フレックスタイム制は、始業時間と終業時間を労働者が自由に決められる制度で、個々人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を実現できるとして注目されています。
しかし、実際に制度を正しく運用していくためには、複雑な労働時間管理や賃金計算が必要となるため、勤怠管理システムの導入が不可欠となります。
この記事では、フレックスタイム制を運用するための勤怠管理のポイントと、それに対応して勤怠管理システムに求められる要件について、わかりやすく解説します。是非、システム選びの参考にしてみてください。
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フレックスタイム制とは
フレックスタイム制は、労働者が始業時間と終業時間を自由に決められる制度です。会社にとっては無駄な残業代が削減できる、従業員にとってはライフスタイルに合わせて柔軟な働き方ができる、などのメリットがあります。
フレックスタイム制には、必ず出勤しなければならない時間帯であるコアタイムと、労働者が選択できる時間帯であるフレキシブルタイムがあります。コアタイムは必ず設ける必要はなく、コアタイムのないフレックスタイム制をスーパーフレックスと呼びます。
なぜフレックスタイム制に勤怠管理システムが必要なのか?
フレックスタイム制では、従業員ごとに日々の出退勤時刻や労働時間がバラバラになります。また、残業時間の計算方法も、日単位や週単位ではなく清算期間と呼ばれるフレックスタイム制の対象期間を通算するなど、通常の勤務形態と大きく異なります。
そのため、紙ベースやExcelによる管理では、チェック漏れや集計ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすくなり、正しい給与計算ができなくなる可能性が高いのです。
その点、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムであれば、就業規則の規定に応じた複雑な労働時間管理や賃金計算を自動で行うことができ、制度を正しく運用していくことが可能になります。
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フレックスタイム制に求められる機能要件
ここでは、フレックスタイム制を運用していく上で注意すべき勤怠管理のポイントと、それに対応する勤怠管理システムの要件について、解説していきます。
コアタイムやフレキシブルタイムの設定は?
コアタイムは、フレックスタイム制において、必ず出勤すべき時間帯として定められた時間のことです。対してフレキシブルタイムは、労働者がその出退勤時刻を自由に選択できる時間帯のことです。
たとえば、「コアタイム10時~14時、フレキシブルタイム8時~20時」と定めた場合は、労働者は10時~14時を挟んで、8時~20時の範囲で労働時間を決めることになります。
コアタイムは、就業規則に定めることで、清算期間を通じて設ける・設けないを設定できるだけでなく、日によってその長さや有り/無しを変動させることが可能です。システム要件としては「日によってコアタイムの設定を変えられるか?」ということになります。
また、コアタイムを設けている場合は、その時間帯に労働が無ければ遅刻・早退として扱うことが可能です。システム要件としては「コアタイムの設定をもとに、遅刻・早退の判定や賃金自動控除ができるか?」ということになります。
フレックスタイム制の1日の標準労働時間は?
フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇(以下「有休」)を取得した際に、支払うべき1日分の賃金が「労働何時間分」に相当するかについて定める必要があります。これを「標準労働時間」と呼び、基本的には清算期間内の総労働時間を所定労働日数で割って算出します。
システム要件としては「標準労働時間の設定ができ、半日単位や時間単位年休取得の際に正しく集計できるか?」ということになります。
清算期間内の所定労働時間の設定は?
フレックスタイム制では、日単位・週単位での時間外労働の集計や割増賃金の計算は行わなず、清算期間内の所定労働時間(総労働時間)を基準として時間外労働の計算を行います。
基本的には法定労働時間を基準として、以下の計算式にて算出した時間を上限として設定します。
総労働時間の上限 = 1週間の法定労働時間(40時間または44時間) × 清算期間の歴日数 ÷ 7
上記より、対象となる月の歴日数に応じて総労働時間は変動することがわかります。なお、1週間の法定労働時間が44時間というのは、「特例措置対象事業場」と呼ばれる、従業員10人未満の商業や接客娯楽業などの事業場が対象となります。
歴日数に応じて算出した上限で設定する方法のほか、上限を超えない範囲で一律固定の時間(暦日数28日の場合の160時間であれば超えない)とすることも可能です。システム要件としては「歴日数に応じた自動設定や、歴日数によらない固定の設定ができるか?」ということになります。
また、完全週休2日制の場合は、曜日の巡りによっては、1日あたりの実労働時間が8時間以内であっても、法定労働時間の総枠を超えてしまう不具合が起こる場合があるため、「清算期間内の所定労働日数×8時間」を総労働時間として取り扱うことが認められています。
「この特例に対応した総労働時間の設定ができるか?」ということも、一つのシステム要件になります。
清算期間が1ヶ月を超え3ヶ月以内の場合の設定は?
