「えるぼし」認定マークは、女性の活躍を推進する企業の証です。では、取得することでどんなメリットがあるのでしょうか?また、取得するためには、どんな取り組みが必要なのでしょうか?
この記事では、えるぼしの認定基準となる取り組みや具体的な手続きの流れについて。わかりやすく解説します。
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えるぼしとは
「えるぼし」とは、女性の活躍推進について、一定の基準を満たした企業を認定する制度です。根拠法令は「女性活躍推進法」で、2016年にスタートしました。
「えるぼし」の「L」には「Lady(女性)」「Labour(働く)」「Laudable(称賛)」「Lead(手本)」など、さまざまな意味が込められています。
女性活躍推進法とは
女性活躍推進法(正式名は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)は、2016年に施行された比較的新しい法律です。労働人口低下を受け、働く意欲のある女性がその能力を十分に発揮できる社会を実現することを目的に制定されました。
従業員規模100人超の事業主に対し、女性活躍推進に関する「一般事業主行動計画(行動計画)」の策定・公表が義務付けられています。2022年7月に行われた最新の改正では、女性の活躍に関する情報公表項目として「男女の賃金の差異」が追加されました。
「くるみん」とどう違う?
混同しやすい似た制度に「くるみん」認定制度があります。「くるみん」は、次世代育成支援対策推進法に基づいて、子育て支援に積極的な企業を認定する制度です。
2022年4月に改正が行われ、従来の「くるみん」「プラチナくるみん」に加えて「トライくるみん」と、不妊治療支援への取り組みを認定する「プラス」制度が新設されました。
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えるぼし認定のメリット
えるぼし認定を取得することで、以下のようなメリットが受けられます。
- 企業イメージがアップする
- 優秀な人材が確保できる
- 公共調達や公庫融資で優遇措置が受けられる
企業イメージがアップする
取得した「えるぼし認定マーク」は、自社の商品やサービスに付けることができるため、女性が働きやすい職場としてアピールできます。
一般社会に対する「ホワイト企業」としてのイメージアップだけでなく、取引契約の成約率アップや新たな顧客創出、売上げアップも期待できます。
優秀な人材が確保できる
求人情報にえるぼし認定企業であることを掲載することで、特に女性の求職者からの応募数アップにつながり、優秀な人材とのマッチング率も高くなります。ワークライフバランスを重視する女性にとっては、転職先としても有力な候補となるでしょう。
また、職場環境改善によりエンゲージメントが向上することで、生産性アップや離職防止にもつながります。
公共調達や公庫融資で優遇措置が受けられる
国や地方公共団体が実施する、総合評価落札方式や企画競争による公共調達において、加点評価が受けられるため、受注で有利になります。
また、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を、通常よりも低金利(基準利率から最大マイナス0.65%)で利用できます。
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えるぼし認定マークの種類と認定基準
5つの認定基準のクリア状況に応じて、3種類のマークがあり、またより高水準の要件を満たしている場合には「プラチナえるぼし」認定が受けられます。
レベル | 要件 |
---|---|
1段階目 | 1~2つの基準を満たしており、取り組み実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること |
2段階目 | 3~4つの基準を満たしており、取り組み実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること |
3段階目 | 5つすべての基準を満たしており、取り組み実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること |
なお、1、2段階目については、満たさない項目について、2年以上連続して改善した実績があることも必要です。
1. 採用
採用について、以下のいずれかに該当することが必要です。
- 男女別の採用における競争倍率(応募者数/採用者数)が同程度であること
- 直近の事業年度において、次の①と②の両方に該当すること
- 正社員に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること
- 正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること
2.②の「雇用管理区分」とは、「総合職/一般職」や「営業職/事務職」など、職種や就業形態による区分です。特に雇用管理区分を設けていない場合は、この要件は不要です。
2. 継続就業
継続就業については、直近の事業年度において、以下のいずれかに該当することが必要です。
- 「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ7割以上であること ※無期雇用労働者に限る
- 「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上であること ※新卒として雇い入れた無期雇用労働者に限る
いずれも算出することができない場合は、直近の事業年度において、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数が産業ごとの平均値以上であることでも可とされています。
3. 労働時間等の働き方
雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働、及び法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとに全て45時間未満であることが必要です。原則は、以下の式により算出します。
(各月の対象労働者の(法定時間外労働+法定休日労働)の総時間数の合計)÷ 対象労働者数
上記で算出し難い場合は、以下の式にて算出します。
{各月の対象労働者の総労働時間数の合計 -(40×各月の日数÷7×対象労働者数)}÷ 対象労働者数
なお、みなし労働時間制(事業場外・裁量労働制)、管理監督者、高度プロフェッショナル制度対象者は、計算から除外します。
4. 管理職比率
管理職比率については、以下のいずれかに該当することが必要です。
- 直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること
