新しく従業員を雇用した際に交わす書類として、「雇用契約書」と「労働条件通知書」がありますが、両者はどう違うのでしょうか?また、どちらも交付しなければならないのでしょうか?

この記事では、「雇用契約書」と「労働条件通知書」の法的義務や効果の違い、どちらもない場合はどうなるのか、などについて分かりやすく解説します。

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雇用契約書と労働条件通知書の違いとは

どちらも、新たに従業員を雇用した際に交わされる書類ですが、以下のように作成義務の有無や文書としての役割に違いがあります。

雇用契約書労働条件通知書
関連法令民法
労働契約法
労働基準法
パートタイム労働法
労働者派遣法
交付の義務なしあり
ない場合の罰則なし30万円以下の罰金
記載すべき事項任意絶対的明示事項
(昇給に関する事項は除く)
労働者の署名・押印ありなし
雇用契約書と労働条件通知書の違い

なお、実務上は事務処理を簡略化するため、両者を合わせた「雇用契約書兼労働条件通知書」という書面を作成する場合も多く見られます。

雇用契約書とは

雇用契約書は、労働者が労務を提供し、雇用主がそれに対して賃金を支払うという、労働契約の内容について、労使双方が合意したことを証明する文書です。合意したことを証明するため、労使双方が署名・押印してそれぞれ1通ずつ持ち合うのが一般的です。

民法上の雇用契約(労働契約)は、お互いの合意のみで成立するため、必ずしも書面によることを要せず、口頭の取り決めだけでも有効とされます。ただし、将来のトラブル防止のために作成しておくのが無難と言えます。

法律上作成が義務付けられているわけではなく、別途、労働条件通知書において必要な労働条件を明示していれば、記載すべき事項も任意です。

労働条件通知書とは

労働条件通知書は、業務内容や就業時間など個別の労働条件について、雇用主から労働者に対して通知した文書です。あくまでも通知書であり、合意を証明する書類ではないため、基本的に労働者の署名・押印はありません。

労働基準法では雇用主に対して、新規雇用に際し一定の労働条件につき、書面にて労働者に明示することを義務付けています。よって、労働条件通知書を交付していない、または交付していても必要な事項が記載されていない場合は、労働条件明示義務違反となります。

また、有期契約労働者に対しては、新規雇用の際だけでなく、契約更新する際にも労働条件の明示が必要であり、たとえ労働条件が変わらなかったとしても、改めて労働条件通知書を交付しなくてはなりません。

なお、2019年4月より、従来の紙媒体による明示に代えて、労働者の同意を条件に電磁的方法(メールやSNSなど)による明示も可能となりました。

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雇用契約書と労働条件通知書に記載すべき事項とは

記載すべき事項が決まっているのは労働条件通知書の方ですが、雇用契約書が労働条件通知書も兼ねる場合は、同様に記載する必要があります。

労働条件には、必ず労働者に明示すべき「絶対的明示事項」と、制度として導入している場合のみ明示しなければならない「相対的明示事項」があります。

絶対的明示事項相対的明示事項
1. 労働契約の期間、有期の場合は更新の有無や判断基準
2. 就業場所及び従事すべき業務
3. 始業・終業時刻、所定外労働時間の有無、休憩時間、休日、休暇
4. 賃金の決定・計算方法、支払方法、締め日・支払、昇給に関する事項
5. 退職(解雇の事由を含む)
1. 退職金
2. 臨時の賃金(賞与)
3. 食事、作業用品その他の費用負担
4. 安全衛生
5. 職業訓練
6. 災害補償
7. 表彰及び制裁
8. 休職
絶対的明示事項と相対的明示事項

    絶対的明示事項の内、「昇給に関する事項」以外については、書面にて明示する必要があります。つまり、労働条件通知書には「昇給に関する事項」を除く絶対的明示事項を、必ず記載しなければならないということになります。

    パート・アルバイトの場合に必要な記載事項

    パート・アルバイトなど、正規雇用の労働者に対して労働時間が短い労働者(短時間労働者)に対しては、原則の記載事項に加えて以下の事項も明示する義務があります

    1. 昇給の有無
    2. 退職手当の有無
    3. 賞与の有無
    4. 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

    相対的明示事項だった賞与に関する事項や、除外されていた昇給に関する事項など、正社員よりも記載事項が多いため、漏れが無いよう注意が必要です。

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    雇用契約書や労働条件通知書がないとどうなる?義務と罰則について

    雇用契約書は、法律で作成が義務付けられていないため、作成する・しないは任意で、未作成だからといって罰則が科されることはありません。ただし、無用な労使トラブルを避けるためにも、作成しておくのが無難でしょう。

    一方、労働条件通知書は労働基準法において作成が義務付けられているため、未作成の場合は労働基準法違反に問われます。労働条件通知義務違反に該当すると判断された場合は、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります

    かりに具体的な罰則を受けなかったとしても、労働者は自分がどのような条件で働いているのか分からない状態に置かれることになり、仕事に対するモチベーション低下や会社不信による早期離職を招きかねません。

    雇用契約書や労働条件通知書はいつ作成する?

    原則的には、どちらも雇用契約時(入社内定から最初の出社日まで)に作成して交付します。雇用契約書と労働条件通知書を同時に交付しなければならない決まりはありませんが、特段の理由がないのであれば、同じタイミングで交付するのが無難です。

    また、有期契約労働者の場合は、契約更新時及び無期雇用転換時に、新たな雇用契約として作成し直します。これは、有期雇用契約の一期間が、独立した一つの雇用契約とみなされるためです。

    一方で、無期雇用労働者が、途中で時短勤務に切り替わったり転勤したりといった場合は、改めて労働条件通知書を交付しなくても「辞令」による通知で差し支えありません。もちろん、労働条件通知書を再交付しても問題ありません。

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    雇用契約書と労働条件通知書は両方作成がおすすめ

    労働条件通知書は法律で義務付けられているため、必ず作成をしなければなりません。一方、雇用契約書の作成義務はないものの、労使双方のためにも作成しておくのが無難です。雇用契約を口約束で取り交わすと、様々なリスクが生じます。

    どちらの文書も作成するのが無難な対応ですが、給与計算・勤怠管理・安全衛生教育など、労務担当者は多くの業務を抱えています。人手不足の場合は採用や人事制度の運用など、人事業務を兼任している場合も珍しくないでしょう。

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    システムには常に最新のデータが反映されています。管理職は部下の勤怠状況に関して、労務担当者と何度もやりとりを重ねる必要はありません。一方、労務担当者も工数の掛かる業務を自動化でき、他の業務に労力を割けます。

    業務の正確性と効率性を高いレベルで両立できる点も、勤怠管理システムを導入する魅力の一つです。クラウド型は初期費用とランニングコストを大幅に抑えられるため、予算の確保が厳しい企業も導入しやすいでしょう。

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