「2025年から65歳定年が義務化される?」

2021年から施行されている改正・高齢者雇用安定法について、一部こうした情報も出回っていますが、これは誤りです。では、最新の法改正で事業主に義務付けられている措置にはどんなものがあるのでしょうか?また、2025年には一体何が変わるのでしょうか?

この記事では、高齢者雇用安定法について、わかりやすく解説します。

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高齢者雇用安定法とは

高齢者雇用安定法(正式名「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」)とは、働く意欲がある高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律です。

1971年に前身となる「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定され、少子高齢化による人口減少を受けて、経済社会の活力を維持するため、現在の名称へ変更されました。

本法では、高齢者が意欲と能力に応じて働き続けることのできる措置を講じるよう、事業主に義務付けています。近年では2012年、2020年に改正が行われ、それぞれ翌年から改正法が施行されています。

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高齢者雇用安定法の最新の改正ポイント

2020年の改正では、年金の支給開始年齢の拡大に対応して、年金受給開始までの生活を安定させることを目的とした改正が行われました。

高年齢者を取り巻く生活環境が厳しさを増す中、安定した生活を送るためには、仕事をこなしながら収入を確保することが欠かせません。企業としても、経験豊富な労働者を再雇用することで、若手従業員へのスキルやノウハウの伝授も期待できます。

改正の主な内容としては、対象となる事業主に、高年齢者就業確保措置(「高年齢者雇用確保措置」「創業支援等措置」)のいずれか(もしくは複数)を講じるよう努める必要がある、とされています(努力義務)

改正法の対象となる事業主

改正の対象となる事業主は、以下のとおりです。

  • 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
  • 継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主

改正前の事業主の義務は?

前回つまり2013年の改正においては、以下のいずれかの措置を講じることが事業主に義務付けられており、これは現時点でも変わりません。

  1. 65歳までの定年引き上げ
  2. 定年の廃止
  3. 65歳までの継続雇用制度の導入(特殊関係事業主によるものを含む)

※「特殊関係事業主」とは、自社の子法人、親法人、親法人の子法人などを指します。

上記に違反して何らの措置を講じなかったとしても、罰金などの罰則が科されることはありません。ただし、労働局やハローワークから指導・勧告を受けることがあり、これらに従わない場合は企業名公表の対象となるため、企業イメージや取引先からの信頼低下の恐れがあります。

高年齢者雇用確保措置とは

高年齢者就業確保措置のうちの「高年齢者雇用確保措置」とは、以下の3つを指し、対象事業主は、いずれかの措置を講じるよう努めるものとされています。

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)

創業支援等措置とは

高年齢者就業確保措置のうちの「創業支援等措置」とは、雇用によらない就業確保措置を指し、具体的には以下の2つが該当します。

  1. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  2. 70歳まで継続的に、事業主が自ら実施する、または事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入

なお、「社会貢献事業」とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業を指し、特定の教義を広めるための宗教活動や、特定の政党・候補者支援のための政治活動などは該当しません。

創業支援等措置の導入手順

創業支援等措置を導入する場合は、以下の手順に沿って手続きを進める必要があります。

  1. 以下の事項を記載した計画を作成する
    1. 創業支援等措置を講ずる理由
    2. 高年齢労働者が従事する業務内容
    3. 高年齢者に支払う金銭
    4. 契約を締結する頻度
    5. 契約に係る納品
    6. 契約の変更
    7. 契約の終了(契約の解除事由を含む)
    8. 諸経費の取扱い
    9. 安全及び衛生
    10. 災害補償及び業務外の傷病扶助
    11. 社会貢献事業を実施する団体
    12. そのほか、創業支援等措置の対象となる労働者の全てに適用される事項
  2. 1.の計画について、過半数労働組合等の同意を得る
  3. 同意を得た計画を、一定の方法(就業規則と同様)によって、労働者に周知する

過半数労働組合を持たない企業に関しては、労働者の過半数を代表する者から同意を得る必要があります。また、上記の手続きをすべて終えた後は、労働者の就業先となる団体との契約も締結しなければなりません。

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高齢者雇用安定法の措置を講じる場合の注意点

高齢者雇用安定法の措置を講じる上では、以下のような点に注意しましょう。

  • 対象者基準について
  • 労使間協議について
  • 高齢者雇用安定法の努力義務を怠った場合
  • 「2025年度から65歳定年が義務化」について

対象者基準について

「定年の引き上げ」「定年の廃止」以外の措置については、対象者を限定する基準を設けることが可能です。

ただし、対象者基準の内容は、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされており、また同意を得た場合でも、以下のように法の趣旨や公序良俗に反する基準は認められません。

  • 会社が必要と認めた者や上司の推薦がある者に限定すること
  • 性別を限定すること
  • 労働組合への未加入を条件とすること

労使間協議について

5つの高齢者就業確保措置のうち、いずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置を講じることが望ましいとされています。

創業支援等措置のみを講ずる場合の実施に関する計画には、過半数労働組合等の同意が必要です。また、創業支援等措置と雇用確保措置を併用する場合の実施計画、及び対象者基準を設ける場合の基準の内容については、過半数労働組合等の同意を得るのが望ましいとされています。

高齢者雇用安定法の努力義務を怠るとどうなる?

今回の改正で盛り込まれた措置は、いずれも努力義務であるため、現時点で具体的な措置の実行に至っていなくても、罰則が科されることはありません

ただし、実施を検討すらしていない、制度趣旨と逆行するような措置を講じている、などが見られる場合は、ハローワーク等の指導・助言の対象となります。

さらに、指導等を受けても改善が見られない場合は、実施勧告や企業名公表の対象となる可能性があるため、努力義務に過ぎないからと軽視することは避けましょう。

「2025年度から65歳定年が義務化」は誤った情報です!

一部で「2025年度から65歳定年が義務化」という誤った情報が広まっており、インターネット上でも見掛ける場合があるので注意しましょう。

65歳までの継続雇用制度について、2013年4月の改正法施行時点で、労使協定により制度の適用対象者の基準を設けていれば、対象者を限定することが可能とされました。

これは経過措置であり、以降3年ごとに制度の適用を限定できる対象者の年齢が引き上げられています(2023年2月時点で64歳以上)。この経過措置が終了し、継続雇用制度の適用対象者が一律65歳以上となるのが、2025年4月1日以降というわけです。

この情報が「65歳定年義務化」と誤解されて広まったものであり、決して2025年に定年を65歳以上とすることが義務付けられるわけではありません

なお、具体的に2025年4月以降に何らかの対応が必要なのは、現時点で「継続雇用制度の利用につき、64歳以上の人に基準を適用している」会社のみです。

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高齢者の就業確保は企業の責務

社会情勢の変化を反映した法改正がおこなわれた事実をみても、高齢労働者への雇用確保や再就業支援を早急に取り組む必要があります。高齢労働者の雇用確保措置を実施する場合、助成金も活用可能です。

ただし、助成金の申請には、適正な勤怠管理や労働環境整備が必要です。2つの課題を解消するためには、勤怠管理システムの導入が有効です。勤怠管理システムは、出退勤時刻・労働時間・有給休暇の取得状況など、従業員の勤怠データを自動で集計するシステムです。

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