労務管理において、労働時間に小数点以下の端数が生じることがよくあります。たとえば、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入した場合の所定労働時間の上限や、残業代や賃金控除の計算などが典型例です。
この小数点以下が何分間に相当するのかは、Excelで変換式を作ることも有効ですが、早見表があると便利です。
本記事では、60進法(分)と10進法(小数点)の早見表を御覧いただきながら、労務管理における端数処理についてもわかりやすく解説します。
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60進法(分)と10進法(小数点)の変換早見表
システム上の画面表示は直感的にわかりやすい60進法で表示し、給与計算時に10進法に変換するのが一般的な流れです。
たとえば、1時間30分を60進数と10進数で表す場合、60進数の場合は「1.30」と分をそのまま表記します。一方、10進数の場合は、「1.50」と表記します。30分は1/2時間となるため、0.5時間として表記します。
変換早見表を以下に掲載しましたので、参考にご覧ください。また、横書きにしてさらに見やすくした早見表もご用意しましたので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
時間(分) | 10進数 | 時間(分) | 10進数 |
---|---|---|---|
1分 | 0.017 | 31分 | 0.517 |
2分 | 0.033 | 32分 | 0.533 |
3分 | 0.05 | 33分 | 0.55 |
4分 | 0.067 | 34分 | 0.567 |
5分 | 0.083 | 35分 | 0.583 |
6分 | 0.1 | 36分 | 0.6 |
7分 | 0.117 | 37分 | 0.617 |
8分 | 0.133 | 38分 | 0.633 |
9分 | 0.15 | 39分 | 0.65 |
10分 | 0.167 | 40分 | 0.667 |
11分 | 0.183 | 41分 | 0.683 |
12分 | 0.2 | 42分 | 0.7 |
13分 | 0.217 | 43分 | 0.717 |
14分 | 0.233 | 44分 | 0.733 |
15分 | 0.25 | 45分 | 0.75 |
16分 | 0.267 | 46分 | 0.767 |
17分 | 0.283 | 47分 | 0.783 |
18分 | 0.3 | 48分 | 0.8 |
19分 | 0.317 | 49分 | 0.817 |
20分 | 0.333 | 50分 | 0.833 |
21分 | 0.35 | 51分 | 0.85 |
22分 | 0.367 | 52分 | 0.867 |
23分 | 0.383 | 53分 | 0.883 |
24分 | 0.4 | 54分 | 0.9 |
25分 | 0.417 | 55分 | 0.917 |
26分 | 0.433 | 56分 | 0.933 |
27分 | 0.45 | 57分 | 0.95 |
28分 | 0.467 | 58分 | 0.967 |
29分 | 0.483 | 59分 | 0.983 |
30分 | 0.5 | 60分 | 1 |
小数点以下は何位まで?
特に決まりはありませんが、厚生労働省の資料等では小数点1位(2位以下切り捨て)で統一されています。小数点2位以下を「切り捨てる」「切り捨てない」の判断は、どちらが労働者にとって有利となるのかという観点から考えます。
労働時間の上限を計算する場合は、小数点2位以下を切り捨てた方が「働かなくてはならない時間」が少なく算出されるため、労働者に有利となります。
一方で、分を小数点に変換する給与計算などの際は、小数点2位以下を切り捨てない方が「給与に反映される労働時間」が多くなるため労働者に有利となります。ケースによって使い分けるようにしましょう。
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勤務時間の60進法と10進法の変換が必要となる場面とは
勤怠管理において分と小数点の変換が必要となる場面としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 給与計算時
- 1ヶ月単位の変形労働時間制における所定労働時間の上限
- フレックスタイム制における総労働時間の上限
- 1ヶ月を超えるフレックスタイム制の残業計算
- 残業代や遅刻・早退による賃金控除
給与計算時
労働時間の集計までは60進法で行い、給与計算を行う際に10進法に変換するのが一般的です。
たとえば、ある月に時間外労働を4日行い、それぞれの時間が2時間40分、2時間5分、3時間30分、2時間20分だった場合、まずは60進法で時間を集計し10時間35分となります。続いてこれを10進法に変換した「10.59(小数点3位以下切り上げ)」に基礎賃金や割増率をかけて計算します。
1ヶ月単位の変形労働時間制における所定労働時間の上限
