働き方の多様化や労働者意識の変化による転職者の増加に伴い、新卒だけでなく中途採用者も増え、人事担当者の方は年中入社手続きに追われるということも、珍しくないのではないでしょうか?
この記事では、人事担当者の方向けに、会社が行う入社手続きの流れや必要書類について、わかりやすく解説します。便利なチェックリストもご用意しましたので、併せてご活用ください。
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会社側の入社手続きの流れとチェックリスト
労働者を新たに雇用した際、基本的には以下の手順に沿って入社手続きを進めていきます。
- 事前書類の準備と案内
- 必要書類の作成・交付
- 社会保険・税金手続き
- 健康診断の実施
- 備品・貸出物の準備
書類や手続きに漏れがないよう、チェックリストを活用するのがおすすめです。以下に無料でダウンロード頂けるチェックリストをご用意しましたので、ぜひご活用ください。
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1. 事前書類の準備と案内
まずは、従業員に用意してもらう書類、企業側が準備する書類を整理することから始めましょう。各種加入手続きは期限が決められているものが多いため、早い段階から準備を進めておくことが大切です。
従業員に用意してもらう書類
新卒か中途採用か、扶養家族の有無などによって、従業員側に提出を依頼する書類も異なります。以下のパターンごとに、必要な書類を整理します。
必須書類
以下は、原則的にどのような場合でも必要となる書類です。
・年金手帳または基礎年金番号通知書
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・マイナンバー
・給与振込先の届出書
年金手帳を紛失している場合は、再発行の手続きが必要です。なお、2022年4月以降に新たに被保険者資格を取得した場合は、年金手帳に代わって「基礎年金番号通知書」が発行されます。
また、マイナンバーは社会保険等の手続きに必要ですが、入社する従業員がマイナンバーカードや通知カードの提出を拒んだ場合は、基礎年金番号と住民票にて代用可能です。
中途採用者の入社手続きで必要となる書類
以下は、転職、再就職など中途採用者の場合に必要な書類です。
・雇用保険被保険者証
・前職の源泉徴収票
雇用保険被保険者証は雇用保険の加入手続きで必要になる書類です。前職の退職時に勤務先から返却されます。紛失した場合はハローワークで再発行が可能です。源泉徴収票は年末調整に必要な書類で、同じく退職時に勤務先から発行されます。
扶養家族がいる場合に必要な書類
採用した従業員に扶養家族がいる場合、該当する扶養家族が保険給付を受けるために、「健康保険被扶養者(異動)届」が必要です。
必要に応じて提出してもらう書類
以下は、従業員の属性や担当する業務などに応じて、提出してもらう書類です。
・健康診断書
・卒業証明書
・住民票(住民票記載事項証明書)
・免許・資格取得証明書
・退職証明書
会社が事前に交付する書類
以下は、会社が入社日までに、新入社員に対して交付する書類です。
・採用(内定)通知書
・入社(誓約)承諾書
・身元保証書
採用通知書は、最終選考を通過した求職者に対し、会社側の採用意思を伝える書類です。求職者本人の入社意思を問わず、会社側が一方的に発行する書類ですが、採用通知書送付後の内定取り消しは、解雇と判断される可能性があるため注意しましょう。
入社承諾書は、採用通知書を受け取った求職者が、入社の意思を会社に伝え、従業員として労務を提供することを誓約する書類です。ただし、入社承諾書に内定辞退を制限するような法的な拘束力はありません。
身元保証書は、入社後に労働者が会社に対して損害を与えた場合に備えて、第三者(主に親族)から保証をしてもらう書類です。
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2. 必要書類の作成・交付
入社承諾書が返送され、内定者の入社の意思を確認できれば、以下の書類を作成します。
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
- 法定三帳簿
労働条件通知書
労働条件通知書は、会社から労働者に明示すべき労働条件について記載された書類で、労働基準法において交付が義務付けられています。労働条件通知書に必ず記載すべき「絶対的明示事項」は、以下の事項です。
- 契約期間
- 就業場所・従事すべき業務
- 労働時間・休憩・休日など
- 賃金の決定・計算方法など
- 退職(解雇の事由を含む)
雇用契約書
雇用契約書は、会社と労働者双方が、労働条件について合意したことを証明する書類で、署名・押印の上で一部ずつ持ち合うことになります。
労働条件通知書と違って、法律で交付が義務付けられている書類ではありませんが、労使トラブル防止のためにも、雇用契約書を交わしておくのが無難です。なお、一般的には、労働条件通知書と合わせて「雇用契約書兼労働条件通知書」として作成する会社が多くなっています。
法定三帳簿
法定三帳簿とは、労働基準法において事業場に必ず備え付けるべきものとされている、労働者名簿・出勤簿・賃金台帳の総称です。
労働者名簿は、雇用する労働者の基本的な情報を記載した書類で、様式は任意ではあるものの、以下の項目については必ず記載しなければなりません。
- 氏名
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類(従業員数が常時30人未満の場合は不要)
- 雇入れの年月日
- 退職(または死亡)の年月日及びその事由(解雇の理由を含む)
