ワークフローシステムの選定は、企業の業務効率化に直結する重要な決定です。しかし、その選定は一筋縄ではいきません。なぜなら、ワークフローシステムはその特性、価格、サポート体制などにより、企業のニーズに合うものと合わないものがあるからです。
そのため、自社のニーズに最適なシステムを選ぶためには、多くの情報を比較検討することが求められます。この記事では、ワークフローシステム導入のメリットや選定する際の比較ポイントをわかりやすく解説します。
また、タイプ別のおすすめ製品を比較ランキング形式で掲載しますので、ぜひシステム選びの参考にしてみてください。
ワークフローシステムとは
「ワークフローシステム」とは、社内の一連の申請承認手続きを電子化・自動化したシステムを指します。ワークフローシステムの導入は、業務効率化やコスト削減、内部統制強化などさまざまなメリットを享受できます。
ワークフローシステムの基本的な機能
ワークフローシステムは、製品によって搭載されている機能が異なりますが、基本的には以下のような機能を標準で備えています。
- フロー定義機能
- 申請・承認機能
- 申請書作成機能
- 通知機能
- 他システム連携機能
- 管理機能
ワークフローシステム導入のメリット
ワークフローシステムを導入することにより、以下のようなメリットが期待できます。
- 業務の効率化
- コスト削減
- 多様な働き方に対応
- コンプライアンス強化
業務の効率化
ワークフローシステムの申請書作成機能により、申請内容に応じた適切なフォーマットが簡単に選択できるため、書式を探す手間がなくなります。また、前回と同じ申請の場合は、データを再利用することで、一から作成する必要がなくなります。
コスト削減
紙の申請書から電子データへの切り替えることにより、ペーパーレス化が実現し、紙代・印刷代・郵送費などのコスト削減に繋がります。また物理的な保管スペースも不要になるため、オフィスの有効活用も期待できます。
多様な働き方に対応
クラウド型のシステム利用により、社外からも申請・承認が可能になるため、サテライトオフィスの活用や在宅ワークなどの場所を選ばない多様な働き方に柔軟に対応できます。
コンプライアンス強化
誰がいつ誰に対して申請・承認を行ったかという履歴が追跡できるため、承認漏れや飛ばし承認、無断代理承認といったイレギュラーな運用や不正を防止できます。
ワークフローシステムの比較ポイント
具体的なワークフローシステム選定に当たっては、以下のポイントを中心に比較検討しましょう。
- 自社の業務フローに適合するか
- クラウド型かオンプレミス型か
- 見やすいUIで簡単に操作できるか
- 既存システムと外部連携できるか
自社の業務フローに適合するか
ワークフローは、企業ごとに運用方法はさまざまで、さらに企業内でも業務や契約金額によって承認ルート(経路)が異なります。導入したいシステムが、自社のワークフローをどこまで反映できるのかが重要なポイントです。
また、申請書作成機能で、現行のフォーマットを取り込めるか、また新規作成する場合も違和感のないレイアウトで作れるかなども、判断材料になります。
クラウド型かオンプレミス型か
クラウド型は、サービス業者が提供するネットワーク上のシステムを利用する形態で、初期費用が抑えられ、運用・保守も楽というメリットがありますが、カスタマイズ性に乏しく、セキュリティ面の不安もあります。
一方でオンプレミス型は、サーバやソフトウェア開発をすべて自社にて行う形態で、自社に完全フィットしたシステムが構築できる反面、導入コストが大きく、保守・運用も自社で行う必要があります。
見やすいUIで簡単に操作できるか
いかに高度で多機能なシステムであっても、UIや操作性が悪くては、実際に利用する従業員にとって使いづらいシステムとなってしまい、研修・教育コストもかかります。
直感的な操作で誰にでも簡単に使えるシステムが理想であり、そのために無料トライアル期間などを利用して使用感を確かめるのも良いでしょう。
既存システムと外部連携できるか
自社で既に導入・運用している勤怠管理システムや給与計算システムなど、他製品と外部連携することで、相乗効果が見込めます。外部連携方式については、APIでシームレスに連携できるか、CSVデータのエクスポート・インポートが可能か、などをチェックしましょう。
業務特化型か汎用型か
業務特化型は、経費精算や人事評価など、特定の業務のために設計されたワークフローシステムです。何か特定の業務ワークフローについてのみシステム化したい場合は、業務特化型の方がより細かい設定や運用ができます。
一方で汎用型は、特定の業務に依存しないワークフローシステムです。多様な業務に柔軟に対応できますが、業務ごとに設定を行う必要があります。
ワークフローシステムのタイプ
ワークフローシステムは、ターゲットとなる従業員規模や利用方法によって、さまざまなタイプが存在します。
中小企業向け
中小企業向けのワークフローシステムは、手頃な価格で導入でき、最低限必要な機能を備えていることが特徴です。ただし、大規模な業務には十分に対応しきれない可能性もあります。
大企業向け
大企業向けのワークフローシステムは、大量のデータや複雑な業務フローに対応できるように設計されていますが、その分導入コストも高めです。
Excel活用型
Excel活用型のワークフローシステムは、Excelのフォームをそのまま申請書として利用できるため、導入が容易です。しかし、セキュリティ面での対策が必要となる場合もあります。
ワークフロー機能付きグループウェア
ワークフロー機能付きグループウェアは、コミュニケーションツールとしての機能と、ワークフロー機能が一体となっています。一つのツールで複数の業務をこなせるため、業務効率が上がります。
