労働者の副業は、以前は一切禁止が当たり前という風潮でしたが、2018年の働き方改革で政府が「副業促進」へと舵を切ったことにより、社会的にも一気に容認の方向へと傾いてきました。
では、会社としてはこの流れを受けて、就業規則をどのように整備し、運用すべきなのでしょうか?
この記事では、就業規則に副業に関する定めをする際のポイントや、運用上の注意点についてわかりやすく解説します。
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副業とは
副業とは、メインの収入源となる仕事以外に副次的に行う仕事のことです。平日は正社員として働きながら、週末は別の企業でアルバイトとして働くといった、複数の就業先を掛け持ちするという典型的な例のほか、ネット販売や投資なども副業に含めることが多くなっています。
「パラレルワーク」「ダブルワーク」「サイドビジネス」など、呼び方は様々ですが、意味はほぼ同じと考えて良いでしょう。
兼業とどう違う?
似た言葉に「兼業」がありますが、慣習的にほぼ同じニュアンスで使用されているため、厳密に使い分ける必要はないでしょう。
なお、「兼業」のほうが、複数の業務を掛け持ちしているものの、メイン・サブという区別はなく、ほぼ同列にある仕事の場合に使われることが多いようです。
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副業のメリット
副業によって得られるメリットを、会社側と従業員側の視点で紹介します。
会社側のメリット
会社側のメリットとしては、まず従業員のスキルアップが望める点が挙げられます。本業とは別の仕事に取り組むことで、新たな知識やノウハウの獲得が望めます。副業で得たスキルを本業でも活用し、業務効率改善や成果物の品質向上が期待できます。
また、従業員が副業に取り組むことで、人脈拡大が望める点もプラスです。副業先との業務提携によって、収益拡大や新規事業創出が期待できます。慢性的な人材不足に悩んでいる場合、副業先へ人材のシェアも提案可能です。
さらに、「多様な働き方の実現に取り組む姿勢」をアピールでき、自社のイメージアップを図れます。従業員のエンゲージメントも高まり、優秀な人材の流出を防げます。
従業員側のメリット
従業員のメリットとしては、何と言っても収入源が増える点が大きいでしょう。本業での終業時間後や休日など、プライベートな時間を副業に活用すれば、本業の収入に上積み可能です。
また、本業とは異なる分野の仕事に取り組むことで、新たな知識やスキルを獲得できる点も魅力です。副業を将来に向けての準備としても活用できます。本業で生活に必要な収入を十分得られている場合、収入獲得を目的に仕事を選ぶ必要はありません。
転職や独立に向けての準備など、自己実現を目的に副業での仕事に取り組めます。労働者自身がやりたい仕事に挑戦できるため、幸福感や充実感を得られます。
副業のデメリット
デメリットについても、会社側と従業員側の視点に分けて解説します。
会社側のデメリット
会社側のデメリットとしては、従業員のパフォーマンス低下を招く点が挙げられます。終業時間後や休日に副業に励むことで、十分な休息時間の確保が難しくなります。
慢性的な長時間労働によって疲労が抜けず、判断力や記憶力が低下すると、ケアレスミスの増加や人間関係でのトラブルにつながります。本業でのパフォーマンスに支障をきたさないよう、本業と副業先での勤怠管理に目を配ることが重要です。
また、従業員が様々な企業と接点を持つようになると、情報漏洩を招く可能性が高まります。かりに取引先の情報や事業ノウハウなどが流出すると、莫大な利益損失となります。社会的信用低下や自社のイメージダウンは避けられません。
さらに、副業での仕事内容や職場環境が魅力的だった場合、人材が副業先へ流出する可能性もあります。自社への帰属意識や本業へのモチベーションが低下していた場合、転職に踏み切られても不思議ではないでしょう。
従業員側のデメリット
従業員側のデメリットとしては、疲労の蓄積による健康状態の悪化が挙げられます。本業での仕事終わりや休日も副業の仕事に取り組んでいると、疲労回復の時間を十分に確保できません。休息時間が不足すると、体調不良を招く可能性が高まります。
また、副業での年間収入が一定の金額を超えると、確定申告の手続きが必要です。申告期限内に書類提出を済ませないと、無申告加算税や延滞税を課され、必要以上に税金を支払わなければなりません。
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副業の全面的禁止は難しい
