育児休業中に一時的・臨時的に就業する、いわゆる「半育休」は、注意すべきポイントを押さえておかないと、かえってデメリットのほうが大きくなってしまいます。

類似制度である短時間勤務制度とどちらを利用すべきかは、従業員の家庭環境や本人の意向を踏まえ、労使間でしっかり確認する必要があります。

この記事では、半育休のメリット・デメリット、給付金や保険料の関係で注意すべきポイントについて、わかりやすく解説します。

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半育休とは

半育休は、育児休業中に一時的・臨時的に就業することで、収入を「育児休業給付金+会社からの賃金」で上乗せしようという制度です。法律に規定された言葉ではなく、慣習的に使用されている造語です。

育児・介護休業法では、原則的に育児休業中の就業を想定していませんが、雇用保険法の「育児休業給付金」は、一時的・臨時的な就労があっても支給されます。半育休は、この例外措置を利用したものと言えます。

育児休業給付金の支給要件を満たす範囲で労働日数や労働時間を調整することで、育児休業に伴う収入減の影響を最小化できます。また、完全に仕事から離れる期間を短縮し、引継ぎ作業の簡略化や職場復帰でのブランク軽減も図れます。

育児休業とは

仕事と育児の両立を図るため、子どもの養育を目的に、子どもが出生してから1歳に達するまでの間で、労働者が申し出た期間だけ取得できる休暇制度です。通常は、女性従業員は産後休業終了翌日から、男性従業員は出産予定日から子が1歳に達するまで取得可能です。

基本的には、日雇い労働者以外であれば、勤務形態や雇用形態に関わらず取得可能ですが、有期契約労働者については以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 同一の事業主に過去1年間以上、雇用されていること(2022年4月1日より削除)
  2. 子どもが1歳6カ月になる日までに雇用契約が終了することが明らかでないこと

上記要件1.が2022年4月1日から削除されることに加え、2022年度から2023年度にかけて、育児休業に関するさまざまな改正が予定されています。

育休中は育児休業給付金が受給できる

育児休業期間中は、一般的には「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて会社からの賃金は無給であるため、収入保障のため雇用保険から育児休業給付金が支給されます。支給要件は以下のとおりです。

  • 雇用保険の被保険者であること
  • 1歳未満の子どもを養育すること
  • 産休前の2年間に、11日以上就業した月が12ヶ月以上あること
  • 育休期間中の1ヶ月単位で、休業開始前の賃金の80%以上が支払われていないこと
  • 育休期間中の1ヶ月あたりの就業日数が10日以下、又は就業時間が80時間以下であること

育児休業給付金の月あたりの支給額は以下のとおりです。計算式中の休業開始賃金日額とは、「育児休業開始前6か月間の総賃金額を180で割った金額」で、支給申請時に提出する「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」に記載されている額をもとに算出されます。

休業開始時賃金日額 × 支給日数(原則30日)× 67%(育児休業開始から6か月経過後は50%)

また、会社から休業中に賃金が支払われた場合は、「休業開始時賃金日額 × 支給日数の80%」を超えない範囲で減額されることになります。たとえば、会社から休業前の50%の賃金が支払われている場合は、支給率は「80% – 50% = 30%」となります。

育休中は社会保険料が免除される

育児休業期間中は、健康保険及び厚生年金の保険料が、従業員負担・会社負担分ともに免除となります。育児休業を開始した月から終了日翌日の前月分までが免除の対象期間(賞与も対象)となります。

なお、免除となっても健康保険の給付内容に変更はなく、将来受給可能な年金額も減額されません。

現行は月末時点で育児休業している場合にのみ免除対象となっていますが、2022年10月からは、月内に2週間以上の育児休業を取得している場合も免除対象となるよう改正されます。また、賞与における社会保険料については、育児休業が1ヶ月を超える場合に限り免除対象となります。

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半育休のメリット

半育休は、収入面と業務面でそれぞれ以下のメリットを得られます。

  • 育休中の収入を上積みできる
  • 仕事の引き継ぎや復帰時の負担が減る

育休中の収入を上積みできる

育児休業給付金に加えて、賃金が支払われることで、育休中の収入減を最小限に抑えられるのが、最大のメリットです。ただし、育児休業給付金は、会社から賃金が支払われる場合は以下のように減額調整されるため、上限を超過しないよう注意が必要です。

  1. 賃金が賃金月額の13%(育休開始から6ヶ月経過後は30%)以下の場合、賃金月額の67%(育休開始から6ヶ月経過後は50%)相当額を支給
  2. 賃金が賃金月額の13%(育休開始から6ヶ月経過後は30%)を超え、80%未満の場合、賃金月額の80%相当額と賃金の差額を支給
  3. 賃金が賃金月額の80%以上の場合、不支給