- 直近の3事業年度平均において、「1つ下位の職階から課長級に昇進した女性労働者の割合」÷「1つ下位の職階から課長級に昇進した男性労働者の割合」が8割以上であること
なお「管理職」とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」を合わせたものを指します。
5. 多様なキャリアコース
キャリアコースは、直近の3事業年度のうち、以下ア~エについて、2項目以上(従業員規模300人以下は1項目以上)の実績を有することが必要です。
- ア. 女性の非正社員から正社員への転換(派遣の雇入れ含む)
- イ. 女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換
- ウ. 過去に在籍した女性の正社員としての再雇用
- エ. おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用
なお、非正社員がいる場合は必ずアを含むことが必要です。
プラチナえるぼしの認定基準
プラチナえるぼしの認定を取得するためには、3段階目つまり認定基準をすべて満たした上で、さらに以下の要件もすべて満たすことが必要です。
- 「2. 継続就業」につき、平均継続勤務年数が8割以上、平俗雇用割合が9割以上であること
- 「4.管理職比率」につき、管理職に占める女性の割合が業界平均の1.5倍以上であること
- 策定した一般事業主行動計画に基づく取組を実施し、行動計画に定められた目標を達成したこと
- 男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任すること
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えるぼし認定手続きの流れ
えるぼし認定を取得するための、大まかな手続きの流れは以下のとおりです。
- 一般事業主行動計画の策定・届出
- 女性の活躍に関する情報公表
- えるぼし認定申請
一般事業主行動計画のフォーマットは、厚生労働省のサイトから入手可能です。記入例も掲載されており、他社の記入事例を参照しながら必要事項の記載を進めていきましょう。
1. 一般事業主行動計画の策定・届出
以下3つのステップを踏み、一般事業主行動計画の策定・届出を進めていきます。
- ステップ1:自社の女性の活躍に関する状況の把握や課題分析
- ステップ2:一般事業主行動計画を策定後、社内周知と外部公表
- ステップ3:一般事業主行動計画を策定した旨の届出
ステップ1では、以下の基礎項目に関して必ず把握することとされています。
- 雇用管理区分ごとの、採用した労働者に占める女性労働者の割合
- 雇用管理区分ごとの、男女の平均継続勤務年数の差異
- 管理職に占める女性労働者の割合
- 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
ステップ2では、ステップ1を踏まえて、以下の項目を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定し、労働者に周知、外部に公表します。
- 計画期間:2年以上5年以下
- 目標設定:最低1つは具体的な数値目標を設定
- 取り組み内容:目標達成に向けてどのような内容の措置が必要かを記載
- 実施時期:取り組みを始める具体的な時期
2. 女性の活躍に関する情報公表
自社の女性の活躍に関する状況を、「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページ等に公表します。公表すべき項目は、以下の項目から1項目以上選択することとされています。
女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
---|---|
・雇用管理区分ごとの採用した労働者に占める女性労働者の割合 ・雇用管理区分ごとの男女別の採用における競争倍率 ・雇用管理区分ごとの労働者に占める女性労働者の割合(派遣含む) ・係長級にある者に占める女性労働者の割合 ・管理職に占める女性労働者の割合 ・役員に占める女性の割合 ・雇用管理区分ごとの男女別の職種または雇用形態の転換実績(派遣含む) ・男女別の再雇用または中途採用の実績 | ・男女の平均継続勤務年数の差異 ・10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 ・雇用管理区分ごとの男女別の育児休業取得率 ・労働者の一月当たりの平均残業時間 ・雇用管理区分ごとの雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間(派遣含む) ・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率 |
この情報公表は、従業員規模が101人以上の事業主については義務、100人以下の事業主については努力義務となっています。
3. えるぼし認定申請
「基準適合一般事業主認定申請書」に以下の書類を添付して、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に申請します。申請方法は、直接持参、郵送のほか、電子申請も可能です。
- 計画期間に申請年月日を含む一般事業主行動計画の写し
- 行動計画につき労働者への周知及び公表を行っていることを明らかにする書類であって、その周知及び公表した日付が分かるもの
- 基準適合一般事業主認定申請書3の実績を明らかにする書類
- 基準適合一般事業主認定申請書4、5の公表した日を明らかにする書類であって、公表した日付が分かるもの
- 関係法令遵守状況報告書
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えるぼし取得で一歩進んだ経営を
日本では女性の社会進出が少しずつ進んでいるものの、国際的には立ち遅れているのが現状です。女性管理職の少なさや育児との両立の難しさなど、様々な理由によって女性が活躍しにくい環境となっています。
えるぼしマークを取得できれば、女性のキャリアアップが望めるホワイト企業のイメージを発信できます。えるぼしマークを取得している企業は少なく、PR効果が大きい点も魅力です。
ただし、えるぼしマークを取得するには、労働時間の可視化や残業時間削減などが求められています。定量的な要件を満たすには、勤怠管理システムの活用が有効です。
「勤怠管理システムの選定・比較ナビ」をご利用いただくと、必要な要件を満たしている勤怠管理システムの中から、自社に最もマッチングする製品を探し出せます。低コストでハイスペックな機能を搭載している勤怠管理システムを多数扱っている点も、嬉しいポイントです。
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