結論から言うと、法的な面からも社会的風潮の面からも、就業規則で副業を一切禁じることは、不可能であると言わざるを得ません。
社会的には「容認・推進」の流れ
2018年の働き方改革により、厚生労働省の「モデル就業規則」から兼業を禁止する規定(「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」)が削除されました。
また、『副業・兼業の促進に関するガイドライン』も新たに提示されるなど、政府として副業を推奨する方針を打ち出しています。
これに呼応するように、リーディングカンパニーも副業容認へと動き、労働者意識の移り変わりと相まって、社会的には「副業は自由」という風潮が強くなっています。
法的にも全面禁止は不可能
憲法上、「職業選択の自由」が保障されている以上、会社が一切の副業を禁じることは、この権利を侵害することになってしまいます。
また、就業時間以外の時間をどう使うかは、本来労働者の自由であり、この点からも副業を禁じることは難しいと言えます。
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副業の禁止・制限が認められる場合とは
原則的には許可制・届出制により副業を認めながらも、以下のような場合には、副業を禁止したり一定の制限を設けたりすることを、就業規則に規定できるとされています。なお、以下は厚生労働省の「モデル就業規則」の副業・兼業に関する規定例をもとに解説します。
- 労務提供上の支障がある場合
- 企業秘密が漏洩する場合
- 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
- 競業により、企業の利益を害する場合
労務提供上の支障がある場合
副業により十分が休息が取れず疲労が蓄積し、生産性が著しく低下し、また明らかな健康上の悪影響が見られる場合が該当します。
また、健康面だけでなく、副業を行うために、遅刻や早退、欠勤が増えたなどの、服務規律違反。勤務姿勢への悪影響なども該当します。
企業秘密が漏洩する場合
会社独自の技術・ノウハウが流出するおそれがある場合です。社内組織や顧客に関する、保護すべき重要な情報が漏洩するおそれがある場合も該当します。
こうしたケースでは、取引先や顧客からの信頼を失い、企業イメージダウンに伴う莫大な利益繋がるためです。
会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
会社の名刺や名称を利用して、対外的に副業を行う場合です。このケースは、本来切り離すべき本業と副業を意図的に混同していると言えます。
また、反社会的活動や風俗など、会社の品位を低下させるおそれがある副業に従事する場合も該当します。
競業により、企業の利益を害する場合
競業他社での就業により、自社の利益を減少させるおそれがある場合です。他社への就業だけでなく、会社の技術やノウハウを利用して自ら業を営むことも該当します。
なお、外形的には競業であっても、具体的な業務内容が本業とは無関係であり、利益を害するおそれがない場合は、これに該当しないとされています。
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就業規則と副業についてよくある質問
就業規則と副業に関して、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
- Q副業既定に違反した従業員を懲戒解雇できる?
- Q副業によって法定労働時間を超えた場合、残業代はどうなる?
- Q退社後に副業先へ向かう交通費は支給すべき?
副業に関するルールは、就業規則に明記しましょう
社会構造や労働者意識の変化にともない、副業推進の流れは今後も加速することが予想されます。「柔軟性に欠けた企業」との印象を持たれないよう、ある程度容認していく姿勢が求められます。
ただし、届出ルールや制限、違反した場合の罰則など、副業のルールを就業規則に明記しておかなければなりません。ルールが曖昧だとトラブルを招く可能性が高くなり、会社に不利益が生じます。副業解禁の前に就業規則を整備しましょう。
また、労働者の健康管理やガイドラインに沿った管理モデルを運用するため、勤怠管理システムを利用した労働時間の管理が重要です。労働時間が一定の既定値を超える従業員本人と管理者に対してアラートを発することで、過重労働を未然に防げます。
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