勤怠控除は、労働者の欠勤や遅刻、早退に対してどのように賃金を調整するかという仕組みですが、その計算方法や適用範囲の理解が不十分である場合、労使間のトラブルに発展する可能性があります。

また、基本的な適用ケースや計算方法以外にも、「手当は控除の対象となるのか?」「変形労働制やフレックスタイム制では、どのように取り扱うのか?」といった会社ごとの実態に則したルールの理解も重要です。

本記事では、勤怠控除の基本的な定義から具体的な計算方法、注意すべきポイント、実務上の細かい疑問点まで、わかりやすく解説していきます。勤怠控除を巡るトラブルを未然に防ぐためにも、ぜひ最後までご覧ください。

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勤怠控除とは

勤怠控除は、労働者が欠勤や遅刻、早退した際に、その分の賃金を差し引くことを指します。これは「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいており、企業が賃金を公正に管理し、労働者の労働義務を促進するために一般的に広く行われています。

「ノーワーク・ノーペイの原則」とは

「ノーワーク・ノーペイの原則」は、労働者が労働を提供しない限り賃金が支払われないという基本的な考え方です。これは労働基準法第24条に基づいており、労働義務と賃金支払いの関係を明確にし、労使関係の根本をなす原則といえます。

(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
(以下略)
労働基準法第24条|法令検索 e-Gov

勤怠控除と減給の違い

勤怠控除と減給は、どちらも賃金の減額を伴いますが、その適用理由と法的根拠は異なります。勤怠控除は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、労働の提供が無かった分に応じて賃金が支払われないことを指します。

一方の減給は、従業員が会社に損害を与えた場合や、就業規則に違反した場合など懲戒処分として賃金が減額されることを指します。懲戒処分として減給を行うには、就業規則に明記する必要があります。

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勤怠控除が発生するケース

勤怠控除は、基本的に労働者が正当な理由なく労働義務を果たさなかった場合に適用されます。具体的なケースには、「欠勤」「遅刻・早退」「その他の特定の状況(例: 病気や慶弔時の休暇)」などが該当します。

欠勤

欠勤は、従業員が正当な理由なく、または正当な理由があっても会社に届け出ることなく、勤務を怠った状態を指します。原則として、欠勤した日数に応じて賃金が控除されます。特に無断欠勤を繰り返すような場合は、勤怠控除だけではなく懲戒処分の対象にもなります。

遅刻・早退

遅刻や早退は、労働者が所定の労働時間に遅れたり、早退したりする場合に発生し、その時間分の賃金が控除されます。

なお、労働時間は1分単位で計算するのが原則で、基本的に労働者に不利な形で丸め処理を行うことは認められません。たとえば、5分の遅刻に対して30分単位で切り上げて、0.5時間分の勤怠控除を行うことは違法となるので注意が必要です。

その他(病気、慶弔など)

病気や慶弔などの特別な理由による欠勤にに対しても、勤怠控除が適用されることがあります。通常これらのケースは慶弔休暇や特別休暇として処理されますが、かりに就業規則等にこうした休暇の規定がない場合は、勤怠控除として処理することになります。

なお、労働基準法においては、年次有給休暇以外の休暇について有給・無給の定めがないため、休暇取得時の賃金の有無は会社ごとに任意に定めることができます

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勤怠控除の計算方法

勤怠控除の計算方法は、労働者の給与形態によって異なります。たとえば時給制や日給制であれば、その日数分または時間分の賃金を控除すればよいので、比較的計算は楽ですが、月給制の場合は欠勤日数に応じて月給を日割り計算し、その分を控除する必要があります。

月給制の場合の計算方法

月給制において、欠勤があったときの勤怠控除は、以下の計算式によって算出します。

欠勤控除額=月の給与額÷月平均所定労働日数×欠勤日数

「月平均所定労働日数」とは「年間の所定労働日数÷12(ヶ月)」で求めた日数です。当月の所定労働日数ではなく月平均労働日数を用いるのは、月の暦日数によって所定労働日数が変動するため、月ごとに控除額が変わってしまうという不具合を避けるためです。

