働き方改革や新型コロナウイルスの影響により、勤怠管理システムを導入する企業が急増しています。ただ、導入を検討しているものの、初期費用などのコストを考えるとなかなか導入に踏み切れない、という事業主の方も多いのではないでしょうか。
そこでオススメなのが、勤怠管理システム導入の際に利用できる補助金や助成金です。この記事では、勤怠管理システム導入を検討中の方向けに、補助金や助成金の受給要件から申請手続きまで、わかりやすく解説します。
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補助金・助成金とは?違いも解説
補助金と助成金は、ともに自治体や省庁などが運営主体となって、一定の条件を満たすことで支給されるものです。補助金のほうが受給額は大きい傾向にありますが、助成金は審査がなく要件さえ満たせばほぼ受給できるのが特徴と言えます。
ほかには、以下のとおり運営主体や目的などに違いがあります。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
運営主体 | 経済産業省・中小企業庁・各自治体 | 厚生労働省 |
目的 | 起業・創業支援、事業の育成 | 雇用促進、人材育成、労働環境改善 |
返済 | 一部必要な補助金もある | 不要 |
審査 | 要件を満たしていても、審査に通らなければ支給されない | 要件を満たしていれば、ほぼ支給される |
受給額 | およそ数十万円~数百万円 | およそ数万円~数十万円 |
IT導入補助金とは
IT導入補助金は、労働力不足解消・業務効率化・品質安定に寄与するITツール導入に、必要な資金を一部援助する制度です。中小企業庁が管轄し、主に中小企業や個人事業主をターゲットにしています。
対象のITツールは幅広く、ソフトウェア・クラウドサービス・グループウェアに加え、勤怠管理システムやPC購入費用も該当します。また、IT導入補助金は自社単独で進める制度ではなく、IT導入支援事業者と共同で行うのが特徴です。
IT導入支援事業者は、システムやサービスを提供するベンダーです。ITツールの選定・事業計画立案・申請手続きのサポートなど、幅広い面で申請者をサポートします。
IT導入支援事業者とは長期的な付き合いとなるため、コミュニケーションが取りやすく、相談しやすい相手を選定することが重要です。
IT導入補助金には、目的に応じて以下の5種類の枠が用意されています。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
この記事では、このうち勤怠管理システム導入に利用できる通常枠について解説していきます。
IT導入補助金の対象事業主
IT導入補助金の対象となるのは、中小企業もしくは個人事業主で、医療法人や学校法人も対象となります。
中小企業の定義は労働基準法などの定義とは異なり、製造業・建設業・運輸業であれば「資本金3億円以下または常勤従業員300人以下」のように、業種ごとに規模要件が設定されています。詳しくは、以下のサイトをご参照ください。
補助の要件と補助金額
補助対象となる経費とその補助金額については、以下のように決められています。
ITツール要件 | 1種類以上の業務プロセスを含むプロセスを保有するソフトウェアを申請すること |
---|---|
補助対象 | ソフトウェア:ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分) オプション:機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ 役務:導入コンサルティング、導入設定 / マニュアル作成 / 導入研修、保守サポート |
補助率 | 1/2以内 |
補助額 | 1プロセス以上:5万円以上150万円未満 4プロセス以上:150万円以上450万円以下 |
ITツール要件のプロセスとは、以下の6つ業務プロセスと1つの汎用プロセスにカテゴライズされた業務分類のことです。
- 業務プロセス
- P1:顧客対応・販売支援
- P2:決済・債権債務・資金回収管理
- P3:供給・在庫・物流
- P4:会計・財務・経営
- P5:総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
- P6:その他業務固有のプロセス(業務特化型)
- 汎用プロセス:業種・業務が限定されない自動化ツールなど
汎用プロセスに合致するツールは、単独での申請が認められていません。業務プロセスに合致するツールと併せての申請が必要なので、注意してください。
なお、補助率が1/2以内、補助金額の下限が1~3プロセスの5万円であることから、実際に申請する場合には、導入費用が10万円(税抜き)を超える必要があります。
IT導入補助金の申請フロー
IT導入補助金は、以下の流れに沿って手続きを進めていきます。
- 公募要領等の確認
- 「gBizIDプライム」アカウントを取得
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」を宣言
- 「みらデジ」にて経営課題をチェック
