「復職制度」は、一度職場を離れた労働者が再びその職場に戻って働ける制度です。近年は、育児や介護などの理由で一時的に仕事を離れた人が、再び就業する場合に備えて、復職を制度化する会社が増えています。

しかし、復職制度には法的な義務や基準がないため、会社によって対象者や運用方法が異なります。復職制度を導入する際には、どのような点に注意すべきなのでしょうか?

本記事では、復職制度のメリット・デメリットや導入のポイント、注意点などについて、事業主や管理者の方向けにわかりやすく解説します。

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復職制度とは

「復職制度」とは、私傷病や育児、介護などを理由に休職または一旦退職した従業員に対して、再び職場に戻って働くことを支援するための制度を指します。健康面や家庭内の問題が改善した場合に、従業員が安全かつ円滑に職場復帰できるようにするための重要な枠組みです。

復職制度の種類と特徴

復職制度は特に法律で定められているものではないため、会社によって内容はさまざまですが、代表的なものには以下のような制度があります。

  • カムバック制度
  • ジョブ・リターン制度
  • アルムナイ制度
  • リワーク制度

「カムバック制度」や「ジョブ・リターン制度」は、結婚・出産・育児などによって退職した労働者を再雇用する制度です。会社によって呼び名が異なりますが、両者はほぼ同じ意味合いで使われています。

「アルムナイ制度」は、上記の退職理由に留学やキャリアアップのための退職も含めて拡大適用した制度で、「アルムナイ採用」とも呼ばれています。「アルムナイ」とは本来「学校の卒業生」を指す言葉ですが、ビジネスシーンでは「自社の元社員」を指します。

「リワーク制度」は、うつ病や適応障害など、精神的な不調によって休職している労働者の職場復帰を支援する制度です。他の復職制度と異なり、休職中の労働者を対象とした制度となります。リハビリ出勤や通勤訓練などを実施する企業内リワークを導入している企業もあります。

再雇用制度との違いは?

再雇用制度とは、主に定年を迎えた労働者が引き続き働くことを希望する場合に、その継続雇用を支援する制度です。復職制度とは、目的や対象が大きく異なり、また復職制度と違って「高年齢者雇用安定法」という法律によって、定義や義務づけされているもの特徴です。

継続雇用制度は「再雇用制度」と「勤務延長制度」の2種類に分けられます。再雇用制度は定年を迎えた労働者を一旦退職扱いとし、新たに雇用契約を結ぶ制度です。再雇用後は正社員ではなく、契約社員や嘱託社員として雇用するのが一般的です。

一方、勤務延長制度は定年を迎えた労働者を退職扱いとせず、雇用を延長し続ける制度です。新たに雇用契約を締結し直すことなく、定年前の雇用形態を維持する形を取るため、業務内容・労働条件・役職は定年前と変わりません。

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復職制度のメリット・デメリットとは

復職制度導入によるメリット・デメリットを会社側と労働者の視点、双方からまとめました。

会社側のメリット

会社側のメリットとしては、まず採用コストを削減できる点が挙げられます。会社は労働者の能力・実務経験・勤務態度を熟知しており、選考にかける工数を最小限に抑えられます。業務の流れややり方も熟知しており、従業員が一から教える必要もありません。

最小限のコストで即戦力の働きが望める人材を獲得できます。また、復職制度によって「一度退職しても戻れる環境が整っている」と従業員に印象付けられます。従業員のエンゲージメントが高まり、離職率を下げられます。

優秀な従業員の流出を防ぎ、組織力強化や効果的な人材育成を実現できる点がメリットです。また、「従業員を大切にするホワイト企業」とのイメージを発信でき、イメージアップや入社希望者増加につなげられます。

会社側のデメリット

会社側のデメリットとしては、安易な退職が増える可能性があります。要件などがあいまいなまま運用してしまうと、「辞めてもまた雇ってもらえる」と考える従業員が出てきても不思議ではありません。

こうした事態を防ぐため、「実務経験3年以上」「育児や介護によって退職した者」など、復職時の応募条件を限定することが重要です。

また、復職時の待遇が退職前と変わらないなど、必要以上に好条件で復職を認めた場合、既存従業員が不満を抱き、復職した従業員との間で軋轢が生じる可能性もあります。

労働者側のメリット

労働者側のメリットとして、新たな仕事や人間関係への適応に多大なストレスが生じる事態を避けられるという点が挙げられます。また、会社側が転職や起業を理由に退職した場合の復職も認める場合、労働者は新たな挑戦をしやすくなります。