「1ヶ月単位の変形労働時間制」においては、1ヶ月以内の変形期間を通じて、週の平均労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えないように、所定労働時間を設定する必要があります。
歴日数 | 一般の事業場(週40時間) | 特例措置対象事業場(週44時間) | ||
---|---|---|---|---|
小数点時間 | 分変換時間 | 小数点時間 | 分変換時間 | |
28日 | 160.0時間 | 160時間0分 | 176.0時間 | 176時間0分 |
29日 | 165.7時間 | 165時間42分 | 182.2時間 | 182時間12分 |
30日 | 171.4時間 | 171時間24分 | 188.5時間 | 188時間30分 |
31日 | 177.1時間 | 177時間6分 | 194.8時間 | 194時間48分 |
フレックスタイム制における総労働時間の上限
清算期間(フレックスタイム制の対象期間)内における総労働時間も、1ヶ月単位の変形労働時間制と同様に週平均40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えないように設定する必要があります。変換対応表については、前項の表を参照してください。
1ヶ月を超えるフレックスタイム制の残業計算
フレックスタイム制の清算期間が1ヶ月を超え3ヶ月以内である場合は、月ごとに週平均50時間を超えた時間を時間外労働としてカウントする必要があります。具体的には、以下の表の時間が週平均50時間となる月ごとの労働時間となります。
歴日数 | 月間労働時間 | 分変換 |
---|---|---|
31日 | 221.4時間 | 221時間24分 |
30日 | 214.2時間 | 214時間12分 |
29日 | 207.1時間 | 207時間6分 |
28日 | 200.00時間 | 200時間0分 |
残業代や遅刻・早退による賃金控除
賃金計算のための労働時間は、1分単位で計算しなければなりません。31分の残業を0.5時間として計算することは認められず、この場合は0.52時間もしくは0.517時間として計算します。
一方で、29分の遅刻に対しての賃金控除を0.5時間として計算することも認められず、この場合は0.48時間もしくは0.483時間として計算することが必要です。
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勤怠管理における端数処理
基本的に労働者にとって有利となるよう端数処理をおこなうのが、ルールとなっています。以下4つのケースにおける端数処理の方法を紹介します。
- 一賃金支払期におけるまるめ処理
- 時間単価や割増賃金での端数処理
- 1ヶ月の賃金支払額で100円未満の額が生じた場合の端数処理
- 1000円未満の端数の繰り越し処理
一賃金支払期におけるまるめ処理
労働時間は1分単位で計算し、切り捨て処理は認められないのが原則です。ただし、「1ヶ月(一賃金支払期)における時間外労働・休日労働・深夜労働の時間」については、事務簡略化のために以下のまるめ処理が認められています。
・30分以上1時間未満の時間を1時間に切り上げ、30分未満の時間を切り捨てること
なお、これが認められるのは、あくまでも割増賃金の対象となる時間外労働などの時間のみであり、たとえば時給制の従業員の実労働時間に対しては認められません。
時間単価や割増賃金は1円単位で四捨五入
割増賃金を計算する際に用いる「1時間あたりの賃金」つまり時間単価に、1円未満の端数が生じた場合は、50銭以上1円未満は1円に切り上げ、50銭未満は切り捨てます。
また、割増賃金(時間外+休日+深夜)の総額を計算する際に1円未満の端数が出た場合も、上記と同様の端数処理を行います。
1ヶ月の賃金支払額は100円単位で四捨五入可能
1ヶ月の賃金支払額(基本給+割増賃金-各種控除)に100円未満の端数が出た場合は、「50円以上100円未満は100円に切り上げ、50円未満は切り捨てる」ことが可能です。
ただし、この処理を行うためには賃金規程や就業規則等に定めが必要で、特に定めのない場合は原則どおり1円単位の四捨五入で計算が必要となります。
1000円未満の端数は翌月に繰り越せる
1ヶ月の賃金支払額に1,000円未満の端数が出た場合は、その端数を翌月の賃金支払期に繰り越すことが可能です。
この繰越処理を行うにも、前項同様に賃金規程や就業規則等への定めが必要となります。
勤怠管理システムで正しい労働時間計算を
早見表やExcelによる煩わしい変換は、勤怠管理システムの導入によって解決しましょう。勤怠管理システムを導入すると、変換処理を自動化できます。システムによっては、1ヶ月単位の変形労働時間制の上限時間設定に誤差のある製品もあります。
管理画面の設定から変更ができますが、操作性も含めてミスマッチを避けたいと考えている方も少なくないでしょう。
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