働き方改革の一環や、新型コロナウィルス感染防止のために、テレワーク・在宅勤務を導入する企業が増えています。
そんな中、テレワークにおける労働安全衛生法(安衛法と略されることもあります)をしっかりと確認しないまま、新しい働き方をスタートしてしまう企業が多いようです。
本記事では、「これからテレワークを導入したい」「在宅勤務における労務管理を見直したい」という方に向けて、テレワークにおける労働安全衛生法についてわかりやすく解説しています。ぜひご参考にしてください。
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労働安全衛生法とは
労働安全衛生法とは、簡単にいうと、労働者の安全と健康を守るための法律です。もともとは労働基準法に含まれていた「労働災害の防止」や「労働者の安全・健康の確保」といった重要項目が独立する形で、1972年に制定されたのが、労働安全衛生法でした。
近年では、長時間労働やメンタルヘルス不調といった問題が露呈したことで、2019年に労働者の健康管理を強化する形で改正が行われました。
メンタルヘルス対策と健康管理
企業は労働者が健康的に働けるように留意する義務があります。
具体的には、健康診断を受けさせること(労働安全衛生法66条1項)や、ストレスチェックの実施と結果を受けて措置を取ること(同法66条の10)などが、充分に行なわれているか注意しましょう。
テレワークに関連する安衛法を抜粋
テレワークを導入する際、安衛法の中でも特に留意すべきなのは次の条項です。
- 必要な健康診断とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法66条から第66条の7まで)
- 長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果を受けた措置(同法第66条の8および第66条の9)
- 面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則第52条の2)
- ストレスチェックとその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条の10)
テレワークを行なう従業員に対しても、上記の実施により過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保を図ることが大切です。
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テレワークにおける労働安全衛生法
ここまでの解説で、そもそも労働安全衛生法とは何なのか?という基本は、ざっくりとお分かりいただけたと思います。それでは、テレワークを導入する際、労働安全衛生法に基づいて、気をつけることを見ていきましょう。
在宅勤務でも労務管理は会社の責任
テレワークは、働く場所に縛られることなく、生活に合わせて働くことができる新しいワークスタイル。子育てや介護と仕事を両立したり、ワークライフバランスを充実させたり、様々な効果が期待されており、政府も積極的に推進しています。
しかし、テレワークは管理の目が行き届かず、労働時間や残業実態の把握といった労務管理が難しくなるという懸念もあります。
そんな中、特に気をつけたいのが、テレワークでは仕事とプライベートの線引きが曖昧になり、長時間労働になる可能性があること。そのため、テレワークの労務管理では、長時間労働にならない仕組みづくりが特に重要です。
在宅勤務の従業員の健康管理
在宅勤務を始めるとなると、管理の目が行き届かず、従業員がサボるのではないか…と心配になるかもしれません。
しかし業務効率化や従業員のワークライフバランスといった、本来の目的を達成することを考えると、オフィスに勤務していた時と同じように従業員の行動を監視しようとするのは、本末転倒になるリスクがあります。
実際、テレワークを導入すると同時に、フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制など、柔軟な働き方を取り入れる企業も多いです。
従業員一人ひとりが能力を最大限発揮できるように、根本的に就業規則や評価基準を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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健康的なテレワークをするには
従業員に、健康的なテレワークをしてもらうために、必要なのは監視ではなく進捗管理です。
例えば、業務日報やオンライン夕礼を活用して、仕事の進捗状況や残業の有無をチームで確認している企業があります。仕事の進捗確認とともに、テレワークで不足しがちな従業員同士のコミュニケーションの場にもなるというメリットも期待できる方法です。
担当業務の進捗状況や、時間外労働が増えていないか、上司が日々把握できる仕組みを作って運用することが、健康的なテレワークに欠かせないポイントとなります。
改定テレワーク「新ガイドライン」を受けて
2021年3月には、厚生労働省から「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(以下、「新ガイドライン」)が示されました。
「新ガイドライン」においては、以下のような方法で、長時間労働の抑制に努めるよう示されています。
- メール送付の抑制等
- システムへのアクセス制限
- 時間外・休日・所定外深夜労働についての手続
- 長時間労働等を行う労働者への注意喚起
- 勤務間インターバル制度の利用
また、テレワークを行う労働者であっても、使用者が労働災害に対する補償責任を負い、テレワークによって生じた災害については、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。