清算期間には、1ヶ月以内のものと1ヶ月を超え3ヶ月以内のものの2パターンがあります。後者の場合は、清算期間トータルでの時間外労働の判定に加えて、「1ヶ月あたりで週平均50時間を超過した時間分」も時間外労働としてカウントする必要があります。
システム要件としては「最終月の時間外労働として計上できるか? 」「1ヶ月あたりと期間トータルの2段階の時間外労働カウントが可能か?」ということになります。
なお、清算期間の途中で退職や勤務形態変更があり、清算期間より実際の勤務が短くなってしまうため、「フレックスタイム制が適用されていた期間内で週40時間を超えていた部分」が時間外労働として扱われます。
対応するシステム要件としては「個別に期間途中の適用・非適用を切り替えられ、集計処理ができるか?」ということになります。
月途中で入社・退社があったら?
清算期間の月途中で入社または退社があった場合は、通常どおり適用すると労働時間のカウントが不利になります。たとえば、在籍中の労働時間はほかの従業員と同じなのに、一人だけ時間外労働が発生しないという事態が起こり得ます。
この場合は、途中入社であれば入社日を清算期間の起算日、途中退社であれば退社日を清算期間の末日として「1週間の法定労働時間 × 当月の在籍日数 ÷ 7」を所定労働時間とします。システム要件としては「期間の日割りによる所定労働時間の算出が可能か?」ということになります。
実労働時間が所定労働時間に不足したら?
清算期間における実労働時間が所定労働時間に満たなかった場合は、以下のいずれかの処理をすることになります。一般的には、2.の繰り越し処理を行っている会社が多いようです。
- 不足時間分に相当する賃金を控除して支払う
- 賃金控除を行わず、不足時間分を次の清算期間に繰り越す
なお、繰り越す場合は、元々の所定労働時間を合わせて法定労働時間を超えないように注意が必要です。システム要件としては「不足分控除と繰り越しを切り替えられるか?」「繰り越す場合は、法定労働時間を超えない範囲の自動繰り越し、任意の時間分繰り越しの選択が可能か?」ということになります。
フレックスタイム制の残業申請はどうする?
残業申請については、「日々の出退勤時刻を労働者に委ねる」というフレックスタイム制の趣旨から、1日ごとに残業申請させることは認められないとされています。ただし、勤怠管理の必要性から、あくまでも諾否が絡まない範囲で残業報告を求めることは差し支えありません。
また、日ごとではなく、清算期間の所定労働時間を超える見込みとなる場合には、事前申請させることは差し支えないとされています。こちらは設定というよりも機能面での要件になりますが、申請ワークフロー機能の使い勝手もチェック項目とされることをおすすめします。
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フレックスタイム制には、勤怠管理システムが不可欠
従業員ごとにバラバラな出退勤実績を正しく管理するには、勤怠管理システムを利用しないと難しい面があります。
勤怠管理システムを導入することにより、フレックスタイム制だけでなく、変形労働時間制や裁量労働制などの多様な働き方に柔軟に対応でき、担当者の負担軽減、業務全体の生産性向上に繋がります。
とは言え、本記事で解説したシステム要件を一つ一つ照らし合わせながら、製品仕様を確認するのも大変な手間がかかります。そこで、おすすめなのが「勤怠管理システムの選定・比較ナビ」です。
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