おすすめの中小企業向けワークフローシステム3選
X-pointCloud(株式会社エイトレッド)
「X-pointCloud」は、株式会社エイトレッドが提供する、クラウド型のワークフローシステムです。直感的な操作性とシンプルな画面構成で、主に従業員規模1,000人未満の企業向けとなっています。
多彩なサンプルフォームと簡単な操作で、従来の申請書と変わらない申請フォームを再現できるほか、外部連携機能も充実しています。
Create!Webフロー(インフォテック株式会社)
「Create!Webフロー」は、インフォテック株式会社が提供するワークフローシステムで、クラウド型とパッケージ型から選択できます。
申請フォームは、新規デザインの他に既存のExcelやPDFをインポートしてそのまま利用することも可能です。また、複雑な承認ルートも、アイコンを見ながら直感的に構築できます。
ジョブカンワークフロー(株式会社DONUTS)
「ジョブカンワークフロー」は、株式会社DONUTSが提供するクラウド型のワークフローシステムです。導入実績15万社を超える「ジョブカンシリーズ」にラインナップされています。
導入までのステップが簡単で、スマートフォンからの申請やクラウドサインとの連携など、利便性を追求した作りになっています。また、同社の「ジョブカンシリーズ」と組み合わせることで、シームレスにデータをやり取りでき、業務全体の効率化も図れます。
おすすめの大企業向けワークフローシステム3選
SmartDB(株式会社ドリーム・アーツ)
「SmartDB」は、株式会社ドリーム・アーツが提供するワークフローシステムとデータベース機能が一体となった業務デジタル化クラウドです。従業員規模1,000名超の大企業を中心に多くの利用実績を誇っています。
ノーコードで業務アプリケーションの開発が行えるほか、大企業特有の条件分岐や並列承認といった複雑なワークフローにも対応しています。
HUEワークフロー(株式会社ワークスアプリケーションズ)
「HUEワークフロー」は、株式会社ワークスアプリケーションズが提供するクラウド型のワークフローシステムです。「使いやすさ」を追求した直感的な操作で、誰でもすぐに使い始めることができます。
紙の申請書をそのまま取り込めるだけでなく、申請フォームに印影を表示可能であるため、完全なペーパーレス化を実現できます。また、インボイス制度や電子帳簿保存法対応クラウドサービスなどにも連携可能です。
楽々WorkflowII(住友電工情報システム株式会社)
「楽々WorkflowII」は、住友電工情報システム株式会社が提供するクラウド型のワークフローシステムです。従業員規模に合わせた柔軟な運用が可能で、組織改編にも負担なく対応できます。
また、グローバル展開している企業向けに、英語やスペイン語、中国語など多国語に対応しており、海外拠点に合わせて言語を切り替えながらの運用も可能です。
おすすめのExcel活用型ワークフローシステム3選
コラボフロー(株式会社コラボスタイル)
「コラボフロー」は、株式会社コラボスタイルが提供する、クラウド型のワークフローシステムです。
Excelで作成した申請フォームを、そのままWebフォームに変換できるため、ノーコードで簡単に運用できます。また、承認ルートの構築もパーツを組み合わせることで簡単に作ることができます。
Styleflow(TDCソフト株式会社)
「Styleflow」は、TDCソフト株式会社が提供する、クラウド型のワークフローシステムです。現行のExcelやWordなどの申請フォームを、そのままのレイアウトで取り込むことができます。
ActionPassport(株式会社イーネットソリューションズ)
「ActionPassport」は、株式会社イーネットソリューションズが提供するワークフローシステムです。クラウド型やオンプレミス型など、さまざまな提供形態から選択できます。
Excelをそのまま申請フォームとして活用できるほか、低価格帯のプランでもデータ容量が無制限であるため、コストパフォーマンスにも優れています。
おすすめのワークフロー機能付きグループウェア3選
サイボウズ Office(サイボウズ株式会社)
「サイボウズ Office」は、サイボウズ株式会社が提供する中小企業向けグループウェアです。ワークフローの他にも、スケジュール共有やファイル共有、メール、会議室予約などの機能を標準搭載しています。
タブレットやスマートフォンなどさまざまなデバイスに対応しており、タイムカード機能を利用することで、勤怠管理もサポートできます。
desknet’s NEO(株式会社ネオジャパン)
「desknet’s NEO」は、株式会社ネオジャパンが提供するグループウェアです。一般企業だけでなく、官公庁や自治体にも広く導入実績があります。
ワークフローはもちろん、スケジュール管理やノーコード開発まで、多岐にわたる業務支援機能が集約されています。
rakumo ワークフロー(rakumo株式会社)
「rakumo ワークフロー」は、rakumo株式会社が提供する、Google Workspaceと連携したクラウド型電子稟議システムです。従業員規模に応じた柔軟な運用が可能で、さまざまなワークフローに対応できます。
ワークフローシステムの選定は比較ポイントを明確に
ワークフローシステム選定は、企業の業務効率化を左右する重要なタスクです。単に多機能であるとか、導入実績が多いという理由だけで導入してしまうと、ミスマッチを起こしてしまう可能性が高いと言えます。
本記事で解説した比較ポイントを、自社の従業員規模や現行の運用と照らし合わせながら確認し、最もフィットする製品を選ぶのが、失敗しないシステム導入のために重要です。