- IT導入支援事業者及びITツールの選定
- IT導入支援事業者と共同で交付申請を実施
- 事務局から「交付決定」の連絡を受けた後、勤怠管理システムの発注・契約・支払いを完了
- 製品の契約内容や費用を証明する書類を添付して、事業実績報告を遂行
- 補助金額が確定し、金額を確認後に補助金が交付
- 決められた期間内に、事業実施効果報告を実施
「gBizIDプライム」は、補助金などの行政サービスを利用する際に必要となる、法人代表者または個人事業主用の認証アカウントです。取得申請からID発行までは2週間ほどかかるため、早めに取得しておきましょう。
なお、交付申請してから「交付決定」連絡がある前に、契約・支払いを行ってしまうと、補助金は交付されません。必ず事務局からの「交付決定」通知を受けた後に、ITツールの発注・契約・支払いを行うようにしましょう。
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働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金は、生産性向上を図りつつ、労働時間の削減や従業員の健康維持などの取り組みを行う事業主のため、厚生労働省が主体となって設備投資に対する費用助成を行う制度です。以下の4つのコースが用意されています。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 業種別課題対応コース
- 団体推進コース
上記のうち団体推進コースを除いた3つのコースが、勤怠管理システム導入に利用できます。
働き方改革推進支援助成金の対象事業主
対象となるのは中小企業の事業主です。中小企業の定義は、以下の4業種につき、それぞれ資本・出資額または常時雇用する労働者数によって定められています。「IT導入補助金」の要件とは異なるので注意しましょう。
業種 | 資本金または出資総額 | 従業員数 |
---|---|---|
小売業・飲食店 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
各コース共通の要件
それぞれのコースに設定された成果目標を達成するために、以下の9つの取り組みのうち、1つ以上を実施する必要があります。
- 労務管理担当者への研修
- 労働者に対する研修・周知・啓発
- 外部専門家からのコンサルティング
- 就業規則や労使協定の再整備
- 新規採用や中途採用など人材確保に向けた動き
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計の導入・更新
- 業務効率改善に寄与する設備や機器の導入及び更新
上記のうち「労務管理用ソフトウェアの導入・更新」が勤怠管理システムの導入に該当します。
なお、いずれのコースも、2024年11月29日までに交付申請を行い、交付決定の日から2025年1月31日までに取り組みを実施する必要があります。
労働時間短縮・年休促進支援コースの内容
時間外労働削減や年次有給休暇取得率向上に向け、組織全体の生産性アップを目指す中小企業向けのコースです。以下の成果目標のうち、1つ以上の達成を目的とした取り組みを行うことが必要になります。
- 全ての対象事業場において、令和4年度又は令和5年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと
- 全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること
- 全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入すること
- 全ての対象事業場において、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること
支給額は、以下の「成果目標1~4に応じた上限額+賃金引き上げ加算額」か「対象経費の合計額×補助率3/4」のいずれか低い額になります。
- 成果目標1の上限額
事業実施後に設定する時間外労働時間数等 | 事業実施前の設定時間数 | |
---|---|---|
現に有効な36協定において、時間外労働時間数等を月80時間を超えて設定している事業場 | 現に有効な36協定において、時間外労働時間数等を月60時間を超えて設定している事業場 | |
時間外労働時間数等を月60時間以下に設定 | 150万円 | 100万円 |
時間外労働時間数等を月60時間を超え、月80時間以下に設定 | 50万円 | ー |
- 成果目標2達成時の上限額:50万円
- 成果目標3達成時の上限額:25万円
- 成果目標4達成時の上限額:25万円
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
---|---|---|---|---|
3%以上引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人当たり5万円 (上限150万円) |
