稟議書は、多くの企業で日常的に使用される重要な文書の一つです。では、稟議書の保存期間はどれくらいが適切なのでしょうか?また、紙媒体と電子データという2種類の保存方法には、それぞれどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

この記事では、稟議書の保存期間に関する疑問にお答えしつつ、稟議書の適切な保存・管理方法について、わかりやすく解説します。

稟議書の保存期間とは

稟議書は、企業の意思決定を行う際の手続きや内容を明確にするための社内文書です。稟議書により、社内の承認フローがスムーズに進行し、業務効率化が図られます。

稟議書は、特定の業務や取引に関する決定を行うための書類であり、その内容や目的、必要な承認者などが記載されています。稟議書の作成は、業務の担当者が行い、必要に応じて上司や関係部署の承認を得るプロセスを経て、最終的な決裁が下されます。

法的に決められた稟議書の保存期間は無い

商法や会社法には、稟議書の保存期間に関する具体的な規定はないため、各企業が独自の基準で保存期間を設定する必要があります。

稟議書の保存期間が定められていないのは、企業の内部的な業務手続きを記録したものであり、外部への提出や公開が必要な書類ではないためです。

稟議書以外の書類の保存期間は?

会社法や税法に基づく書類の保存期間は、書類の種類や内容に応じて異なります。以下に代表的なものをいくつかご紹介します。

  • 株主総会議事録・取締役会議事録:10年
  • 満期または解約となった契約書:10年
  • 計算書類(貸借対照表など)・会計帳簿:10年
  • 取引に関する帳簿(仕訳帳、現金出納帳など):7年
  • 賃金台帳:7年
  • 事業報告:5年
  • 労働者名簿・出勤簿:5年
  • 官公署関係の簡易な認可等の文書:3年
  • 労災保険に関する書類:3年

稟議書の保存方法

稟議書の保存方法は、大きく紙媒体と電子データに分けられます。それぞれの特徴をみていきましょう。

紙媒体に印刷して保管する

伝統的な方法であり、システムの導入などが不要である反面、物理的な場所を必要とします。稟議書を紙媒体で保管する場合、湿度や温度の管理ができる場所を選ぶことが重要です。

また、紛失や盗難のリスクがあり、必要なときに該当の書類を探し出すのが困難であるというデメリットもあります。

電子化してデータとして保管する

稟議書をスキャナで読み込み、PDF化して電子データとして保管する方法です。また、そもそも稟議書そのものを電子ファイル化して、システム上でやり取りするという方法もあります。

稟議書を電子化することで、物理的スペースが節約でき、必要なときにもすぐに検索できるというメリットがあります。ただし、データの誤消去や改ざん防止のために、セキュリティ対策はしっかり行う必要があります。

自社に合った保存方法を選択する

稟議書の保存方法は、自社の規模や業務内容、保管スペースの有無など、様々な要因を考慮して、選択することが求められます。

たとえば、従業員規模の小さい企業であれば、稟議書の量もそこまで多くないと思われるため、紙媒体のほうが管理しやすいでしょう。

一方で、従業員規模が大きくなればなるほど、紙媒体の稟議書を保存する物理的スペースも多く必要になり、管理の手間も増えるため、電子化して保存したほうが楽になります。

稟議書を保存する際の注意点

ここでは、稟議書を保存する際の以下のような注意点について解説します。

  • 紛失・盗難などのセキュリティ対策
  • 探しやすい整理方法を考える
  • 保存期間を過ぎた後の稟議書の取り扱い

紛失・盗難などのセキュリティ対策

稟議書は、企業の重要な情報を含むため、紛失や盗難のリスクを最小限に抑えるためのセキュリティ対策が不可欠です。稟議書を紙媒体で保管する場合、保管場所の施錠や管理者の選定など、物理的なセキュリティ対策を行うことが重要です。

電子データとして保管する場合、データの暗号化やアクセス制限、定期的なバックアップなどのセキュリティ対策を行うことが求められます。

探しやすい整理方法を考える

稟議書を保存する際は、後から探しやすくするための整理方法を考慮することが重要です。紙媒体で保存する場合は、ラベリングや保存エリアを区分するなどして、該当書類の場所がある程度見当がつくようにしておきましょう。

電子データとして保存する場合は、タグ付けやフォルダ分けを行い、必要な書類データを迅速に検索できるようにすることが重要です。また、文書管理システムを活用することで、稟議書の整理や検索、アクセス制限などの機能を効果的に活用することができます。

保存期間を過ぎた後の稟議書の取り扱い

会社で定めた保存期間を過ぎた稟議書は、適切な方法で廃棄することが求められます。社内に書類の取扱いに関する内部規定がある場合は、そのルールに従って適切に廃棄します。特に、個人情報や企業の機密情報を含む稟議書の取り扱いには注意が必要です。

まとめ

稟議書は企業の意思決定を明確にするための重要な文書ですが、保存期間に法的な規定はないため、各企業が独自の基準で設定する必要があります。保存方法としては、伝統的な紙媒体での保管と、電子データとしての保管が考えられます。

保存方法を選ぶ際は、それぞれのメリット・デメリットを考慮して、自社の従業員規模や業務と照らし合わせながら、最適な方法を選びましょう。また、稟議書を保存する際のセキュリティ対策や整理方法も重要です。

稟議書を電子データ化して保存・管理する場合は、ワークフローシステムを導入することで、効率的な文書管理が可能となります。適切なシステムを選ぶことで、企業の業務効率化やコスト削減を実現することができます。