このことを踏まえて「新ガイドライン」では、テレワークを行う労働者に対してテレワーク中の業務災害について十分周知するとともに、情報通信機器の使用状況などの客観的な記録や労働者から申告された時間の記録を適切に保存することで、労働時間の適切な把握に努めることとされています。
なお、テレワークを行う労働者に対する安全衛生管理については、厚生労働省から「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト」が提供されているため、併せて活用されることをおすすめします。
自宅での作業環境ポイント
自宅でテレワークを行なう場合、会社側は適切な作業環境を助言することが望ましいです。それでは、具体的な作業環境について見ていきましょう。
- 部屋/設備を占める容積を除き10平方メートル以上の空間を推奨。(一般的な天井の高さは2.5m程なので、縦と横が2mずつのスペース)
- 照明/照度300ルクス以上(百貨店売場の照明が500~700ルクスなので、それよりやや暗い程度)
- 窓/窓や換気扇など換気設備を設ける。ディスプレイに太陽光が反射する場合は、ブラインドやカーテンを活用する。
- 室温/気温17~28度、湿度40~70%
- パソコン/ディスプレイは照度500ルクス以下。キーボードとディスプレイの位置が調整できると望ましい。
- 机/必要なものが配置できる広さがある。作業中に脚が窮屈でない。体型に合う高さに調整できる。机と椅子の関係についての詳細は、次のイラストを参照。
【机と椅子の作業環境について】
テレワークで手軽にできる健康管理方法
在宅勤務は、毎日通勤していた時と比較して、運動量が低下します。そのため、従業員の健康維持をサポートする「テレワーク中に手軽にできる健康管理方法」を情報提供することも有効です。
具体的には、次のような手軽に始められる方法はいかがでしょうか。
- 意識的に深呼吸をする
- ウォーキングやランニングの習慣を持つ
- 休憩中にストレッチを行なう
- ブルーライトカットのメガネを使用する
- 雑談やコミュニケーションの時間を作る
- 入眠前はパソコンやスマートフォンの画面を見ず、部屋を暗くする
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労働時間の把握義務について
テレワークにおける従業員の健康管理について、自宅での作業環境など、具体例をご紹介しました。ここからは、従業員の健康管理に欠かせない労働時間の把握義務について見ていきましょう。
みなし労働時間制などを除く、通常の労働時間でテレワークを行なう場合、会社は次の2つの義務を負います。
- 従業員の労働時間を適正に把握する責務
- 労働時間管理を行なう責務
出典:厚生労働省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』
テレワークでの労働時間把握
会社は、テレワークをする従業員についても出勤している従業員と変わらず、労働時間の把握をしなくてはいけません。
それでは、テレワークをする従業員の労働時間を把握するには、どのような方法を取ればいいのでしょうか。
具体的には、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録など、客観的な記録を用いた管理が求められます。
勤怠管理システムの活用
最近では、自宅などオフィスから離れた場所で働くテレワークの導入と同時に、勤怠管理システムを導入する企業が急増しています。
クラウド型の勤怠管理システムであれば、どこにいても出勤・退勤の打刻が可能。製品によっては、時間外労働が一定時間を超えると、注意喚起のメッセージを自動表示するといった便利な機能もあります。
これまで、タイムカードや出勤簿といったアナログな方法で勤怠管理をしてきた企業においては、毎月の集計作業や給与計算といった大変な作業を自動化できるため、管理者側の業務負担軽減にもつながります。
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テレワークにおける労働災害
テレワーク中に起こった労働災害については、労働基準法に基づいて会社が補償責任を負います。したがって、労働契約に基づいて、会社の指示で仕事をしている時に生じたテレワーク中の災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となるのです。
ケーススタディー
自宅で業務時間中にパソコン業務を行なっており、トイレへ行くために離席し、デスクに戻って椅子に座ろうとして転倒したケース。このケースは、業務に付随する行為に起因して災害が発生しているため、業務災害と認められます。
従業員は、在宅勤務中の怪我などが労災の対象になると知らない可能性もあるため、テレワークを導入する際は、周知徹底することが望ましいでしょう。
テレワークの管理は勤怠管理システムがおすすめ
本記事では、テレワークにおける労働安全衛生法について、ポイントを解説しました。働き方改革の一環で推進されてきたテレワークですが、新型コロナウィルスの感染防止や緊急事態宣言の影響で、テレワークを導入する企業が急増しています。
テレワークは労働者側のメリットが大きいだけでなく、従業員の残業・交通費など経費削減や、満足度向上による離職防止など企業側にもさまざまなメリットがあります。興味がある企業においては、ぜひ自社にあった形でのテレワーク導入を検討してみてはいかがでしょうか。
また、テレワーク導入の際には併せて勤怠管理システムの導入をおすすめします。勤怠管理システムは、働く場所を選ばない勤怠打刻や、労働時間のリアルタイムでの把握を可能にし、テレワークが抱える労務管理の問題点を一気に解決してくれます。
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