出勤簿は、従業員ごとの日々の勤怠を記録するための書類です。出勤簿には、基本的に以下の事項を記載します。
- 出勤日
- 日ごとの始業~終業及び休憩時間
- 時間外労働・休日労働・深夜労働に関する事項
賃金台帳は、従業員ごとの賃金支払状況や控除などを記録するための書類です。賃金台帳には、基本的に以下の事項を記載します。
- 賃金計算期間
- 労働日数及び労働時間
- 基本給・各割増賃金・諸手当
- 賞与
- 控除
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3. 社会保険・税金手続き
社会保険や税金の手続きは、労働条件や新卒か転職かなどによって、変わってくるため注意が必要です。
雇用保険の加入手続き
雇用保険の加入は、管轄ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を、入社日の翌月10日までに提出して行います。
資格取得要件は、「31日以上の雇用が見込まれ、かつ週の所定労働時間が20時間以上」であることです。よって、雇用期間が31日未満、もしくは週の所定労働時間が20時間未満であれば、基本的に対象外となります。
資格取得届を提出する際には、先にご紹介した法定三帳簿や労働条件通知書などの添付が必要です。提出期限に間に合うように、早めに用意しておきましょう。
加入手続き完了後にハローワークから発行される「雇用保険被保険者証」及び「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」は、忘れずに従業員に交付しましょう。
健康保険・厚生年金の加入手続き
健康保険・厚生年金保険の加入手続きは、管轄年金事務所(または健康保険組合)に、「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を、入社日から5日以内に提出して行います。
扶養家族がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」、新入社員の配偶者が国民年金第3号被保険者に該当する場合は「国民年金第3号被保険者関係届」も、同時に提出します。
また、70歳以上の者を新たに雇い入れた場合は、「厚生年金70歳以上被用者該当届」を提出し、健康保険のみ加入することになります。
社会保険は、正社員は全員加入、正社員以外でも以下の要件をいずれも満たす場合は、加入義務があります。
- 1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、同一事業場の一般従業員の4分の3以上
- 契約期間が2ヶ月以上
ただし、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、同一事業場の一般従業員の4分の3未満でも、以下の要件をすべて満たせば加入が必要です。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること
「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」提出の際には、マイナンバーの記載や年金手帳の添付が必要です。手続き完了後に交付される健康保険証は、速やかに従業員に手渡しましょう。
税金の手続き
源泉徴収票作成のため、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます。また、転職者の場合は、年末調整のため前職の源泉徴収票も提出してもらいます。
住民税を普通徴収から特別徴収に切り替える場合は、「特別徴収切替届出(依頼)書」を従業員の住所地の市区町村へ提出します。対して、前職から引き続き特別徴収を利用する場合は、「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を従業員の住所地の市区町村へ提出します。
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4. 健康診断の実施
労働安全衛生法に基づき、新たに労働者を雇用した場合は、特定の11項目について健康診断の実施が義務付けられています。
ただし、従業員が入社前3ヶ月以内に11項目の健康診断を受けている場合は、雇入時の健康診断を受診させる必要はありません。その場合は、健康診断書を提出してもらうことになります。
5. 備品・貸出物の準備
スムーズに業務を始められる体制を整えるため、備品の整備や貸出物を配布します。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- デスクや椅子
- ロッカー
- 制服
- 社員証
- 名刺
- 入館カード
- 業務用PCや携帯電話
- 事務用品
なお、PCを貸与する場合は、社内システムアカウントやパスワード、メールアドレスの設定もしておきます。
会社側の入社手続きでよくある質問
会社が行う入社手続きに関して、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
- Q社会保険や雇用保険の加入手続きが遅れたら?
- Q基礎年金番号や雇用保険被保険者番号が分からない場合は?
入社手続きは勤怠管理システムで滞りなく
入社手続きは、必要書類や手続きが多岐にわたります。本記事のチェックリストを活用しながら、漏れなく進めることが重要です。また、人事労務システムと連携可能な勤怠管理システムを利用するのもおすすめです。
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