年次有給休暇の年間取得が義務付けられてからも、付与された日数をすべて消化し切るというケースはまだまだ少なく、未消化分を次年度に繰り越すというケースが多く見られます。
しかし、有給休暇の繰り越しは消滅時効と密接に関わってくるため、法的なルールや具体的なケースに応じた日数の計算方法などをしっかり理解しておく必要があります。
この記事では、有給休暇の繰り越しについて、基本的な考え方から計算方法、買い取りの可否、注意ポイントなどを、具体的なケースを交えながらわかりやすく解説します。
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有給休暇とは
有給休暇(正式には「年次有給休暇」)は、賃金が保証されたまま取得できる休暇であり、労働基準法によって定められている労働者の権利です。
有給休暇は、雇用された日から6ヶ月継続勤務し、その間の出勤率が8割以上となる労働者に対して10日(フルタイムの場合)付与されます。有給休暇は、労働者のストレス軽減や健康維持のために不可欠な制度であり、企業もその運用を適切に管理することが必要です。
有給休暇の付与日数
有給休暇の付与日数は、労働者の勤続年数と勤務形態に応じて異なりますが、基本的に勤続年数が長いほど付与日数も増えることになります。
フルタイム労働者の付与日数
週所定労働日数5日以上または週所定労働時間30時間以上のフルタイム労働者には、勤続年数に応じて最大年間20日の有給休暇が付与されます。初年度は10日間から始まり、6年6ヶ月以上勤続した場合には最大20日が付与されます。
継続勤務年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
パート・アルバイトの付与日数
週所定労働日数4日以下かつ週所定労働時間30時間未満のパートタイム労働者やアルバイトにも、勤務日数に応じて有給休暇が付与されます。フルタイム労働者と同様に一定の条件を満たすことで有給休暇を取得できますが、その日数は勤務日数にフルタイム労働者よりも少なくなります。
週所定 労働日数 | 1年間の 所定労働日数 | 継続勤務年数(年) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | ||
4日 | 169日~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121日~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 48日~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
有給休暇の取得義務
2019年の法改正により、企業には、年間10日以上の有給休暇が付与された従業員に対しては、最低5日間の有給休暇を取得させる義務が課されました。これにより、従業員が有給休暇を計画的に取得し、適切に休養を取ることが保証されています。
年5日の取得義務が達成できなかった場合、労働基準法違反として未達成の労働者1人につき30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。複数該当者がいる場合は、その分罰金額も大きくなってしまうため、取得漏れのないように適切な有給管理が求められます。
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有給休暇の時効
有給休暇は、付与された日から2年間が経過するとその権利が消滅します。この時効期間内に取得しなかった有給休暇は失効し、取得することはできません。
2020年4月1日に労働基準法の消滅時効について改正があり、賃金請求権の時効が2年から5年(当面は3年)に引き上げられましたが、有給休暇の消滅時効は変更なく、2年のまま据え置かれています。
企業は、従業員に対して有給休暇の残日数を管理し、消滅する前に休暇を取得できるよう促すことが重要です。アナログな管理方法では、従業員個々の取得状況を把握するのは困難であるため、勤怠管理システムを利用することをおすすめします。
有給休暇の買い取りは違法?