仮に失敗しても職場復帰が望めるため、キャリアや金銭面への影響を過度に心配する必要はありません。仕事へのモチベーションアップによって、業務効率改善や成果物の品質向上が期待できます。

労働者側のデメリット

労働者側のデメリットは、職場の人間関係に注意しなければならない点です。一見メリットと矛盾するようですが、必ずしも復職を歓迎する人ばかりではありません。復職までのブランクが長いほど、かつての同僚や部下と言った立場や地位が大きく変わっている可能性があります。

また、退職前と同じ職種で復職したとしても、待遇が以前より下がることにより、モチベーションやエンゲージメントが低下する可能性もあります。

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復職制度導入のポイントと注意点

復職制度を導入する場合は、以下のような点に注意しながら準備を進めまましょう。

  • 復職対象者の選考基準や手続きを明確にする
  • 就業規則等に明記する
  • ハローワーク求人票への記載方法
  • 復職者へのフォローアップや研修の実施

復職対象者の選考基準や手続きを明確にする

まずは、復職制度を利用できる復職対象者の選考基準を明確にします。主な選考基準としては、以下のような要素が考えられます。

  • 休職者のみか、退職者も含めるか
  • 休職期間(退職者の場合はフランク期間)
  • 休職(退職)理由
  • 在籍期間
  • 業績やスキル

また、復職申請の手続きについては、申請に必要な書類(復職届、医師の診断書・復職証明証)や申請期限などを取り決めます。復職の可否を決定するためのフローも明確にしておきましょう。

これらを明確にすることで、復職希望者は自分が復職できるかどうか、またどのような流れで手続きが進むのかについて、理解することができます。また、会社側も公平かつ透明な選考を行い、復職者を適切に支援するための措置を講じることが可能となります。

就業規則等に明記する

復職対象者の選考基準や必要書類、申請期限などを明確にした上で、それらを就業規則等に明記します。また、変更後の就業規則は、従業員に周知が必要です。

ハローワーク求人票への記載方法

ハローワークへ求人票に掲載する情報を記載する「事業所登録シート」には、「復職制度」についての記載欄があります。ここには制度の有無と大まかな内容を記載することができます。

もう少し詳しい内容を記載したい場合は、「事業所PR情報」の「福利厚生の内容」欄に記載することも可能です。「事業所PR情報」の記載内容は、求人票には掲載されないものの、「求人・事業所PRシート」やハローワークの求人検索端末で公開可能されます。

復職者へのフォローアップや研修の実施

復職した労働者が早期に職場や仕事に慣れるよう、フォローすることも重要です。主に以下のような措置が考えられます。

  • 慣らし勤務
  • 面談やカウンセリング
  • メンター制度
  • 研修や再教育

健康上の問題により職場を離れていた労働者が復職する場合、復職して全ての業務を一度に再開するのは大変な場合もあります。そのため、短時間勤務から始めたり、業務の範囲を徐々に広げていったりなど、段階的に復職を進めることが有効です。

また、復職後は定期的に面談を行い、復職者の健康状態や勤務状況、業務上の問題点などを確認します。必要に応じて、専門的なカウンセリングなどを利用することで、復職者の精神的な健康を維持し、職場への適応をフォローすることも有効です。

メンター制度には、知識の伝承・組織風土の理解・人間関係の再構築など、さまざまメリットが期待されています。業務を進めやすくするため。復職者と同年代や年長の従業員にメンター役を依頼しましょう。

休職・離職中に業務内容やシステムなどが変わった場合には、研修や再教育プログラムを提供することにより、復職者が新たな業務内容やスキルを身につけ、スムーズに業務を再開することができます。

復職制度について、よくある質問

復職制度について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
復職制度は法的に義務付けられている?
Q
復職を認める休職期間はどのくらい?
Q
復職制度導入後の復職率はどの程度か?

復職制度で柔軟な人材活用を

復職制度は労働者と企業側、双方に多くのメリットをもたらす制度です。現時点で導入している企業は少ない一方、市場での人材獲得が困難な状況のため、注目する企業が増えています。

トラブルを避けるためにも、導入する際にフォローアップ研修の実施や柔軟な勤務体系の整備が重要になります。また、復職者の不安を軽減できるよう、メンター役や上司が定期的にコミュニケーションを取る機会を設けることも重要です。

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