5%以上引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円 (上限240万円) |
勤務間インターバル導入コースの内容
2018年4月から努力義務とされている、勤務間インターバル制度の導入を検討している企業向けのコースです。以下のいずれかの勤務間インターバルに関する成果目標達成を目的とした取り組みを行うことが要件となります。
- 勤務間インターバルを導入していない事業場において、新たに9時間以上の勤務間インターバルを導入する
- 既に9時間以上の勤務間インターバルを導入しているものの、対象従業員が全従業員の半数以下である事業場において、対象者が全従業員の半数を超えるよう範囲を拡大する
- 既に9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において、全従業員の半数を超える従業員を対象に、休息時間を2時間以上延長し且つ9時間以上とする
支給額は、取り組みに応じた以下の金額を上限として、対象経費の3/4となっており、賃金引き上げ目標達成の場合は、これに賃金引き上げ加算額が加算されます(金額は「労働時間短縮・年休促進支援コース」を参照)。
休息時間数 | 「新規導入」に該当する取組がある場合 | 「新規導入」に該当する取組がなく、「適用範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取組がある場合 |
---|---|---|
9時間以上 11時間未満 | 80万円 | 40万円 |
11時間以上 | 100万円 | 50万円 |
なお、「休息時間数」は、事業実施計画において指定した事業場に導入する勤務間インターバルの休息時間のうち、最も短いものを指します。
業種別課題対応コースの内容
労働時間適正管理推進コースは、2024年4月1日より時間外労働の上限規制が適用されている建設業・運送業・病院等の業種を対象としており、以下の6つの成果目標から1つ以上の達成を目指して実施します。。
- 全ての対象事業場において、令和6年度又は令和7年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行うこと(全ての業種が選択可能)
- 全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること(全ての業種が選択可能)
- 全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること(全ての業種が選択可能)
- 全ての対象事業場において、9時間以上の勤務間インターバル制度の規定を新たに導入すること(全ての業種が選択可能)
- 全ての対象事業場において、4週5休から4週8休以上の範囲で所定休日を増加させること(建設業が選択可能)
- 医師の働き方改革推進に関する取組として以下(1)、(2)を全て実施すること(病院等が選択可能)(1)労務管理体制の構築等
ア.労務管理責任者を設置し、責任の所在とその役割を明確にすること
イ.医師の副業・兼業先との労働時間の通算や医師の休息時間確保、長時間労働の医師に対する面接指導の実施に係る協力体制の整備を行うこと(副業・兼業を行う医師がいる場合に限る)
ウ.管理者層に対し、人事・労務管理のマネジメント研修を実施するなど、労働時間管理について理解を深める取組を行うこと
(2)医師の労働時間の実態把握と管理労働時間と労働時間でない時間の区別などを明確にした上で、医師の労働時間の実態把握を行うこと
支給額は、「成果目標1から6の上限額および賃金加算額の合計額」もしくは「対象経費の3/4」のいずれか低い金額となっています。達成目標に応じた支給額は以下に詳しく掲載されていますので、併せてご確認ください。
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)|厚生労働省
働き方改革推進支援助成金の申請フロー
働き方改革推進支援助成金の申請は、以下の流れに沿って手続きを進めます。
- 期日(2024年11月29日)までに、管轄都道府県労働局に「交付申請書」及び「事業実施計画書」を提出
- 労働局から交付決定通知を受理した後、勤怠管理システムの導入や就業規則の変更などの取り組みを実施する
- 支給申請書を提出(事業実施機関終了後30日以内または2025年2月7日のいずれか早い日まで)
- 支給決定通知後に助成金受給
「交付申請書」及び「事業実施計画書」の提出期限は、2024年11月29日です。期日を過ぎると受け付けてもらえないため、早めに準備しましょう。
また、交付決定通知後に提出する支給申請書も、基本的には事業実施機関終了後30日以内(2025年2月7日のいずれか早い日まで)が、期限となっています。
補助金・助成金を活用して、勤怠管理システムを導入しましょう
勤怠管理システムは、全従業員に対して利用するシステムで、業務全体の効率化や生産性向上につながります。補助金や助成金をうまく活用することで、勤怠管理システム導入に掛かるコストを大幅に削減可能です。
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