有期雇用契約の「無期転換ルール」は、2013年より導入された制度ですが、完全に浸透しているとは言い難く、有期契約労働者の中にはルールの存在そのものをご存知ない方も少なくありません。
こうした現状を踏まえ、政府は無期転換権が生じる契約更新の際には、その権利があることや転換後の労働条件を書面で明示するよう、企業に義務づける方針を発表しました(具体的時期は未定)。
この記事では、「無期転換ルール」の発生要件や特例などについて、わかりやすく解説します。
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有期雇用の「無期転換ルール」とは
パートや契約社員などの有期雇用労働者が、契約更新によって同じ企業で5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば期間の定めのない雇用契約に切り替えられる制度です。無期雇用への転換を申し出できる権利を「無期転換申込権」と呼びます。
無期転換申込権が発生した有期雇用労働者から申し出があった場合、使用者はこれを拒むことができません。申し出により無期雇用契約が成立し、現在締結している有期雇用契約の期間満了翌日から、自動的に無期雇用契約に切り替わります。
無期転換ルールの対象者
パートタイマー、アルバイト、契約社員のほか、「メイト社員」「パートナー社員」「準社員」など会社独自の雇用形態であっても、雇用契約期間に定めのある場合は、名称問わずすべて対象となります。
派遣社員の場合は、派遣元の会社に無期転換ルールへの対応義務があります。なお、無期転換ルールは、従業員規模にかかわらずすべての会社に対応義務があります。
無期転換ルールの明示が義務化へ
2023年1月には、労働契約締結時に労働者に対して書面にて明示すべき労働条件として、「無期転換ルール」に関する事項を加える方針が政府から発表されました(時期は未定)。
具体的には、無期転換権が生じる契約更新の際には、その権利があることや転換後の労働条件を書面で明示することが義務付けられることになります。
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無期転換申込権の発生要件
無期転換申込権は、以下の3要件を満たすことで発生し、労働者から無期転換の申し出があった場合は、使用者はこれを承諾したものとみなします。
- 有期労働契約の通算期間が5年を超えている
- 契約の更新回数が1回以上ある
- 現時点で同一の使用者との間で契約している
1. 有期労働契約の通算期間が5年を超えている
同一の使用者との間で締結された、2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が、5年を超えていることが必要です。
現に契約期間が5年を経過していなくても、契約期間が3年の有期労働契約を更新した場合は、通算契約期間が6年になるため、2回目の有期契約開始時点、つまり4年目に無期転換申込権が発生します。2回目の有期契約が2年経過した時点ではないことに、注意しましょう。
なお、同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない無契約期間が、一定の長さ以上の渡るときは、「クーリング期間」として、それ以前の契約期間は通算されません。
2. 契約の更新回数が1回以上
契約更新等により、同一の使用者との間で2以上の有期労働契約を締結したことが必要です。つまり、単一の契約期間が5年を超えていても、一度も更新されていない場合は、無期転換申込権は発生しません。
3. 現時点で同一の使用者との間で契約している
通算5年を超えて契約をしてきた使用者との間で、現在も有期労働契約を締結していることが必要です。
なお、無期転換申込権の発生を免れる意図で、就業実態が変わらないにも関わらず、派遣や請負を偽装して、労働契約の締結主体を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、同一の使用者に雇用されているとみなされます。
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無期転換ルールの導入手順
無期転換ルールは2013年から義務化された制度ですが、創業間もない会社など、まだ導入が進んでいない場合、以下の手順に沿って導入を進めます。
- 有期契約労働者の実態を把握する
- 社内業務を整理し、雇用区分ごとの分担を考える
- 無期転換後の労働条件を検討し、就業規則を整備する
- PDCAサイクルを確立する
有期契約労働者の実態を把握する
事業場における、正社員以外の有期契約労働者の種類や人数などを確認します。それぞれの有期契約労働者について、以下のような事項を確認・把握します。
- 職務内容
- 契約期間
- 更新回数
- 無期転換への意向
- 無期転換申込権の発生時期
社内業務を整理し、雇用区分ごとの分担を考える
無期転換後の業務や責任の範囲を明確に区分しておかないと、従来の「正社員」との待遇差などについて、トラブルに発展する恐れがあります。
たとえば、日々発生するルーティンワークや重要な業務は、無期雇用労働者が担当するべきでしょう。かりに有期雇用労働者にこれらの業務を任せた場合、契約満了によって労働者が入れ替わった場合、業務の流れややり方を一から教え直さなければなりません。
無期転換には、転換後の役割に応じて、「雇用期間の変更」「多様な正社員への転換」「正社員への転換」の3タイプの転換方法があります。
無期転換後の労働条件を検討し、就業規則を整備する
制度導入により、有期社員と労働条件が同一の無期契約労働者が出てくるため、雇用形態に応じた労働条件を再検討する必要があります。
また、無期転換社員用の就業規則を別途作成する場合は、並行して既存の就業規則の修正(無期転換社員を本則の適用除外とするなど)を忘れないよう注意しましょう。
PDCAサイクルを確立する
制度を導入して、転換の申込みに対して粛々と対応するだけでなく、常に制度改善に向けた運用が必要です。
雇用形態の変更に伴い、それまで適用されなかった転勤や時間外労働が発生する可能性もあるため、認識の違いを生まないよう、事前に丁寧に説明しておくことが重要です。また、転換後の就労実態や対象労働者の意見などをキャッチアップし、必要に応じて改善を図りましょう。
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無期転換ルールで注意すべきポイント
無期転換ルールの特例措置など、運用上注意すべきポイントを解説します。
無期転換ルールの特例措置
定年後に継続雇用される有期契約労働者については、適切な雇用管理に関する計画(第二種計画)を作成し、都道府県労働局長の認定を受けることで、無期転換の対象外とすることができます。
また、年収1,075万円以上の高度専門職である有期契約労働者についても、同様の特例措置が設けられています。
なお、高度専門職とは「博士の学位を有する者」「公認会計士」「ITストラテジスト」など、高度な専門的知識を有する者を指し、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」の対象者とは異なる点に注意しましょう。
雇い止めに注意
無期転換ルールの適用を避ける目的で、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして認められません。
有期雇用契約の満了前に、使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に設けたとしても、無効とされる可能性が高いため避けるべきでしょう。
無期転換ルールを整備して、効率的な人材活用を
労働市場では人材不足が深刻化しています。有期契約労働者の無期雇用転換は、優秀な人材の流出を防げるメリットが望めます。無期転換ルールの導入には、雇用形態に応じた労働条件の設定や就労実態の把握が必要です。
また、制度導入後も定期的な評価や改善の場を設けるなど、適切な運用が求められます。有期雇用契約者の就労実態を正確に把握するには、勤怠管理システムの活用が不可欠です。
勤怠管理システムは、出退勤時刻・労働時間・有給休暇の取得状況など、従業員の勤怠データを自動で集計するシステムです。常に最新の情報がシステム上には反映されており、雇用形態を問わず従業員の勤怠状況をすぐに把握できます。
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