原則として、有給休暇の買い取りは違法となります。これは、有給休暇が労働者の健康と生活の質を向上させるために与えられたものであり、金銭的補償とは異なるためです。
ただし、消滅時効が迫っており期日までに消化しきれない有給休暇分については、労働者の有給休暇取得の権利を侵害することにならないため、例外的に買い取りは認められています。
また、退職時に未消化の有給休暇が残っている場合や、法定の日数を超えて付与された有給休暇については、例外的に買い取りが認められる場合があります。
有給休暇の消滅時効の起算日
有給休暇の消滅時効は、付与された日を起算日として2年間です。この期間内に取得されなかった有給休暇は、時効により無効となります。
付与日基準のため、年度によって消滅のタイミングが異なる場合があります。たとえば「初年度は原則どおり入社6ヶ月で付与、以降は毎年4月1日に斉一的に付与」と規定している会社において、「2024/9/1入社の労働者」に付与された有給休暇の消滅時効は、以下のとおりになります。
- 入社日(2024/9/1)から6か月経過した2025/3/1に付与された初年度分10日の消滅時効は、初回付与日から2年後の2027/3/1
- 2025/4/1に2回目に相当する分として付与された11日の消滅時効は、2回目付与日から2年後の2027/4/1
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有給休暇を繰り越す場合の計算方法
ここでは、具体的な例を挙げて有給休暇の繰り越し日数の計算方法を解説します。
勤続年数2.5年のフルタイム労働者の場合
勤続2.5年のフルタイム労働者には、初年度に10日間の有給休暇が付与され、その後1年半の時点で11日、2年半の時点で12日が付与されます。この際、前年に取得できなかった休暇は翌年に繰り越すことができます。
例えば、初年度に5日間しか取得していなかった場合、残り5日を繰り越し、翌年には11日と合わせて16日間を取得可能です。
さらに2年目に4日しか取得できなかった場合(そもそも5日の取得義務違反ですが)、繰り越せる日数は「16-4」で12日となりそうですが、初年度付与分の残数である1日分は時効消滅するため、繰り越せる日数は11日となります。
勤続年数6.5年以上のフルタイム労働者の場合
勤続6.5年以上のフルタイム労働者には、年間最大20日の有給休暇が付与され、繰り越し分を含めると最大40日分の有給休暇を取得することができます。
なお、年度途中で企業の有給付与ルールが変更になった場合、たとえばそれまで法律どおりの付与サイクルだったところ、途中で年度初めに斉一的付与に変更されたケースなどでは、最大付与日数が40日を超えることが起こり得ます。
勤続年数1.5年のパート・アルバイトの場合
勤続1.5年のパート・アルバイト労働者にも、勤務日数に応じて比例配分された有給休暇が付与され、未消化分は翌年度に繰り越すことが可能です。
週の所定労働日数4日のパートの場合、6ヶ月経過時点で7日付与され、1.5年経過時には8日付与されるため、前年度1日も取得してない場合は繰越分含めて15日の付与となります。なお、このケースでは年間付与10日未満のため取得義務の対象とはなりません。
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有給休暇の繰り越しの注意ポイント
有給休暇の繰り越しについては、時間単位での取得や繰り越し分の優先消化など、注意すべきポイントを押さえておくことが重要です。
繰り越した場合の最大日数は40日?
繰り越し可能な有給休暇の最大日数は、通常付与される20日と合わせて最大40日です。当年度分から繰り越せる日数は20日までであり、新たに付与された分と繰り越し分を合計すると、最大で40日分の有給休暇を取得できます。
例えば、勤続年数6.5年以上のフルタイム労働者が前年に10日間の休暇を消化していなかった場合、これを繰り越して翌年の付与分と合わせると合計30日間の有給休暇が取得可能です。
さらに30日が付与された年度に取得した有給休暇が5日間だけだった場合、前年度からの繰越分の残5日分は時効により消滅するため、20日分のみ繰り越すことができ、新たに付与される20日分と合わせて最大40日分の付与となります。
時間単位年休の繰り越し
時間単位で取得する年次有給休暇も繰り越しが可能です。ただし、時間単位での取得は年間5日分が上限となる点に注意が必要です。
たとえば、有給休暇1日分を8時間として計算している事業場において、ある労働者が通常の有休を2日分、時間単位年休を5時間分、次年度に繰り越す場合、次年度付与日数が11日とすると最終的に付与される有休は13日と5時間ということになります。
そして、このうち時間単位年休として取得できるのは、あくまでも5日分つまり8×5=40時間分までとなります。繰り越した5時間分を加算して、45時間分の時間単位年休が取得可能となるわけではありません。
有給休暇は繰り越し分から優先的に消化する
有給休暇の繰り越し分の消化ルールについては、特に法律で定められているわけではありませんが、前年度繰り越し分から優先して消化されるのが一般的です。繰り越し分を先に消化することで、休暇の無駄や時効による失効を防ぎます。
たとえば、前年度繰越分5日、当年度付与分11日を所持している労働者が1日有給休暇を取得した場合、先に時効の到来する前年度繰越分5日から1日を差し引きします。よって、このケースでは繰越分の残日数は4日となります。
まとめ
有給休暇の繰り越し制度は、労働者が取得しきれなかった有給休暇を翌年度に使用するための重要な仕組みです。しかし、労働基準法に基づく繰り越し日数の制限や、時間単位の有給取得に関するルール、さらには繰り越し分の優先消化など、正確に理解しておくべきポイントが数多く存在します。
有給休暇は、労働者によって付与タイミングが違っていると管理が煩雑になり、繰り越し計算を間違えてしまうことも考えられます。そこで、有給休暇の自動付与から日数管理までを簡潔に行える勤怠管理システムの導入をおすすめします。
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