同様の考え方に基づき、月給制において遅刻や早退があったときの勤怠控除は、以下の計算式によって算出します。なお、「月平均所定労働時間」は「年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12(ヶ月)」で算出します。

遅刻・早退の控除額=月の給与額÷月平均所定労働時間×遅刻・早退の時間数

勤怠控除と各種手当との関係性

勤怠控除は、基本給だけでなく各種手当も対象となる場合があります。基本的には、勤怠の事実と手当の発生に直接関連のある手当は控除対象に含め、手当の根拠が労働者の属性や職域にある手当は控除対象に含めないのが一般的です。

控除対象に含める手当控除対象に含めない手当
通勤手当
営業手当
昼食手当
資格手当
家族・扶養手当
住宅手当
役員報酬

たとえば上記で挙げると、「通勤手当」や「昼食手当」などは、欠勤した日には発生しないため、控除対象となります。一方で、「家族・扶養手当」や「住宅手当」などは、労働者の家族構成や居住の事実により発生する手当であるため、控除対象に含めないのが妥当です。

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勤怠控除で注意すべきポイント

勤怠控除を適用する際には、法的な基準を満たし、違法な控除を行わないことが重要です。また、無用なトラブルを避けるためにも、勤怠控除に関する事項は、就業規則等に明記しておきましょう。

違法な勤怠控除に該当しないこと

「遅刻・早退の控除」でも解説しましたが、遅刻や早退した時間分以上の賃金を控除することは、違法となります。計算を簡便にするために丸め処理を行い際は、労働者に不利にならない形で行いましょう。

また、控除後の賃金が最低賃金を下回ってしまわないよう注意が必要です。所定労働日数に対して出勤日数が非常に少ない月に、原則どおり欠勤日数分を控除すると、控除後の金額が時給換算で最低賃金より低くなる可能性があります。

この事態を回避するためには、欠勤日数が一定の日数を超えた場合は、勤怠控除ではなく、1日あたりの賃金額に出勤日数を乗じた額を支給することとし、これを就業規則等に明記しておきましょう。

勤怠控除のルールは就業規則に明記する

勤怠控除の条件や計算方法などのルールは、就業規則に明確に記載しておきましょう。勤怠控除のルールは労働基準法などの法令で定められているわけではないため、就業規則等に記載がないと後々トラブルになりかねません。

また併せて、会社独自で定めた「特別休暇」については、どの休暇が有給扱いで、どの休暇が無給扱いなのかも明記しておきましょう。これらを就業規則に記載して従業員へ周知することで、トラブル防止に繋がります。

勤怠控除と残業代の関係

遅刻があった場合でも、その後の労働が所定労働時間を超えれば残業代が発生し、同じように早退があった場合でも、それを超える時間分早出していれば残業代が発生します。

また、みなし残業代を支給している場合、就業規則等に定めがあれば、このみなし残業代についても勤怠控除の対象となります。ただし、控除後のみなし残業代の金額が何時間分にあたるかを計算し、その時間分よりも実際の残業時間が多ければ超過分を支払う必要があるため、注意しましょう。

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勤怠控除でよくある質問

勤怠控除について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
休日出勤は欠勤控除で相殺できる?
Q
変形労働時間制での勤怠控除はどうする?
Q
フレックスタイム制での勤怠控除はどうする?

勤怠管理システムで適切な勤怠控除を実現しましょう

本記事では、勤怠控除に関する基本的な理解から、適用ケース、具体的な計算方法などをお伝えしてきました。違法な勤怠控除を避けるためには、法的な基準に基づいた正確な運用が必要で、勤怠控除のルールは必ず就業規則に明記することも重要です。

勤怠管理の効率化と正確な運用を実現するためには、適切な勤怠管理システムを選ぶことも大切です。「勤怠管理システムの選定・比較ナビ」をご利用いただくと、自社の勤怠ルールに必要な要件を満たしている勤怠管理システムの中から、自社に最もマッチングするシステムを探し出せます。

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