つまり、育児休業給付金と賃金の合計額が、休業開始時賃金日額の80%を超えないように調整されることになります。なお、調整対象となる収入は、在籍する会社からの賃金のほか、副業などで得た報酬も含まれる点にも注意が必要です。

仕事の引き継ぎや復帰時の負担が減る

仕事の振り分けやマニュアルの作成など、引継ぎ作業を最小限に抑えられ、他の従業員への負担を軽減できる点もメリットと言えます。必要に応じて就労できるため、休業前に引き継げなかった業務もタイミングを見て移行できます。

加えて、得意先との折衝やトラブル対応など、対象従業員に依存するような属人的な業務を完全に手放さなくてもすむため、不在に伴う影響を最小現に抑えることが可能です。

また、従業員本人にとっても仕事と育児の両立が図りやすく、職場復帰後にブランクを感じること無くスムーズに仕事に取り掛かれます。

半育休のデメリット・注意点

半育休には以下のようなデメリットや注意点があり、これらとメリットとを比較して総合的に半育休を利用するかどうかを判断することが重要です。

  • 就業日数・就業時間に上限がある
  • 一時的・臨時的な就労に限られる
  • テレワークや短時間勤務制度は対象外
  • 会社からの指示で就労させることはできない
  • 雇用保険料は支払う必要あり

就業日数・就業時間に上限がある

就業日数が10日を超えるか、就業時間が80時間を超えた場合は育児休業とみなされず、育児休業給付金の支給対象外となります。また、社会保険料免除も受けられなくなります。

一時的・臨時的な就労に限られる

育児休業中の就労は、一時的・臨時的なものに限って認められる例外的な措置であるため、恒常的・定期的な就労は育児休業とは認められません。以下に具体例を示します。

一時的・臨時的な就労と認められる一時的・臨時的な就労と認められない
・商品ニーズの急拡大で、急遽人手が必要になり、数日間就労する
・対象従業員にしか分からない、機密性が高い業務に関してのトラブル対応のため、臨時的に就労する
・職場内クラスターに伴う従業員の大量欠員に伴い、テレワークにより一時的に就労する
・「1日4時間で20日勤務」など、あらかじめ決められた時間と日数に応じて就労する
・「毎週火曜日勤務」のように、定期的に就労する

テレワークや短時間勤務制度は対象外

出勤を伴わないテレワークであっても、先に挙げた一時的な就労に該当しない限りは、育児休業とは認められません。また、短時間勤務制度についても、恒常的・定期的な就労に該当するため、育児休業とは認められません。

会社からの指示で就労させることはできない

育児休業中の就労は、あくまでも労働者の合意を得た上での就労に限られ、会社からの一方的な指示・命令により就労させてはなりません。なお、育児休業中の就労拒否を理由に降格や配置転換など、従業員に不当な取り扱いを行うことは禁じられています。

雇用保険料は支払う必要あり

社会保険料と異なり、雇用保険料は賃金が発生する以上は支払う必要があります。保険料率は年度ごと事業ごとに見直されますが、2021年度の一般事業(農林水産・清酒製造・建設業以外)は9/1000(労働者負担:3/1000、事業主負担:6/1000)となっています。

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半育休は保育園に預かってもらえる?

半育休で一時的・臨時的に就労している間は、一時保育を実施している施設であれば、育休対象の子どもを預かってもらうことは可能です。ただし、条件や費用は、自治体や園によって異なるため、個別に確認が必要です。

半育休と育児短時間勤務制度どっちが良い?

「育児短時間勤務制度」は、3歳未満の子どもを養育中の労働者の所定労働時間を、原則として6時間に短縮する制度です。

当然育休ではないため、育児休業給付金や社会保険料免除は受けられませんが、恒常的・定期的な就労は可能となります。従業員本人が早期の職場復帰と定期的な就労を希望しているのであれば、半育休との比較も提示した上で、労使間で最適な方法を話し合うのが良いでしょう。

勤怠管理システム導入で、半育休にもスムーズに対応

半育休は、勤務形態によっては育休に該当しないと判断される危険性もあるため、利用する場合は労使間でしっかり話し合う必要があります。同時に労働時間の上限を超過しないための適切な勤怠管理が必要です。

勤怠管理システムの導入により、勤怠状況がリアルアイムに把握でき、半育休のような休業中のイレギュラーな就労にも対応できます。

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