新型コロナの感染拡大の対策として、スペースを確保するために時差出勤が注目されてきました。時差出勤はどのように導入して、どのような点に注意が必要なのでしょうか。
この記事では、時差出勤のメリットとデメリット、どのような点に注意するべきなのかを解説します。
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時差出勤(時差勤務)とは
時差出勤とは、会社ごとに決められた始業時間と終業時間をずらす勤務形態です。全体の所定労働時間数は変更せず、出勤時間と退勤時間を1~2時間ずつシフトさせるのが一般的です。
グループごとに決められたパターンに割り振るケースと、従業員ごとの事情に応じて個人単位で適用するケースの2種類があります。
時差出勤の定義と目的
時差出勤は、従業員が自身の選択に応じて、従来の始業時間とは異なる時間に出勤する制度です。法的な定義はありませんが、近年特にコロナ禍以降、多くの企業で導入が進められています。
時差出勤の主な目的は、通勤ラッシュの回避と従業員の健康管理、仕事と家庭生活の両立を支援することです。通勤ラッシュの時間帯を避けることで、従業員は身体的・精神的疲労から解放され、密集による感染症リスクを減らすことができます。
また、オフィスに同時に出勤している人数を調整することで、デスクやスペースを有効活用できるようになります。
さらに、育児や介護、通院など個人的な事情により、通常の勤務時間に出勤・退勤することが難しい従業員に柔軟することで、ワークライフバランスの向上や離職率の低下につながります。
時差出勤とフレックスタイム制はどう違う?
時差出勤とフレックスタイム制は、いずれも柔軟な勤務形態を提供する制度ですが、フレックスタイム制は労働時間そのものを柔軟に設定できる点で異なります。
フレックスタイム制は、始業および終業時刻の設定を労働者に委ねる制度で、変形労働時間制の一類型になります。労働基準法に定めのない時差出勤に対して、フレックスタイム制は労働基準法第32条の3に規定された法定の制度です。
フレックスタイム制では、労働者が自由に労働時間を設定できるフレキシブルタイムと、必ず出勤すべき時間帯であるコアタイムに分かれており、コアタイムを設けないスーパーフレックス(フルフレックス)という制度もあります。
対して時差出勤の場合は、始業時刻と終業時刻を一定範囲内で自由に選択できますが、1日の労働時間は固定されています。また、適用される出退勤の時間は従業員ごとに決まっており、基本的に日ごとに変動することはありません。
このように、時差出勤とフレックスタイム制では、労働者に1日の労働時間の委ねるのか、労働時間は日ごとに変動するのかという大きな違いがあります。
また、時間外労働に対する残業代の計算においても違いが生じます。時差出勤の場合は日々の所定労働時間は変わらないため、割増賃金の対象となる時間外労働は1日8時間・週40時間の法定労働時間をそれぞれ超過しているかどうかで見ていくことになります。
これに対してフレックスタイム制は、清算期間と呼ばれるフレックスタイム制の対象となる期間の総労働時間の枠の範囲で時間外労働を考えます。すなわち、1日または週の労働時間が法定労働時間を超過していても、総労働時間が清算期間の枠の中に収まっていれば、基本的には時間外労働は生じません。
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時差出勤のメリット
時差出勤のメリットとデメリットはどのようなことがあるのでしょうか。時差出勤によるメリットとデメリットは職場環境や雇用形態によっても変わるため、導入する際は両者のバランスの見極めが重要になってきます。まずメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 通勤ラッシュ回避によるストレス軽減
- ワークライフバランスの向上
- 感染症リスクの軽減
- 人材確保・定着率向上
通勤ラッシュ回避によるストレス軽減
通勤ラッシュを避けることで、従業員の通勤にかかるストレスが大幅に軽減され、結果として職場での生産性が向上します。通勤ラッシュの時間帯は、特に都市部においては交通機関が非常に混雑し、従業員にとって大きな負担となります。
このような状況が続くと、通勤そのものが従業員の疲労やストレスの原因となり、職場でのパフォーマンスに悪影響を与えかねません。時差出勤を導入することで、従業員が通勤時間のストレスから解放され、結果として業務効率が向上が期待できます。
