従業員から退職の申し出があった場合、または解雇が発生した場合、会社側は社会保険や税金など、公的手続きを期限内に進めなくてはなりません。

また、従業員に返却すべき書類や未消化の有休など、注意すべきポイントも多岐に渡ります。退職後のトラブルを防止するためにも、手続きに漏れがあってはなりません。

この記事では、従業員が退職する際の手続きについて、時系列に沿ってわかりやすく解説します。無料ダウンロードできるチェックリストもご用意しましたので、併せてご活用ください。

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退職手続きの大まかな流れ

従業員から退職の申し出があった場合、大まかに以下の流れに沿って手続きを進めます。

  1. 退職願(届)の受理、退職日の決定
  2. 退職手続きの説明、必要書類の確認
  3. 社会保険、雇用保険。税金の手続き
  4. 退職後の各種書類送付

退職手続きチェックリスト

手続きの対応漏れを防ぐため、チェックリストを活用するのが有効です。以下のリンクから無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

退職申し出~退職2週間前:退職願(届)の受理、退職日の決定

民法上は14日前までに退職の申し出が必要とありますが、通常は1ヶ月前までとしている会社が多いようです。

従業員から退職の申し出受けたら、引き継ぎや有休の残日数などを考慮して、具体的な退職日を双方話し合って決定します。また、「自己都合退職」か「会社都合退職」かによって雇用保険の失業給付の内容が変わるため、退職理由は明確にしておきましょう

退職願と退職届はどう違う?

「退職願」は、会社側に退職の合意を求める書類で、会社から退職に対する承認がなされるまでは、原則として撤回可能です。

対して「退職届」は、従業員からの退職の一方的な意思表示であり、受理された時点で退職が有効に成立するため、原則として撤回はできません。

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退職2週間前~退職日当日:退職手続きの説明、必要書類の確認

退職日までに確認しておくべき主な事項は、以下のとおりです。

  1. 健康保険の「任意継続」を利用するか
  2. 住民税は「特別徴収」を継続するか、「普通徴収」に変更するか
  3. 「退職証明書」「離職証明書」は必要か

健康保険の「任意継続被保険者制度」とは

健康保険の「任意継続被保険者制度」とは、退職前に健康保険の被保険者期間が2ヶ月以上あった場合、退職後も引き続き勤務先の健康保険に最大2年間継続加入できる制度です。なお、手続きは資格喪失日から20日以内に行う必要があるので、注意しましょう。

退職者が任意継続を希望しない場合は、被保険者資格喪失の手続きを行い、退職翌日に被保険者資格を喪失し、その後は国民健康保険などに加入することになります。

退職証明書について

「退職証明書」は、会社が対象従業員が退職したことを証明する書類で、ハローワーク等に提出する公的書類ではありません。

必要となるケースとしては、転職先の会社から提出を求められた場合や、国民健康保険や国民年金の加入手続きで必要となる離職票がまだ発行されていない場合の代替書類などが考えられます。

特に決まったフォーマットはありませんが、「使用(雇用)期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金」「退職の事由」については、本人の希望に応じて記載する必要があります

離職証明書について

「離職証明書」とは、「雇用保険被保険者離職証明書」のことで、ハローワークから離職票の発行を受けるために必要となる書類です。3枚綴り複写式の定型様式であるため、ダウンロードはできず、ハローワークからもらってくる必要があります。

離職票は失業給付の受給のために必要な書類であり、退職者の次の転職先が既に決まっており、特に退職者自身が希望しない場合は、離職証明書を発行しなくても差し支えありません。

ただし、退職者が59歳以上である場合は、「高年齢雇用継続給付」という給付金の額を決定するために離職票が必要となるため、本人の希望の有無にかかわらず離職証明書を発行しなくてはなりません。

退職日までに返却・提出してもらう書類や物品

退職日までに労働者から提出してもらう書類や返却してもらう物品は、主に以下のような者があります。

  • 退職届
  • 社員証
  • 入館カード
  • 名刺
  • 貸与PC、
  • 社用スマートフォン・タブレット
  • 制服
  • 業務で作成した資料やデータ
  • 顧客情報
  • 健康保険証

健康保険証は、扶養家族が居た場合は本人分と合わせて返却してもらいます。また、最終出社日と退職日が異なる場合、健康保険証は退職当日まで本人が所持しておく必要があります。

顧客情報データなどを所持している場合は、個人情報保護の観点から忘れずに回収しましょう。また、退職金を支給する場合は「退職所得の受給に関する申告書」に必要事項を記入して提出してもらいます。

会社から交付または返還する書類

会社から退職者に対して交付または返却する書類は、以下のとおりです。

  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳
  • 健康保険資格喪失証明書
  • 源泉徴収票
  • 退職証明書(任意)

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退職後:社会保険、雇用保険。税金の手続き

社会保険や雇用保険の資格喪失手続きは、提出期限が設定されているため、滞りなく行いましょう。また、住民税の手続きは会社側が行うものではありませんが、こちらも期限があるため、退職者がスムーズに手続きを行えるようアドバイスするなどしてサポートしましょう。

社会保険の資格喪失手続き:退職後5日以内

退職翌日から5日以内に、「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」を、管轄年金事務所に提出します。

本人及び扶養親族の健康保険証の添付が必要となるため、退職日に忘れずに返却してもらいましょう。本人と連絡が取れないなど、かりに健康保険証を添付できない場合は、「被保険者証回収不能届」を添付します。

