新たな勤怠管理システムを開発・導入する際、「要件定義書」と並んで非常に重要になる文書が「仕様書(要求仕様書」です。会社の特性やニーズによって必要な機能は大きく異なるため、それに応じて仕様書への記載内容も変わってきます。
この記事では、勤怠管理システムの仕様書の目的や役割、業種に応じた作成のポイントなどをわかりやすく解説します。
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勤怠管理システムの仕様書とは
勤怠管理システムの導入・運用において、必要な仕様や要求事項を具体的に記述した「仕様書」は、非常に重要な役割を果たします。
仕様書とは
仕様書は、システムの動作や性能、役割などを詳細に定義した文書であり、開発ベンダーとクライアント双方の間で共有される重要な情報源となります。
いわばシステム開発の「設計図」のようなもので、システムの仕様やクライアントの要求事項を明確に記述することで、開発ベンダーが要件を理解し、適切なシステムを構築するためのベースとなります。
仕様書は開発ベンダーとクライアントの「共通言語」です。仕様書にシステマティックな専門用語が羅列されていると、クライアントは出来上がるシステムが自身のニーズを満たすかどうかを評価できません。
一方で、仕様書の記述が曖昧であれば、開発ベンダーは要件を具体的に理解できず、不完全なシステムを提供してしまう可能性があります。
仕様書と設計書の違い
仕様書と似た文書に設計書があります。プロジェクトによっては両者を同義で使うケースもありますが、本来はまったく目的や役割が異なるものです。
一般的に、仕様書はそのシステムやソフトウェアの「あるべき姿」が記述されており、クライアントの要求をベンダーに伝えるための文書です。
一方で設計書は、その仕様を実現するために「どのように作り上げるか」が記述されており、ベンダーが具体的に開発を行うにあたっての道しるべとなる文書です。
勤怠管理システム仕様書の重要性とその役割
勤怠管理システムの仕様書は、システムが労働基準法などの法令や企業の就業規則などに対応した機能を備えているか、また、労働者の勤務状況を適切に管理できるかを確認するために重要となります。
仕様書が明確であればあるほど、導入するシステムが企業の要件を満たしているかを確認することが容易となります。これは、企業が法的なリスクを避けるだけでなく、労働者の生産性やエンゲージメントを向上させるためにも重要です。
勤怠管理システムの仕様書は、システムの機能、性能、運用方法などを詳細に記載します。これにより、人事労務担当者はシステムがどのように動作するか、また、そのシステムが法令遵守や企業のニーズにどのように対応するかを理解することができます。
構築仕様書と運用仕様書の違い
勤怠管理システムの導入においては、構築仕様書と運用仕様書の2種類の仕様書が作成されることがあります。
構築仕様書は、システムの構築に必要な情報を詳細に記述した文書で、主に開発ベンダーが参照します。具体的には、提供すべき機能、性能、インターフェース、データ構造などが記載されます。
一方の運用仕様書は、システムが運用される際の情報を詳細に記述した文書で、主にシステムのエンドユーザーが参照します。具体的には、システムの操作方法、保守手順、トラブルシューティングの方法などが記載されます。
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勤怠管理システムの仕様書に記載すべき項目
勤怠管理システムの仕様書を作成する際には、手戻りや追加要件が発生しないよう、必要な情報を漏れなく記載することが重要です。基本的な項目や特殊なケースで必要となる項目、さらに項目ごとの詳細な説明と例示について見ていきましょう。
基本的な項目
勤怠管理システムの仕様書に必ず含まれるべき基本項目としては、システムの概要、機能、性能、利用者インターフェース、保守・運用手順などが挙げられます。各項目には具体的な内容が必要で、例えば「機能」であれば、打刻の種類や申請フローなどを記載します。
特殊なケースで必要となる項目
特殊なケースとは、一般的な勤怠管理システムとは異なる特性を持つシステムや、特定の業種や勤務形態に対応したシステムのことを指します。具体的には、多言語対応を必要とするシステムや、シフト勤務やフレックスタイムなど特殊な勤怠形態をサポートするシステムなどがあります。
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業種別の勤怠管理システムの仕様書
勤怠管理システムの要件は、そのシステムを導入する業種によって異なる可能性があります。以下に、病院(独立行政法人)、自治体、大学・学校法人における勤怠管理システムの仕様書に求められる要件について解説します。
病院(独立行政法人)の勤怠管理システムに求められる要件
病院では、医師や看護師などの専門職を中心に、24時間体制でのシフト勤務が一般的であるため、そのような特性に対応したシステムが求められます。
病院の勤怠管理システムでは、シフト勤務や時間外労働の管理が特に重要となります。また、医師の専門性や資格による勤務体系の違いも考慮に入れ、いかに効率よくシフト作成ができるかという点も重要です。
さらに、医療機関特有の要件として、施設基準に関連する「様式9」の入力支援、出力機能お求められます。既存製品で備えているものは少ないため、自社開発で要件として盛り込む必要があるでしょう。
具体的な仕様書では、シフト制度の詳細、時間外労働の計算方法、特別な勤務形態への対応などが明記されます。
病院の勤怠管理システム仕様書の例(神戸市立医療センター 中央市民病院)
自治体の勤怠管理システムに求められる要件
自治体の勤怠管理システムでは、一般的な公務員の労働規定に加えて、災害時などの特別業務に対応できる柔軟性が求められます。
自治体の職員つまり地方公務員には、基本的に労働基準法が適用されず、地方公務員法や各自治体の条例が適用されることになります。よって、仕様書の内容も当然これらの規定に準拠したものにする必要があります。
また、通常の業務だけでなく、災害対応などの緊急時の勤務体制や人員配置などの管理方法なども記載する必要があります。
大学・学校法人の勤怠管理システムに求められる要件
大学や学校法人では、一般的な企業とは異なるアカデミックな環境下での勤怠管理が求められます。教職員の勤務形態や研究活動に伴う特殊な勤務スケジュールなど、教育機関特有の要件を満たすシステムが必要となります。
具体的な仕様書では、通常の勤怠管理の他、研究活動に伴う勤務時間の管理、学期ごとの勤務スケジュールの管理方法などを記載する必要があります。
大学の勤怠管理システム仕様書の例(公立大学法人横浜市立大学)
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人事給与も含めた仕様書
勤怠管理システムは、単独で運用される場合と、他のシステムと組み合わされて運用される場合があります。他のシステムと組み合わせでは、特に給与システムや人事システムとの統合システムとして構築されるのが一般的です。
複合型システムの仕様書では、それぞれのシステム間の連携タイミングやデータ項目、インターフェースの統一などを詳細に記述します。また、一つのシステムが改修された場合の、他システムへの影響なども考慮する必要があります。
ニーズに応じた仕様書の作成が重要
労働時間の管理に欠かせない勤怠管理システムの仕様書は、企業の特性やニーズに合わせて作成することが必要です。仕様書の基本的な役割は、システムの動作や必要な機能を明確に定義することです。
システムを導入する業種により、その要件は大きく異なります。そのため、基本的な項目だけでなく、特殊なケースに対応するための項目も記載することが重要です。また、システムの構築と運用の両方を考慮に入れた仕様書の作成も検討しましょう。
また、仕様書が欠かせない自社開発にこだわらないのであれば、クラウド型の既存製品を利用することで、コストを抑えて勤怠管理システムを導入することができます。
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