ワークライフバランスの向上
時差出勤は、従業員が自分の生活に合わせた勤務時間を選択できるため、ワークライフバランスの向上に大きく寄与します。従業員が自分のライフスタイルや家庭の事情に合わせて勤務時間を調整できることで、仕事とプライベートの両立が可能となります。
たとえば、子育て中の従業員が朝の出勤時間を遅らせることで、子どもを保育園に送る時間を確保できるようになったという事例があります。このように、時差出勤は家庭の事情に応じた柔軟な働き方を可能にし、結果として従業員のモチベーション向上にもつながります。
感染症リスクの軽減
時差出勤は、通勤時の人混みを避けることで、感染症リスクを効果的に軽減します。特に新型コロナウイルスやインフルエンザの流行に伴い、密を避けることが重要視されています。
実際に近年は多くの企業で、感染症対策として時差出勤が導入されました。出勤時間をシフトさせることで、従業員が満員電車を避けられるようになり、結果として企業全体の健康維持、ひいては業務継続性の確保に繋がります。
人材確保・定着率向上
時差出勤は、柔軟な勤務制度と働きやすい環境を提供することで、企業が優秀な人材を確保し、その定着率を向上させることも期待できます。
特に、仕事と生活の両立を重視する現代の労働者にとって、柔軟な勤務時間は大きな魅力です。多様な働き方を提供する企業は、労働市場での競争力を高め、優秀な人材を惹きつけることができます。
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時差出勤のデメリット
一方で、時差出勤のデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 労務管理の複雑化
- コミュニケーション不足
- 深夜手当発生の可能性
労務管理の複雑化
時差出勤を導入することで、労務管理が複雑化し、労務担当者や管理者の負担が増加する可能性があります。従来の定時勤務では、全従業員が同じ時間帯で勤務するため、労務管理が比較的容易でした。
しかし、時差出勤を導入することで、各従業員の勤務時間が異なるため、労務管理のプロセスが複雑化します。また、休憩時間を一斉に取得することが難しくなる場合は、一斉付与適用除外のための労使協定を締結が必要となる可能性があります。
コミュニケーション不足
時差出勤の導入により、従業員間のコミュニケーションが不足し、業務効率に悪影響を及ぼす可能性があります。従業員が異なる時間帯に勤務することで、通常勤務している従業員と時差出勤をしている従業員の間でコミュニケーションが取りにくくなります。
特に、チームでの連携が重要な業務では、この問題が顕著になります。時差出勤制度を導入した結果、同じプロジェクトに従事する従業員間でのコミュニケーションが取りづらくなり、プロジェクトの進行が遅れる可能性もあります。
深夜手当発生の可能性
時差出勤の導入により、深夜勤務が発生する場合、深夜手当(深夜割増賃金)の支給が必要となり、企業にとって追加のコストが発生する可能性があります。労働基準法では、午後10時から翌午前5時までの労働に対して25%以上の深夜手当の支給が義務付けられています。
時差出勤を導入した結果、勤務時間帯が後ろにずれ込むこととなり、残業が長時間に及んだ場合には従業員の勤務時間が深夜帯に及ぶ可能性があります。
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時差出勤の導入企業事例
ここでは、実際に時差出勤を導入している自治体及び企業をご紹介します。具体的にどのように運用されているかの参考にしてみてください。
豊島区
豊島区は、2017年10月に特別な理由が無くても出勤時間を選ぶ事が出来るという時差出勤を、23区として初めて導入しました。
区役所はサービス業のような一面があるため、時差出勤のとの相性は良いと言えるでしょう。従来の職員の勤務時間は、窓口業務に合わせて8時30分から17時15分でしたが、始業時間を午前7時30分から9時30分までの30分刻みで月単位で選択できるようになりました。
ワーク・ライフ・バランスの推進を図るとともに、勤労意欲の向上や業務の効率化等による区民サービスの向上を狙ったものと言えます。
損害保険ジャパン日本興亜
損害保険ジャパン日本興亜に限らず、保険会社は基本的にコールセンターを持っており、コールセンターの質が企業の価値に大きな影響を与えることからコールセンターの営業時間を長めに取ってあります。
