稟議申請という言葉に、多くのビジネスパーソンは特有の印象を持つことでしょう。一見、煩雑で時間を要する手続きと捉えられがちですが、実際には企業活動の核心に関わる極めて重要なプロセスです。

新規プロジェクトの立ち上げ、購入・契約の手続き、組織の変動時の対応。これらの業務上の重要な判断を、透明性を持って迅速に進めるための鍵が、稟議申請にあります。

本記事では、稟議申請の本質、その重要性、そしてデジタル化によるメリットについて、わかりやすく解説します。

稟議申請とは

稟議申請とは、会社組織内で重大な決定を行う際に必要となる手続きの一つです。具体的には、会社が新たな事業に進出する場合や、金額の大きい取引を行う場合などの重要事項について、管理者や決裁者に提案し、その決定を得るために行われます。

稟議申請が必要になるケース

稟議申請は、新規プロジェクトの開始時や購入・契約の際、人事変動や組織変更の時など、多岐にわたるケースで必要とされます。代表的なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 新規プロジェクトの開始
  • 購入・契約の申請
  • 人事変動や組織変更の際

稟議申請の目的・必要性

稟議申請の主な目的は、業務の透明性を確保し、迅速な決裁を促進することです。また、責任の所在を明確にすることで、問題が発生した際の対応も迅速かつ適切に行うことができます。

稟議申請を通じて、業務の詳細や背景、目的などを明確にすることで、関係者間の認識のずれを防ぎ、業務の透明性を高めることができます。また、稟議申請のシステムやフローを整備することで、必要な情報が迅速に関係者に伝わり、スピーディな決裁が可能となります。

稟議申請の過程で、誰がどのような判断や行動をとったのかが明確に記録されるため、後から問題が発生した際の責任の所在を明確にすることができます。

稟議と申請の違い

「稟議」と「申請」は、似たような意味合いを持つ言葉として使われることが多いですが、「稟議」は組織の方針や重要な取引に関して、複数の部署や関係者に承認を求める手続きを指します。

対して「申請」は、比較的簡易な要求や低額の物品購入に際して、直属の上司に対して承認を求める手続きを指すのが一般的です。

ただし、実際に厳密に使い分けられているわけではなく、会社によっては同じレベル感の手続きを「稟議」と呼んだり「申請」と呼んだりすることも、珍しくありません。

稟議申請のメリット・デメリット

稟議申請には、業務の効率化やミスの削減などのメリットがありますが、一方で承認までの時間がかかるなどのデメリットも存在します。

稟議申請のメリット

稟議申請のメリットとしては、フローを整備することにより、業務の進行が迅速になり、業務効率が向上することが挙げられます。また、稟議申請を通じて、業務の詳細や背景を共有することで、ミスや認識のずれを削減することができます。

さらに、稟議申請の過程での意見交換や議論を通じて、社内コミュニケーションが活性化することも期待できます。

稟議申請のデメリット

稟議申請には、承認までの時間がかかる場合や、複雑な手続きが必要な場合などのデメリットもあります。稟議申請の内容によっては、多くの関係者の承認を得る必要があり、その結果、承認までの時間が長くなることがあります。

承認者が不在の場合などは、代理承認などの運用ルールが確立されていないと、そこで業務が停滞するおそれもあります。また、稟議申請の手続きやルールが複雑である場合、それを理解し、正しく適用するのが難しくなることがあります。

稟議申請の実際のフローとポイント

稟議申請のフローは、申請前の準備から、稟議書の起案、回覧、承認・決裁までの一連の流れを指します。このフローをスムーズに進めるためのポイントも併せて解説します。

稟議申請前の準備

稟議申請を行う前に、見積もりの入手や説明用の資料の準備など、必要な情報や資料を整えることが重要です。稟議申請を行う前に、必要な資料をリストアップし、それを基に資料の準備を進めることで、申請の際の手間やミスを削減することができます。

稟議書の起案・作成

稟議申請を行う際の最も重要なステップは、稟議書の起案・作成です。稟議書を作成する際には、企業ごとの書式やテンプレートを利用することが一般的です。これにより、情報の欠落やミスを防ぐことができます。

稟議書には、申請の目的や背景、必要な資料などの詳細情報を記載する必要があります。特に、金額や期間、関係者などの具体的な情報は、ミスがないように注意深く記載することが求められます。

