除いた実際に勤務すべき時間帯で取得させる必要があります。これは、労働義務のない休憩時間に休暇を取得する余地がないと解釈されるためです。
たとえば、始業と就業が8:30~17:00(休憩12:00~13:00)の事業場において、始業から4時間、子の看護休暇を取得した従業員がいた場合で考えます。単純に計算した場合、8:30~12:30の取得となり、休憩時間に差し掛かってしまいます。
この場合は、「8:30~12:00」と「13:00~13:30」に分割して、合計4時間取得したと計算することになります。休憩時間を子の看護休暇の時間にカウントしないよう、注意が必要です。
フレックスタイム制における取り扱い
フレックスタイム制の対象労働者となっている場合でも、子の看護休暇は請求に応じて取得させる必要があります。
フレックスタイム制は、清算期間と呼ばれる期間内で決められた労働時間の総枠の範囲で、始業・終業時間の設定を労働者に委ねる制度です。労働者が自由に設定できる時間帯を「フレキシブルタイム」、必ず出社するべき時間帯を「コアタイム」と呼びます。
コアタイムについては、必ずしも設ける必要がないため、そうなると一見、子の看護休暇の時間単位での取得については、対象外としても問題ないように思われます。
しかし、子の看護休暇は、育児の必要性に応じて労働義務を免除する制度であり、フレックスタイム制の制度趣旨と全く異なることから、フレックスタイム制の対象者であっても時間単位での取得を認めなくてはなりません。
変形労働時間制における取り扱い
変形労働時間制は、変形期間と呼ばれる期間内で、繁閑などに応じて日や週の所定労働時間が変動する制度です。よって、子の看護休暇の1日が何時間に相当するのかについて、注意が必要です。
具体的には、変形労働時間制の適用労働者が子の看護休暇を時間単位で取得する場合は、変形期間における1日平均所定労働時間数(1時間に満たない端数がある場合には、端数切り上げ)分の休暇で「1日分」の休暇として取り扱います。
これは取得日による不公平感をなくすためで。たとえば、繁忙期で所定労働時間が9時間に設定されている日と、閑散期で所定労働時間が6時間に設定されている日に、それぞれ6時間の子の看護休暇を取得したとします。
通常通り運用した場合、前者は9時間-6時間で3時間残るのに対して、後者は1日分の取得してカウントされてしまいます。そこで、変形期間における1日平均所定労働時間数分を「1日分」の休暇として取り扱うことで、このような不具合を調整することになっています。
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勤怠管理システムで、子の看護休暇の時間単位取得にも柔軟に対応
子の看護休暇が時間単位で取得できたのは従業員にとって喜ばしい出来事である一方、勤怠管理が複雑化する要素が増えました。2022年以降も育児介護休業法関連の改正・施行が予定されており、勤怠管理もそれに応じた対応が必要です。
勤怠管理システムを導入することで、時間単位での休暇管理など、イレギュラーな勤怠にも柔軟に対応できるだけでなく、法改正にもスムーズに対応できます。
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