コールセンター以外の他の部署では導入されていませんでしたが、2015年から「ワークスタイルイノベーション」として働き方改革を進めており、時差出勤もその際に導入されました。
この制度では、全社員が時差出勤を選べるように変更されました。具体的には、7時から15時、13時から21時の間で9つのパターンを用意しており、かなり幅が広いものとなっています。
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時差出勤の導入手順
時差出勤の導入は、基本的に以下のような流れに沿って進めるのが良いでしょう。
- 対象社員の選定
- 勤務時間パターンの設定
- 就業規則の変更
- 従業員への周知
対象社員を選定する
時差出勤を効果的に運用するためには、まず対象となる社員を適切に選定することが重要です。すべての従業員に適用する場合もあれば、特定の部署や役職に限定する場合もあります。
時差出勤の効果を最大限に引き出すためには、業務内容や労働者の希望、ライフスタイルに応じて、対象社員を選定する必要があります。特定の部門のみを対象に時差出勤を導入し、リモートワークとの併用を行うことで、業務効率の向上を図る方法もあります。
勤務時間パターンを設定する
勤務時間パターンの設定は、時差出勤制度の中核を成す要素です。企業は、業務のニーズと従業員の要望を考慮しながら、柔軟かつ効率的な勤務時間パターンを設定する必要があります。
パターンを細かくし過ぎると管理が煩雑になってしまうため、30分刻みあるいは1時間刻みが適切でしょう。また、あまりに始業時間が遅いパターンを設定すると、残業が発生した場合に労働が深夜に及ぶ可能性が高くなるため注意が必要です。
就業規則を変更する
時差出勤制度を導入する際には、就業規則を適切に変更し、法的な問題を回避することが重要です。労働基準法に基づいて、就業規則には勤務時間、賃金、休憩時間など、労働条件に関する事項が明記されている必要があります。
時差出勤を運用するに当たり、就業規則に「始業・終業時間については、業務の必要性に応じて適宜変更する可能性がある」旨の記述があれば、具体的な記述は必須というわけではありません。
ただし、ルールを明確化し、勤怠管理を煩雑化しないためにも、具体的なパターンについて記載しておくのが望ましいでしょう。
適用対象となる従業員の範囲や事由、回数上限などを設定するのであれば、その旨も明記しておく必要があります。例としては、以下のような記載が考えられます。
(勤務時間)
第◯条 始業・終業時刻及び休憩時間については、以下のとおりとする。
始業時刻 9時 終業時刻 18時 休憩時間 12時~13時
(時差出勤)
第◯条 社員は、あらかじめ所属長に申し出、承認を得ることにより、前条に規定する始業・終業時刻を、以下の区分に従って変更することができる。
時差出勤A:始業時刻 8時 終業時刻 17時 休憩時間 12~13時
時差出勤B:始業時刻 10時 終業時刻 19時 休憩時間 12~13時
時差出勤C:始業時刻 11時 終業時刻 20時 休憩時間 12~13時
従業員へ周知する
就業規則の変更を有効なものとするためには、従業員への周知が重要です。制度の目的、ルール、メリットを丁寧に説明し、理解を得ることが求められます。
時差出勤制度の内容が十分に理解されていないと、混乱や誤解が生じ、導入効果が半減してしまいます。時差出勤制度を導入するにあたり、社内説明会やトレーニングセッションを実施するなど、徹底した周知活動を行うことで、導入後の混乱を最小限に抑え、制度の効果を最大化できます。
時差出勤は勤怠管理システムとセットで
時差出勤は、時代のニーズに合った柔軟な労働時間設計ではあるものの、注意すべき点も多く、会社によってはかえって負担が大きくなる可能性もあります。メリットを最大限引き出しつつも、コミュニケーション不足や煩雑化する勤怠管理の問題をいかにクリアするかがカギとなります。
勤怠管理システムを導入することにより、イレギュラーな労働時間の設定にも柔軟に対応でき、労働時間の集計も自動化されるため、労務管理の負担は大幅に軽減されます。また、ビジネスチャットツールと連携して利用することで、コミュニケーション不足の解消にもつながります。
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