従業員が退職する際に、有給休暇の消化を巡ってトラブルに発展するという事例をよく耳にします。

残っている有給休暇は、すべて消化させなければならないのでしょうか?
また、退職日までに消化できない有給休暇を買い取ることはできるのでしょうか?

この記事では、こうした退職時の有給休暇の取り扱いについて、事業主や管理者の視点からわかりやすく解説します。

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退職時に残った有給休暇は消化させるべき?

年次有給休暇は労働者に認められた権利であり、その取得時季も基本的には労働者が自由に指定できます。よって、「退職日までに残っている有給休暇をすべて消化したい」との申請があれば、会社側は原則拒否することはできません

会社側は、代替要員を確保できない場合や複数の従業員が同じ日に休暇を取得するなど、事業の正常な運営を妨げる場合のみ、時季変更権を行使できます。

ただし、時季変更権はあくまで有給休暇の日程変更を求める権利で、有給休暇の取得そのものを拒むことは認められません。

有給休暇の最大付与日数は40日?時効との関係

有休は「雇入れの日から6カ月間継続勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した労働者」に対して、10日(フルタイム勤務の場合)付与され、その後は1年ごとに勤続年数により付与日数が加算されていきます。

条件を満たせば、正社員に限らず、パートやアルバイトなど有期雇用労働者にも付与されます。以下の表は、所定労働日数や継続勤務年数ごとの付与日数をまとめたものです。

週所定
労働日数
1年間の
所定労働日数
継続勤務年数(年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
フルタイム(週所定労働日数5日以上または週所定労働時間30時間以上) 10 11 12 14 16 18 20
4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

当年度に消化しきれなかった有休は、翌年度に持ち越すことができます。ただし、有休は2年で消滅時効にかかるため、繰り越せるのは1年度分のみ、つまり最大で40日の付与となります(勤続年数6.5年を超える労働者が1日も消化せずに持ち越す場合)。

年5日以上は取得義務あり

2019年4月からの働き方改革関連法施行により、すべての企業に対して、年5日以上の有休を取得させることが義務付けられています。対象となるのは、年10日以上(前年度繰越分は除く)の有休が付与されている労働者です。

これは、年度途中で退職が決まっている労働者に対しても等しく適用されます。よって、付与日から退職日までの所定労働日数が5日もないという場合を除いて、退職日までに少なくとも5日取得させる必要があるということになります。

退職時の有給休暇と時季変更権

労働者が有休の取得希望日を指定する権利を、時季指定権と呼びます。対して、使用者は「事業の正常な運営を妨げる場合に限り」指定された時季を変更させることができ、これを時季変更権と呼びます。

時季変更権は、当該労働者にしかできない業務の納期が迫っている場合や、一度に複数の労働者が取得申請を行い代替要員の確保が困難である場合など、行使できる条件は限定的となっています。

ただし、たとえ時季変更権を行使できる事情がある場合でも、退職予定日を超えて時季変更権を行使することはできず、労働者の有給消化が優先されることになります。

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退職時の有給休暇は買い取りできる?

まず大前提として、有給休暇の「買い取り」は、原則禁止されています。これは、「心身をリフレッシュする時間を確保するため、勤務日の労働義務を免除しつつ賃金を保障する」という有休の制度趣旨に反するからです。

有給休暇の買い取りが認められるケース

ただし、以下の場合は、労働者の有給休暇の権利を不当に侵害することにならないため、例外的に買い取りが認められています。

  1. 法定の基準を上回って会社独自に付与している有給休暇
  2. 時効により消滅してしまう有給休暇
  3. 退職時に消化しきれない有給休暇

たとえば、未消化の有給休暇が15日残っているにも関わらず、退職日までの所定労働日が10日しかない場合は、物理的に消化しきれない残りの5日分については、買い取っても違法とはなりません

有給休暇を買い取る「義務」まではない

退職日までの労働日よりも有休の残日数のほうが多く、消化しきれない場合は、有休の買い取りは違法とはなりませんが、労働者からの買取請求に会社が応じる義務まではありません

ただし、就業規則等に退職時の未消化分を買い取る旨の記載がある場合は、買い取る義務が発生するため注意が必要です。

買い取った有給休暇の支払い方法

買い取った有給休暇の支払い方法としては「退職月の給与として支払う」「退職金に上乗せする」という2パターンから選択することになります。労働者の便宜を図るのであれば、退職金として支払うのがおすすめです。

これは、退職金に上乗せすると退職所得となり、給与所得に比べて控除額や課税対象額で優遇されているためで、退職する労働者にも、この点を説明してあらかじめ理解を得ておきましょう。

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退職時の有給休暇について、よくある質問

退職時の有給休暇に関して、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q
定年時再雇用の場合は、買い取り可能?
Q
年度途中で退職が決まっている場合、付与日数を減らせる?
Q
自主退職ではなく解雇の場合の有給休暇はどうなる?

有休は退職時までに計画的に消化してもらうのが理想

退職前にまとめて有給休暇の申請を受けた場合、業務に支障が生じたとしても時季変更権の行使ができません。退職予定の従業員の仕事を他の従業員がカバーしないといけず、モチベーションの低下や職場の雰囲気悪化を招きます。

このような事態を避けるためにも、普段から従業員との信頼関係を築いておくことが重要です。同時に、毎年計画的に有給休暇を取得してもらうよう、職場環境の整備や仕組みづくりを行いましょう。

勤怠管理システムを導入することで、各従業員の有給取得状況や残日数がリアルタイムで把握できるため、退職時の有休休暇に関するトラブル防止につながります。

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