また、退職者が70歳以上の場合は、「70歳以上被用者不該当届」の提出が必要です。

雇用保険の資格喪失手続き:退職後10日以内

資格喪失日の翌日から10日以内に、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を、管轄ハローワークに提出します。

添付書類として、退職意思・理由が証明できる「退職願(届)」、退職日以前の賃金支払状況を証明する出勤簿や賃金台帳が必要です。

住民税の手続き:退職翌月10日まで

住民税の手続きは、退職者の転職先が決まっているかどうかで変わってきます

再就職まで間が空く場合は、それまで給与から天引きされていた(特別徴収)住民税を、退職者が直接支払う(普通徴収)ことになります。手続きとしては、退職日の翌月10日までに、従業員本人が「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を、居住している市町村に提出します。

一方で、既に転職先が決まっている場合は、「特別徴収の継続手続き」のために上記の書類に必要事項を記入した上で、転職先の会社宛に送付し、以降の手続きは転職先の会社にて行うことになります。

住民税は退職月に注意

住民税は、退職月によって以下のように徴収方法が異なります

  • 1~4月:原則、最後に支払った給与や退職金から一括徴収
  • 5月:最終給与から徴収
  • 6~12月:原則、「普通徴収」に切り替えてもらうが、退職者が希望する場合は最後に支払った給料や退職金から一括徴収しても差し支えない

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退職後に送付する書類等

転職先や失業給付の受給に必要となるため、以下の公的機関などから発行された書類は、必要に応じて速やかに退職者に送付しましょう。

  • 健康保険被保険者資格喪失確認通知書
  • 離職票
  • 源泉徴収票

健康保険被保険者資格喪失確認通知書

「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」は、健康保険被保険者資格喪失届を提出した際に発行されます。

保険の切り替えなどに必要とされることがありますが、本人に必要かどうかを確認し、特に希望がなければ送付しなくても差し支えありません

離職票

「離職票」は、会社が提出した「離職証明書」を基に、ハローワークから発行される書類です。「離職票-1」と「離職票-2」の2組1セットになっています。

具体的には、「離職票-1」はOCR用紙のカードタイプの書類、「離職票-2」は離職証明書の複写3枚目にハローワークが一部記入して返却されたものを指します。

雇用保険の失業等給付の基本手当、いわゆる「失業手当」を受給する際に必要となる書類であるため、退職者が希望する場合は、速やかに交付しなければなりません

かりに、退職者が希望しているにも関わらず離職票の交付を拒んだ場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

源泉徴収票

「源泉徴収票」は、退職日から1カ月以内に発行・送付します。記入する額は、退職した年の1月1日から、最終給与支払日までに支給した額で計算します。

年内に再就職する場合は転職先での年末調整に、年内に再就職しない場合は確定申告のために、それぞれ必要となります。

退職手続きに関する注意ポイント

以下のように、従業員の雇用形態や属性によっては、追加で手続きが必要となる場合があります。

  • パート・アルバイトが退職する場合
  • 外国人労働者が退職する場合
  • 派遣労働者が退職する場合
  • 退職者が財形貯蓄を利用していた場合
  • 未消化の有給休暇があった場合

パート・アルバイトが退職する場合

まず前提として、パートやアルバイトであっても。基本となる手続きの流れは同じです。ただし、働き方によっては、そもそも発生しない手続きがあるため、個別に確認が必要です

たとえば、所定労働時間の関係などで社会保険の被保険者となっていない場合は、被保険者資格喪失の手続きが不要です。また、年収が少ないために住民税が非課税になっている場合は、住民税の手続きも発生しないことになります。

外国人労働者が退職する場合

2020年3月1日以降に採用した外国人が退職する場合は、退職日翌日から10日以内に「在留カード番号記載様式」をハローワークに提出する必要があります。

また、転職の際に入国管理局に提出が必要になるため、本人から希望がなくても「退職証明書」の発行が必要です。

なお、原則は出入国在留管理庁への届出が必要とされていますが、「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークに提出することで、この届出は免除されます。

派遣労働者が退職する場合

派遣労働者の雇用関係は派遣元の管理となるため、派遣元がすべての退職手続きを行い、派遣先が退職に関する手続きを行うことは基本的にありません

ただし、派遣元から派遣労働者が持ち込んだ貸与物や書類などがある場合は、派遣先は速やかに返却に協力しましょう。

退職者が財形貯蓄を利用していた場合

基本的には、取り扱い金融機関に「退職等の通知書」を提出して、財形貯蓄解約手続きを行います

ただし、退職後2年以内であれば、「勤務先異動申告書」を提出して、転職先で同一の財形貯蓄につき積み立てを継続することが可能です。事前に退職者の希望を確認しておきましょう。

未消化の有給休暇があった場合

未消化の年次有給休暇が残っており、退職日までに消化したい旨の申し出があった場合、基本的に会社側はこれを拒否できません

また、消化しきれない有給休暇の買い取りを本人が希望する場合は、申し出に応じても差し支えありませんが、会社側に応じる義務まではありません。なお、会社側から有給休暇の買い取りを打診することは認められません。

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スムーズな退職手続きには勤怠管理システムがおすすめ

退職手続きは、さまざまな法律や制度が絡んで、手続きや必要書類も多岐にわたります。退職手続きが滞ると、国民健康保険の加入や転職先での入社手続き、失業手当の受給などに支障が出て、退職者との間でトラブルを招きかねません。

そこでおすすめなのが、勤怠管理システムを利用することで、退職に必要な書類が簡単に作成でき、電子申請の活用により期限に追われない手続きが可能となります。

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