テレワークの普及により、従来のタイムカードではなく、PCのログイン時間で労働時間を管理する企業も増えてきました。
残業時間の管理は終業時間に目が行きがちですが、従業員の出勤状況によっては始業時間にも気を配る必要があります。出勤時間と始業時間は明確に切り分けて、勤務実態とのギャップが生じないように管理しなければなりません。
この記事では、始業時間の意義、労働時間の切り捨てルール、効果的な始業時間の管理方法について解説します。
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始業時間とは?
「労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間」という考え方に基づくと、始業時間は「使用者の指揮命令下に入った時間」であると言えます。
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。
平成29年1月20日・基発0120第3号|厚生労働省
就業規則に記載されている所定労働時間の開始時刻とは、必ずしも一致しない点に注意が必要です。
出勤時間とどう違う?
「始業時間」とよく似た用語に「出勤時間」があります。同じ意味で使っている会社もありますが、厳密に言うと出勤時間は「単に事業場(職場)に到着した時間」です。
日本の企業文化の一つに「10分前出勤」という考え方があり、「始業時間の10分前には出勤すること」など、具体的な出勤時間を定めている会社もあります。
こうした出勤時間を定めること自体は問題ありませんが、出勤時間に遅れたからといって遅刻扱いにし、減給などの懲罰を課すことは認められていません。かりに減給対象とするのであれば、その時間は労働時間として扱う必要があります。
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始業時間前でも、労働時間になる場合とは?
店舗オープン前の清掃のように、出勤してから始業時間までの間に行われる「準備行為」のうち、使用者の指揮命令下にあると判断される場合は、労働時間に該当します。
労働時間に該当すれば所定時間外労働となり、所定労働時間と合わせて法定労働時間を超えた場合は割増賃金の支払いも必要となります。
着替え|業務に必要であれば労働時間になる
メーカーの工場内や建設・土木現場の作業員は、作業服や作業中の安全を図る防護服に着替えるなど、必要な装備を整える時間が必要です。
このような業務に必要な「着替え時間」は、当然、業務に不可欠な行為であり、労働時間に該当します。
また、制服の着用が義務付けられている会社の場合も同様に、ルール化されている以上は労働時間となります。ただし、単に化粧室などで労働者が身だしなみを整える時間に関しては、労働時間に該当しません。
朝礼やラジオ体操|参加が義務付けられていれば労働時間になる
具体的な業務前に「朝礼」や「ラジオ体操」をしている会社の場合、元々、朝礼やラジオ体操から始業時間をカウントしているのであれば、労働時間に算入されているため何ら問題はありません。
一方で、始業時間前に朝礼やラジオ体操が行われ、かつ参加が義務付けられている場合は、労働時間に算入する必要があります。
就業規則などに明示的に「参加を義務付ける」などの記載がない場合でも、参加の有無が人事評価に影響したり、懲罰対象となったりしている場合は、暗黙的に義務付けられていると判断されて、労働時間に該当します。
掃除|具体的な指示・命令によるものであれば労働時間になる
始業前の清掃につき、近隣地区への貢献を目的にボランティア活動の一巻による清掃活動など、労働者自らが自主的に行っている清掃の場合は、労働時間に該当しません。同じように、部署内の社員間の話し合いなどで、自主的に持ち回りで行っている場合についても労働時間には該当しません。
一方で、会社や上司から「始業前に清掃するように」と命じられている場合は、労働時間に該当します。
手待ち時間|基本的に労働時間になる
手待ち時間とは、特に具体的な作業は行っていないものの、使用者の指示があればただちに動けるような状況の時間であり、基本的に労働時間に該当します。
手待ち時間は、一見すると仕事をしていない状態に見えるものの、実態は会社の指揮命令下に置かれている状態です。たとえば、始業時間前に顧客から電話が入ることになっており、かかってくるのを待っている時間などは手待ち時間となり、労働時間に該当します。
よって、始業時間前に手待ち時間が発生した場合は、時間外労働として扱います。
メールチェック|必要性があれば労働時間になる
会社に出社し、所定のデスクに座ってPCを起動すると、まずメールチェックから入る労働者は珍しくありません。出勤時間から始業時間の間で、単にPCを起動してメールチェックするなどの行為自体は、労働時間には該当しません。
ただし、メールの情報が業務を開始する上で必要である場合は、労働時間に該当します。
この場合は、メールチェックが業務を遂行する上で必要な「準備行為」とみなされます。
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始業前の労働時間は切り捨て可能?労働時間の丸め処理とは
始業時間前の行為が労働時間であると判断される場合、ある程度までは切り捨てることが許されるのでしょうか?労務管理や勤怠管理上の「丸め処理」というのは、労働時間の切り上げや切り捨て処理をいいます。
労働時間の計算は1分単位が原則
労働基準法第24条には「賃金全額払の原則」が規定されており、労働時間は1分単位で計上し賃金に反映させなければなりません。よって、就業規則などで「労働時間は15分単位で計算し、15分未満は切り捨てるものとする」と規定していても無効であり、違法な運用となります。
慣習的に違法な丸め処理を行っていた場合は、労働基準法違反で罰則対象となります。
また、賃金請求権の時効である過去5年(当面は3年)分の切り捨て相当分の賃金を、労働者から請求される恐れがあります。
1ヶ月単位では例外的に認められる場合もある
日々の労働時間を切り捨てることは認められていませんが、1ヶ月における時間外労働に関しては、計算処理簡略化のため一定の端数処理が認められています。
具体的には、「1ヶ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」ができます。
勤怠管理における始業時間の注意ポイント
終業時間以降の残業時間のみに目が向いて、始業時間の管理がずさんになると、会社にとってさまざまなデメリットが生じます。
始業時間前は休憩時間として扱えない
始業時間前の時間を休憩時間として取り扱うことは認められません。
休憩時間は、「労働時間の途中に」「全従業員一斉に」「労働者の自由に」の三原則に従って付与しなければなりません。よって、出勤時間から始業時間まで労働者が寛いだり談笑している時間を、休憩時間から差し引くようなことは違法となります。
タイムカードやPCログインでの管理は問題あり
タイムカードのみで労働時間管理する場合、出勤と同時にタイムカードの打刻のみ行って、始業時間までコーヒーを飲んで休憩していても、労働時間としてカウントされます。また、PCのログイン情報のみに頼るのも問題で、ログインして始業時間まで業務以外のSNSなどを閲覧する時間も、労働時間にカウントされます。
上記どちらのケースも、使用者の指揮命令下ではないため実際には労働時間として扱う必要はありませんが、システム上労働時間として計上されるのが問題です。
始業時間の確認
たとえば、労働者からの労働時間の自己申告と、「タイムカードなどの入退場記録」や「PCのログイン情報」に著しい乖離がある場合、使用者は「実態調査」をしなくてはなりません。
(ウ) 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
勤怠管理システムなら、始業時間の管理が楽に
勤怠管理システムを使って始業時間を打刻することで、データとして一括管理されるため、打刻漏れや不正打刻の問題を解消可能です。労働時間を1分単位で管理しなければならないという、労働基準法上の原則にも対応できます。
労働者との間で始業時間に対する認識のズレを無くすためにも、勤怠管理システムの導入をおすすめします。
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