稟議書の回覧

稟議書が起案された後、関係者への回覧が行われます。稟議書の回覧は、通常、上司や関連部署を経て最終的な承認者(決裁者)へと進められます。回覧の順番や方法は、企業のルールに従って行われます。

回覧される稟議書には、確認事項や注意点が記載されていることが一般的です。これにより、関係者が内容を正確に理解し、適切な判断を下すことができます。

稟議の承認・決裁

稟議書の回覧が終わった後、最終的な承認・決裁が行われます。承認者は、通常、申請内容に関連する部署の上司や経営層が担当します。同じ承認段階の承認者が複数いる場合は、その内の一人の承認で足りるのか、全員の承認が必要なのかをあらかじめ決めておきます。

一般的に稟議書の承認・決裁は、関係者の確認を経て、最終的な決裁者の承認を得る流れとなります。期間についても、申請内容や承認者の数などによって変動することがあります。

稟議申請の実践ガイド

ここでは、稟議申請を実際に行う際のポイントや注意点を解説します。

稟議書の作成ポイント

稟議書を作成する際のポイントを紹介します。稟議書は多くの関係者が目を通すため、簡潔かつ明確な言葉遣いが求められます。専門用語の使用は避け、全ての関係者が理解できる表現を心がけましょう。

稟議書の要点は、申請の目的や背景、必要な資金などを明確に記載することが重要です。関係者が一読して内容を理解できるよう、情報を整理しましょう。

稟議書に必要な項目

稟議書には、基本的な情報が必要です。一般的には、申請者の名前や起案日、申請の目的などが必須項目となります。また、申請内容によっては、金額や契約先の情報、スケジュールなども記載項目となります。

各項目には、具体的な内容を詳細に記載することが求められます。例えば、申請の目的を記載する際には、背景や必要性も合わせて説明しましょう。

稟議書の具体例

稟議申請の種類やケースに応じて、稟議書の内容や形式が異なります。契約稟議や購買稟議、採用稟議など、稟議の種類によって特徴やポイントが異なります。それぞれの稟議に合わせた内容を記載することが重要です。

たとえば契約稟議の場合、契約相手や契約内容、期間などの詳細情報を記載します。また、購買稟議の場合は、購入する商品やサービスの詳細、金額など、採用稟議の場合は、採用する人物の情報や採用背景、必要性を記載します。

稟議申請のデジタル化とそのメリット

近年、多くの企業が稟議申請のデジタル化を進めています。ペーパーレス化の推進や業務効率の向上など、デジタル化には多くのメリットがあります。

デジタル化のメリット

デジタル化により、稟議申請のプロセスが効率的になるだけでなく、申請の進捗や承認状況をリアルタイムで確認することが可能となります。また、ペーパーレスの実現により、手書きの手間や紙の印刷コスト、保管スペースの削減などの効果が期待できます。

デジタル化された稟議申請システムを使用することで、申請の進捗や承認状況をリアルタイムで確認することができ、迅速な意思決定や対応が可能となります。

稟議申請システムの選び方

稟議申請システムを導入する際には、いくつかのポイントを考慮する必要があります。稟議申請システムには様々な機能や特徴があります。例えば、承認フローのカスタマイズや、履歴の管理、通知機能など、企業のニーズに合わせて選択することが重要です。

システムの導入には、初期費用や月額費用が発生します。また、導入にかかる期間や、社員の研修なども考慮する必要があります。予算や期間を確認し、最適なシステムを選ぶことが求められます。

まとめ

稟議申請は、企業の意思決定や業務効率を向上させるための重要なプロセスです。新規プロジェクトの開始や購入・契約の申請、人事や組織の変動時など、様々なシーンでその必要性が高まります。

稟議申請には「透明性の確保」「ミスの削減」「社内コミュニケーションの活性化」などのメリットがある一方で、「承認までの時間がかかる」「手続きが複雑になりがち」といったデメリットも認識しておく必要があります。

近年のデジタル化の波に乗り、稟議申請もデジタル化が進められています。稟議申請システムの選び方も、企業のニーズに合わせて慎重に選定する必要があります。適切なシステムを選ぶことで、稟議申請のプロセスが一層効率的になります。